見出し画像

英米メンズコスメは市場回復へ、サステナブルやクリーン処方で注目の11ブランド

◆ New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

世界的なパンデミックの影響を受け2020年は落ち込んだグローバルメンズケア市場だが、ワクチン接種が進む英国や米国では、回復への期待が膨らみ始めた。シェービング、スキンケア、メイクアップの3つの分野で、注目の欧米メンズケアブランドの動向を紹介する。

回復が予測される2021グローバルメンズケア市場

世界的なパンデミックはビューティ業界のメンズケア分野にも大きなダメージを与えた。当初は2.7%の伸びが見込まれていた2020年のグローバルメンズケア市場規模は、売上総額497億ドル(約5兆4,000億円)で前年比3.3%減となった。内訳ではシェービングが2.1%減の140億ドル(約1兆5,300億円)、フレグランスが8.8%減の151億ドル(約1兆6,500億円)、トイレタリーが0.3%微増の205億ドル(約2兆2,400億円)だった。(ユーロモニターインターナショナル調べ)

これはロックダウンや外出制限に伴い、ひげを剃る頻度や香水を身につける機会が減ったのに加え、父の日や誕生日などの男性向けギフト需要が落ち込んだことにもよるものだ。また調査会社のミンテルによれば、2020年のCovid-19のアウトブレイク中、デオドランド/制汗剤を使用する回数が減ったとする人は28%で、Z世代に限れば45%、ミレニアル世代でも40%にのぼる

とはいえ昨今では米国や英国をはじめ、ワクチン接種が進んでいる国や地域も増えてきたため「最悪の時期は過ぎた」との観測が広がっている。店舗や会食、イベントが再開されれば、身だしなみを整える必要性も増す。ユーロモニターインターナショナルは、2021年のグローバルメンズケア市場は4.8%増にまでリカバーするとの予測をしている。活況が期待されるメンズケアにおいて、消費者が求めるものやブランドからの提案など2021年のトレンドを探る。

環境配慮という新価値を付加するシェービングブランド

欧米ではここ数年、ひげがあるほうがファッショナブルだとする流行があり、より多くの男性がひげを生やしはじめたため、相対的なひげ剃りの回数や面積が減った結果、カミソリなどのシェービング関連商品の売上はCovid-19以前から微減傾向だった。そんななかで起きたパンデミックにより、ブランドは顧客へのアプローチの方法を考え直すことを迫られた。

具体的には、サステナブルに配慮する企業姿勢を示すことで消費者の共感を得る方向へ舵をとるブランドが増えてきている。2020年3月にはWWFが自然環境の破壊と感染症流行には関連があるとするレポートを出しており、自粛生活中に改めて心身の健康の大切さを認識し、暮らしの大元につながる環境保全問題に目を向けた消費者が少なくないとみられるためだ。

◼ King of Shaves
シェービング分野で英国でのシェア第3位の「King of Shaves」は、国産ブランドの信頼性とともに、エココンシャスな姿勢を打ち出す「join the REFILLution 」キャンペーンを2020年冬に展開。繰り返し使用可能なアルミニウム製ボトルとリフィルパウチを「Sensitive Shave Gel」と「Advanced Shaving Oil」に採用した。これにより1回限りのボトルに比べ、プラスチックの使用量を72〜85%削減できるとしている。

◼ ジレット
P&G傘下であり業界最大手の「ジレット」もサステナビリティにフォーカスし、主力のカミソリ製品のパッケージをプラスチックからリサイクル可能な紙箱に変更した。同ブランドが事前に英国で行ったサーベイで、約7割の消費者がよりサステナブルな包装の商品を選んで買いたいと回答したことがその背景にある。同社では紙箱にすることで、プラスチックの使用量を年間で300トン減らせると見積もっている。

◼ Bulldog Skincare
プラスチックの代わりに竹を採用したホルダー(持ち手)のカミソリが消費者の心をつかみ、人気ブランドになった「Bulldog Skincare」も、さらなるサステナブル商品として、2020年に「Glass Razor」シリーズを投入している。使用済みビール瓶由来のリサイクルガラスを70%配合したガラス製ホルダーが特徴で、再生紙でできたパッケージを含め100%リサイクルが可能とする。

