見出し画像

香港発「Botanic Pretti5」「RARE SkinFuel」「TiN5」3つのクリーンビューティブランドの意外性と共通点

◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

トラベルリテールとしてユニークな立ち位置だった香港の化粧品市場では、これまでは欧米、日本や韓国を含む外資ブランドが席巻してきたが、パンデミックを経て「香港発」の新興化粧品ブランドが続々と誕生している。特に注目したいのが、創業者がそれぞれ自身の肌悩みを起点に立ち上げた高価格帯のプレミアムクリーンビューティブランドだ。


特殊な市場性と、潜在力を秘める「香港発」新興クリーンビューティブランドの台頭


日本貿易振興機構(JETRO)のレポートによると、2022年の香港の化粧品市場規模は前年比4.8%増の173億香港ドル(約3,501億円)だった。一見すると新型コロナウイルス感染症による販売低迷から回復しているようだが、これは2019年の額の68%に過ぎず、コロナ前の水準にはほど遠い。

その理由は、香港の特殊な市場性にある。香港は人口が約750万人(2023年時点)ながら、中国本土を中心とする観光客向けのトラベルリテール需要が高かった。マスク義務化の解除と国境往来が再開された2023年は大きく経済回復したかのようにみえるが、実は経済特区である中国本土の海南省に続々とオープンした免税店との競争により、コロナ以前の水準に戻るのは難しい可能性があると同レポートは指摘する。

こうした特殊な市場であるがゆえに、外資ブランドが多く、これまで香港「発」のブランドは少なかった。老舗化粧品ブランドとしては1898年創業のKwong Sang Hong(廣生堂)の「Two Girls(雙妹嚜)」があるが、香港発で国際的に知名度を高めたブランドはほぼ見当たらない。例外は、「Naturals by Watsons」など、世界中で展開する香港のドラッグストアチェーン「ワトソンズ(屈臣氏)」のPB(プライベートブランド)だろう。同社の公式サイトによると、ワトソンズは中国本土を中心に東南アジアや中東、欧州など世界で1万6,400店舗以上を展開し(2022年)、PBも世界中で販売している。

ワトソンズのプライベートブランドのひとつである「Naturals by Watsons」のスキンケアライン
出典:Naturals by Watsons公式サイト

創業者自身が肌悩みを持ち、高価格帯、グローバル展開が3ブランドの共通点

だが、そんな香港化粧品市場に変化が起きつつある。コロナ禍をきっかけに健康への関心が強まり、また自宅で過ごす時間が増えネットでの情報検索が進んだことで、スキンケア成分に関しても人々が知識を蓄えるようになった。その結果、自然由来で安全性が高いスキンケア製品へのニーズ、つまりクリーンビューティの人気が香港の女性の間で高まっているのだ。

こうした状況を受け、香港では近年、スキンケアブランドが次々に誕生している。なかでも注目なのが、高価格帯のプレミアムクリーンビューティブランドだ。いずれも、創業者の肌悩みを起点に開発をスタートし、中〜高価格帯で展開するという共通点があり、米国発で現在資生堂傘下のドランクエレファントの開発過程を彷彿とさせる点が興味深い。

香港発、日本製。ヴィーガン処方の「Botanic Pretti5

「Botanic Pretti5」は、金融業界などでキャリアを積んだドロシー・チャウ(Dorothy Chau)氏が、ストレスによる肌トラブルをきっかけに美容業界に転身し、2020年にローンチしたスキンケアブランドだ。自身の肌トラブルのために毎月のように伝統的な中国医学の診療所の行列に並び、処方される漢方薬を自分で煮出して飲むことに大変な労力を感じたチャウ氏は、煎じ薬と同じ成分のスキンケア商品を作り、それを肌に塗れば簡単に同じ効果が得られるのではないかと考えた。 

この大胆な発想のもと、チャウ氏はすぐにリサーチを開始した。しかし、まったく同じ成分を肌に塗っても同じ効果は得られないことを理解したチャウ氏は、海外に開発の活路を見出そうと、韓国、フランス、イタリア、日本を巡ったという。その結果、日本の大阪に自分の希望を叶えてくれる研究室を発見、その研究室と共同で、伝統の漢方成分と現代のテクノロジーを組み合わせた製品を開発したという。製品の生産は日本で行い、香港に輸入している。

2024年3月末、Botanic Pretti5の製品は日本での展開も開始
出典:Botanic Pretti5 公式サイト

Botanic Pretti5は、シロキクラゲ多糖体をヒアルロン酸の代替として使用するなど天然の植物成分にこだわり、合成香料や人工着色料、防腐剤などは使用しないヴィーガン処方だ。使用している主原料についての詳しい説明は同ブランドの公式サイト上で公開している。

