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5回目のセフォラ・アクセラレータ。ジェンダー、エシカル、そしてPOCに注力へ

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女性起業家による美容系スタートアップを支援するセフォラ・アクセラレータプログラム。5回目となる2021年度は人種間ギャップの改善を目指し、有色人種の女性オーナーの事業への一層の支援が発表された。2020年12月のファイナリストの発表を前に、同プログラムのこれまでの参加者たちのビジネスがどのように成長しているのかをレポートする。

セフォラの「アクセラレータプログラム」は、「女性をインスパイアすることで社会をより良いものにしよう」という企業理念を具現化する施策として、毎年、女性起業家が興した美容系スタートアップを複数社選出し、集中ブートキャンプを含む6カ月間のトレーニングやメンターシップにより、確固たるビジネスとして成立させ、最終的にはセフォラと協業できるよう総合的に支援するものだ。「2020年までに、50人以上の女性起業家をサポートする」という目標を掲げて2016年にスタートし、昨年度にはすでに目標を大きく上回る58名のプログラム参加を達成している。

5年目を迎える2021年度は、米国で盛り上がるBLM運動を背景に、特にPOC(People of Color / 有色人種)の女性起業家のサポートに力を入れることを発表。ジェンダーギャップに加え、人種間ギャップの解消にも取り組む方向性が示された

応募は2020年10月15日に締め切られ、12月15日にファイナリストが発表される。選抜された起業家は2021年の1月から6月までプログラムに参加することになる。

インクルージョンへの取り組み

セフォラのアクセラレータプログラムの根幹となるのは、「Sephora Stands」と名づけられたCSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)を掲げたマニュフェストだ。Sephora Standsでは、「私たちは皆、なにか美しいものとつながっている(We belong to something beautiful)」 をスローガンに、女性やLBGTQコミュニティのサポートをはじめ、インクルージョンへの取り組みに注力してきた。

今年セフォラは、数あるリテールの先頭を切って、アフリカンデザインの靴ブランド「Brother Vellies」創業者オーロラ・ジェイムス(Aurora James)氏が、「ジョージ・フロイド事件」を受けて提案した「15% の誓い(15% Pledge )」への賛同を表明。「15% の誓い」とは、全米の人口において黒人が占める割合とほぼ同じ15%の商品棚を、有色人種オーナーのブランドに割り当てるというものだ。つまり、セフォラが、今後、人種間ギャップの解消に向けても長期的に取り組むことの宣言といえる。

この流れから、2021年度のアクセラレータプログラムにおいて、女性起業家のなかでもとくに、POCの支援に力をいれることを打ち出したのだ。

アクセラレータのこれまでの成果

セフォラのアクセラレータプログラムには、これまでも、さまざまな国籍、人種、年齢の女性起業家が参加してきた。

2019年度は、北米や欧州のほか、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、中国と8カ国から15人が参加。2020年度の13人の参加者も、米国、カナダ、フランス、英国、ドイツ、オーストラリア、メキシコ、ブラジル、シンガポール、中国の10カ国からと多様で、半数以上が白人ではない。

有色女性の起業は、資金調達などにおいて女性というだけで不利なのに加え、有色人種であることから、社会、経済、政治的に蔓延する「制度化された人種差別(systemic racism)」の壁が立ちふさがる。さらにはロールモデルやメンター不足などもあり、ハードルが高いのが現状だ。そんななか、POC起業家たちにとって、セフォラのこのプログラムが彼女たちのビジネスのかけがえのないブースターとなってきた。

実際に、2016年にカナダから参加した、アーユルヴェーダと現代科学を掛け合わせたオーガニックスキンケアブランド「Sahajan」の創業者兼CEO、リサ・マタム(Lisa Mattam)氏は、このプログラムのおかげで、キャッチコピーの考案から販売チャネルへのアプローチ方法まで、大小さまざまな側面においてブランドが成長するための土台が築けたとする。プログラム参加当初は、地元の小さな店舗でのみ商品を販売していたが、現在は、Credo Beauty、Hudson’s Bay、The Detox Marketなどの専門店でも販売するほか、他国のバイヤーからもコンタクトがあるという。