◼ MERKUR
またできるだけゴミを出さない暮らしのあり方を提唱する書籍『ゼロ・ウェイスト・ホーム』でも紹介され、見直されているのが、ドイツの老舗刃物メーカーのゾーリンゲン傘下で120年以上の歴史を持つ「MERKUR(メルクール)」のオールステンレス両刃カミソリだ。金属製で頑丈な昔ながらのカミソリで、丁寧に扱えば長く使い続けられ、処分する際もリサイクルができる。

画像1

出典:DOVO

メンズスキンケアにはクリーン処方のスタートアップが続々参入

2020年のメンズスキンケアカテゴリーは、多くのブランドが事業の引き締めや見直しを図り、新製品の投入を見送ったが、パンデミック後の市場拡大を見据えたD2Cスタートアップが新規参入する傾向は続いている。美容業界では、新興ブランドにおいてはクリーンビューティのコンセプトが大きな潮流だが、メンズスキンケアも例外ではない。

◼ Disco
Disco」は、創業者のベン・スミス(Ben Smith)氏が男性のベーシックなスキンケアのニーズをカバーしつつ、かつクリーンな処方の製品がないことにフラストレーションを感じ、2019年に自ら立ち上げたブランドだ。事前に男性がスキンケアにおいて本当に求めていることは何かを1,000人規模を対象に調査し、得られたインサイトを、クレンジングやモイスチャライザー、フェイシャルマスク、そして、目の周りのクマやシワに対処するアイケアなど、目的別の7製品からなる商品ラインナップに反映させた。エシカルにも重きをおき、ヴィーガン、クリエリティフリー、リサイクル可能なパッケージとしている。

◼ Brickell
アロエやホホバオイル、グリーンティーといったナチュラルでオーガニックな原料に加えて、ヒアルロン酸やビタミンEなどを配合して機能の面でも強化することで、110カ国で販売されグローバルでも認知を拡大しているのが、「Brickell」だ。公式サイトでは8種類のミニサイズ商品がセットになった無料のサンプルキットや、肌の健康度を測る問診クイズも用意されている。

◼ SELF/ish
ハイエンドレンジのスキンケアで“100%クリーン”な処方をうたうのは、「SELF/ish」である。市場に出回るメンズケア製品の多くは、ケミカルを多用し不必要なまでに複雑な処方になっていると感じたことから「男性の皮膚生理学にもとづき、発毛率、発汗量、pHレベルを考慮しつつ、シンプルな処方にこだわった」と、共同創業者のアンドリュー・ノックス(Andrew Knox)氏は話す。クレンザーやスクラブなど7つの製品はいずれも、抗酸化ビタミンや植物性のオイルを配合し、硫酸塩、パラベン、フタル酸エステルは使用しない。また、製品を1点購入するごとに5ドルが、メンズヘルスへの理解を啓発するチャリティ団体Movemberへと寄付される。「わがまま」という意味のブランド名は、肌の手入れをするときには、自分の欲望や思いに忠実になってもいいはずだとの考えから名付けられた。

◼ MadeMan
皮膚トラブルを解決するためさまざまなソリューションを試したが、いずれも5段階以上のステップを踏まなければならず、続けるのが難しいうえに費用もかかったという、創業者ジェレミー・ガードナー(Jeremy Gardner)氏の経験から生まれた「MadeMan」。皮膚科医に1つか2つの製品だけで完結するスキンケアは可能かと尋ねてまわり、2–in-1フェイシャルクレンザー&シェービングジェルと、6-in-1モイスチャライザーの2アイテムを設計。アンチエイジングやブルーライトからの保護など多機能を凝縮して製品化した。原料はオーガニック&ヴィーガンで、コストは1日1ドル、2分のケアで済むというのが訴求ポイントだ。男性の65%が石鹸で顔を洗うだけとの現状をかんがみ、日々のフェイスケアの大切さを喧伝するポッドキャストやインフルエンサーキャンペーンも計画している。

2021年はメンズメイクアップ元年になる予感も

前述したように、男性の肌質やニーズにフォーカスしたスキンケアブランドが数多く誕生して市場が拡大しているなか、次にくるのは男性のためのメイクアップブランドだと考えられる。毎日の肌の手入れが習慣になり、自身の見ためにコンシャスになった男性が、より健康的あるいは精悍にみえる肌トーンや整った印象の眉を求めて、ファンデーションやアイブロウペンシルを購入したり、ニキビや目の下のクマを隠すためにコンシーラーを使うようになることは自然な流れである。

