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Noveraが肌診断AI「viewty」の新たな学習法で特許申請、その革新性と可能性

2019年末にコア技術である肌診断AIを搭載した化粧品レコメンドアプリ「viewty(ビューティ)」を正式にリリースして以降、ブランドや企業向けにもソリューションを幅広く展開している株式会社Novera。同社では、肌診断AIの精度を高めるなかで浮上した新たな課題を克服し、画期的な解決策を導き出して2021年3月に特許を申請した。同社CEO 遠藤国忠氏、AI責任者の諸冨大樹氏に、肌診断AI開発の最前線について聞いた。

肌質だけで約3万パターン、企業にもAPI提供の「viewty」

日本のビューティテック領域において、肌診断AI開発に力を入れてきたNovera。「肌質」だけで約3万パターンのデータセットを有し、肌に関するデータサイエンスに強みを持つ。viewtyリリースから約1年4ヶ月が経過した現在、独自の理論で収集した肌データは4万件を超え、API形式で提供されているソリューションを導入する企業は10社以上となる。日本国内で肌診断AIをAPI形式で提供しているのは、おもなところではNoveraとパーフェクト株式会社の2社にしぼられる。日本発のスタートアップとしての独自開発でNoveraは先陣をきっている。

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化粧品レコメンドアプリ
「viewty」

Noveraの肌診断AIは、現役の美容部員など美の専門家200名以上の知見をデータとして取り入れている点が大きな特徴だ。欧米企業が開発する肌測定AIは、皮膚医学の知見を活かし、医療やヘルスケアよりのアプローチを取ることが多いなか、Noveraは毎日の美容を念頭に置き、“日常使いのための肌診断AI”という独自のポジションを築こうとしている。

「viewtyのアプリ以外でも気軽に肌診断を試してもらえるよう、QRコードからの肌診断テストページもある」(遠藤氏)

AI肌診断の結果が、CTR増や商品詳細への深い関心を呼び起こす

遠藤氏は、コロナ禍の影響で、肌診断領域全体に大きな変化が起きていると指摘する。

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株式会社Novera
代表取締役 CEO 遠藤国忠氏

「店頭では、専用端末を使う接触タイプの肌測定手法は、感染予防の観点から基本的に使いづらくなっている。そこで検討されはじめているのが、スマートフォンカメラで撮影するタイプの非接触型デジタル肌測定手法だ。ただ、測定というコンテンツは、自社商品やPR戦略とどのように連携させるかという全体的な仕組みづくりや戦略構築が難しいこともあり、ブランド側は試行錯誤を繰り返している段階だ」(遠藤氏)

ブランドにとっては、肌診断AIを取り入れるための判断基準として、コンバージョン率、集客および広告効果など、具体的なインパクトが導入の決め手となる。遠藤氏はその点を認識しつつも、まずは利用の敷居を下げていくことこそ、肌診断AIを普及させる第一歩だと考えている。この分野でのベンダーは決して多くはなく、ナレッジや活用ノウハウがシェアされていない状況にあるからというのがその理由だ。

「Noveraでは、導入の敷居を下げるために、初期導入費用を低く抑えるほか、トライアルサービスを豊富に取り揃えている。とにかく使ってもらうのが大事なフェーズだ。また自社だけで商品をパッケージ化せずに、ブランド、メディア、ポイント企業などと連携して、さまざまなビジネスモデルを構築できるよう検討中だ」(遠藤氏)

遠藤氏は2019年から肌診断AIを運営してきたことで、ブランドにとって大きく3つのメリットがあることが分かってきたと続ける。それは、診断結果をもとにユーザーが「強い興味・関心をベースにECへ遷移」「そこでの商品認知」「自身の悩みが明確になったことによる検討段階への誘導」だ。

「メールマガジンなどに肌診断のリンクを入れることで、CTRがあがる。また、肌診断結果からのECページへの遷移は、肌診断なしの場合より、5~7倍増えるというデータも出ている。肌診断結果が、製品への強い関心を引き出し、商品詳細テキストがより深く読まれるという結果も生んでいる。またユーザーは診断結果により自分の悩みが明確になることから、ECサイトのレビューに同じような悩みについて記述があれば、それに対しても共感が高まる。その意味でスキンケアのブランドストーリーを伝えたり、新商品や新ブランドの認知に肌診断AIはとても有効だととらえている」(遠藤氏)

