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日本直送越境ECなど、小ロットでも中国市場開拓が可能な支援サービス続々登場

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中国の化粧品市場は新型コロナ禍でも成長を続け、中国国家薬品監督管理局(NMPA)の1月の発表によると、ついに世界2位の化粧品消費市場となった。一方で日本国内はインバウンド需要の落ち込みに加え、外出自粛やマスク生活の影響を受けて回復が遅れるブランドも少なくない。こうしたなかで中国市場開拓を考える美容ブランド向けに、アイスタイルグループ、アライドアーキテクツ、ラオックス、トレンドExpress、ENJOY JAPANなど、低リスクでトライアルも可能な進出支援サービスが続々登場している。

ニッチな日本ブランド発掘のニーズは中国でも高い

日本企業の中国進出は企業側だけでなく、中国の消費者にとっても念願だ。渡航制限が続くことで、従来は海外旅行時に買い物をしていた消費者によるオンラインでの輸入消費需要が高まっている。

2020年6月の618セールでは、Tmall Global(天猫国際)の新規参加ブランド数が前年比64%増。中国の消費者から人気の高い旅行先である日本や韓国、フランス、イタリアなどの国の商品は総売上が30%以上増加した。また11月の独身の日セール(W11)では、アリババの越境ECにおける国・地域別の流通総額(GMV)で日本が5年連続で1位を獲得。日本製品の人気の高さは健在で、これまでにデリケートゾーンケアの「マプティ(MAPUTI)」や、高級美顔器を販売するARTISTIC&CO.などの日本の中小企業が品質や技術力の高さで評価され、中国向け越境ECなどで売上を伸ばしている。

また旅行時のように、店頭で新しい商品と出会う機会がなくなったため、ECサイトでは新しい海外商品の発掘も期待されている。そのためプラットフォーム側は中小企業も含め、新規ブランドの誘致を進めている。

Tmall Globalが2019年3月から開始した、「Tmall Overseas Fulfillment(天猫海外フルフィルメント、以下TOF)」は海外企業の参入ハードルを下げるソリューションだ。これは日本や韓国、米国など複数の国と地域に設けられたTmall Globalの海外倉庫から中国の消費者に発送するモデルで、企業は国内に商品を置き、いわば直送することができるため、在庫リスクを避けて、少量から越境ECに進出することが可能になった。

また今年1月にはTmall Globalが中小企業の進出を支援するため、専門家による相談窓口や言語サービスなどを提供し、最短30日でオンライン店舗を開設できる出店申請ポータルサイトの開設や、運営にともなう各種サービスを発表した。

天猫国際とアイスタイルの試み、1商品から直送できる低リスク進出で中国市場を実感

今後、さらに進出ハードルを下げる取り組みとして、Tmall Globalはアイスタイルと共同で、「Tmall Global×@cosme 中国直輸出プロジェクト」を2020年10月からスタートした。

このプロジェクトはTOFをベースに、Tmall Globalに開設した「天猫国際日本直送@cosmeモール」と越境EC大手のKaolaに商品を出品、日本国内の倉庫から中国の消費者に配送するというものだ。いきなり直営店を設けることなく1商品から出店できるうえ、中国で知名度が高く、WeiboやWeChatのフォロワー数も多い「@cosme」の店舗に出店することで、認知度の低いブランドでも中国客の目にとまりやすくなる。

ブランド側の最大のメリットは、少ロットでの出品が可能であることだ。倉庫利用料は90日間無料、輸入作業の代行は商品ページ制作費用の1万円からと費用面でも負担が少ない。すでに150ブランドが参加を表明しており、順次取り扱いを進める。アリババ日本直送越境サービスを担当する株式会社アイスタイルトレーディング MD部 MDグループ 大島真凜氏は 「インバウンド需要で中国向けの販促はしていたものの、パンデミックによりオンラインに切り替えたいが適切なサービスが見つからなかったというブランドが多い」と指摘する。

これまで@cosmeでは、アイスタイルが展開する越境ECの旗艦店で日本製品を販売していたが、この手法では在庫リスクを@cosmeが負うため、厳選したブランドのみの出品としてきた。

