コーセーの新「カウンセリングシステム」社内開発でBCとともにDXの中心へ
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コーセーの新「カウンセリングシステム」社内開発でBCとともにDXの中心へ

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コーセーが新たなDX施策をスタートした。2021年9月16日から稼働したカウンセリングプラットフォーム「WEB-BC SYSTEM」はビューティコンサルタント(美容部員、以下BC)とユーザーを繋ぎ、より高いレベルのカウンセリングを提供する。まずは「DECORTÉ(コスメデコルテ)」のサービス「DECORTÉ Personal Beauty Concierge(コスメデコルテ・パーソナル・ビューティ・コンシェルジュ)」として導入し、今後は他ブランドへの展開も視野に入れる。構想からリリースまで1年半のスピード、ほぼ内製したプラットフォームシステムの概要と、ユーザーに新たな体験を提供するサービス内容について紹介する。

コーセーが目指してきた「パーソナルな顧客体験」

コーセーのDXはパンデミック以前から始まる。2018年4月にはデジタルマーケティングの専門部署を新設(2021年3月にマーケティング政策室と統合)、情報統括部とともにECから店舗までデジタル化推進に向けたシステム開発を推進してきた。創業80周年に向けて中長期ビジョンとして掲げる「VISION 2026」のなかでも、「デジタルを活用したパーソナルな顧客体験」を2つの価値追求のうちの1つとしている。

2019年11月開設の自社EC「Maison KOSÉ(メゾンコーセー)」は“オウンドメディア”と位置付け、東京・銀座と表参道にある直営店とあわせた新たな顧客接点としている。2020年3月には同サイト内に、バニッシュ・スタンダードが提供するアプリケーションサービス「STAFF START(スタッフスタート)」を導入。BCやコーセー社員がメイクやスキンケアの紹介画像を投稿することで、ユーザーとのコミュニケーションを促進している。

新型コロナ禍ではBCやメイクアップアーティスト、社員によるインスタグラムライブも実施し、ビデオコマースとしてEC内で展開。コンテンツの幅を広げてきた。

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出典:Maison KOSÉ

2021年12月期 第1四半期決算発表では、国内売り上げが前年比5.4%増(337億円)と成長するも、緊急事態宣言などの影響で百貨店チャネルはパンデミック以前の水準には達しなかった。一方でメゾンコーセーを中心にECチャネルの需要は変わらず高く、継続伸張している。そのなかで、次なる一手として期待されるのが9月にローンチした「WEB-BC SYSTEM」だ。

次なる一手「WEB-BC SYSTEM」の独自性

新たなカウンセリング手法としてコーセーが独自開発したプラットフォーム WEB-BC SYSTEMは、従来のオフラインカウンセリングのきめ細やかさを再現しつつ、オンラインの手軽さを両立させるものだ。

オンラインカウンセリングは1対1で予約制、各回30分で実施する。ユーザーは「コスメデコルテ公式オンラインブティック」でコース、担当BC、日時を選択。コースは商品紹介に限らず、スキンケアやメイクアップの相談、レッスンコースも選べる。利用者は予約時の事前アンケートで肌悩みや肌質、使用アイテムなどを回答し、BCはこの情報をもとに提案商品を選ぶ。カウンセリングでは実物を見せるだけでなく、公式サイトの商品データや使用法など必要情報を適時、画面上に表示することも可能だ。

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コスメデコルテ・パーソナル・
ビューティ・コンシェルジュの
オンラインカウンセリング

購入はカウンセリング終了後、BCが送る紹介商品の一覧から顧客が各自で決済する仕組みで、ECのほか、ユーザーの近隣の店舗のサーチもスムーズなので、実店舗を訪れて実際の商品を確認してから購入することも選べる。実際にこのカウンセリングを受けた当日に表参道の直営店に来店し、スキンケアアイテムを数点購入した顧客もいるという。

このプラットフォームは2020年5月から構想・企画を開始した。従来のWeb会議システムと比べ、美容商品のカウンセリングと販売に適したプラットフォームとして、主に2点を強化している。1点目は色や質感の表現だ。化粧品特有の繊細な違いを表示するために、画質を従来の倍となる1秒60コマ(HD/FullHD×60fps)とすることで、より現物に近いリアルな動画配信が可能になった。

2点目は、共通顧客ID「KOSE-ID」によるカウンセリングから購入までの一元化だ。KOSE-IDはコーセーの全ブランドを横断する、オンラインとオフライン共通のIDであり、登録した個人のカスタマージャーニーを全てカバーし、これまでの購入歴からカウンセリングなどの顧客データ管理を一元化するものだ。これによりブランド側はよりパーソナライズしたカウンセリングや顧客体験を提供でき、顧客側は体験・購入場所を自身の都合に合わせて選びやすくなった。このため、コスメデコルテ・パーソナル・ビューティ・コンシェルジュのカウンセリング予約は「KOSE-ID」にログインした状態で行う仕組みとしている。

このIDに加え、共通アプリ、共通インフラ、共通ガイドラインの設定を組み込むことで、プラットフォームは全ての事業部とブランドが共通利用可能な標準化されたシステムとなっている。今後は他ブランドにも展開する予定だ。

セレクティブブランド事業部とIT部門が一体となって開発

WEB-BC SYSTEMはほぼ自社で開発され、構想開始から1年半足らずで実装にこぎつけた。4人の開発担当のうちの1人、情報統括部 グループマネージャーの進藤広輔氏は同社のDXのキーマンである。『ルポ 日本のDX最前線』(酒井真弓著、インターナショナル新書)内のコーセーに関する章では、DXプロジェクトメンバーとして同氏が行ったデジタル活用による業務効率化やコスト削減に関する仕組み化、物事のデータ化について言及がある。DXの前段階から社全体を見渡したデジタル改革を行っていたのだ。

