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大麻コスメ市場急成長、その背景にあるのはナチュラルを求める消費者意識

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いわゆる”大麻コスメ”を美容系のスタートアップが続々発表し、専用のECサイトまで誕生するなど、「ゴールドラッシュ」をもじり、「グリーンラッシュ」とも表現される海外の大麻コスメトレンド。急成長する市場の背景を探る。

大麻そのものの合法化が加速したのは、WHO(世界保健機構)が2018年に、大麻に含まれる酩酊作用をもたらさない成分「CBD」について医療的有効性があることを認め、規制の見直しを含め新たに調査に乗り出したのがきっかけだった。医療用大麻を合法とする国は米国、カナダ、フランス、英国など28カ国(2018年4月時点)に及び、大麻製品の市場が拡大している。それに伴い、いわゆる“大麻コスメ”の注目度も急上昇中だ。

大麻コスメに使用される主要成分

まずはじめに、大麻コスメに使われる主要な成分やよく使われる用語について整理しておこう。

Image: Lifestyle discover via shutterstock

・カンナビス
大麻の生物学上の属名「Cannabis」のことで、大麻を含めたカンナビス属の植物を指す。

・カンナビノイド
大麻草独特の生理活性物質の総称。カンナビノイドは全部で100以上あるとされる。カンナビノイドを配合した製品を「カンナビノイド製品」と呼ぶ。

・THC(テトラヒドロカンナビノール)
カンナビノイドの1つで、脳神経のネットワークを切断し、幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下、知覚の変化などをもたらす。

・CBD(カンナビジオール)
カンナビノイドの1つで、痛みや炎症を抑えるほかリラックスさせるといった効果が確認されており、てんかんやアルツハイマーなどの症状を和らげるとされている。THCのような精神作用は引き起こさない。

・ヘンプシードオイル/ヘンプオイル
麻の実から絞った油。必須脂肪酸を含み、スーパーフードのひとつといわれる。

・ヘンプ
食品、化粧品のほか建材などの産業用大麻を指す。嗜好用大麻、医療用大麻と区別して使われる場合が多い。アメリカでは、ヘンプはTHC含有量が0.3%未満のものを指す(一部地域を除く)。

日本での大麻利用の歴史

日本の大麻の歴史を少し振り返ってみると、1925年以前には大麻チンキとして医薬品として販売していた実績があったが、GHQ(連合国総司令部)占領時下の1948年に大麻取締法が制定。麻の栽培は都道府県の知事の許可制となり、カンナビノイドを多く含む花穂や葉の利用は、全面禁止された。

米国では、THCの含有量が0.3%未満と法律で定められているのに対し、日本ではTHCの含有量を規制の要件とはしておらず、大麻草の所持や含有そのものを規制する法律になっている

そのため、化粧品原料としてよく使用されるCBDオイルについては、「大麻草のどの部分から抽出されたのか」という点にも注意が必要で、日本国内においては、大麻の茎や種子の部分から抽出したCBDオイルの使用のみに限られている。

現時点で、CBDオイル抽出のために大麻を栽培することが認められた国内企業はなく、国内で販売されているCBDオイルはすべて海外製だ。しかし、輸入商品の中には、規定よりも多いTHCが検出された事例も報告されており、原材料の成分管理の点からも、国内での大麻コスメの取り扱いにはリスクが伴うのが現状だ。

加速する世界の大麻コスメ市場と人気拡大の理由

そんな日本国内の動きとは対照的に、世界的な大麻市場拡大の勢いはますます加速している。

米国では38の州で産業用ヘンプが合法化されており(2019年2月時点)、ニューヨーク州では年間17~35億ドル(約1,900~3,900億円)の市場規模が見込まれている。また、世界的な大麻市場は2025年までに1,464億ドル(約16兆5000億円)規模にまで成長するとの予想もある。

合法化された州では大麻を購入できるショップが街中に登場して人々が行列を作り、大麻専用のオンラインショップも次々と開店。「Kush Queen」のような、ヘンプとCBDコスメ専用のECサイトも誕生している。

こうした市場の動きに、多くの投資家たちも熱い視線を注いでいる。ベイン・アンド・カンパニーの元パートナーによって設立された新ファンドLB Equityは、CBDを配合した製品を取り扱うECサイト「Standard Dose」へ5,000万ドル(約55億円)の出資を発表した。

Image: ElRoi via shutterstock

このような大麻コスメの成長を後押しする要因は3つ考えられる。

1つ目は、マイナーブランドやスタートアップだけでなく、知名度のある有名ブランドも大麻コスメを発表し、さらに大手小売店がそれらを販売している点だ。

たとえば、100%ヴィーガンをうたう「MILK Makeup」。同ブランドのベストセラー製品である「Kushマスカラ」は、ナチュラルコスメのマスカラに通常使われるビーワックスをCBDオイルで代用している。「キールズ」は、カンナビスシードオイルやグリーンオレガノオイルを配合したフェイスオイルを2019年2月に発表。「ザ・ボディ・ショップ」では、“ヘンプ・ライン”を展開し、リップクリームからハンドバター、ボディバターなど10種類以上のヘンプ配合製品をラインナップしている。