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出典:アイスタイル

またブランドが直接、TmallおよびTmall Globalで店舗を開くのはさらにハードルが高く、各プラットフォームの審査を通過するためには、売れる見込みのあるブランドとして広く認知される必要がある。アイスタイルトレーディング 海外営業部 部長 多々昂求氏は「戦略を立てるにしても、まずは小規模で進出し、中国ではどの商品が、どのように、誰に売れるのかを知ることが重要だ。この中国直輸出プロジェクトに参加して売上につながれば、プラットフォームへのアピールにもなる」と話す。

中国進出にあたって、売るためのサポートオプションも提供できるのがアイスタイルの強みだ。現地やプラットフォームに対する評判形成には、@cosme店舗の取り扱い品であることが利点になる。

同社 海外営業部 海外営業グループ陳天婧氏は「日本の@cosmeにおけるクチコミの点数や投稿件数が現地でも訴求ポイントになる。なぜ、@cosmeがこれをおすすめできるのかという根拠にもなるので、中国進出にあたっては、日本でクチコミ投稿をしてもらえるよう@cosme上での商品登録を推奨している」と話す。

「売れる」ライバーを育成するOver The Border、日本からの越境ライブコマース ​

またアイスタイルトレーディングでは、店舗に人を呼び込む施策としてライブコマースも実施。昨年は在日KOL(Key Opinion Leader)50人を招待したイベントの様子を配信した。イベントには「キュレル」「エステプロ・ラボ」「D-UP」など8ブランドが出展し、視聴者の反応も上々だったという。「今後は価格訴求という側面よりも、ライフスタイルに応じた提案を行うなど、ライブコマースのあり方もいろいろ工夫したい」(陳氏)。

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KOL50名を招待した
@cosme TOKYOでのイベント
画像提供:アイスタイルトレーディング

さらに、アイスタイルでは2020年9月に、美容ブランドの中国進出をサポートする100%子会社のOver The Border を設立し、日本からの越境ライブコマースを配信する。株式会社Over The Border 代表取締役 倉島應介氏は「モノを売るという点では化粧品の販売員が一番スキルもナレッジもある」と話す。

その意味から、同社は原宿の旗艦店 @cosme TOKYOや@cosme STOREなどのリアル店舗で働く在日中国人の販売員をライバーとして育成し、越境MCN(マルチチャンネルネットワーク)を運営する。@cosme のリアル店舗では多数のブランドを扱う関係で、販売スタッフはひとつのブランドに偏ることなく、幅広い知識を持っていることも強みだ。

定期的に@cosme TOKYO内にあるスタジオから中国向けにライブコマースを配信している。

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出典:アイスタイル

自社ライバーや配信だけにとどまらず、日本在住の中国人KOLに紹介を依頼することもあるが、「トップライバーだけでなく、日本の商品を売ることにたけている中堅KOLに依頼することも多い。現状をみていると、美容系KOLよりも、ファッション系や自身のブランドを持っているKOLが、中国のユーザーに対して説得力がありエンゲージメントが高い傾向がある」(倉島氏)。

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ROAS (投資した広告コスト回収率)
500%以上を達成した事例
OPERA LIP TINT
画像提供:Over The Border

アイスタイルグループでは、以前から中国現地で販売やプロモーションをしたいという声に応えてきた。Tmall GlobalやKaola、RED、JD.comにそれぞれ@cosme旗艦店をもち、上海に拠点をおくistyle China では、中国現地でKOLを活用したイベントや、@cosmeポップアップショップ、動画などのクリエイティブ制作、SNS運用などを担当する。

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2019年に上海で開催された@cosme夏祭り
花王やニベアなどが出展、来場者数は約2万人
画像提供:istyle China

このように日本からの直送、中国現地での越境ECにおいて、集客から拡散、販売サポートまで知見が豊富で、かつサポート体制が整っているのが、アイスタイルグループの強みとなっている。

アライドアーキテクツは在日中国人のクチコミ創出でブランド認知を向上

日本における中国への進出支援サービスは販路構築だけではない。ブランド認知の向上や口コミ拡散、また消費者データの取得など多岐にわたる。特に一から進出する企業にとっては、中国市場での情報拡散は大きな焦点となる。

