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P&Gが中国で加速させるデジタル施策とOLAYのパーソナライズスキンケアの勝算

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P&Gは中国で「C2M(Consumer to Manufacturer)※」の発想を取り入れ、デジタルを活用したさまざまな試みを行っている。OLAYのパーソナライズスキンケアを筆頭にポップアップストア、ライブコマース、そして、SK-IIの知見も取り入れられたデジタルコンシーラーのOPTEなど、高価格帯を狙い積極的に市場の反応をみている。
※「消費者から製造者へ」として、メーカーが消費者から直接注文を受け、受注生産によるパーソナライズ化や、在庫負担の少ないビジネスモデルを目指す中国製造業のトレンド

OLAYが中国でパーソナライズスキンケアを限定販売

コロナ禍の4月、OLAYはユーザーのニーズに合わせたパーソナライズスキンケア商品「OLAY LABS / OLAY SKIN ID」5,000セットの限定販売を世界に先駆けて開始した。

同商品は、アリババグループのECプラットフォーム「Tmall(天猫)」のOLAY旗艦店を通じて販売された。ユーザーがアプリを通じて自撮りによる肌診断を実施して、飲食習慣、睡眠、月経などに関するアンケートに答えると、AIが各自の肌の状態を分析し、結果レポートが表示される。

そして、この個々のユーザーの分析結果にもとづいて、ナイアシンアミド、カフェイン、ビタミン、ペプチド、植物抽出物、ヒアルロン酸などの成分の配合をカスタマイズし、ユーザーに適したオーダーメイドの商品を提供する仕組みだ。洗顔フォーム、化粧水、美容液、フェイスクリーム、アイクリームの5アイテムのセットで、1,024通りの組み合わせのなかから提案される。

肌診断システムは、OLAY LABSが、米コンピュータ関連技術企業であるパロアルト研究所(PARC)と共同で開発。顔の68カ所のポイントで、メラニンバランス、コラーゲンバランス、角質再生バランス、水分と脂性のバランスの観点から分析して肌状態を把握することで、高い精度を実現した特許取得済みの技術だ。あわせて、幅広い年齢層のアジア人100万人の肌のビッグデータを取得して活用し、アジア人の肌に対する分析レベルを向上させた。

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OLAYオーダーメイドスキンケア商品
出典: Weibo公式アカウント

商品ラベルには、それぞれ3桁の数字が印字されている。左の数字がユーザーの現在のステップ、中央の数字が肌の質感と肌触りの好み、右の数字が達成したい目標を表している。

価格は1,999元(約3万1,000円)と高価格帯に属する。日本の女優・三吉彩花氏を起用した近未来をイメージした広告はインパクトがあり、SNSでも話題になった。Weiboで650万以上のフォロワーを抱える人気KOL(キー・オピニオン・リーダー)黎貝卡的異想世界がいち早く体験して投稿したところ1,000以上のコメントが書き込まれた。

没入型体験を提供するOLAYのポップアップストア

OLAYの取り組みはそれだけではない。8月から各地のショッピングモールでさまざまなテクノロジーが取り入れられたポップアップストアを展開した。

同ストアは7月に発売した新商品「OLAY PURESET SUPREME CONCENTRATE」のコンセプトショップとして開設したもので、同商品は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した「オートファジー」のメカニズムを根幹とし、OLAY独自の調合技術によって開発された美容液である。

ユーザーは、WeChatのOLAY公式アカウントをフォローして個人情報を入力後、ポップアップストアでIDタグをもらって肌診断を行う。毛穴、しわや紫外線によるダメージなど、さまざまな角度から肌を定量的に評価・解析し、個人に合ったスキンケアソリューションを提供するのがOLAY PURESET SUPREME CONCENTRATEだ。

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ポップアップストアの様子
(ユーザーの投稿より)
出典: 「RED(小紅書)」

同ポップアップに設置された肌診断機器は、P&Gが米Canfield Beautyと開発した「NEXA」で、中国全土の百貨店にあるOLAYの販売カウンターにも設置されている。肌診断だけならほかのブランドも店舗やイベントで取り入れているが、ほかにも体験型の仕掛けが用意されたのが同店の特徴だ。ユーザーが白衣を着て科学者になりきり、その場で実験を行うことでオートファジーの働きを理解するコーナーを設けたり、VRゲームを通じて肌の自浄作用を体感するコーナーなど、没入型体験を提供した。

ライブコマースやオンライン発表会にも注力

中国で展開するにあたり、OLAYは早くから積極的にテクノロジーを取り入れてきた。2017年にはTmall旗艦店に肌年齢測定を実装しており、ライブコマースにも早い段階で取り組んできた。それが奏功し、ECでも競合ブランドをしのぐ存在感を放っている。

中国のEC業界全体をあげてのスーパーセールイベントで、毎年6月18日に行われる「618」での同ブランドの今年の売上も好調で、現地の報道によると、Tmall旗艦店ではセール期間中の1カ月でOLAYの基礎化粧品が2万8,000個以上売れたという。一方、JD.com(京東商城)では、618の前哨戦としての6月1日のプレ販売で開始10分間の売上が前年の2倍になり、美容液「OLAY淡斑小白瓶」が同日のランキングのトップ3に入った。

