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ロードショップで成長した韓国ブランドが店舗大量閉鎖、次の戦略への打ち手とは
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ロードショップで成長した韓国ブランドが店舗大量閉鎖、次の戦略への打ち手とは

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国内における主要な販売チャネルとして韓国化粧品業界を支えてきたロードショップ(単独ブランドの旗艦店・路面店)が、パンデミックや市場の変化を経て、その量・内容ともに大きく変貌を遂げている。危機に直面したブランド各社は、化粧品販売以外の活路や、大手小売店やECに販路を分散・拡大するなどの対応で、次の手を打ち展開を始めている。

パンデミックで急激に減ったロードショップの店舗数

ロードショップとは一般的に、主に観光地や繁華街の路面に位置した中小規模の単独ブランドの小売店舗を指す。2000年以降、韓国では明洞や江南などソウル市内の主要な観光スポットに著名ブランドのロードショップが立ち並び、地元消費者や観光客にコスメを販売・発信する主要拠点として一世を風靡した。韓国ではこのロードショップを中心に顧客層を拡大・成長してきたブランドを「ロードショップブランド」というカテゴリーで呼ぶこともある。通常、各ブランドのロードショップには直営とフランチャイズ契約があり、急拡大できた理由のひとつがフランチャイズ展開にあるといってもいいだろう。

ソウル・明洞に点在するロードショップ(著者撮影)

パンデミック以前にもこのロードショップの危機はあった。2007年に中国との間に「THAAD問題」が勃発し、中国人観光客が激減したことをきっかけにその勢いに陰りがみえ始める。また、韓国のロードショップでは特定ブランドの一部ラインのみを販売するケースがほとんどの一方で、オリーブヤング(Olive Young)など、数多くのブランドの製品を取り揃えたH&Bストアやマルチブランドショップが台頭してきたのに加えて、ECの普及が進むことで、ビジネスモデルそのものの衰退が当時から加速したという背景もある。

そこに、コロナ禍の影響が決定打となった。化粧品に実際に触れることができる貴重なタッチポイントであり、ダイレクトなコミュニケーション手段になるという残された価値も一気に毀損し、その店舗数は急激に減少した。

その勢いはすさまじく、ロードショップブランドとして有名なミシャ(MISSHA)は2020年に164店舗を閉店。2010年に約800カ所あった店舗は、2022年6月7日時点では、244店舗となった

ほかにも、トニーモリー(TONYMOLY、2015年675店舗から2020年452店舗)や、アモーレパシフィックのイニスフリー(innisfree、2015年978店舗から2020年656店舗)、エチュード(ETUDE、2018年393店舗から2022年6月時点88店舗)、LG生活健康のブランドTHE FACE SHOP(2015年1204店舗から2020年463店舗)など、名だたるロードショップブランドの店舗数が一斉に激減している。

韓国ではコスメの配送時間の短縮を競うクイックコマースが過熱しているが、これもロードショップ離れと反比例して起きている現象のひとつと考えられている。

単一ブランドから、自社あるいは他社ブランドも扱う店への転換

このような危機的状況を前に、ロードショップの質やコンセプトを変化させることで、存続や新たな成長機会を狙う動きが活発化してきた。代表的な戦略変更の事例としては取り扱うブランドおよび商品の多角化があげられる。

ミシャを運営するAble C&Cは、ここ数年でミシャのロードショップと売り場をあわせて100店舗以上を「MISSHA+PLUS」として再整備。MISSHA+PLUSは、既存の商品に加えて子会社および他社ブランド製品も扱う運営形態で、入店したブランドの半数以上が他社ブランドとなっている。

Able C&Cは2020年6月頃から、MISSHA+PLUSとは別に「nunc」というショップの展開にものりだしている。同店は韓国国内・海外の150ブランド、約3,000商品を扱うマルチブランドショップで、当初は200店舗まで拡大する目標が公表された。

Able C&Cのマルチブランドショップ「nunc」
出典:nunc公式サイト

取り扱いブランドの多角化、もしくはマルチブランドショップ路線に切り替える業界大手企業はほかにもある。自然派コスメブランドとして2003年に誕生したTHE FACE SHOPを運営するLG生活健康は、同ブランドを単一で扱うロードショップを大幅に閉店するかたわら、THE FACE SHOPに加えて、他の自社ブランドを集めて販売する「ショップ・ネイチャーコレクション」の店舗数を増やしている。2016年時点で68店舗だったネイチャーコレクションは、2022年6月時点で428店舗まで増えていることが確認されている。

だが、この取り扱いブランドを多角化する戦略には、前述のとおりオリーブヤングをはじめとするH&Bストアの存在が大きな壁ともなっている。

ソウル・明洞にあるオリーブヤングの店舗(著者撮影)

