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スイス発Skin Match Technology「おすすめ理由」に透明性をもたらすレコメンドAIソリューション

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仏ロレアルがバックアップするSkin Match Technologyは、パーソナライズした化粧品の検索・レコメンドAIを開発するビューティテックスタートアップだ。膨大なデータベースにもとづいた適切な提案のみならず、成分表示など商品情報の詳細を明らかにすることで、ユーザーが自身に推奨された理由を理解して購入することをサポートする同社のソリューションと、開発の裏側にある思想をみていく。

ユーザーにわかりやすく商品情報を伝えることを目指すソリューション

アフターパンデミックでは、消費者はそのときどきの状況に応じて、オンラインとオフラインを使い分けてショッピングを楽しむようになっており、オンラインショッピングであっても実店舗同様の購買体験を提供するためのカウンセリングや商品情報、マッチングといったテクノロジーには投資が集まっている。とくに最近では、小売店やブランド向けに、簡単に実装でき、ユーザー一人ひとりにパーソナライズした化粧品の検索と提案を行うソフトウェアの開発が活況だ。具体的には、各自の肌質や悩み、生活習慣などをもとに最適なスキンケア製品を提示するものや、肌トーンにあったファンデーションを見つけだすツールなどがあげられる。

Skin Match TechnologyもこうしたSaaS(Software as a Service)ソリューションを独自開発する“サードパーティ・ソフトウェア・プロバイダー”と称されるスタートアップのひとつだ。同社は2018年に創業、スイスに本社を置くが、仏パリにある世界最大のスタートアップキャンパスStation F (スタシオンエフ)内のL'Oréal Beauty Tech Atelier(ロレアル ビューティテック アトリエ)に所属しており、また、ヨーロッパの化粧品小売大手Douglas(ダグラス)が主催した、ビューティとテック系のスタートアップを対象にしたコンペティション「Douglas Forward Beauty Challenge (現 Douglas Beauty Futures)」の2018年の受賞者でもある。

Skin Match Technologyでは現在、「Skin & Hair Care Finder」「Foundation Shade Finder」「INCI Ingredient Explainer」、そして、「Automated Clean Beauty Icons」の4つのソリューションを提供している。これらは、企業ニーズに合わせて、単独あるいは組み合わせて実装が可能だ。

Skin & Hair Care Finderは、質問票への回答から得た、敏感肌やアレルギー、ニキビなどのユーザーの悩みのほか、頭皮ケアをしたい、ヴィーガン製品を探したいといった各自の指向性を反映したマッチングで、最適なスキンケアとヘアケア製品をレコメンドする。特徴的なのは、ただ単に商品をリストアップするだけではなく、個々の商品について説明文を表示し、どんな成分が配合されており、どのような効果が期待できるのか、そして、なぜそれが自分におすすめなのかをユーザーが理解できる設計にしている点だ。

いわば、商品情報をもとに、各ユーザー専任のデジタルアドバイザーとしてのカウンセリングを提供できるツールで、2021年にSkin & Hair Care Finderを採用したロレアル傘下のキールズ・スペインのECでは、このツールによってCVR(コンバージョンレート)が30%増になったという

Skin & Hair Care Finder

また、Foundation Shade Finderは、100以上のブランド、6,000以上の製品、112種類の肌トーンを網羅する広範なデータベースをもとに、ユーザーに最適なシェード(色味)を導きだすことをうたう。導入企業のIT Cosmeticsの事例では、ユーザーがこれまで使用している製品とIT Cosmeticsの製品をデータベース上でAIが照合することで、各自に合ったIT Cosmeticsのファンデーションを提案するのに加え、ユーザーが肌タイプや肌トーンに合った同ブランドのCC+クリームやコンシーラーを検索することも可能だ。また、ファンデーションを使用したことがない、あるいは用意された112種の肌トーンに合致しない場合は、AIがユーザーの肌色を分析し、適したファンデーションの色合いを見つけだす機能も備えているとする

Foundation Shade Finder

一方、INCI Ingredient Explainerは、商品に配合されている原料の用途、効果、成分グループに関する説明文を画面上に表示することができる機能だ。同ソリューションを導入した企業やブランドは、化粧品成分の国際的表示名であるINCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredientsの略、読み方はインキ)形式の成分表が自動的に取得でき、サイトやアプリの商品の詳細ページにINCIリストを実装し、各成分の出所、有用性、効果、使用方法についてマウスオーバー(マウスポインターを特定の場所にかざすことで、クリックせずに表示が出る処理)で説明できるようになる。