専門性×汎化能力が高い肌診断AI開発技術を特許として申請

ブランドが肌診断を導入するうえでのメリットやハードルについて、データや知見を蓄積しているNoveraだが、診断結果の精度など、技術的側面においてもブラッシュアップを続けている。そのひとつの象徴が、「肌AIの精度を向上させるための学習方法」という名称で、新たに特許を申請したことだ。

「プロの美容部員200名の知見を肌診断AIに学習させ続け、診断の精度自体は持続的に向上しているものの、そのなかである課題が生じた。『敏感肌』など、一部の項目に対して、診断結果が極度に偏るという現象だ。AIに学習させるデータが偏っているわけではないのに、アウトプットがなぜか偏ってしまう。その理由のひとつとして、美容部員は美容のプロではあるが、その知見をすべて言語化できているわけではないからという仮説があげられる。表現したいことと、表現できることに乖離があり、それが診断結果の偏りにつながったと我々は分析するにいたった。その解決策を試行錯誤した結果、『肌AIの精度を向上させるための学習方法』として特許申請を行った」(遠藤氏)

同社のAI責任者 諸冨大樹氏は、この課題について、世界でも類をみない解決法を導きだした。諸冨氏は、日本ディープラーニング協会(JDLA)認定講座の講師として、NTTをはじめ600名以上の生徒を教えてきた日本有数のAIエキスパートだ。

「専門的な用語でいうと、オーバーフィッティング(過学習)のような現象が起きていた。これは、ある訓練データに対しては学習されているが、未知なデータに対しては適合できないという現象のことをさす。詳細な調査を実施したところ、実際はオーバーフィッティングではなかったが、サービスを提供するとそれに似た現象が発生し、極端な偏りが発生していた。従来の構造の可変やパラメータ調整、教師データの修正などの対処を行ったが、問題の解決には至らなかった」(諸冨氏)

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株式会社Novera AI責任者
諸冨大樹氏

つまり専門分野ばかりを掘り下げても、一般教養が欠けていたために、ものごとを極端に捉えたり、偏った判断をしてしまうことにも似ているという。諸冨氏によれば、人間に例えると、センター試験の過去問を何度もほぼ完璧にできるまで学習したが、応用力に欠けるため本番で結果が出せなかったというようなケースだ。

その解決策となったのが今回の「肌AIの精度を向上させるための学習方法」である。具体的な解決方法は特許申請中のため現時点では詳細に触れられないとしつつも、この肌診断AI開発の学習方法は、世界各国の論文でもまだ発表されておらず、日常のスキンケアのための肌診断AIという分野に限っていえば「他社サービスが追随できない技術開発」と遠藤氏、諸冨氏ともに自信をのぞかせる。

肌診断AIにとどまらず、購買データとの関連性など広い分野でのAIの汎化能力向上へ

この新たなAI開発の学習方法は、肌診断AIそのものの精度だけでなく、肌診断結果と購買データを結びつけるAIなど、ほかのAIの汎化能力を高めることにも利用できるという。Noveraは今後、この特許を武器に、AI開発モデルやエンジンをブランドならびに他社に提供することでビジネス展開に拍車をかけていきたいとする。

「テキストベースの問診や、購買データのみでは、たとえば、ある既存ユーザーが他のブランドや製品に切り替えた際のインサイトを探るのには限界がある。しかし精度が高い肌診断AIを、いま取得できているデータと組み合わせて、個々人の肌の状態や季節要因など、ユーザーや環境の変化と商品購入の関係性を細かに追うことができると考えている。肌診断AIソリューションを引き続きアップデートしつつ、さまざまな方向でビジネスの在り方を模索していきたい」(遠藤氏)

Noveraが生み出した新たなAI開発の学習方法は、肌診断AIのみならず、AIでデータを扱う分野全体においても刺激になる可能性を秘めたイノベーションといえよう。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: metamorworks via Shutterstock
画像提供: Novera

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