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クッキーレス時代の顧客行動は購買データ前後の "Search"と"Share" 分析を重視

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クッキーレス時代は、化粧品マーケティングにおいて自社のファーストパーティデータだけでなくSaaSを使いこなして、購買前のSearch(検索行動)、購買後のShare(クチコミ)における顧客動向を探り、仮説をたてていく必要がある。それに適した美容・化粧品に関する検索データ分析が可能なヤフー株式会社の「DS.INSIGHT」、ユーザーのクチコミデータを可視化できる株式会社アイスタイルの「ブランドオフィシャル」の2つを取り上げ、これからの化粧品マーケティングにおけるデータ分析について考える。

DS.INSIGHTとブランドオフィシャルで購買前後の顧客の動きを探る

Yahoo! JAPANのビッグデータをWebブラウザ上で調査・分析できる「DS.INSIGHT」は、検索ワードや位置情報など行動履歴をもとに、消費者の興味・関心を可視化できるツールだ。また、「ブランドオフィシャル」では@cosme内のユーザーの動きを可視化し、クチコミやページ閲覧、購入といった、ブランドに対するユーザーのエンゲージメント度合いからさまざまな分析が可能になる。

これらの具体的な使い方について、化粧品メーカーのマーティングコンサルティングや新規事業プロデュースなどを手がけるアイスタイルグループの株式会社Dot & Space 代表取締役 野田昌嗣氏に話を聞いた。

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株式会社Dot & Space
代表取締役 野田昌嗣氏

検索データから見えてくる購買前の顧客の"Search" 行動

「DS.INSIGHT」の詳細に入る前に「検索データの意味するところを改めて考えておくべきだ」と野田氏はいう。検索データとは、下記のAISASモデルにおける“Search”の実データだ。自社サイトに流入後から“Action”に至るまでの行動はアクセス解析によって明らかにできるが、「自社サイトに流入しなかった人たちが何に興味・関心を持っているのか」を知るには、検索データが有効だ。

後述するが、最後の"Share"は、クチコミやSNSデータにあらわれるユーザー行動だ。

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検索データに関しては、無料で利用可能な「Googleトレンド」があるが、こちらは最も検索数が多いときを100として算出された相対的なスコアである一方、「DS.INSIGHT」で見られるのは実数だ。Yahoo! JAPAN IDでログインした人が検索した数をもとにインターネットユーザー全体に拡大推計しているため、データの信憑性は十分担保されているという。

たとえば「DS.INSIGHT」で「エイジングケア」「エイジングケア化粧品」「アンチエイジング」というワードを比較してみると、次のようなデータとなる。

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検索ボリュームを見ると「アンチエイジング」の検索数が多いということがわかるが、次に検索推移を見てみると、意外な事実も見えてくる。

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「エイジングケア」の検索数が2021年1月から急激に伸びているのだ。さらに、年代別で比較してみると、また別の角度から面白い事象がうかびあがる。

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「エイジングケア化粧品」では40代・50代の検索が約半数を占める一方、「エイジングケア」は20代以降50代まで、ほぼ満遍なく検索されていることがわかる。

では、「エイジング」ではどうか。野田氏によれば「『エイジング』というワードはプラモデル技術や熟成肉などの文脈でも使われるため、検索数の中には美容とは直接関係のないデータも含まれてしまう」という。同様に、ブランド名で検索しても自社製品が上位に表示されないケースや、ブランド名がカタカナと英語などで表記ゆれが起きやすいケースでは、検索データをそのまま活用できない可能性が高いため、注意が必要だ。

マーケターとしては「アンチエイジング」のような古くから使われている検索ボリュームの大きいビッグワードを狙うのか、検索ボリュームはさほど大きくないが、これから来そうな「エイジングケア」を狙うのか。製品の特性やターゲットユーザーを考え合わせ、センスが問われるところといえるだろう。

野田氏は「ビッグワードを狙うなら、アフィリエイト対策も欠かせない視点だろう」と説明する。たとえば「エイジングケア化粧品」を実際に検索してみると、リスティング広告の下に出てくるのは「エイジングケア化粧品オススメ◯選!」「エイジングケア化粧品 人気ランキング」のようなアフィリエイトサイトだ。

「アフィリエイトサイトの内容については評価が分かれるかもしれないが、そのラインナップに自社ブランドが入っていなければ、消費者の “知りたい“というマインドから勝手に切り離されてしまう可能性は大きい。マーケティング手段のひとつとして、そのキーワードを本気で狙いにいくなら、ランキングに掲載される方法を探るという手もあるだろう」(野田氏)