同製品は、公式サイトに加え、セフォラ香港やキャセイパシフィックの機内などでも販売されている。SNSとポップアップストアによりブランド認知が広まり、香港メディアによると3年で損益分岐点に到達したという。「ピオニー+ヒアルロニック ブライトニング セラム」が「ELLE Beauty Empties Award 2024」を受賞するなど、高い評価を受けている。

同セラムは、28mlボトルが720香港ドル(約1万4,500円)で販売されており、エスティ ローダーの主力セラム「アドバンス ナイト リペア」が、現地では30mlで690香港ドル(約1万3,900円)であることを考えると、Pretti5のポジショニングもプレムアムブランドの位置づけだ。

すでに海外展開もスタートしており、米国では2023年7月にローンチ、日本では2024年3月末にECキュレーションサイト「ミレポルテ」で販売開始し、同年夏にはシンガポールの伊勢丹と高島屋での販売を開始する予定だという。

オーストラリアのオーガニック原料を使用する「RARE SkinFuel

「RARE SkinFuel」は、米シリコンバレーのスタートアップでグラフィックデザイナーや製品開発の経験を持つミシェル・チェン(Michelle Chen)氏が2018年にローンチした。結婚後に専業主婦になったチェン氏は、出産後の肌の状態の悪化に悩み、さまざまなスキンケア用品を試したが改善されなかったことをきっかけに、さまざまなライフステージにいる女性が、自分の肌に自信を持てるようにサポートする製品ラインを作ろうと起業したという。リサーチを重ねるうちに、天然エキスを使用した高機能な製品の開発能力があるオーストラリアのメーカーと出会い、協業することになったという。

オーストラリアで生産されるRARE SkinFuel製品はアンチエイジングをうたい、ツバキ油やカカドゥプラムエキスなどオーストラリア産のオーガニック植物原料を使用。化学的に合成された成分を使用せず、自然成分の機能性を損なわないよう低温処理してブレンドしている。また、製品の品質を維持するための防腐剤にはオーストラリア産の天然の植物抽出物を配合している。

フェイスオイルが15mlで780香港ドル(約1万5,700円)と高価格帯で、ユーザーからは「(テクスチャーは)とてもきめが細かく、浸透性に優れた美容オイル。数滴垂らすと、ベタつかずに顔全体に均一に広がる」などの高い評価を得ている。

RARE SkinFuelは香港に旗艦店を2店舗構えるほか、オンラインでは公式サイトやシンガポール航空のECサイトなどで販売している。香港以外では中国市場を注視しており、中国版インスタグラム「RED(小紅書)」のアカウントを開設した。また、台湾、シンガポール、マレーシアでも展開している。

幹細胞技術で生まれた香港に暮らす人のための香港ブランド「TiN5

湿疹に悩まされていたニコラス・チョウ(Nicholas Chow)氏が、妹のカレン(Karen Chow)氏とともに2023年にローンチした「TiN5」は、2人の両親が1995年に香港で登録した化粧品工場を引き継ぎ、香港人のための「香港製ブランド」にこだわっている。

美容メディアのレポートによると、TiN5は最先端の幹細胞技術を駆使し、香港特有の高い湿度や大気の汚染が原因で発生する肌トラブルを解決することを目指している。上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ケラチノサイト増殖因子(FGF7) を活用して細胞の再生やコラーゲン生成を促進し、肌の弾力と若々しさを保つよう働きかけるという。

ジェルマスク50グラムが1,380香港ドル(約2万7,900円)など高価格帯スキンケアとして、香港以外では東南アジアなど、高温多湿の気候に暮らす人々をターゲットにしている。

前出のJETRO調査によれば、香港市場はロレアル、エスティ ローダー、資生堂、LVMH、アモーレパシフィックのグローバル美容企業5社のもつブランドで市場シェアの53%を占める。ブランドが確立できていない状況では価格競争に巻きこまれる現状もあり、今回紹介した香港発の新興ブランドはブランディングに注力しスタートからグローバル市場を目指して設計されている。中国本土や東南アジアへのアクセスがよいこと、中国語や英語が公用語であることから大市場へ展開しやすい条件も整っている。

優れたOEM企業など他社との協業体制を組むことで、固有のブランド哲学を維持しつつ、製品の高い機能性を実現する。こうした香港発のスタートアップブランドが新たな潮流をつくりだすことができるのかに注目が集まる。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Botanic Pretti5公式サイト

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!