また、メイクアップといえばカラーコスメを連想しがちだが、メイクアップをする男性の多くは、化粧をしていると感じさせないヘルシーで自然な仕上がりを求めているとされる。それならば、女性向けやジェンダーレスのブランドの製品を使えばよく、わざわざ男性用をうたうブランドが必要なのかという議論があるが、答えはイエスだ。なぜなら、男性と女性の肌には一般的にいくつかの違いがあるからだ。

◼ Shakeup Cosmetics
「化粧をすることにジェンダーの違いがあってはならないが、肌質にはジェンダーがある」とするのが、双子の兄弟が創業した「Shakeup Cosmetics」だ。同ブランドでは男性と女性の肌には4つの大きな違いがあると説明する。1つはテストステロン(男性ホルモンの一種)の影響で、男性の皮膚は女性より平均で20〜25%厚い。また、男性の皮膚は皮脂をより多く生成し、オイリーでテカリやすく、ニキビもできやすい。加えて、この余分な皮脂のため、男性の毛穴はしばしば女性より大きい。さらには、日々のひげ剃りによって敏感肌になりやすいという。Shakeup Cosmeticsがラインナップする3つの製品、コンシーラー、BBティントモイスチャライザー、リップジェルは、こうした男性の肌質を考慮した成分が配合されている。同時にライトなテクスチャーの着け心地として、ナチュラルで健やかなルックをつくるとしている。

◼ WAR PAINT.
WAR PAINT.(ウォーペイント)」の創業者ダニー・グレイ(Danny Gray)氏は、ティーンエイジャーの頃、容貌をからかわれるいじめにあって身体醜形障害を発症し苦しんだ経験がある。それを克服できたのはメイクアップのおかげだと振り返り、「この15年、毎日メイクを欠かさない」と明かす。War Paintを立ち上げたのは、同じ悩みを抱える男性の役に立ちたいと考えたからだ。ティントモイスチャライザーから、パウダー、プライマー、メイクアップリムーバー、ブラシやフェイススポンジまで、幅広い製品ラインナップを展開し、英国発の同ブランドは現在、世界77カ国に輸出されている。

グレイ氏はメイクアップをしはじめた頃、女性向けブランドのチュートリアルを参考にしたが、手順の複雑さに驚いたという。「メイクアップアーティストが男性モデルにメイクをする場合など、20分かかることもある。これは多くの男性を尻込みさせる。だが、私の毎日のルーティンは5分間で済む」と話す。このことから、男性のための正しいメイクアップ法をしっかり伝えていく重要性を痛感し、世界初の男性メイクアップに特化したマニュアルブックを刊行した。

スクリーンショット 2021-05-17 12.03.34

出典:WAR PAINT. 米国公式サイト

◼ Stryx
顧客の70%がこれまでメイクアップをしたことがない層で構成されているという「Stryx」は、初心者が始めやすいよう、リバイタルやエッセンシャル、パーフェクトスキンと名付けた目的別のキットを複数用意している。また、容器デザインもコンパクトかつシンプルな、一見して化粧品とはわからないデザインとして、男性ユーザーの心理的なハードルを下げることに配慮する。

同時に、膨大な数のチュートリアルやハウツー動画を作成するのは、化粧品を使うことに慣れている人には当たり前の簡単な手順でも、きちんと説明する必要があるからだ。とくに、肌トーンのちょっとした補正や、ニキビやシミを隠すのは大した手間ではなく、時間もさほどかからないことを伝えるのに焦点をあてている。一方で、消費者からの要望に応えて、化粧落としに効果的なジェルクレンザーを商品ラインナップに追加した。いつもと同じ洗顔をするだけでは、メイクの洗い残しがあるとの声が寄せられたためだという。

創業者兼CEOのデヴィア・カーハン(Davir Kahan)氏は、結婚式の日の朝に大きなニキビを発見して焦ったことからStryxの起業を思いついたという。結婚式に限らず、面接やプレゼンテーション、会議、ピッチミーティング、見栄えを良くしたいと思う機会は日常的にたくさんあるとカーハン氏は話し、現代の男性はメイクアップへの抵抗がなくなってきているとみる。「すでに彼らはスキンケアやファッションにお金をかけている。メイクアップにも投資するのは当然の流れだ。そして、ひとたびメイクアップを始めれば、その魔法に気がついて『なぜ今までしてこなかったのか』と驚くことになる」(カーハン氏)

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Lumin via Unsplash

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディア。2021年7月19日より月・水・金の週3回配信となり、9月1日にリニューアルを予定しております。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf