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韓国でBEYOND GROOMINGなどメンズ美容プラットフォームの立ち上がりが続き、トレンドの兆し

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韓国ではインフルエンサーのコンテンツに触れる機会が多いZ世代を中心に、スキンケアのみならずメイクアップを楽しむビューティカルチャーが性別を問わずに広がっている。その流れを受け、2023年後半からは男性向けビューティプラットフォームの登場が相次いでいる。韓国のメンズビューティ市場の推移とともに、各プラットフォームの特徴を紹介する。


Z世代を中心に広がるメンズコスメ愛用者、「グループダプター」層

韓国のメンズコスメ市場の規模は、2020年1兆640億ウォン(約1,170億円)から、2021年には1兆751億ウォン(約1,182億円)と前年比7%増で成長。2022年は1兆923億ウォン(約1,201億円)で前年比10%増となった。2023年時点では、その市場規模は約1兆1,000億ウォン(約1,210億円)と試算されている。およそ30兆ウォン(約3兆3,000億円)ある化粧品の全体市場からすると、まだ割合としては小さいものの、業界関係者たちは今後も需要と消費が着実に増加すると見込んでいる。たとえば、韓国化粧品小売最大手CJオリーブヤングは、2021年から2023年の3年間で男性顧客層の購買額が年平均20%ずつ増加し、顧客割合としても30%に達したとの状況を報告している。

韓国国内で男性が購入しているビューティ製品のほとんどは、ベーシックなスキンケアアイテムだ。2023年に韓国のデジタルマーケティング支援企業Mezzomediaが実施した調査によれば、男性が直近1年で購入したビューティ製品としては、スキンケア、ヘアケア、日焼け止めなどが上位を占めている。ただ近年では、メイクアップ商品の売上も徐々に伸び始めているという。消費者データプラットフォームのOpensurveyが発刊している「男性グルーミングトレンドレポート2022」に寄せられたアンケートによれば、20歳から49歳までの韓国人男性10人中8人がスキンケア製品を使用しており、メイクアップ製品に関しては10人中2人がすでに使用した経験があると答えている。

この新しい消費の中心にいるのは主に20代などZ世代だ。この世代の男性はほかの世代と比べてコスメやメイクアップそのものに対する拒否感が少ないだけでなく、韓国で「グルダプター(Groo-dopter)」と呼ばれる層を通じてビューティコンテンツに接する機会が多いとの特徴を持つ。

グルダプターとは、2020年前後に登場した言葉で、メイクなど外見に気を使う人々を意味する「グルーミング族」と「アーリーアダプター」を掛け合わせた造語だ。つまり、最先端のコスメトレンドに敏感なユーザー層やビューティ系インフルエンサーを指す。メイクアップ分野で有名な男性インフルエンサーとしては、YouTube登録者数122万人を誇るLeoJ氏などが代表的だ。

LeoJ氏のYouTubeアカウント

ブランドやメーカーなど美容業界のプレイヤーたちは、メンズコスメ市場の主要な消費者層として、こういった新たな消費カルチャーを有するZ世代にフォーカスしており、市場においてはファンデーション、カラーリップバーム、アイブロー、プライマーなどの男性向けメイクアップ商品の販売が活況だ。人気なのは、肌悩みをカバーするファンデーションやハイライト、唇に自然な血色を加えたように見せるリップバームなど、メイクしているかどうかがわからないナチュラルなアイテムだという。

BEYOND GROOMINGなどメンズ美容コミュニティが登場し支持を獲得

韓国では男性ユーザーに向けたビューティプラットフォームも登場し、にわかに注目と支持を集め始めている。なかでも最近話題となっているのが「BEYOND GROOMING」だ。

BEYOND GROOMING の商品紹介ページ
出典:BEYOND GROOMING

BEYOND GROOMINGは、YouTubeフォロワー数約40万人の有名美容インフルエンサーのSWAN氏と、検索ポータルサイトNAVER内にあるビューティコミュニティ「BEYOND GROOMING」が共同運営(法人運営主体はPulse Corporation)するプラットフォームだ。2023年7月9日のオープンから2カ月時点で会員数2万8,000人、製品レビュー5,000件をそれぞれ突破するなど、短期間で多くのユーザーの獲得に成功している。

BEYOND GROOMINGを共同運営する
SWAN氏のYouTubeアカウント「SWAN_現実男子ビューティ

BEYOND GROOMINGは男性に最適化されたキュレーションECとして運営される予定だという。まだオープンから間もないため、プラットフォームとしての具体的なサービス開発は明らかにされていないが、現段階では、SWAN氏が配信する動画コンテンツ、コンテンツ内で紹介されたブランド商品の販売、スキンケアの手順ステップ別に保湿製品を推薦するコンテンツや、季節にあわせたプロモーションイベントやユーザー特典などがある。

