見出し画像

マイクロニードル化粧品、市場拡大とともに形状も多様化、3つのトレンド

BeautyTech.jp

◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

注射に代わる投薬方法として医療機器や医薬品で活用されてきたマイクロニードルが、化粧品分野でも広まっている。一般的な「パッチ型溶解性マイクロニードル」以外にも、中空型マイクロニードルを用いた「ノック式」、成分そのものをニードル状に結晶化させたものや海綿動物から抽出された天然由来のニードルを美容液やクリームに混ぜた「塗るタイプ」なども登場している。それぞれの特徴についてみていく。

拡大するマイクロニードル市場、化粧品への応用も増加

マイクロニードルは、非侵襲的で痛みの少ない方法で薬物、ワクチンを投与するために使用される経皮ドラッグデリバリーシステムのひとつだ。Research Nesterが実施した調査によると世界のマイクロニードル ドラッグ デリバリー システム市場は、2023年から2035年に約7%のCAGRで成長し、2035年末には約13億ドル(約1,810億円)に達すると予想されている。

市場成長を牽引するのはヘルスケア産業の伸長で、糖尿病、がん、心臓病、脳卒中などの慢性疾患の有病率の増加を背景に、マイクロニードルを活用した投薬技術の開発が加速すると予測されているが、近年、注目されているのが美容分野での活用の広がりである。美容医療機関でマイクロニードルを使った治療件数が増加していることや、医療機関に通わずに、自宅で手軽にケアができるマイクロニードル化粧品の開発が進んでいる。医薬品は薬事承認までに多くの年月を要するが、化粧品は比較的短期間で市場に投入することができるため、医療品と並行して化粧品開発に取り組む企業も増えている。今回は、マイクロニードル化粧品の国内動向に注目し、マイクロニードルを3つのタイプに分けてその特徴を紹介する。

パッチ型溶解性マイクロニードル

溶解型マイクロニードルは、美容成分を蚊の針の太さに匹敵する0.1mmレベルの極細のニードル状に成形しシート状に加工したもので、肌に貼るとニードルが角質層まで届き溶け出すことで効果を発揮する。分子量が大きく浸透しにくいヒアルロン酸などの美容成分を、針状にすることで肌の深部に浸透させられるのが特徴だ。針自体が溶けて肌内部に浸透することや、成形のしやすさなどから、ヒアルロン酸を主成分に数%の有効成分を配合する処方が多い。製造方法は、専用の金型に美容成分を流し込んで熱や光で乾燥・固形化するマイクロモールディングが一般的だが、ニードルの形状や製造方法で差別化する動きが出てきている。

●コスメディ製薬株式会社:iFデザインアワード2023受賞の富士山ニードル

2001年5月に京都薬科大学との産学ベンチャーとして設立されたコスメディ製薬株式会社は、経皮吸収の基礎研究で培った技術をもとに、医薬品、化粧品及び医療用粘着製品を開発する製薬企業で、2008年に世界でいち早く溶解型マイクロニードル化粧品の販売を開始した。マイクロニードルが肌にしっかり刺さって抜けないように下支えするために、末広の土台をも持つ富士山型をした針形状を採用しているのが特徴で、針の長さは角質層内を越えない範囲の200μmのニードルとし、目もと用のパッチ1回分あたり3,800本*と他社に比べ本数が多いのが特徴だ。「富士山ニードル」と命名されたマイクロニードルは、世界3大デザイン賞であるiFデザインアワード2023を受賞し、世界的にも評価されている。

* コスメディ製薬「ダーマフィラープレミア」の場合

富士山ニードル
出典:コスメディ製薬株式会社プレスリリース

コスメディ製薬は、国内大手化粧品メーカーをはじめ、さまざまな企業のOEM/ODMを手掛けており、人気の高い目元ケア用のパッチのほか、ほうれい線用、しみケア用、唇用、育毛用などがある。形状だけでなくニードルの面積を部位サイズに合わせて設計変更をし、悩みに合わせた成分の組み合わせなどの企画・提案が可能で、国内の自社工場で医薬品クオリティに準拠した製造環境で製品を提供している。

●NISSHA株式会社:先端がフラットな円錐台形ニードル

印刷、コーティング、成形、金属加工などの技術をもつNISSHA株式会社は、高精密成形技術を活用して、化粧品用途の溶解性マイクロニードルを開発している。マイクロニードルの「先端が折れ曲がる」「チクッとした痛みがある」といった従来の課題に対し、自社の高精密成形技術を用いて、先端がフラットな「Softip」という円錐台形ニードルを開発し特許を取得した。先端がフラットなためニードルが折れにくく、フラットな先端が角層を押し広げて角層内に入っていくため、肌への負担が少なく、痛みも少ないとする。

独自の針形状「Softip」
画像提供:NISSHA株式会社

また、ニードルを作る「型」をそのまま利用した独自パッケージ(特許取得済)を採用。1本1本のニードルが保護されているため、使用前にニードルが折れたり曲がったりすることがなく、シールをはがす要領で簡単に使用できるのが特徴だ。これにより、ニードルを保護するために必須とされる透明ブリスターケースが不要になり、薄くコンパクトな包装でサステナブルな商品開発にも貢献できるとしている。

成形型を利用したニードルを保護する独自パッケージ
画像提供:NISSHA株式会社

OEMの顧客から一番人気が高いのは目元用のパッチで、ヒアルロン酸が主成分でシワ改善の効果を期待できることからも要望が多いという。成分では、ヒト幹細胞培養液の問い合わせが増えており、高い効果を持つ原料自体を、浸透度の高いマイクロニードルの剤形とすることで相乗効果が得られるとする。