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株式会社コーセー 情報統括部
グループマネージャー 進藤広輔氏

WEB-BC SYSTEMの立ち上げは、2020年のコロナ第1波による店舗の休業に伴い、BCが店頭に行けなくなり、仕事がしたくてもできなくなったことから、デジタルを使って何かできないか?という事業部の危機感から出た声がきっかけだったと進藤氏は明かす。

そこで進藤氏は、コスメデコルテを扱うセレクティブブランド事業部の部長やグループマネージャーを含む7〜8人の事業部メンバーに対し、「BCがインターネットに出ていくことでどうなるのか」を説明して、インターネットがビジネスにもたらす大きな可能性を示すと同時に、今の「現実・現物・現場主義」を検証するワークショップを開きミーティングを重ねた。

そのなかで、コロナ以前からの課題点を抽出し、オンライン接客によってどう変わるのか、顧客、BC、店舗のそれぞれのメリットとデメリットを明確にしていった。そして「単なるWeb会議ではない、リアル接客を超える」(進藤氏)新たな顧客体験を作ることを目指した。

このように、最初から事業部とIT部門が密接に連携し一緒に取り組むことで、事業部の望むビジネスニーズの正確な汲み上げと、それができる/できないかのフィジビリティ(実行可能性)の提示ができ、実証しながらすりあわせていくことを可能にした。これが「アプリケーションの開発自体にかかった期間は4カ月」(進藤氏)という驚異のスピードで成し遂げられた理由だという。

DXを進めるために必要な人材とは?の問いに、進藤氏は「いかにお客様のことを考えぬき、(それがお客様のためになるという)信念を持って進める人が組織にいるかが鍵ではないか。テクノロジーがコモディティ化してきている今、システムの専門家である必要はない。むしろビジネス設計がすべてだ」と話す。

すでに言われつくされているが、DXとはテクノロジーを活用して既存ビジネスのアップデートや新規ビジネスを創出することだ。IT化イコールDXではないし、バックヤードにデジタルを導入して効率化するのがDXでもない。DXを本当の意味で理解して、新しいことに本気で挑戦する人が社内にいるかが、DXを成功に導くヒントになりそうだ。

DXの中核を担うBC(ビューティコンサルタント)

コーセーのDXで重視されるのがBCの存在だ。オウンドメディア、メゾンコーセーでのBCの活躍や、前述の進藤氏の言葉からもわかるように、WEB-BC SYSTEMもBCありきのプラットフォームで、新型コロナ禍でタッチアップなどの機会が減ったBCをデジタル化することも狙いの1つである。コーセーでは「BC制度は最大のインフラだ」と考えているのだ。

またBCの起用においては個性を重視する。メゾンコーセーではBCの特徴として年代、肌質、肌色、一重二重などのまぶたのタイプが記載されるとともに、各BCがオリジナルな表現で使用方法のレクチャーを行う。コスメデコルテ・パーソナル・ビューティ・コンシェルジュのカウンセリングでもBCの選択ページにはBC歴や肌質、年代などのプロフィールが表示され、ユーザーは自分が参考としやすい、相談したいBCを選ぶことができる。

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BCの選択画面(左・中央)と
デジタルカルテ(右)のイメージ

コスメデコルテ・パーソナル・ビューティ・コンシェルジュのBCは、百貨店やドラッグストアなどさまざまな部門の志願者から第1期生として15人を選出し、オンライン接客のトレーニングを行った。とくにこだわるのが、言葉での表現方法だ。トレーニングなどソフト面を担当したセレクティブブランド事業部 事業戦略推進課 課長 命尾泰造氏は「たとえば、視覚情報によって誘発されるクロスモーダル効果(赤い色の甘味料入りの飲み物はイチゴ味を連想するなどの事象)を活かすような言語表現訓練により、触感や香りなど、画面越しでは実際に体験できないことをお客様に想像してもらえるような言葉づかいをBCに身につけてもらう」と語る。

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株式会社コーセー
セレクティブブランド事業部
事業戦略推進課 課長 命尾泰造氏

また、BCの評価基準は売り上げや成約率のような目に見える成果ではなく、オンラインカウンセリング後のNPSのようなユーザーアンケートを参考に測る。前述のKOSE-IDとリンクしたデジタルカルテには、担当したBCによるカウンセリング内容の詳細に加えて、BCへの評価も記録され、ハイパフォーマンスのカウンセリングを可視化し、社内共有することが可能になる“接客のデータ化”が行われており、BCのスキル向上と顧客理解に役立てる。

BCのレベルアップに加え、システムそのものも、さらにユーザー体験を向上させるアップグレードの余白が残されている。ツールはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携により、たとえば、他の技術企業が提供するAR/VRバーチャルメイクを導入し、カウンセリングをしながらユーザーの顔上で色味を確認するといったカスタマイズも可能で、各ブランドの特徴に合わせてビジネスサイドが使いやすいように柔軟な仕様となっている。画質なども5Gを見据えた設計のため、今後ユーザー側の回線状況が向上すれば、現実に限りなく近い表現ができるという。

現状システム自体の販売は考えていないとするが、高画質なツールのため、進藤氏は「遠隔医療など活用できる場面や要望はあるのではないか」という。今後プラットフォームとして、BCのリモートワークや、海外展開にも活用の可能性がありそうだ。WEB-BC SYSTEMとそこで活躍するBCが、今後のコーセーのDX基盤の柱となる。

Text: 臼井杏奈(Anna Usui)、BeautyTech.jp編集部
Top image & photo: 株式会社コーセー

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