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米テラサイクル「Loop」や同社リサイクルプログラムに日本の美容企業も続々参加へ

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2021年5月、イオンリテール株式会社は、テラサイクルが打ち出した循環型プラットフォーム「Loop」に参画するメーカー6社、計13品目の商品の販売をスタートすると発表した。日用品や食品などを繰り返し使えるリユース容器で提供するこのプログラムの意義や、テラサイクルと日本の美容業界各社が協働して進めるリサイクル事業などについて、Loop Japan(ループジャパン)とTerraCycle Japan(テラサイクルジャパン)の代表を務めるエリック・カワバタ氏に聞いた。

テラサイクルが日本でもサーキュラーエコノミーを推進

化粧品の空き容器を捨てる時代が終焉を迎えるかもしれない。循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」を通じて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に挑む日本の美容系企業が続々と増えているのだ。

Loopは、米テラサイクルが提供するサーキュラーエコノミーのプラットフォームであり、「捨てるという概念を捨てよう」というミッションのもと、“使い捨て文化からの脱却”と“リユース文化への回帰”を進めている。

他方、テラサイクルでは2001年の創業以来、世界20カ国以上でリサイクル事業を展開しており、日本でもさまざまな企業に向けてリサイクルプログラムを提供している。

今回は、日本で本格化し始めたばかりのLoopの展開と、テラサイクルがこれまで行なってきたリサイクルプログラムの事例を紹介しながら、Loop Japan およびTerraCycle Japanのアジア太平洋統括責任者 / 日本代表 エリック・カワバタ氏へのインタビューを通じ、これからの日本の美容業界を取り巻く環境の変化について考察していく。

空き容器を“ごみ”から“資産”へ

まずはLoopについてみていこう。Loopの仕組みを理解するには、牛乳配達のビジネスモデルを思い起こすとわかりやすい。消費者が消費するのは、中身の牛乳だけ。空き容器となった牛乳瓶は“ごみ”ではなく、牛乳配達企業の“資産”として返却され再利用される。これこそが、まさにリユースである。同様に、Loopに参画する企業の商品は繰り返し使用できる専用容器に入れて販売され、中身を使い切ったら空き容器は返却してもらい、洗浄を行い、再びメーカーが内容物を充填して販売する方式だ。

今、あらゆる日用品で主流となっている使い捨て容器は、企業にとっての売上原価、つまりコストである。当然、コストは低ければ低いほどよいため、企業はできるだけ安く、少ない原料で容器をつくろうとする。しかし、容器が牛乳瓶のように企業の資産となればどうか。使い捨て容器のように商品の一部として手放すのではなく、何度も再利用する前提に立つならば、耐久性を上げるために最初の原材料費が多少高くなったとしても、長期的にみれば減価償却が進み、コスト削減を実現できる。それに加えて、「容器のデザイン性や機能性を高めてリピート購入を促す工夫を施すことで、顧客の囲い込みにもつなげることができる」と、諸外国の事例をもとにカワバタ氏は指摘する。

消費者の視点でみると、Loopの商品を購入すると、使った後に返却する手間が発生する。しかしその分、ステンレス製など高級感があって機能性も高い容器を使うことができ、また環境に配慮した活動をしている満足感を得ることもできる。

米国で導入されているハーゲンダッツの例をみると、紙パッケージでは「(アイスクリームが)すぐに溶けてしまう」「持っていると手が冷たい」といった顧客の不満があったが、Loopの商品にすると魔法瓶の機能が付いた容器にできるため、「冷蔵庫に入れなくても4時間溶けることなく」「手が冷たくなることもない」というベネフィットが追加されている。返却の手間については、Loopの取扱店が増えれば増えるほど、気にならなくなるだろう。

イオン19店舗でLoopの商品販売がスタート

日本では2021年5月25日から、東京を中心としたイオン19店舗と、イオンの公式ECサイト「おうちでイオン イオンネットスーパー」にて、Loopの取り扱いが始まっている。イオンでLoop商品を購入して、中身を利用したあとは、イオン店頭にある返却ボックスでQRコードのシールを発行して返却する容器に貼り付け、事前にダウンロードしたLoopアプリからQRコードをスキャンしたのち、返却ボックスに投入する。これにより、購入時にデポジットとして払った容器代が後日アプリ経由で返金される。

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提供:イオンリテール

開始時点で取り扱われている商品は、ネイチャーズウェイの「ドクターブロナー Loop マジックソープ BA(ベビーマイルド)」、LUV WAVES of materialsの「LUVHAIR シャンプー」や「LUVHAIR コンディショナー」など、計13品目で、イオンでは参加ブランドや品目を増やしていく考えだ。

図1

イオンで販売されるLoop商品の一例
提供:イオンリテール

米国の化粧品小売チェーンであるUlta Beautyは、顧客サービスの一環としてLoopと提携している。同様に日本でも、イオンが小売店パートナーとして保有する1年の独占契約期間が終了すれば、百貨店の化粧品売り場などにもLoopの導入が広がっていく見込みだ。

また、Loopでは2021年夏頃をめどに、関東地域の5,000世帯を対象としてLoop ECサイトをオープンする予定であり、I-ne、コーセー、資生堂などがブランドパートナーとして名乗りを上げている