検索データから浮かび上がるさまざまな仮説、「ハリ」や「透明感」は想起されにくい

「『DS.INSIGHT』では大きく2つの分析をまずはしてみるとよいだろう」と野田氏は話す。1つめは、自社ブランド名と競合ブランド名で検索ボリュームを比較することだ。ブランド名という固有名詞で検索しているということは、ブランドの潜在的な顧客であるといえる。どのブランドでも競合として他ブランドを設定しているはずだが、実際にどれだけの人が競合ブランドに興味・関心を持っているかという潜在顧客数は、検索データからでしか知ることはできない。

「DS.INSIGHT」で検索ボリュームを比較してみると、「競合だと思っていたが、意外に自社の検索ボリュームのほうが圧倒的に多い」ということがみえてくる場合もあるだろう。しかし、仮に、検索ボリューム(潜在顧客)において圧勝しているにもかかわらず、売上でさほど差が開いていないケースにおいては、ユーザーが購買に至るまでの間にやるべきことがまだまだ残されているといえる。

「DS.INSIGHT」の2つめの分析としては、先ほど紹介した「エイジングケア」のようなビッグワードのキーワード比較をしてみることである。試しに「エイジングケア」「ハリ」「透明感」「乾燥」「毛穴」の5つのキーワードの検索ボリュームを比較したのが以下のグラフだ。

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こうしてみると、圧倒的に「毛穴」の検索が多いことがわかる。「乾燥」については、気候に関する検索も多く含まれる可能性が高いため、一概に美容に対する興味・関心の表れであるとは言いきれない。また、美容関係の広告表現でよく使われる「ハリ」や「透明感」といったキーワードは検索ボリュームが少ないことから、検索キーワードとしては想起しにくい消費者心理がうかがえる。

「化粧品ブランドの社内では『ハリ』や『透明感』といったひとつの単語でも通じるが、一般の消費者は『透明感のある肌』のような複合語で検索していることからも、顧客に伝わるキーワードで発信していくことが重要だ」(野田氏)

次に、この結果を年代別の割合で見てみると、「毛穴」は30代以下だけで64%を占めることから、ほかのキーワードに比べて若年層の関心が高いことがわかる。

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ここからさらに掘り下げて、「毛穴ケア」を含む検索キーワードの年代別の特徴度について、20代と30代で比較してみると以下のようになる。上が20代、30代の結果だ。

毛穴20代

毛穴30代

この結果からは「20代のほうが『毛穴ケア』に対する男性の意識が高い」「20代は『毛穴ケア』のできる『化粧水』に興味があるが、30代は『クレンジング』で対処しようと考えている」といったことがみてとれる。

また「20代は『ブランド名+毛穴ケア』といったブランド指名の直球で検索する人が多い一方、30代になると『アットコスメ+毛穴ケア』『人名+毛穴ケア』のような、自分がどうしたいというよりも、サイトの情報や人に頼りたいという受け身の検索が目立つようになる」など、検索データならではの興味深い結果がいくつも出てくると野田氏は語る。

これらの結果はリスティング広告などにおけるキーワード開発に役立てられるほか、広告クリエイティブにいかしていくこともできる。加えて、美容に関する悩みを自分ごと化しにくい男性マーケターが女性消費者の思考を理解するのにも役立つだろう。

時系列データからみえる自社ブランドと競合のポジショニング

ここまでは、主にキーワードとブランドの関係性を探る分析についてだが、もうひとつ「DS.INSIGHT」で見られるユニークなデータとして「時系列データ」がある。たとえば「エイジングケア化粧品」の検索を0日(起点)として見てみると、下記の結果になる。

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これはつまり、「エイジングケア化粧品」を検索した人が、その前後で他のどんなキーワードを検索しているかを表したものだ。X軸の真ん中にある「0日」を起点に、それより左が「エイジングケア化粧品」を検索する“前”の検索、右が「エイジングケア化粧品」を検索した“後”の検索となっている。

Y軸は重複ボリュームを示しているため、上に行けば行くほど、「エイジングケア化粧品」との重複検索が多いことを意味する。たとえば、約5日前に「シミ 消す」と検索した人のうち約1,300人が5日後に「エイジングケア化粧品」を検索していることになる。

ここで注意したいのが、狙ったキーワード(上の図では「エイジングケア化粧品」)を検索起点として調査したときの自社ブランドと競合ブランドの関係である。もし、自社ブランドがキーワード検索起点日以後、つまり右側にある場合は要注意だ。

「狙ったキーワードの検索起点日より後(X軸で右)で、自社ブランドとその起点日の間に入っている他社ブランドがあれば、それは競合であり、純粋想起という意味で、その他社ブランドのほうが先に検索されていることになる。さらにそのブランドの重複ボリューム(Y軸)が『自社ブランドより位置が上』、つまりキーワードとの重複検索量が多い場合は、自社ブランドよりも、そのキーワードにおいては強い競合という見方ができる」(野田氏)

とはいえ、検索0日の重複ボリュームを増やすことがベストとは言いきれない部分も残る。キーワードでの検索結果に消費者が満足し、そこから自社ブランドを検索することなく、アフィリエイトサイトやECサイトを経て購入するようなケースだと、もう一度自社ブランド名で検索させるような施策はカスタマージャーニーを遠回りさせていることになるからだ。

