豊富な品揃えと顧客の自由度。三越伊勢丹 meecoと@cosme shopping の挑戦

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 — Part 2: meeco and @cosme shopping

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前回の記事では、阪急阪神百貨店グループが運営する化粧品ECサイト「HANKYU BEAUTY ONLINE」と、データと人の力、またコンテンツ力できめ細かい購買体験を実現する「ストライプデパートメント」を紹介した。今回は2019年2月にオープンしたばかりの三越伊勢丹グループの化粧品オンラインストア「meeco」と、2002年にスタートした「@cosme shopping」が考える「品揃えの豊かさ」「顧客の自由な買い方」にフォーカスした取り組みを紹介したい。

百貨店最大手が仕掛ける化粧品オンラインストア「meeco」

株式会社三越伊勢丹では、2019年2月に化粧品オンラインストア「meeco」をオープンした。日本でトップの売上高を誇る大手百貨店が新たな動きを見せただけに、多くのメディアが注目。なかには、「meecoは化粧品のZOZOを目指す」という趣旨の見出しをつけた記事も登場したが、実際のところはニュアンスが少々異なる感がする。自由な買い方ができ、かつ洗練されたECサイトが三越伊勢丹の狙いなのだ。

同社執行役員MD統括部化粧品MD統括部長 小宮仁奈子氏は、「化粧品の売上は三越伊勢丹グループ全体の約1割を占めており、コスメ専門ECサイトのオープンは事業強化を目的としたもの」と説明する。また「全社的な取り組みであり、会社側の化粧品EC事業に対する期待が非常に高い」と状況を明かす。

出典: meeco 公式サイト

「これまでにも『MIオンラインストア』『イセタンミラー』などいくつかのECサイトや化粧品関連のサイトがあり、一部の化粧品を購入することができた。ただ大きな課題が物流にあり、店頭在庫をピックアップして届けていたことから、以前のオンライン購入では顧客の手元に届くまで4~5日、日付指定の場合は10日ほどかかっていた。そこでmeecoのリリースに先立ち、専用の倉庫を設けるところから始め、現在では、10時59分までの注文なら当日発送し、近隣であれば早くて翌日に届けられるようになり、すぐに手もとに欲しいという顧客ニーズをかなえたかたちだ」(小宮氏)

ECサイトを利用する顧客にとって、「迅速な配送」は大きな価値のひとつだ。アマゾンなど大手ECサイトが高い競争力を誇る一因に、その物流力があるが、meecoも物流体制の整備をまず固めたという。また、物流の一本化だけでなく、利便性やブランド、SEO対策などさまざまな理由から、サイト自体も一本化した。現時点で、三越伊勢丹グループにおける化粧品が買えるECサイトはmeecoのみとなっている。

「化粧品オンラインストアを強化することで、顧客や店舗にもさまざまなメリットが生まれると思っている。たとえば、カレンダー機能などを取り入れ、新発売の商品を予約購入できるようにしていく。新商品の発売時にはいつも店頭に行列ができるが、ECサイトとの連動があれば、お客様にそうした負担をかけず、店舗が割くリソースもその分少なくなり、こうした課題が解消できる。また、今までのECサイトの課題を整理して、店頭在庫のピックアップ業務がなくなったことで、現場の美容部員やスタッフが接客に集中できるようになった点も非常に大きい」(小宮氏)

バラエティコスメも含め幅広く扱う方針

meecoが目指すのは、「買い方の自由度や豊かさ」をさらに拡充していくことだ。店頭とECサイトのどちらでも、三越伊勢丹で扱っているアイテムはシームレスに買えるようにするのが大きな目標だと小宮氏は話す。

「昨今では百貨店で売られている商品だけでなく、バラエティコスメを並行して使用する顧客が増えている。meecoでは、今後半年以内には、カウンターで扱っている高級ブランドやビューティアポセカリーなどで販売している商品以外の、バラエティコスメも幅広く取り扱い、一緒に買える化粧品オンラインストアをつくっていく。値崩れしないものが中心になるなどの条件はあるが、いずれにせよ、店頭と化粧品オンラインストアを連動させることで、顧客の多様化し続ける買い方に対応していきたい」

meecoの販売戦略を担当する株式会社三越伊勢丹デジタル事業部コスメ事業推進部 小菅美由紀氏も、「買い方の多様化」に対応するためのさまざまな施策を用意していると付け加える。小菅氏は、セールスマネージャー出身で販売現場や顧客行動を熟知しているだけに、化粧品オンラインストアを拡充することで、顧客ニーズへの即応も販売体制の効率化も解決していけるというビジョンをもっている。

右・株式会社三越伊勢丹
執行役員MD統括部化粧品MD統括部長
小宮 仁奈子氏
左・株式会社三越伊勢丹
デジタル事業部コスメ事業推進部
小菅 美由紀氏
(撮影:編集部)

「お客様の買い方は一人ひとり異なると言ってもよいほど。meecoでは、それぞれに合わせた商品選びの選択肢を提供していきたい。たとえば、最近ではインスタグラムなどでお気に入りの発信者を見つけて、その人が着用しているファッションアイテムや使っているコスメを購入するという商品の選び方がある。実際、世の中には美容情報が溢れ、良い商品もたくさんあるが、ネットで『見たものをそのまま買える』という、情報と購買が繋がっているECサイトがない。meecoでは、そうした買い方ができるよう、小学館とタイアップしてmeecoの世界観、ビジュアルを作り込み、そのルックから買えるような仕組みも整えた」