また、同じく2016年に米国より参加した、ガーナ産シアバターを使ったスキンケアブランド「Eu’Genia Shea」の創業者兼CEO、ナー・サクル・アキューテ(Naa-Sakle Akuete)氏は、プログラムを振り返り、「ターゲットやマーケティングのアイディアもなかった初期段階に、セフォラのインキュベーターチームが、クリーンビューティというブランドの方向性を示してくれた」と語る。また、メンターからだけではなく、自分よりも経験を積んでいるほかの参加者からも「5年後、10年後のビジネスのイメージや経営者としての態度」などを学ぶことができた。

Eu’Genia Sheaは現在、Anthropologie、Macy’s、Credo Beauty、BLK + GRN、Costco、The Detox Marketなど、大手リテールを含む複数チャネルで展開している。さらにサブブランドの「Mother’s Shea」も大手リテールチェーンのTargetで取り扱われている。

このほかにも、2017年に参加したイヴ・カー・モンペロース(Yve-Car Momperousse)氏のハイチ産ブラックキャスターオイルのヘア&スキンケアブランド「Kreyol Essence」もウルタやホールフーズで販売されるなど、多くの有色女性起業家ブランドが、セフォラのメンターシップやネットワークを活かして着実に育っている。

POCによるPOCをターゲットにした商品

前述のEu’Genia Sheaはガーナで、Kreyol Essenceはハイチで、原料の生産者である現地の女性たちをフェアトレードによりサポートしており、グローバルに有色女性コミュニティに貢献している。同時に、もっと身近な自国内のPOC消費者をターゲットに、その悩みを解決していくブランドも増えている。

たとえば、2020年参加の米国発ヘアケアツールブランド「The Most」創業者のドーン・マイヤー(Dawn Myers)氏は、黒人女性が、黒人特有の髪質のために髪のスタイリングに長い時間がかかるという現状を踏まえて、ボリュームとうねりのある髪をセットしやすくするヘアアイロンやヘアオイルなどの商品を開発している。

同じく2020年参加の髪分析プラットフォーム「Curl IQ」創業者のキンバリー・ヒル(Kymberlee Hill)氏も、AI解析技術を用いて髪の画像をもとに黒人女性などの強いくせ毛の髪質を判定し、最適なケアができる商品などをパーソナライズしてレコメンドするサービスを開発した。

これらはいずれも、欧米の美容業界においてメインストリームではない、POC消費者のニーズに応えるものだ。このような商品棚の15%を占めるにふさわしいPOC向けの製品が市場に増え、消費者の目に留まるようになることは、女性起業家のビジネスコミュニティはもとより、より広く有色女性全体のエンパワメントにつながっていくはずだ。

信頼できるブランドとして確立

2021年度のアクセラレータプログラムにおいても、6ヶ月間にわたり人種や国籍を超えた女性創業者が互いに切磋琢磨し、ステップアップを成し遂げるであろう。

また、セフォラにとっても、過去の記事でも触れたように、ブランドイメージの向上のほか、新興の魅力的なスタートアップのいち早い発見と良好な関係づくり、また、メンター役やオブザーバーとして関与するエグゼクティブ層への好影響など、多くのメリットが見込まれる。

とくに、BLM運動をはじめとし、企業が社会的責任を果たしているかに一般消費者の厳しい目が注がれる昨今の世情においては、スピーディに具体的な取り組みを表明して実行に移すセフォラに対して、より深く長期的なブランドロイヤリティが生まれることも期待できる。

初の有色女性副大統領が誕生し、ジェンダーギャップや差別の改善などに積極的ではない企業を批判する機運はますます強まると考えられる。アクセラレータプログラムのサポートを受けて、ビジネスの成功に向けステップアップしていく有色女性起業家たちは、セフォラの目指すものを体現する存在となるだろう。それは、セフォラを支持することが消費者の「誇り」であるようなブランド形成への推進力ともなるのではないだろうか。

Text: 東リカ(Rika Higashi)
Top image: Sephora Stands Accelerate


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