●株式会社RAPHAS JAPAN:独自のDEN方式を採用した量産体制を日韓で構築

パッチの上に美容成分を小滴落としてもう一枚のパッチをのせ、美容成分を引き伸ばしながらマイクロニードルを成形し常温送風で乾燥させて分離する、独自の「DEN(Droplet Extension)方式」を採用しているのが株式会社RAPHAS JAPANだ。

DEN方式の利点は、製造時間を大幅に短縮できる点だ。通常12~48時間かかるマイクロモールディング製法に比べ、DEN方式の製造時間は約5分で、さらに、同時に上下2枚のマイクロニードルパッチを製造できる。また、製造過程で熱や光を使用しないので「光や熱に弱く酸化しやすい成分でも安定的に配合でき、高い効能を実現できる」と同社は説明している。

RAPHAS JAPANは、静岡と韓国にある工場で研究開発から製造まで行っており、月間300万枚の量産体制を持つ。ロレアルやジョンソン・エンド・ジョンソン、ドクタージャルトなど、国内外のブランドのOEM/ODM製造を手掛けているほか、自社ブランド「アクロパス」から、さまざまなマイクロニードル化粧品をテストマーケティングも兼ねて販売している。

自社ブランド、アクロパスで展開する「アクロパス エイシーケア」は、アクネ菌の増殖を抑えてニキビ跡の原因となる色素沈着を抑える大人ニキビ用パッチ。YouTuberの動画をきっかけに認知を拡大
画像提供:株式会社RAPHAS JAPAN

ノック式ホローマイクロニードル

●シンクランド株式会社:独自技術を活かした容器を開発

「ホローマイクロニードル(中空型マイクロニードル)」という独自技術をもつシンクランド株式会社は、医療分野以外での活用として美容分野に着目。ホローマイクロニードルの本数や大きさ、先端部の使い心地から、相性の良い美容成分の配合率などの研究を重ね、ノック式ボールペンのようにボタンを押して先端のニードルから美容液を出す構造のエイジングケア用製品として、2022年1月に「Seleia」を発売した。

一般的な溶解型マイクロニードルパッチは、美容液の効果を得るまで数時間の溶解時間が必要で、かつ皮膚に効果的な量の美容液を届けるためにはマイクロニードルを密集して配置する必要がある。一方、Seleiaのマイクロニードルは樹脂で出来ており、溶解するための時間は必要なく、皮膚接触面の角質層に効率よく美容液を届けることができる。また、ヒアルロン酸以外の美容液成分の割合を増やせるなど、配合の自由度が高いという特徴もある。

46本のマイクロニードルを適度な間隔で対称に配置。
針の長さは、角層全ては穿孔せず途中まで届く長さにしている
画像提供:シンクランド株式会社

Seleiaは、発売から1年間で累計販売数1万5,000本を突破。40代の女性からの支持がもっとも高いが、「今までにない全く新しいタイプの化粧品」というインパクトの強さから、20代から60代までの幅広い年齢層に受け入れられている。また、男性ファッション誌や男性美容誌に取り上げられている影響か、30〜40代の男性からの注文も増えているという。

現在、ホローマイクロニードル容器と相性の良いスカルプケア用とブライトニング用の商品を検討中とする。

塗るマイクロニードル化粧品

●コスメディ製薬株式会社:化粧品成分を微細なニードル状に結晶化

前出のコスメディ製薬は、肌の水分調節やバリア機能に深く関わるタウリン** の保湿力に着目し、特許出願中の特殊技術でタウリンそのものをニードル状に結晶化させることに成功。「溶けるニードル」を配合した、塗るタイプのマイクロニードル化粧品を2023年4月に発売した。
** タウリン(保湿成分)

タウリフトパワーセラム「千の潤い」
出典:コスメディ製薬プレスリリース

タウリンニードルが肌の角質層に刺さり、肌の水分と交わることでニードルそのものが溶け出し、ヒアルロン酸やナイアシンアミドなどの美容成分とともに肌の角質層まで浸透するという仕組みで、「タウリフトパワーセラム」1個(30g)あたり2,000万本以上のタウリンニードルが配合されている。タウリンニードルは塗布後約5分で角質層内に拡散をはじめ、30分後には浸透・拡散することが確認されている。同社は、タウリン以外のほかのアミノ酸でのニードル化についても研究開発を進めている。

●ヤーマン株式会社:海綿から精製された微細針スピキュール

海綿から精製された天然由来のマイクロニードル「スピキュール」を配合した塗るタイプの化粧品もある。スピキュールが肌に刺さると肌細胞を活性化し、新陳代謝を促進し、ハリや弾力を取り戻す効果が期待できるという。また、スピキュールには小さな穴が多数空いており、肌に刺さっている間、その穴に抱え込まれた美容成分が継続的に肌の角質層まで浸透する。肌に刺さったスピキュールは、肌のターンオーバーにより古い角質とともに抜け落ちるという。

ヤーマン株式会社では、表情筋をEMSで刺激するウェアラブルEMS美顔器「メディリフト」のような体感を得られる化粧品を作れないか、という観点からマイクロニードルに着目して開発した。「メディリフト ニードルリフトクリーム」には、純金24K***をコロイド化し付着させたスピキュールが、1製品あたり約100万本以上配合されている。この「塗るメディリフト」や、パッチ型マイクロニードルの「貼るメディリフト」シリーズはリピーターが多く、オンラインストアでサブスクリプション購入するほか、百貨店でこの製品を指名して購入するユーザーも多いという。
*** 99.9%以上の純金使用・整肌成分

「メディリフト ニードルリフトクリーム」と
配合されているスピキュール
出典:ヤーマン株式会社公式サイト

Text:小野梨奈(Lina Ono)
Top image:PainterMaster via shutterstock


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!