マーケティングにおいては、購入までのカスタマージャーニーは短いほうがよいというのが定説である。アフィリエイトサイトや他メディアの情報を見た消費者が自社ブランドに興味を持ち、改めてブランド名を検索してオフィシャルな情報を見に来ているのなら、さほど問題はないだろう。

しかし、そこまでさせずとも、仮にリスティング広告で引きがあるコピーとともに自社ブランドを上位表示することができていたら、そのままダイレクトに自社のLPへ誘導できていた可能性もあるのではないか。あるいはアフィリエイトの報酬を競合よりも魅力あるものにすることで、検索結果で上位表示されているアフィリエイトサイトからダイレクトに購入してもらうルートを増やす検討をすることのほうが購入への近道になる可能性もある。

いずれにせよこういった仮説がたてやすくなるのが、データ分析の面白さでもある。その仮説をもってPDCAを回し、結果のデータからさらに改善を加えるというループが回しやすくなるだろう。

新たな訴求ポイントの発見は"Share" のデータを分析する

「ブランド担当者としては『新たな訴求ポイントをみつけるために、“自社ブランドのどこが評価されているのか”を検索データから知りたい』というニーズもあると思うが、それは検索データそのものでは難しいと考えたほうがよい」と野田氏は指摘する。ブランド側から消費者に伝えていないメッセージは、検索されようがないからだ。

たとえば商品に対して強い不満を持った購入者が、同じような評価をしている人を探すために、何かしらのキーワードとともに自社ブランドを検索することはあるかもしれないが、そこにその担当者が求める答えはないだろう。

「ブランド側から伝えられていない内容でも、本当に消費者から評価されているポイントは、検索データではなく消費者のクチコミデータにあらわれる。AISASの最後のSである“シェア(クチコミ)”をしっかり分析するとそのポイントがわかってくる」(野田氏)

株式会社アイスタイルが運営する@cosmeは、掲載されているブランドの商品であればすべてのクチコミを閲覧することができる。ただし、そこにある膨大な量のクチコミは玉石混交だ。アイスタイルが提供するSaaSサービスの「ブランドオフィシャル」では、@cosmeでの閲覧や投稿、@cosme SHOPPINGや@cosme STOREでの購入といった行動が把握できる。その行動内容によってユーザーの状態をランク分けし、どの層がどんなクチコミやコンテンツで態度変容したかがわかるようになっている。

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たとえば @cosmeで「リピート購入、複数商品購入、購入品クチコミ」をしたSランクのユーザーがよく閲覧しているクチコミ、といったことなどがわかる。こうした情報をもとに、消費者がどんなコンテンツを求めているのかを読み解くことで、@cosme内(ブランドオフィシャルではデータ分析のほか@cosme内のブランドトップページや商品ページのカスタマイズが可能)、自社サイトやSNSで発信するコンテンツづくりに役立てることができるわけだ。

「ブランドが考えてもみなかった評価のポイントを、実際に使ったユーザーが発見してクチコミ投稿しているケースだけでなく、一見ネガティブ、あるいは厳しいクチコミが意外に他ユーザーの購入に役立っているということもある。『自分にはこういう理由で合わなかった』といった情報を参考に『私ならそのポイントは気にならない』『それなら私には合うかもしれない』と判断することもあるからだ。また、そういったネガティブコメントが存在すること自体が、ユーザーからすれば信頼性となる面もある」(野田氏)

野田氏によれば”Search”での消費者行動がわかる「DS.INSIGHT」と”Share”における行動がわかる「ブランドオフィシャル」を組み合わせて活用することで、自社サイトに入る前後の消費者行動を推測できるようになるという。自社サイトのアクセス解析をするだけよりもはるかに、顧客の態度変容の過程が追えて、仮説がたてやすくなるからだ。

「自社の顧客分析は、自社ECなどのいわゆるファーストパーティデータで可能だが、潜在顧客のデータ分析はDS.insightやブランドオフィシャルといったSaaS、つまり外部データ分析ツールでなければ難しい。そのなかでも、購入前の行動分析に適しているのがDS.insight、購入後のクチコミの分析や、ユーザーのブランドに対するエンゲージメントランクを見たりできるのが、ブランドオフィシャルの利点といえる」(野田氏)

AISASの2つのSを可視化することで、前述のようにさまざまな仮説を組み立てることができる。そこから具体的な施策に落とし込み、その結果を再びデータで検証することが化粧品のデジタルマーケティングのみならず、これからのマーケティング全体の戦略づくりの基本となるだろう。

Text: 野本纏花(Madoka Nomoto)
Top image: tadamichi via shutterstock
画像提供: ヤフー株式会社・株式会社Dot&Space・株式会社アイスタイル

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