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ロート製薬、R&Dを強みに「うねりの悩みに応える」GyuttoとPRORYでハイプレミアムヘアケア市場本格参入

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2024年9月、ロート製薬は「Gyutto」と「PRORY」の2ブランドでハイプレミアムヘアケア市場に本格参入した。ハイプレミアムヘアケア市場では、情緒や体験設計に重視をおく製品が多いなかで、同社はスキンケア製品の開発研究で培った知見を活かし、科学的な根拠のある「製品の機能性」と「実感」を軸に展開する。その意図を担当者に聞いた。


ハイプレミアムヘアケア市場に「機能訴求」に振り切って本格参入

ハイプレミアムヘアケア市場(ここでは単価が1,400円以上の価格帯をさす)が伸びている。そのなかでもI-neの「YOLU」や花王「melt」のように、ユーザーの気持ちや体験にフォーカスして訴えかけるアイテムが消費者の注目を集めているが、この市場に「機能訴求」に振り切って本格参入したのがロート製薬だ。

ロート製薬が髪のうねりや広がりの改善をうたう2つのヘアケアブランド「Gyutto」(2024年7月1日先行発売、同9月14日一般発売)と「PRORY」(同9月2日発売)を立ち上げた理由は、同社がこれまで培ってきたスキンケアの知見やその発想をヘアケアに応用できると考えたからだ。毛髪を生み出す毛根は頭皮の付属器官、つまりヘアケアは皮膚科学の領域だとロート製薬では位置づけている。

その背景には消費者の価値観の変化もある。スキンケアについては、配合されている成分について一定の知識を持っている人が増え、SNSなどでも、たとえば「シミにはビタミンC、シワにはレチノール、保湿にはヒアルロン酸がよい」といった、それぞれの肌悩みに合った成分は何かという情報発信も活発だ。一方でヘアケア製品に関しては、まだ成分や処方まで踏み込んだ情報が少ないとロート製薬株式会社 広報・CSV推進部 広報グループ 岩村正子氏は指摘する。

「ヘアケア製品はスキンケア製品と比較して、使用後すぐの効果実感が高いアイテムだが、ブランドの世界観や、香り、仕上がりといった感覚的な情報が圧倒的に多いなかで、何となく目についたから使っている、美容室で勧められたら使っている、といった選び方がされている状況だ。生活者に向けて、自分の髪悩みに合った製品を、その理由も含めて理解し納得したうえで選んでいただくということを、ロート製薬の製品から提案できるのではないかと考えた」(岩村氏)

後述するが、Gyuttoといえば「ATS」、PRORYといえば「ステムプロテインCP」として、成分から語られるようなハイプレミアムヘアケアとしての認知が、両ブランドが目指す姿ともいえるだろう。

ロート製薬株式会社 広報・CSV推進部 広報グループ 岩村正子氏
プロフィール/ 2002年入社。入社以来、人事部門および広報部門に従事。これまでに採用や男性育休の推進、社内コミュニケーションを活性化するオフィス空間創りに携わる。2024年春より、スキンケア広報を担当

ロート製薬では1995年にヘアケア研究開発をスタートし、約30年、消費者の悩みに特化したブランドからヘアケア製品を展開してきた。たとえば「デオコ」や「デ・オウ」からは頭皮の臭いをケアするシャンプー、「50の恵」からは「50の恵 黒髪アクティブエッセンス」などエイジングケアや白髪ケアができるヘアケアシリーズ、かゆみ、かぶれ、湿疹の専用治療薬「メディクイックH」からは頭皮のフケ・かゆみに対応した薬用シャンプーやローション、そして、薄毛にはミノキシジル配合の育毛剤を展開する「リグロ」などがある。このうち海外展開もしている50の恵は、香港のヘアケア市場においてシェアナンバー1ブランド*になるほどの支持も得ている
*Nielsen ScanTrack Data (Total KA) MAT Sep 2020-2021 (2019 Oct – 2021 Sep)