「Kushマスカラ」の紹介動画

化粧品小売店の動きを見ると、米国セフォラで大麻コスメが購入できるほか、高級デパートのバーニーズ ニューヨークやニーマンマーカスでも、2019年2月にCBDコスメの取り扱いを開始することが発表された。大麻コスメだからといって、特別な店舗でしか取り扱わないわけではなく、メジャーな化粧品店で、誰もが購入できる身近な製品になりつつあるのがわかる(一部製品は合法の州でのみ購入可能などの制限がつく)。

2つ目には、ナチュラル志向の強いミレニアル世代を意識した、シンプルでクリーンなデザインを採用したイメージ戦略が挙げられる。

多くの国で長いこと危険薬物とされていた大麻だけに、「大麻=ドラッグ」と危険視するユーザーは決して少なくない。しかし、既に市場で販売されている大麻コスメを見ると、ハーブなどと同様に天然の植物が持つ自然の効能を強調して、ナチュラルでクリーンな印象を消費者にもたらすことをねらった広告やボトルパッケージが目立ち、安全な自然派コスメというイメージを前面に打ち出している。これによって、消費者の興味を促すとともに、手にしたときの違和感や罪悪感、不安感を払拭していると考えられる。

“世界で最上級のCBDオイル”とうたう「Lord Jones

3つ目は、大麻コスメを愛用し積極的にPRするセレブの存在だ。

女優のグウィネス・パルトロウは、大麻製品を愛用していることを公表しているほか、2018年には、自身がプロデュースするライフスタイルブランド「Goop」と大麻販売チェーンの大手「MedMen」とのコラボレーションを発表し、大きな注目を集めた。

さらに、オリヴィア・ワイルドはCBD入りのボディローションを使用しており、6ヶ月間ブロードウェイの舞台に出演していたときのハードな身体の痛みを和らげてくれたと明かし、首や肩のコリにとても効くと『New York Times』のインタビューで話している。

CBDオイルには不安感やストレスを抑制してくれる力があると語るのはジェニファー・アニストンだ。「ハイにならずにマリファナの良いところだけを得られる」と『Us Weekly』で絶賛したという。

大麻コスメとナチュラルコスメとの共通点

大麻コスメのリサーチを進めていくと、オーガニックやヴィーガンなどのナチュラルコスメとの重なりが多いことに気づく。

上述の「MILK Makeup」や「キールズ」、「ザ・ボディ・ショップ」は、いずれも天然由来成分にこだわるナチュラルコスメブランドの代表格だ。CBDを配合したコスメを展開する「Vertly」では、「CBDは肌に栄養を補給するビタミンと捉えている」とし、CBDは自然のハーブから抽出される天然由来成分とみなしている。また、グウィネス・パルトロウやオリヴィア・ワイルドなど、大麻コスメを愛用するセレブには菜食主義者やヴィーガン実践者が多いのも特徴だ。

Image: paulynn via shutterstock

投資銀行Piper Jaffrayのアナリストも、化粧品業界におけるナチュラル&クリーンビューティの大きな潮流に注目しており、大麻コスメもその一環として注視してきたが、ここにきてCBD製品が一気に広がりはじめた現状を受け、投資対象として独立したカテゴリーとみなすことも考えているようだ。

ホットな大麻市場の拡大は、世界的に伸びているナチュラルビューティの成長スピードを加速させるポテンシャルを秘めているといえる。

一方で、大麻の有効性については、研究の浅さを指摘するメディアも少なくない。

ニューヨーク市保健局が2019年2月、市中のレストラン、カフェ、バーに対して、CBDを加えた食品や飲料の販売を禁止する通達を出した。CBDを口に入れても体内に影響を与えないかどうか、安全性が確認されていないというのがその理由である。大麻カクテルなどがブームになりつつあった業界は冷や水を浴びせられた格好だ。

爆発的な大麻ブームで、様々な規制が追いついていないのが現状であり、今後それぞれの国や地域ごとに安全性に対する新たな規制が設けられることは十分に考えられる。

熱狂する投資家に対し、大麻関連製品に対するFDA(米国食品医薬品局)の「ほかの管轄対象製品と同じく精査していく」という対応方針を例にあげ、投資には慎重になるべきだと指摘する専門家もいる。FDAの承認なくしては、大麻製品の健康上の有効性を表示することはできない。実際、2017年には、CBDがある種の疾患の症状を軽減するとうたった複数の製品に対して、FDAから警告が出されている。

大麻の有効性への疑念がクリアにならなかった場合は、大麻コスメのブームが一気にしぼんでいく可能性も否定はできない。今後大麻コスメ市場がどちらの方向へ向かっていくのかは注意深く見守っていく必要があるだろう。

Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)
Top image: ElRoi via shutterstock

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