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ローラ メルシエの12時間インスタフェス、内製で積み上げたファン拡大の方程式

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資生堂「ローラ メルシエ」は、インスタグラムのライブ配信機能を使ったプロモーションでファンの裾野を広げている。直近では “1Day Fes”と銘打って12時間連続のライブ配信を実施。リアルのフェスに負けない熱気と一体感でイベントは大いに盛り上がった。驚くべきはそのほとんどを内製で手掛けていることだ。このフェスの舞台裏から、そこに至るまでのチームの工夫を詳しく聞いた。

延べ13.7万人が訪れたインスタライブの舞台裏

「我々がデジタルシフトの取り組みで大事にしているのは、リアルの盛り上がりや空気感をそのままデジタルに持ち込むことだ」

そう語るのが、一連のプロジェクトを主導した資生堂ジャパン株式会社 プレステージブランド事業本部 戦略ブランド部 ローラメルシエ事業グループ ブランドマネージャーの大沢一友氏だ。

これまでにもメイクアップアーティストの河北裕介氏とタッグを組んだシリーズプログラムなど、1時間ほどのインスタライブ配信を行ってきたが、12時間連続という「ローラ メルシエ 1 Day Fes 2020」(以下、1 Day Fes)は、ブランドとしても初めてであり、他ブランドを見回しても新しい試みだ。新商品の発売延期やリアルイベント中止といった、コロナ禍の影響から立ち上がった試みで、開催までの約1ヶ月間で準備が急ピッチで進められた。

しかも、ゲストのキャスティングから台本作り、集客、そして当日の運営にいたるまで、外部に頼ることなくすべて自社で制作している。この規模のオンラインイベントを内製で行えるブランドは極めて珍しいといえるだろう。

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出典: ローラ メルシエ ジャパン
Twitter公式アカウント

結果からみれば、瞬間最高視聴者数は3,500人超、リアルタイムの延べ視聴者は13万7,000人と、数字の面からもリアルのイベントを超える結果を打ち立てることに成功した。

出演したゲストは総勢18名。タレントの紗栄子氏やバービー氏といった芸能人から、スタイリストの百々千晴氏や美容家の石井美保氏など美容系インフルエンサーまで、豪華メンバーによる全12本のライブ配信はまさに「フェス」と呼ぶにふさわしいものとなった。

多彩なプログラムで「ローラ メルシエ」らしさを体現

ライフスタイルに寄り添うローラ メルシエらしさを感じてもらおうと、ゲストの語るテーマは、美容・コスメのみに絞らず、ファッションやマインドフルネス、スタディ(社会貢献や映画、マネー講座など)といった幅広い内容とした。

メークアップアーティストでありブランド創設者のローラ・メルシエ氏は、ハリウッドやニューヨークの表舞台で活躍するスターたちが抱えるコンプレックスを受け止め、勇気づけるメークをしてきたということもあり、今回の1 Day Fesに関しても、参加者に一歩踏み出す勇気を与えられるイベントを目指したという。

1 Day Fesのタイムスケジュール

このイベントは、ローラ メルシエのWebマガジン公式インスタグラムアカウントと、ゲストの公式インスタグラムアカウントからも同時にライブ配信された。さらに、Zoomでの無料のオンラインカウンセリングも同時開催となった。希望者がハイライトやチーク、眉メークなどから希望するテーマを選択する事前予約制で、ブランド専属スタイリスト10名が講師役となり1 on 1でレクチャーする形で実施された。

「特に眉メークが人気で早々に予約が埋まり、定員を増やして対応した。オンラインカウンセリングも初めての取り組みだったが、お客様の関心や動向を直に知る機会にもなった」と大沢氏は振り返る。

1 Day Fes配信中には、視聴者から「家でこんなに楽しく過ごしたのは久しぶり」「ローラ メルシエ、もとから大好きだけど、今日のイベントの人選が最高すぎて、好きでよかった、これからもずっとついていきますという気持ち」といったコメントが寄せられた。

事前告知のタイミングからSNSをジャック

初めての試みでありながら大盛況となった1 Day Fes。新たなユーザーとの出会いの創出に加え、既存ファンとの高いエンゲージメントを実現できたのはなぜなのか。

その要因の1つとして、告知の時点からSNSにおいて盛り上がりを作れたことがあげられる。今回の場合は、1 Day Fes という冠のもと12個の番組告知が一斉に投稿されただけでなく、18名のゲストによる告知が相乗効果となって情報が広く拡散された。結果的に、それが通常のインスタライブの告知とは異なる、より特別感のあるイベントという受け止めにもつながった。

また、複数ゲストの投稿がタイムラインに流れたことで「あの人も、この人も出るんだ!」という驚きとともに、フェスならではの体験が生まれた。「ゲスト同士が『この番組、わたしもみたい』といったように、SNSで取り上げてくれたこともフェス感の醸成につながった」(大沢氏)。

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SNS上でゲスト同士の交流も見られた

インスタグラムの文脈に沿ったコンテンツの重要性

エンゲージメントに関しては、ブランドとは旧知であるゲストが多く、信頼関係ができあがっていたこと、それによってインスタグラムの文脈に沿ったコンテンツ配信ができたことが成功の要因となった。

とりわけ、インスタライブは宣伝色の強いコンテンツが敬遠される傾向にある。言い換えれば、ゲストの世界観やインスタグラムでのファンとの交流の文脈を損なわないコミュニケーションが求められるということだ。番組内では各ゲストから愛用している商品を紹介してもらうミニコーナーの時間をそれぞれ設けていたが、それ以外はブランドからの一方的なメッセージを押し付けることはせず、極力ゲストに進行を委ねるという方針をとった。

