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P&Gやロレアルが明示、ハイパー・パーソナライゼーションの時代【CES2020】

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CES2020、美容領域ではハイパー・パーソナライゼーション時代の到来が明確に告げられた。第1弾レポートは、P&Gのデジタルコンシーラー、ニュートロジーナの肌分析&アドバイスアプリ、そしてロレアルの家庭用スキンケア&メイクデバイスを紹介する。顧客をどこまでも深く知り先回りするスキンケアだ。

2020年1月6日から10日まで米ネバダ州ラスベガスにて、毎年恒例の世界最大級のテクノロジーショー「CES2020」が開催された。展示会場内にはビューティテック専用エリアの設置こそないものの、広大な会場のあちらこちらにビューティ関連の最新機器やサービスが展示され、開発者やマーケティング担当者が登壇するセッションなども数多く開かれて、引き続きビューティテックに対する世界的な盛り上がりが感じられた。なかでも、フランス、韓国、中国の企業の奮闘が目立っていたのも特徴だ。

まずは、今回のCESで明らかになった、ビューティテックの今を語るうえでの最重要キーワードである「ハイパー・パーソナライゼーション」の実現に向けた業界大手の取り組みを2回にわたり紹介する。

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ここ数年、顧客一人ひとりに向けてカスタマイズしたサービスを、ダイレクトに届けるパーソナライゼーションの推進は、美容分野における大きな潮流のひとつだったが、今年2020年はそれがさらに一歩進んだといえるだろう。テクノロジーを活用することで、ユーザー自身のことを本人よりも熟知し、先回りして顧客が求めている美を解き明かし実現していく、「ハイパー・パーソナライゼーション」への道筋がはっきり見えてきたからだ。

P&Gが完成させたスキンケアデバイス「Opté」の実力

今年のCESでまず目を引いたのは、昨年同様に複数のグループ企業からなる巨大ブース「LifeLab」を設営したP&Gである。

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LifeLabでは「オーラルB」のスマート歯ブラシ、「パンパース」が提案する赤ちゃんのモニタリングを進化させたオールインワン・コネクテッドベビーケアシステムのほか、「ジレットラボ」による加熱シェーバー、スマートフレグランスディフューザー「AIRIA」など、消費者個人にパーソナルに寄り添い、毎日の暮らしをより便利かつ快適にするテック製品を多数ラインナップした。そこで、ひときわ注目の的だったビューティテック機器が、いわばデジタルコンシーラーと呼ぶべき「Opté Precision Wand」だ。

これは、デバイスをシミの部分に近づけると、カスタマイズされた量のセラム入りファンデーションがスプレーされ、完璧なメイクを施したかのようにシミが見えなくなるというもので、2019年のCESで初めて披露され製品化が期待されていた。2020年バージョンの「Opté」は機能を大幅にアップデートし進化した2世代目となる。今年度のCESのヘルス&ウェルネス部門で革新賞(Innovation Award Honoree)も受賞した。

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肌をスキャンしシミや色むらを検出・分析、気になる部分だけをカモフラージュする方式はそのままに、肌のスキャニング速度を30%アップ。加えて、初代版と比べて、高い精度で対応できる肌トーンが格段に増えた。フェア、ミディアム、ダークの3種類のシェードで99%の肌タイプをカバーしたカスタムブレンドができるという。価格も約70%に抑え599ドルで提供、米国と中国での発売が決まっている。

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「LifeLab」内のミニステージでは肌の色の違う2人のモデルを起用しての実演が行われた。シミが隠れて消える様子はもちろん、コットンでコンシーラーを拭き取った際もほとんどコットンが汚れず、つまり、いかにほんの少しの量でカバーできているかという点にも驚かされた。実際に筆者の手にも試してもらったが、そっとなぞるだけで、確かにしみが自然な形で見えなくなる。

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開発のきっかけは、「多くの女性が、顔の10%にも満たないシミなどを隠すのに、顔全体にファンデーションを塗り、90%も無駄にカバーしている事実に疑問を持ったこと」だという。Optéによりファンデーションが不要になるとの言葉にもうなずける。

またセラムはミネラルの粒子でできており、硫酸、パラベン、人工着色料などは不使用。保湿成分とミネラル成分でシミの増加を抑制する効果もあるため、使い続けるほど、肌そのものが改善され使用する量が減るという。しかも、塗布箇所にLEDライトを照射してシミのケアもできる。

肌分析を瞬時に行い、ユーザー一人ひとりの肌トーンにぴったりマッチした色で、隠したい部分にフォーカスしてカバーするこの便利なデバイスは、まさにハイパー・パーソナライゼーションを象徴しているといえよう。

ニュートロジーナの進化したアプリ「Skin360」と未来の展望

続いて紹介するのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)傘下のニュートロジーナの肌分析アプリ「Neutrogena Skin360」である。今年はブース出展を行わなかったJ&Jだが、ハイテク・リテーリングセミナーにおいて、ニュートロジーナのグローバル責任者のナターシャ・ハウブリーチ(Natasha Haubrich)氏や、マーケティング・顧客戦略VPのケリー・サリヴァン(Kerry Sullivan)氏が、リニューアルしたSkin360の機能や開発の目的、この先の展望について語った。

