見出し画像

韓国SMHAEL、がん研究から生まれたペプチド「RPS.3」でプレミアムスキンケア市場に参入

◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

韓国ビューティスタートアップのSMHAEL(エスエムハエル)は、DNA損傷修復および皮膚修復効果を持つとうたう独自成分「RPS.3」を配合した高機能アンプルを開発し、中国、米国、欧州、そして日本へ進出する準備を進めている。韓国国内では、韓国トップクラスの生物学の権威がチーフサイエンスオフィサー(CSO)を務める新興企業としても注目を集めている。同社の源泉技術や製品の詳細、今後の展望についてレポートする。


がん治療薬と老化防止の知見を取り入れたKビューティスタートアップ

SMHAELは2020年5月に、高麗大学校 生命工学科のキム・ジュン教授が保有していた特許の技術移転を受け設立されたビューティスタートアップだ。キム教授は、生物学および微生物学の研究分野で180編の国際論文を発表してきた実績を持ち、国際生化学・分子生物学連合(IUBMB)の韓国代表やアジア-オセアニア生化学分子生物学連盟(FAOBMB)会長、高麗大学校生命科学部長などを歴任してきた同分野のスペシャリストだ。

SMHAELでCSOを務めるキム・ジュン教授
出典:HA:L RPS.3公式サイト

キム教授は2017年に、がんや老化防止を専門に研究するバイオベンチャーのHAEL(ハエル)を設立。研究チームとともに、がん転移抑制のための治療薬や、真菌感染症・カンジダ症の原因となるカンジダ・アルビカンスに作用する抗真菌剤の開発を成功させてきた。

その後、キム教授やハエルが培ってきた天然物質研究や開発技術をベースに、化粧品原料・製品の開発を中心に行う企業として設立されたのがSMHAELだ。現在、キム教授は同社の株式を取得し、CSOとして経営にも参加している。

出典:HA:L RPS.3公式サイト

SMHAELがとくに注力しているのはペプチドの開発だ。ペプチドはアミノ酸で構成されたタンパク質の機能的最小単位で、信号伝達や生体機能調整に関連する人体に親和的なバイオ素材として注目を集めている。

化粧品向けとしてキム教授が保有する特許技術である「リボソームタンパク質S3」(正式名称:ヒトリボソームタンパク質S3のDNA損傷修復および皮膚損傷修復効能を持つドメインのペプチド配列を含む組成物。以下RPS.3)というペプチドの開発および、同成分が配合された化粧品を製造している。

RPS.3の皮膚再生テストの結果
出典:HA:L RPS.3公式サイト

RPS.3はキム教授が抗がん治療新薬研究中に世界で初めて発見したとされる天然物質だ。がん細胞は他の細胞とは異なり死なずに分化し続けるが、その原理を研究していたキム教授ら研究チームは、紫外線を浴びると損傷した細胞を修復する働きがある特定のアミノ酸を発見した。その物質がRPS.3である。

RPS.3は細胞の修復のみならず、「MMP-1」という酵素の活動を防ぐ役割も果たすという。MMP-1は人の骨、肉、皮膚を構成するコラーゲンを破壊する作用があるため、MMP-1の活動を抑制することで、肌の損傷と炎症の緩和、弾力向上などの効果を発揮するとSMHAEL側は説明している。またRPS.3は人間に必要な必須アミノ酸21個のうちの8個とヒアルロン酸で構成されており、疎水性で肌によく吸収されるという長所をあわせ持っている。

「HA:L RPS.3」は、肌の状態にあわせて組合せ可能なアンプル

SMHAELは2023年に、独自開発したRPS.3を配合した高機能性アンプル「HA:L RPS.3」を市場で展開開始した。2024年には消費者のレビューを反映しながら、パッケージデザインや製品ラインナップを増やし、ブランディング強化をすすめている。