プラットフォームには、UIQS.NATUREDMCKISNTREEmake p:remTorridenなど、男性用には限らない低刺激スキンケアブランドを中心に出店が進んでいる。定価よりも割安で、かつブランドから直送としている点が特徴だ。ブランド直送の理由は、正規品であり、十分な消費期限を保証し、初めて化粧品を購入する男性ユーザーに安全・安心を感じてもらうためだと説明されている。

BEYOND GROOMINGをオープンした理由について、SWAN氏は韓国メディアのインタビューに次のように話している。

化粧品が苦手な男性たちは、どんな製品を購入すべきか、どんなプラットフォームで製品を購入するのが安全なのかを知らない場合が多い。多くの男性が抱える悩みを解決できる各自に最も適した製品を、季節に合わせて楽に選択できるキュレーションショップをつくりたかった。多様なブランドの出店だけでなく、男性用スキンケア情報を盛り込んだマガジンコンテンツなど、男性がビューティ製品を購買する際に真っ先に思い浮かべるプラットフォームに成長できるよう努力していく。

出典:Cosmetic Insight COS'IN

このBEYOND GROOMINGに続き、2023年12月にはコンテンツコマース企業Cavementが、メンズビューティプラットフォーム「Minamio(미남이오)」をローンチした。

男性用ビューティープラットフォーム「Minamio」
出典:世界日報(세계일보)

同プラットフォームは美容医療分野までカバーしているのが特徴で、男性を対象として美容情報およびイベント、美容医療費のオンライン見積もり、美容に対する悩みを解消するための専門的なガイドや価格情報、レビューやコミュニティ機能などをサービスとして提供している。これまで、ニーズがあるにも関わらず、男性のための美容医療プラットフォームがなかったことが立上げの理由だという。

BEYOND GROOMINGの場合は、多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーとそのコミュニティを中心に集客を図っているが、Minamioはテレビコンテンツを通じたマーケティング施策を展開している。運営企業のCavementの子会社スタジオファイブが制作した番組「MAKE美男(MAKE미남)」を、LGハロービジョンという有料放送サービスを通じて放映している。同番組は、合コンでいつもうまくいかないなど、パートナーがおらず容姿にコンプレックスを抱える男性たちをメイクやファッション、美容医療を通じて変身させるという趣旨のビューティバラエティショーだ。

また、2024年3月には、「4910」というメンズファッションプラットフォームもローンチされた。

メンズファッションプラットフォーム「4910」
出典:Platum

4910は総合ファッションプラットフォームとして知名度の高いABLYの系列プラットフォームで、中低価格からハイブランドまで4,000ブランドのファッション商品を購入できる。AIを活用したパーソナライズ機能の実装を進め、独自の強みとする計画だ。今のところ4910ではメイクアップやスキンケア商品などコスメの取り扱いはないが、男性ビューティ市場の拡大で今後は取り扱う可能性が十分にありうるだろう。

2022年時点の情報によれば、既存の大手ビューティアプリ・プラットフォームのなかでも男性ユーザーは一定数存在する。男性ユーザー割合が20.5%で最も高いのが「ファヘ(화해)」で、「Zamface」が8.7%、「GLOWPICK」が5.6%とされている。

今後は、このようなメンズビューティプラットフォームがいくつか立ち上がり、競争が激化しつつ、優良なプラットフォームが残るという展開が予想されるだろう。その理由は、BEYOND GROOMINGを運営するSWAN氏クラスのフォロワー数を持つ男性の美容インフルエンサーやYouTubeアカウントはほかにも多数あるためだ。既存の女性向けビューティプラットフォームでは、ITやOEM企業と連携することで事業を伸ばしている事例もある。こうした男性向け美容プラットフォームに対して、大手化粧品企業やブランド、小売企業がどのように対応するのかも注視していきたい。

また、日本でも2023年後半という時を同じくしてLIPS内にメンズ美容コミュニティが誕生している。当たり前のようにスキンケアやメイクを取り入れている男性が一定数ありながら、自分たちが本当にほしいと思う情報がないという課題感からスタートしている。

韓国と日本で同時に起こっているメンズコスメに特化したコミュニティの立ち上がりは、パンデミックも明けて外出の機会も増え、男性にとってスキンケアやメイクがルーティンとして生活に浸透したことの現れだろう。イノベーター理論でいうところの「普及率16%の壁」(イノベーターとアーリーアダプターの比率を足した数が16%を超えることが商品やサービス普及のカギとされる)をスキンケア、メイク含めて超えたともいえそうだ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: SWAN氏公式YouTubeアカウント

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