前回紹介したストライプデパートメントのように、コンテンツ力を強化する動きとも解釈できるが、三越伊勢丹はすでに、カタログなど紙媒体において充実したコンテンツを保有している。それらをデジタル上にシフトすることも想定しており、今後、meecoがビューティー系メディアとして注目されていくシナリオも充分に考えている。

また、YouCamのARバーチャルメイク機能などもすでに取り入れており、今後は本格的な肌チェックをオンラインで受けられるようにするなど、テクノロジーの活用にも積極的だ。2019年5月16日には、NTTドコモがスマホによる肌診断機能「FACE LOG」を発表したが、第一弾としてmeecoとの連携を秋に開始するという報道もあった。

また、店頭とECサイトの購入履歴、ポイント、カルテなどを統合していくことで、顧客にさらに豊かな購買体験を提供していきたいという。こうした統合により得られるデータは、三越伊勢丹グループと取引のあるメーカーやブランドにとっても有用な財産となるに違いない。

@cosme shoppingはブラントとの連携強化で売り上げ拡大

顧客にとってECの一番の価値は、バラエティに富んだ様々な商品が一度に買えること――。そのような考えから、化粧品メーカーやブランドとの関係構築を戦略の柱のひとつとしてきたコスメ専門ECが@cosme shoppingだ。同ECを運営する株式会社コスメ・コム 代表取締役社長 本橋未来氏はいう。

「@cosme shoppingは、現時点で約1,900ブランド3万7,000 SKUの商品を取り扱っている。ECにあまり出品していない高級ブランドや百貨店ブランドが買えるというのは強みのひとつだ。それが実現できたのは、@cosme shoppingが単純な購買プラットフォームではなく、@cosmeという生活者とブランドを持続的につなぐマーケティングプラットフォームに内包される場であること、そして、時間をかけて、その思想をブランドに理解されるよう努めてきたことが大きい。そういった強い関係性を築いているからこそ、各ブランドと企画した限定商品などの人気も高い。その結果がリピート率などに現れている。今後も、ブランドとの協力関係を深め、オリジナルな企画を増やしていきたい」

出典: @cosme shopping 公式サイト

ここ数年、価格訴求やブランドイメージの棄損などの理由から、とくに百貨店ブランドは大手ECプラットフォームへの出店をためらう傾向があった。こうした時勢から読み解くと、@cosme shoppingが取ってきた、あえて“価格競争はせず、ブランドと生活者をつなぐ”ということにフォーカスした戦略は、ここにきて大きな差別化要因になっているとも分析できる。@cosmeとプラットフォームを活用し、ブランドと並走して、その想いを丁寧にひもとき、顧客にしっかり伝えると、顧客エンゲージメントの向上として現れ、結果的に売り上げにもつながる。

オンライン、オフラインを問わず、小売り業にとっては王道の考え方かもしれないが、実際に実行するとなると、時間や多くのコミュニケーションが必要な難しい戦略である。そこを「それこそが@cosme shoppingの成長に必要なことだ」と言い切って社内を牽引したのが、本橋氏の大きな決断だった。

株式会社コスメ・コム
代表取締役社長 本橋未来氏
(提供:株式会社コスメ・コム)

実際、本橋氏らが徹底してきた「メーカー、ブランドとの関係を深め、より多種類の商品を顧客に提供する」という戦略の成果は、数字にも如実に現れている。@cosme shoppingの売り上げは、ここ5年間で毎年30%の右肩上がりを記録している。また2018年より12月3日を「日本で一番化粧品が売れる日」と位置づけて開催した限定イベント「@cosmeBeauty Day2018」の流通総額は4億円を突破している、成功した理由のひとつには、ブランドと連携したこのイベントのみの限定商品、限定復刻や提携商品があったと本橋氏は振り返る。

2018年12月3日の「化粧品の日」で
販売されたランコムの限定商品
(提供:株式会社コスメ・コム)

「我々は特化型ECであるため、化粧品が大好きな顧客が多い。ある商品の販売が同時にスタートしても、他のECではなく、わざわざ@cosme shoppingで買い物をしてくれる顧客もいる。その期待に応えるために、商品情報の充実性は他を圧倒するものにしていきたい。また、新しい商品との出会いというのも顧客にとっては大きな価値。店頭では接客という形で実現できるが、我々はメディアとしての@cosmeとの連動を強化したり、チャットやレコメンドなどテクノロジーを使った選択肢を検討しつつ、ECでも出会いを実現できるよう画策している」

一方で、グループ企業内には@cosme storeというオフライン店舗もあるが、それぞれの顧客に、もう一方のサービスがまだまだ認知されていないのが課題ともいう。人々の購買行動にオフラインとオンラインの垣根がなくなる流れのなかで、コスメ特化型ECとして高い認知度を誇ってきた@cosme shoppingが考えていくべき新たなテーマだ。

前回、そして今回とこれまで見てきた4つのECサイトは、いずれも、「安く早く」というECの従来の価値観とはまったく別のベクトルで考えている。「いかに豊かな購買体験を提供するか」「いかにさまざまな買い方に対応するか」を追求しているのだ。ブランドやメーカーのブランディングを守り「出品したくなるECサイト」を目指しているのも共通点だ。

オンライン肌診断やチャット、ARなど、テクノロジーを積極的に取り入れ、「オンラインでもオフラインでもシームレスに体験ができ、商品を買える」化粧品特化型、セレクトショップ型のECサイトが果たす役割はますます大きくなりそうだ。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
Top image: Africa Studio via shutterstock


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