RPS.3が配合されたアンプル商品としては、「シグネチャーベースアンプル」、「グリーンシカ」、「ホワイトニング.H」、「カーミングレッド」などのスキンケア製品がある。同商品群には、皮膚刺激の鎮静、皮膚のシワ・毛穴の改善、トーンアップ、皮脂分泌調節などの効果があるとされる。製品別の詳細としては、グリーンシカは保湿と皮膚バランス、カーミングレッドは皮膚鎮静、ホワイトニング.Hはブライトニングとシワ・弾力改善にとくに高い効果を発揮するとしている。

HA:L RPS.3アンプルセット
出典:HA:L RPS.3公式サイト

現在、SMHAELではグリーンシカ、ホワイトニング.H、カーミングレッドの3種類のアンプルとシグネチャーベースアンプル2本をセットにしたパッケージも販売している。ユーザーはそれぞれを自分の好みや目的に合わせて混ぜて使うことが可能だ。RPS.3が配合された製品群は鮮やかなカラーが特徴的で、これらは抽出物由来の天然の色だという。

HA:L RPS.3シリーズの価格は、単体が9万9,000ウォン(約1万900円)で、セット商品が20万~30万ウォン(約2万2,000~3万3,000円)に設定されており、高価格帯に属する。実際に製品を使用したブロガー、インフルエンサーは以下のようなレビューをしている。

「ホワイトニングアンプルということで皮膚への負担がないか心配だったが、水分感がとても豊富だった。低刺激美白アンプルを希望する方々に推薦したい製品」

naver blog

「若干の粘性は感じられるが、ねばねば感や油分感はない潤いあるテクスチャー。機能性ペプチド成分を配合したアンプルだからか、塗って吸収させると肌がもちもちと弾むような感覚」

naver blog

「敏感な皮膚にも負担なく使える。残余感もなく、油分と水分が適切に配合されていて、しっとりとした使い心地」

naver blog

「塗る時の感触がよくてさっぱりしている」

naver blog

「皮膚への浸透が高いせいか、早く吸収される使用感が気に入った」

naver blog

「基礎化粧品をあまり多く使わなかったせいか、メイクアップのノリはそれほどよくなかったが、HA:Lを使ったあとは不思議としっくりくる感じ」

naver blog

HA:L RPS.3で海外市場開拓、シワ改善ペプチド「ES1」も開発

SMHAELはRPS.3の効果検証を重ね、スキンケア製品として海外に輸出する用意を着々と進めている。韓国化学試験研究院で臨床実験などを終えたのち、米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)が発行しているINCI名(化粧品成分の国際的表示名称)を収録した辞典「ICID(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook)」にRPS.3を登録した。

またHA:L RPS.3製品自体に関しては、2022年頃から中国版FDAである国家食品薬品監督管理局(NMPA、旧CFDA)や、化粧品業界に特化した国際規格であるISO 22716の認証手続きを進め、いずれも取得完了している。現在は、米MoCRA欧州CPNP日本PMDAの認証手続きを進めており、認証完了を間近に控えているという。

一足先に認証を取得した中国では、2024年10月に「ハイテクスタートアップウィーク」に参加し最優秀賞を受賞した。同イベントは、中国市場進出を目指す革新的な企業を対象に、投資機会やパートナーシップを提供する場だ。SMHAELは今回の受賞をきっかけに、中国の販売代理店や投資家との関係を強化しつつ、グローバル市場進出に拍車をかける計画だ。

中国「2024ハイテクスタートアップウィーク」で最優秀賞を受賞
出典:Beautynury

SMHAELはRPS.3に続き、2024年9月には新成分であるシワ改善ペプチド原料「ES1」の開発にも成功し、韓国・食品医薬品安全処の認証(登録番号23764)を取得している。

キム教授は、「ES1は既存のシワ改善成分であるアデノシンやレチノールとはまったく異なるメカニズムで効果を立証した」とメディア取材に回答。アデノシンやレチノールがコラーゲンの生成を促進するのに対し、ES1はコラーゲン分解酵素を抑制して合成を促進することで、コラーゲンをより長く維持させる効果があると説明している。ES1は今後、バイオベンチャーであるハエルから独占的に供給される予定だ。

Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image: HA:L RPS.3公式サイト