こうしたユーザーが抱える髪や地肌の課題を皮膚科学の観点でケアするとの考え方にたち、髪のうねりのメカニズムに着目して誕生したのがGyuttoとPRORYだ。2024年現在、Gyuttoはヘアマスク1製品、PRORYはシャンプー、トリートメント、トリートメントセラムの3製品がある。うねりへの対処法はストレートパーマやコテの使用など髪へのダメージを伴うことが多いが、こうした方法ではなく自宅ケアで根本解決を目指すというコンセプトを両ブランドは持つ。

ギュットコルセットヘアマスク 200グラム 1,485円(税込)
PRORY モイストリペア シャンプー450mL 2,640円、モイストリペア トリートメント450グラム 2,640円、モイストリペア トリートメントセラム180ml 4,950円(いずれも税込)

うねりの改善メカニズムを解明

今回、ロート製薬が新たに解明した知見とはどういうものか。ロート製薬ではまず、加齢とともに増えるうねりの原因を調べ、毛髪内部のコルテックス細胞を形成し、髪の弾力や形状に関与するケラチン繊維Intermediate Filament(以下IF)の乱れがうねりに関係していることを突き止めたという。

毛の内部構造

そして、髪のねじれ・うねり改善の成分としてすでに知られるATS(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)がIFにどのように作用しているのかを神戸大学との共同研究で調査した。太陽の100億倍もの明るさに達する「放射光」という光を使って、物質の原子・分子レベルでの形や機能が調べられる大型放射光施設のSPring-8で毛髪内部の構造を解析したところ、ATSを塗布した毛髪では、ATSが毛髪内部まで浸透していることがわかり、ATSが毛髪内部のIFをまっすぐに整列させることもわかったという。

ATSを塗布し、洗い流す処理を繰り返した毛髪にはATSが浸透していた

さらに、ATSに100種類以上の素材の掛け合わせの検討を行い、内部補修成分として乳酸、外部補修成分としてPVPを配合することで、よりまとまりやすく、しなやかな毛髪を実現する技術を開発した。

また一方で、髪の「タンパク質不足」や、頭皮が乾燥する「頭皮やせ」に多角的にアプローチする成分「ステムプロテインCP(コンプレックス)」を開発した。

マーケティング戦略も機能性を軸に

Gyuttoはヘアマスクを普段のヘアケアにプラスオンするか、置き換えられることを、PRORYはシャンプー、トリートメントセラム、トリートメントの順番で、ラインで使われることを、それぞれ想定していると岩村氏は話す。「いずれもメインターゲットは、日々忙しく生活している30〜40代の女性で、ヘアマスクやトリートメントセラムが塗布後時間をおかずに洗い流せる点もポイントだ」(岩村氏)

多忙ななかでの情報収集や物品の購入はネット上で完結されていると考え、PRORYではAmazonや楽天市場、ロート製薬公式通販に販売チャネルをしぼった。2024年8月1日からAmazonで予約受付をスタート。Instagram公式アカウントも開設し、今後はインフルエンサー施策や雑誌のタイアップなどで情報発信していくという。

Gyuttoは同年8月から各種ECプラットフォームで、ギュットコルセットヘアマスクの通常サイズ200グラムおよびミニサイズ30グラムの先行販売をスタートし、Amazonではベストセラー入りするなど好調な滑り出しだ。同9月に全国のドラッグストアでの本発売前にロフトでも先行発売し、ロフト コスメフェスティバル 2024AWに出展、そのほか、テレビCMや雑誌への出稿も行っていく予定とする。また、リアルイベントではロート製薬社内の毛髪診断士が会場で毛髪診断を行い、ユーザーに正しい頭皮ケア・ヘアケアを伝える活動も地道に行っている。

「まずは使っていただきたい」と話す岩村氏。「ヘアケアで悩んでいる方に、頭皮も肌と考えるサイエンスの力を知っていただき、納得したうえで商品を選んでもらえることを願っている。実際、発売以降、頭皮や髪の悩みを持つ方を中心に満足いただいている手ごたえを感じている。このように、効果が実感できるヘアケアを楽しみながら続ける方が増えていくことで、ヘアケア市場全体がもっと盛り上がっていくのではないか。そこに少しでもロート製薬として貢献していきたい」(岩村氏)

Text: 大塚愛(Megumi Otsuka)
Top image & photos: ロート製薬株式会社