「消費者は商品の選び方を少し変えるだけで、環境負荷を減らすことに貢献できる。規模の経済が働くようになるまで、使い捨て商品に比べて多少単価は高くはなるが、『グリーンプレミアム』を払う環境意識の高い消費者は、今後、日本でも増えていくだろう。サステナブルを効果的にアピールすることが、ブランドを強くすると確信している」(カワバタ氏)

このようにLoopは、リユース可能な商品をどこでも購入できて簡単に返却できるようにすることで、使い捨て文化に染まったライフスタイルをさほど変えずとも、簡単・便利・手頃な価格でリユース文化を根付かせようとしているのだ。

サステナブルなライフスタイルの支援がブランド価値を高める

次に、テラサイクルが手がけるリサイクルプログラムについてみていこう。

日本企業の環境意識について、カワバタ氏は「『外資系企業の方が、日本企業よりも環境意識が高い』『環境問題の取り組みに関して、日本企業は遅れている』と、日本企業のビジネスマンは口を揃えるが、そんなことはない」と話す。その理由として、テラサイクルが日本に本格進出した2014年に、「リサイクルの共同研究プロジェクトを始めないか」と声をかけたところ、花王とライオンが快諾したことを挙げた。事実、花王とは詰め替えパックをリサイクルするパイロットプログラムを行い、ライオンとは歯ブラシのリサイクルプログラムを行なっている。

2014年といえば、日本でサステナブルやESG経営といった言葉が浸透するより前の話だ。「欧米企業の環境意識が高いのは、メディア、消費者、株主といったステークホルダーからのプレッシャーがあるからだ」とカワバタ氏は指摘する。英国ではBBC製作の海洋ドキュメンタリーシリーズ『ブルー・プラネット』が公開されたことで人々の環境意識が急速に高まったし、フランスではさまざまなメディアで環境問題が取り上げられてきたことが契機になっているという。だが、日本では「サステナブルな商品しか選ばない」という人は圧倒的にマイノリティであるなか、花王とライオンは回収リサイクルプログラムに取り組んでいたのだ。「私が知る日本の業界トップ企業2社は、誰も見ていないところでやっていた。『それがいいことだから』という理由だけで」(カワバタ氏)

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Loop JapanおよびTerraCycle Japan
アジア太平洋統括責任者 / 日本代表
エリック・カワバタ氏

実は現在、テラサイクルの回収リサイクルプログラムに参加している企業は、美容・パーソナルケア系が一番多いという。なぜなら、化粧品など日常的に使っていて愛着のある商品が、使い終わった途端にごみになってしまうことを残念に感じたり、どう捨てていいのか分別に困ったりしているユーザーがいるのを知る人が少なくないからだ。「追加購入する際に空き容器を持ってきてもらえれば、リサイクルして何かしらのベネフィットを顧客に返す」というコミュニケーションが、ブランド価値を高める良質なサービスとして効果的なのである。

テラサイクルにとってアジア初のビューティケアのリサイクルパートナーとなった日本ロレアルは、「キールズ」で回収リサイクルプログラムを行なってきた。キールズの空き容器を店頭に持ち込むと、再生プラスチックでつくられたスパチュラなどがプレゼントされる。この取り組みは顧客や店舗スタッフからも好評だったことから、テラサイクルと日本ロレアルは2021年2月に包括的なパートナーシップを締結している。今後、日本ロレアルの主要12ブランドをはじめ、化粧品空き容器回収の取り組みを全事業部で開始し、日本市場において、消費者を巻き込んだ循環型社会の実現を目指すとする。

また、コーセーではテラサイクルとともに、2020年9月から「Maison KOSÉ」にて、プラスチック容器の回収プログラム「SEKKISEI Earth Beauty Program」を実施してきた。同11月には「イオン」「イオンスタイル」33店舗の化粧品売り場にも回収場所を広げ、「雪肌精」をはじめとするコーセーブランドの使用済みスキンケア容器の回収に取り組んでいる。さらに、2021年1月には海洋プラスチックごみを再生利用した買い物かごを製作し、イオンスタイル上尾で備え付けのすべての買い物かごを「SEKKISEI/雪肌精』のロゴ入りの再生品に切り替えた。

図1

テラサイクルとの協働プログラムで
回収できるコーセー製品
出典:テラサイクル公式サイト

また、2021年6月からは、日本ロレアル、P&G、資生堂、コーセーの化粧品・日用品メーカー4社とテラサイクルが協働し、全国の「イオン」「イオンスタイル」87店舗で「グラムビューティーク リサイクル プログラム」と銘打った、購入場所やメーカーを問わない使用済み容器の回収リサイクルプログラムも始まっている。回収した容器は洗浄・粉砕後、再生プラスチック素材として再利用される。

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出典:イオンリテール プレスリリース

もはや環境問題を単なるCSR(企業の社会的責任)として取り組む時代は終わった。「サステナビリティの鍵はイノベーションとデザインである」とカワバタ氏が語るとおり、容器をごみから資源に変えるには、ビジネスモデルそのものを変えなければならない。しかし環境問題に取り組むことがいくら正しい行為であっても、経済合理性がなければ継続するのは難しく、“ごみ(という概念)のない世界”にたどり着くことはできないだろう。

その意味において、リユースにせよ、リサイクルにせよ、Loopやテラサイクルが提供するサーキュラーエコノミーのプラットフォームに参画する企業が増えれば増えるほど、サステナブルな未来が近づくのである。

Text: 野本纏花(Madoka Nomoto)
Top image & photo: Loop Japan

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