新しいSkin360は、スマートフォンのカメラを使い、正面、右、左と3枚、180度の自撮り写真を撮影するだけで、10万以上の肌のピクセルを瞬時に処理し、目のくま、小じわ、しわ、シミ、なめらかさの5つの観点から肌の状態を評価して、現状のコンディションをわかりやすく表示する。

さらには、よく眠れたか、エクセサイズをしたか、ストレスはないか、といったライフスタイルに関する質問への回答をもとに、総合的なウェルネスのレベルを判定したうえで、AIが250万以上の組み合わせから、各ユーザーに最適な商品のレコメンドやケアについてのパーソナルアドバイスを行う仕組みだ。その肝といえるのが、独自開発のAIアシスタントのNAIAで、ユーザーが目指す肌の実現に向けてコーチの役割を果たす。

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出典:ニュートロジーナ公式サイト

ハウブリーチ氏は、現代のダイナミックな情報社会に暮らす消費者は、かつてないほど大量の美容情報や商品を手にできるが、逆に情報過多に陥り、自分に何が必要なのかがわからずに混乱しているという見解を示し、本人以上に一人ずつの消費者を理解し、瞬時に解決策を提示するAIに価値を見出していると語る。

黒い服がKerrySullivan

ケリー・サリヴァン氏(右)

サリヴァン氏もまた、「次世代のスキンケアは顧客の個別ニーズや悩み、理想に合わせてテーラーメイドすべき。消費者は(精神状態やライフスタイルなど)ホリスティックな要素が肌に与える影響を知りたいと考えており、望みの肌を手に入れるためにエキスパートによるガイダンスも求めている」として、Skin360が顧客の日々のスキンケアを総合的な見地からサポートするものであると強調する。

Skin360には、ユーザーの肌やウェルネスの状態、使用するアイテムや日々の美容ルーティン、また、どの製品がどう機能するかなどが記録され、AIはディープラーニングによってユーザーの肌についての学習を深め、その知識をより適切なリコメンドやアドバイスとして反映させていく。

「将来的には、これらのデータと知識を活かし、たとえばユーザーの10年後といった未来を予測し、その未来像を改善するために今できることを提案したい。可能ならば、個々のためにカスタマイズした商品も開発したい」とサリヴァン氏は今後の目標を明かした。

確かに「このままのルーティンを続けると10年先には、このようなシミやシワが発生することが予想されるが、今、このケアを行なっておけば5歳若く見える」などと顔画像を添えてAIに説明されたなら、役に立つ忠告だと納得して、必要な商品を購入する消費者が増えることは充分に考えられる。この継続性と未来予測という側面もハイパー・パーソナライゼーションを考えるうえで重要な要素だろう。

自宅で自分にぴったりの化粧品を毎日調合

ロレアルも一般向けのブース出展はなかったが、L’Oréal Technology Incubatorが開発した家庭用パーソナライズ・スキンケア&メイクデバイス「Perso」を発表し、大きな注目を集めた。

Persoは、カートリッジを複数搭載した高さ17センチ、重さ450グラムのコンパクトなボトルタイプで、AIがユーザーの肌状態や色味の分析のほか、気候や湿度、紫外線量など生活環境の数値を加味し、さらに各自の肌悩みや希望に応じて、スキンケア用クリーム、ファンデーション、リップをオンデマンドで調合する3種類のホームデバイスをラインナップしている。

使い方は、専用アプリを立ち上げ、スマートフォンのカメラで自分の顔を撮影すると、ロレアル傘下のModiFaceが開発したAIがしわ、小じわ、毛穴、しみなど肌の状態を分析。世界中の大気の状態を測定するBreezometer と連動し、当日の天気、気温、湿度、紫外線、花粉など環境データを取り込む。ユーザーが、肌の悩みや気になる点、好みの化粧品のテクスチャーを入力すると、ユーザーにぴったりの成分や色味の化粧品を必要な量だけ調合し生成する。

継続的に使うことで、AIはどの処方がユーザーに機能しているかを学び、その情報を調合時に反映していく。デバイスの上部は取り外し可能で、リップなどを外出先へ携帯することもできる。成分の入ったカートリッジの残量の確認やリフィルのオーダーは専用アプリからシームレスに行える。

近い将来には、その時々の流行のデータを取り込んで反映させたり、ユーザーのその日の洋服へのカラーマッチングといった機能も備える予定だ。

2021年の商品化を想定しているが、これが完成すれば、自宅で自分を誰よりもよく知る知識豊富なAIが推奨する、その日その日の状態も含め、もっとも自分にふさわしい専用の化粧品が毎日作り出されるわけだ。価格などは未定だが、まさに究極のパーソナライゼーションの実現である。

大手3社が豊富な資金を投入して開発した商品やサービスは、それぞれの肌の微妙な違いや、本人も気づかない自分と環境状態を考慮し、こと細かな「先回り」の提案をする。ハイパー・パーソナライゼーションの時代が来たことを告げるものであった。

次回は、CES2020に出展された、すでに実用化が決定しているカスタマイズ商品について、開発の裏側を含めてみていきたい。

<そのほかのCES2020レポートはこちら>
(2)アモーレパシフィックが店頭での3Dプリントパーソナライズマスクを実現
(3)CareOSやHiMirror、ホームユース・スマートミラー元年を導く
(4)AR/AI搭載スマートミラーの多機能化で、境目のないユーザー体験
(5)サムスンやP&Gが競うビューティルーティンを変える最新デバイス

Text & Photos: 東リカ(Rika Higashi)

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