アライドアーキテクツが展開する越境プロモーション支援サービス「BoJapan」は中国SNSへの発信意欲が高く、日本ブランドへの理解が深い在日中国人女性を対象に、サンプリングや座談会、アンケートを実施することで中国の主要SNSにおけるクチコミ拡散を行う。美容感度の高いメンバーが多く、化粧品ブランドなどの活用が多いサービスだ。中小規模ブランドとしては、フォーサイスが展開するヘアケアブランド「ルーティー(LUTY)」がサンプリングキャンペーンを実施し、13日間でWeibo、WeChat、Douyin(抖音)などの主要プラットフォームで139件のクチコミ投稿を獲得。販売数も、施策開始月に比べて3倍になったという。

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BoJapanによって拡散された
「ルーティー」の口コミ投稿
出典:アライドアーキテクツ

また女性ユーザーが約8割を占め、SNSとECの機能をあわせもつRED(小紅書)のプロモーションパッケージも提供するほか、WeiboやWeChatを活用してコンテンツを拡散するサービス「ウェイキュー(WEIQ)」、中華圏向けのクリエイターマネジメントを行う子会社Vstar Japanを持ち、これらのサービスを組み合わせて広くクチコミを創出、拡散することが可能だ。モデルで美肌研究家のソンミ氏が展開するスキンケア「ミース(meeth)」は、ブランドやアイテムだけでなくソンミ氏自身のWeiboやREDといったSNSの運営も行うなど、アライドアーキテクツのサービスを横断した中国進出支援を受けている。

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出典:アライドアーキテクツ

ラオックスが展開する越境ECで認知拡大・販路構築

ラオックスがアライドアーキテクツと業務提携を行い提供する中国向けテスト販売サービス「中国販路拡大パッケージ」は、前述のアライドアーキテクツの持つクチコミ生成、情報拡散サービスに付随するかたちで、ラオックスの中国越境EC店舗で商品を販売するプランだ。ラオックスの主要株主である中国最大級の小売企業、蘇寧易購グループの販売ネットワークを活用し、販促・販路を最大化する。

ラオックスではライブコマースに注力しており、本社に構えるスタジオなどから定期的に配信を行っている。ブランドの担当者やその企業の社長が自ら出演して自社製品の魅力や使用方法を解説する、ブランドとの協業配信が好評だ。同サービスとライブ配信は「シーボン」や、テクノエイトのヘアサロン専売ブランド「オッジィオット」などが導入・実施している

トレンドExpressが提供する中国未進出でも可能なサンプリングで消費者理解を深める

越境マーケティング・越境EC事業を行うトレンドExpressは、中国の消費者理解を深めるサービス「意中盒 -SURPRISE BOX」を展開する。現地ユーザーに商品サンプリングを行い、アンケートを回収・分析することで消費者インサイトの理解に役立てるものだ。

サンプリング対象者は年齢や性別、居住地に加えて、「越境ECをよく利用する」「敏感肌に悩む」など興味関心や行動パターンも踏まえて設定することが可能だ。またブランドの愛用者を増やすことを狙い、商品はブランドの世界観に合わせたボックスで配送し、実際に使用してもらうことで価値の理解につなげるという。EC店舗を持たない企業でも、トレンドExpressの中国拠点・Trend Express Chinaが独自運営するWeChatミニプログラムを通じて商品を送ることができる。一度ミニプログラムから商品を購入してもらい、後日返金する形でユーザーに試してもらう仕組みだ。

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出典:トレンドExpress

注目の新興ソーシャルEC・拼多多でのテスト販売が可能なENJOY JAPANのサービス

中国マーケティング支援を行うENJOY JAPANは、中国ECサイトPinduoduo(拼多多)でリスクの少ない越境EC販売サービスを提供する。商品は上海毅偉信息科技有限公司と連携して開設したPinduoduo上の日本製品専門総合店で販売。商品はENJOY JAPANの日本国内倉庫に納品すればよく、発送や通関手続きはENJOY JAPANが行う。Pinduoduoは月間平均アクティブユーザーが6億4,300万人と、アリババグループに迫る注目のソーシャルECだ。地方都市を中心にユーザー数が急増している。

中国への本格進出となればNMPA(中国薬事当局)への申請が必要になり、ブランド側には時間も費用も膨大にかかる。とくに、カラーコスメなどSKU数が多いものになれば参入障壁はより高くなる。これらの低リスク、少ロットからの進出やテストマーケティングが、中国市場での展開の可能性をより多くの企業に広げるとともに、中国の消費者にも日本ブランドの新しい価値を知ってもらうきっかけになるだろう。

Text: 臼井杏奈(Anna Usui)
Top image: 株式会社アイスタイル

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