いわゆるドラッグストアにあたるH&Bストアの店舗数は、ここ数年で大きく増加している。オリーブヤングだけでも韓国国内に1,200店舗以上あり、今や若年層のみならず、全世代から認知される小売形態として確固とした地位を築いている。美容だけでなく、日用品などをおく日本のドラッグストア的な店として親しまれ、その商品の豊富さや価格などにおいて顧客満足度が高く、ロードショップがブランド多角化戦略を採用したとしても簡単にこのシェアを奪える状況にはない。この領域においては前述したnuncも苦戦を強いられており、2021年末頃から早くも業績不振が表面化。閉店する店舗が続出し、早々にオンラインモールを中心に事業を拡大していく方針に転換することを余儀なくされている。

トニーモリーはペットフードなど化粧品以外のアイテムを取り扱いへ

こういった状況をうけて「ブランド多角化」戦略ではなく、化粧品以外のジャンルに進出し成長機会を模索するロードショップブランドもある。たとえば、トニーモリーは「脱化粧品」を推進し、事業の裾野を拡大。2021年3月末には韓国最大の原料・飼料メーカーであるオーシャンを買収することを発表した。

オーシャンは、飼料、おやつ、プレミアムペットフードなどを製造する異業種企業だが、トニーモリーは化粧品とペットフードの主な購入者層が20~40代の女性であるという共通点に着目。築き上げてきたブランドイメージと知名度を利用しシナジー効果を狙っていく考えだ。なおロードショップの縮小で失った流通網に関しては、テレビショッピング、H&Bストア、大手ECなど新たなチャネルを開拓することで補完していく計画だという。

他方、Able C&Cは、MISSHA+PLUS、nuncなどマルチブランドショップ化を進めると同時に、閉店したロードショップを「熊女の神殿」という洞窟スタイルのカフェに改造し、ヨモギ原料の飲料を販売している。これはヨモギ入りの自社ブランド商品を広報する目的も兼ねており、ロードショップを「飲食+広告媒体」として活用したケースだ。

オフライン依存度を下げ、ECと海外展開で成長を維持したアモーレパシフィック

韓国化粧品業界内では、ロードショップから外部ECやH&Bストアに主要販売チャネルをのりかえる大手企業の動きも鮮明になってきた。業界最大手アモーレパシフィックは、2020年にNAVER、11番街、クーパン、カカオなど主要ECとの協業を次々に発表。LG生活健康もNAVER系列のEC上で販売を開始している。

アモーレパシフィックはロードショップとは別に、パンデミック以前から自社および他社のブランドを扱うマルチブランドショップ アリタウム(Aritaum)を運営していたが、こちらもコロナ禍のなかで店舗が減少傾向にある。約1年前からは、エチュードやイニスフリーのロードショップ同様に、フランチャイズ契約による新規加盟出店の受付を停止。現在も状況は変わっていない。同期間、対面販売を支えていた訪問販売事業者「アモーレカウンセラー」も10%ほど縮小されている。

韓国ではコロナ禍収束の兆しがみえてきてはいるものの、ふたたびロードショップなどオフライン流通網を強化するという方針は、アモーレパシフィックからは発表されていない。むしろ、昨年に「デジタル大転換」という目標を全社的な戦略として設定し、コロナ禍をきっかけにオンラインの強化を進めつつ、非効率的なオフラインチャネルの整理をして、全体的な経営体質の改善を図っていく方針だ。アモーレパシフィック傘下ブランド、ラネージュ(Laneige)では海外販売チャネルの開拓に舵を切り成長を維持した。その結果、アモーレパシフィックでは2021年に前年比2倍の営業利益を確保。今後もデジタルチャネルの開拓を一気に推進するものとみられている。

しかし、ロードショップに依存していた多くの中小メーカーやブランドにとって、アモーレパシフィックのような大手のように、オンライン戦略やH&Bストアなど販売チャネルの多様化にスムーズに移行していくことは容易ではない。

ロードショップには前述したように、ブランドが直接運営する直営店とフランチャイズ展開されている契約店があるが、ブランド側がECなど他チャネルを開拓すると契約店の売上を奪うことになりかねず、積極的に動きにくい状況にある。直営店の場合でも、不動産の賃貸契約期間の問題や、撤退で生じるブランド認知低下を防ぐ代案をどう用意するかという課題がある。

外部のH&BストアやECに販売チャネルを移す場合は、新たなブランドの立ち上げも必要になる。ロードショップのターゲット消費者と、H&BストアやECに慣れ親しんだ消費者層は、まったく異なる消費傾向や好みを持つからだ。加えて、立場の強い小売店側がブランドイメージや価格の主導権を握ることにもつながり、ブランド側にとっては新たなマーケティング戦略への対応が求められる。「ロードショップ展開の限界がみえているものの、急には依存度を下げられない」という構造的な事情が多くのブランドに共通した悩みの種になっている。

2022年6月時点で、オフラインチャネルの正常化が目前に迫るなか、韓国の各ブランドはロードショップをどのように活用していくのか。韓国の業界メディアからは、人件費を抑えるために無人化したショップを増やすべきとの指摘もある。今後、業界横断事例や、オフラインとクロスさせた仕掛けづくりなどの成功事例が待たれる。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Chokchai Suksatavonraphan via Shutterstock

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