OLAYは今年に入ってから、618に関わるスタッフの数を30%以上増員し、各プラットフォームでJD.comに誘導する広告宣伝を展開。JD.comではセール期間中、毎日7時間以上にわたってライブコマースを実施したという。

P&GはOLAY以外のブランドでもオンラインを重視してきた。OLAYに並ぶもう1つの看板ブランドであるSK-ⅡのWeibo公式アカウントのフォロワー数は94万を超え、Tmall旗艦店のフォロワー数は1,100万を超える。

また、2018年にP&Gが買収した敏感肌向けスキンケアブランド「First Aid Beauty(FAB)」が2020年6月、正式に中国に進出したが、Tmallが特定のブランドを支援するために実施するイベント「Tmall スーパーブランドデー(天猫超級品牌日)」と提携し、9月23日にオンライン発表会を開催。広告塔を務める人気タレントの李易峰が出演したこともあり、3,000万人以上が視聴する盛り上がりをみせた。

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「First Aid Beauty(FAB)」
オンライン発表会の模様。
中央が李易峰
出典: 中国メディア「財経網

Tmallのアカウント開設日は6月30日だが、売れ筋のフェイスクリームは、9月末現在ですでに5万5,000個以上販売されている。ユーザーからは「吸収がよく、塗った後にベタつかない」「敏感肌で乾燥しがちだけど、この商品は自分にすごくあう」など商品そのものに対する評価が高い一方で、人気KOL・薇娅(viya)のライブコマースをきっかけに購入したという声も少なくなかった。

SK-ⅡのDNAを持つ携帯型美容機器「OPTE」

P&Gは最新技術を搭載した美容家電にも注力している。同社は米ラスベガスで開催された「CES 2019」で披露した携帯型のデジタルコンシーラー「OPTE(Opte Precision Skincare System)」を7月、世界に先駆けて中国市場に投入した。

同製品はSK-Ⅱと共同開発したもので、40項目にのぼる国際特許を取得しているという。LED光線を照射しながらスキャンして顔の皮膚を識別し、人間の目には見えないシミをAIが正確に解析。毎秒200枚の連続写真からシミの大きさや輪郭を特定し、髪の毛の3分の1の細さのノズル120個からナノリットル単位で美容液を吹きかけ、シミを自然に隠す。

ここで使用される美容液にはSK-Ⅱの技術が活用されており、配合のニコチンアミドは、メラニンの移動を効果的にブロックし、メラニンの代謝を促進。エチレングリコールと組み合わせることで、肌に潤いをもたらす。実証実験によると8週間使い続けたユーザーのおよそ8割が、シミが薄くなったことを実感したという。

美容液入りカートリッジがセットになったOPTE本体価格は4,998元(約7万6,500円)ながら、Tmall GlobalのOPTE海外旗艦店では発売から2か月で約2,700個が購入された。ユーザーからは「操作がしやすいし、自然にシミが隠せる」「ファンデーションで隠すよりも効果的」などと評価は高い。

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Tmall Globalで販売されているOPTE
出典: OPTE海外旗艦店

OLAYの「C2M」モデルの勝算はあるか

SK-Ⅱに比べて価格帯が下に位置するOLAYは、ターゲットとする年齢層も比較的低いため、とくにオンラインでのコミュニケーションを重視してきた。ポップアップイベントに対するユーザーの反応も、Weiboよりも、18〜35歳が全体の約7割を占めるSNS型ECアプリ「RED(小紅書)」のほうが盛り上がっている。

しかし、それゆえに価格帯が上がると受け入れられにくくなる傾向もある。OLAY LABSやOLAY PURESETが打ち出したオーダーメイドのスキンケアは野心的な試みだが、OLAYのブランドポジションからすればやや高額であり、ユーザーのなかには、商品の説明書がないなどさまざまな不満の声もあった。OLAYブランドよりむしろSK-Ⅱのユーザー層の方が受け入れやすかったのではないかという見方もある。

中国ではいま、Consumer to Manufacturerを意味する「C2M」というビジネスモデルが、自動車、家具、アパレル、眼鏡、家電などの製造業全般で流行し始めている。メーカーが在庫を抱えず、ECを通じて顧客から直接注文を受けてから商品を製造することで、在庫負担をなくし、オーダーメイドの商品を低価格で提供するモデルである。

OLAYの試みはまさにC2Mであり、中国でも美容分野では先駆けのひとつだ。ラインナップを減らすなどして価格を抑制するか、展開するブランドを変更して高価格帯のターゲット層を狙うなどすれば、ユーザーの囲い込みは十分に可能だろう。限定販売での手応えをもとに、パーソナライズ化粧品がどこまで普及するか、この新しい試みの今後に注目が集まる。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Galina N via Unsplash

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