たとえば、20時から配信された「藤井明子のただのおしゃべり」では、モデルの藤井明子氏と美容師の和久井克哉氏夫妻、さらにヘアメイクの根来かおり氏が出演したが、そのトークは藤井夫妻が最近引っ越しした話など、プライベートな話題をメインに進行した。

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「藤井明子のただのおしゃべり」
ライブ配信の様子
撮影:編集部

こうした普段のインスタライブと変わらぬ自然体のコンテンツが配信されたことが、結果的にエンゲージメントの向上につながった。ゲストと視聴者の距離の近いインスタライブだからこそ、フェスらしい臨場感と一体感ある取り組みができたという一面もあるだろう。

インスタグラムの文脈に沿ったコンテンツと場づくり。それらが上手く機能したことによって1 Day Fesは単なる宣伝の場ではなく、熱量に溢れたイベントへと昇華したのである。

さらに、1 Day Fesを通じ、インスタグラムにおける “肌感” を体感したことが次に向けた収穫になったと大沢氏は付け加える。たとえば、インスタグラムのライブ配信は、テレビに出ている著名人を呼べば視聴数を担保できるというわけではない。世間の知名度よりも、インスタグラム上にどれだけコアなファンがいるかが集客の鍵を握っているという。

また、インスタグラムとYouTubeは動画コンテンツ主体という点は共通しているが、それぞれのプラットフォームで好まれるコンテンツには違いがある。「YouTubeはどちらかというとテレビに近く、しっかり作り込まれたコンテンツが好まれる傾向」(大沢氏)にあり、「YouTubeで影響力があるからといって、インスタグラムで同じ影響力を発揮できるとかといえばそうではない。今回の経験から、プラットフォームと出演者には相性があることについて、よりリアルに実感することができた」と大沢氏は振り返る。

KOL開拓からの転換、自らが「媒体」へ

このような1 Day Fesは一朝一夕にできるものではない。ここにいたるまでに、大沢氏率いるローラ メルシエ・チームがどのようなデジタルマーケティングを手掛けてきたのか、ここ3年の取組みについて触れておきたい。

ローラ メルシエは2018年からの2年間、独自のインフルエンサー開拓に注力してきた。PRとデジタル部門の担当自らが、SNSで見つけたインフルエンサーと直接やりとりし、関係性を築いてきた。そうした地道な取り組みが、SNSにおけるプレゼンス向上という形で花開き、ブランドの売上を2.6倍に伸長させる原動力になった。

「その期間中に、メークアップアーティストなど美容業界のKOLとも関係を構築できていたことが1 Day Fesにも活かされた」(大沢氏)。

一方で、インフルエンサー開拓に熱心に取り組めば取り組むほど、限界もみえてきたという。最終的には新しいインフルエンサーを見つけるのが困難になり、競合ブランドとの差別化が図れずに戦略の見直しを迫られた。そこで大沢氏が決断したのが「自分たち自身が制作者となり、媒体(発信者)」になる方向だった。

最初のうちは外部パートナーと協業し、インスタライブ配信のノウハウを蓄積。自分たちのできる領域を1年かけて徐々に増やしていったという。また、商品説明やブランド動画についても、絵コンテから自分達で企画するようになり、今では、「毎月10本の1分動画を、フォトグラファー以外全て自社で制作できるようになった」と大沢氏は説明する。

自分たち自身がコンテンツメーカーになるという新たな戦略は様々な恩恵をもたらした。媒体に頼ることなく自らコンテンツを作り発信できる環境が整ったことで、新製品だけでなく既存品の情報を継続的に届けられるようになった。内製化によって外注費が削減されたことも含め、投資対効果を高めることにもつながったという。

1 Day Fes開催以前から、毎回ゲストを迎え実施しているヘアメークアーティスト河北裕介氏のレッスンプログラム「マスタークラス」シリーズも自社による内製だ。配信後のECでの売り上げも上々で「番組で紹介した商品が売れるという確かな手ごたえを感じることができた」(大沢氏)。

「フェス」から熱狂を伝播させZ世代の開拓へ

こういった一連の取組みの集大成ともいえる1 Day Fesは、コンテンツメーカーとして新しい番組を送り出そうという気概も生み出した。ここ2~3年、ボディクリームやチークといったヒット商品が出ているとはいえ、競合ブランドと比べると、まだまだ認知度が十分とはいえないという思いもあった。

「顧客の目線でみれば、化粧品ブランドが山ほどあるなかで、まずはローラ メルシエを知ってもらうことが大事になる。そのためには一緒にいて心地よいとか、使ってみていい感じがするといったメリットがないといけない」(大沢氏)。だからこそ、売ることよりも、顧客が楽しいと思える“フェス”体験をしてもらうことに力を注いでいる。

ローラ メルシエにおいて、購買の影響力を持っているのは30代以降だが、将来を見据えれば、Z世代と呼ばれる10~20代若年層の心をいかに掴めるかが重要になる。リアルよりオンラインでのコミュニケーションを好むZ世代に向けた施策として、1 Day Fesのような取り組みは今後ますます重要度を増していくだろう。

ローラ メルシエといえば“フェス”という独自ポジションの確立へ。10月22日開催予定の@cosmeとの協業によるフェスはじめ、今後も新しい計画が控えている。

Text: 清水美奈(Mina Shimizu)
画像提供:資生堂ジャパン

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