INCI Ingredient Explainer

また、Automated Clean Beauty Iconsは、導入企業が定義したクリーンビューティのコンセプト、たとえば、ある特定の成分を含む製品はクリーンビューティの範疇に入れないなどの、各ブランドが定めた基準に沿いつつ、全ての商品をチェックして、クルエルティフリーやオーガニックといった商品の特徴を示すアイコンを自動的に表示するものだ。

Automated Clean Beauty Icons

Skin Match Technologyの調査では、オンラインで化粧品ショッピングをする人の約6割が、商品を選ぶうえで何らかのこだわりや好みの方向性を持っているといい、たとえば、パラベンフリーの商品を探す人は全体の50%にのぼり、同じく、31%がオーガニック由来の商品、28%が無香料の商品を探している。その意味で、同社のソリューションは、ユーザーが求めているものをピンポイントでキャッチし、適切かつ素早い提案を実現するとしている。

“透明性”とレコメンドの理由を示す“関連性”がキーワード

Skin Match Technologyが、独自ソフトウェア開発の基本的な考え方としているのが「透明性」だ。つまり、化粧品のオンライン購入において最も重要なのは、正確なデータにもとづいた適切な提案と、商品を正しく理解するための透明性の担保というわけだ。

Cybernewsのインタビューのなかで、Skin Match TechnologyのCEO エステラ・ベンツ(Estella Benz)氏は、「現在、化粧品をオンラインで購入する際に、ユーザーにとって満たされていないのは、“透明性(transparency)”と(自身の課題と商品の)“関連性(relevance)”だ。ユーザーは、なぜこの製品が推奨されるのか理解できないまま商品を勧められ、そのため、購入を決める前にレビューや製品説明を読まなければならない」と語っている。

そして、この状況を改善するために開発されたのが、それぞれのユーザーに合った美容ルーティンを実現する製品の提案だけではなく、勧める理由を細かくパーソナライズして多言語対応で伝えることができる同社のソリューションであり、これにより、ユーザーは自分が重要と考えるポイントや課題に対応するレコメンドであるかを確認し、自信を持って購入の意思決定ができるとする。

ベンツ氏はさらに、Vogue Businessのインタビューでは、Skin Match Technologyのアルゴリズムは、ブランドの在庫情報を活用し、5万以上の成分、8万以上の製品、110以上の製品カテゴリーからなるデータベースへと進化を続けており、すべてのパートナーブランドがそこにアクセスできると明かしている。

同アルゴリズムはまた、「アレルギー学、成分学、皮膚科学の専門家とともに開発され、消費者が持つ複雑な個性に沿ってナビゲートする」(ベンツ氏)もので、個人の嗜好、アレルギーの有無、肌の敏感度、22種類のスキンケアニーズ、年齢、性別、化学物質曝露の度合い、ユーザーの居住地の温度などを考慮したうえで、それぞれの肌タイプを割り出しているとする。

あわせてベンツ氏は「私たちは、アルゴリズムに中立性を保つよう心がけている。何も隠さないし、特定の商品を目立たせたり、押し出したりすることもない」と、あくまでユーザーの利便性を第一に、正しい情報をオープンに提供する姿勢を強調する。

論拠を明らかにするオープンでデータドリブンなアプローチ

食品の例ではあるが、米FMI(食品産業協会)のレポートによると、調査対象の買い物客の72%は、食品に何が含まれているか、どのように作られているかなどの詳細情報が重要であると回答。同じく79%が、完全な成分表示をわかりやすく提示しているブランドはより信頼できると答えている。こうした、透明性を高く評価し、より多くの情報を求める消費者の要望に応えるため、FMIは、ECにおいても、健康やウエルネスの領域における各自の目標に関連する商品を、買い物客が見つけやすくすることを提案している。

このような消費者傾向は化粧品業界においても当てはまると、前述のCybernewsのインタビューでベンツ氏は指摘。「私たちは、美容業界における将来の成功は、消費者に完全な透明性を提供することにあると信じている。スキンケアやカラーメイク製品がどのような成分を含み、どのように加工されているかを意識することなく、ただ肌に塗るという時代は終わった。今日の消費者は健康や環境に対する意識が高く、それはビューティの分野にも波及している」(ベンツ氏)

化粧品を判断する消費者の目はより厳しくなっている。単にクリーンな処方や、サステナブルな製造過程をうたうだけでは十分とはいえず、消費者はその科学的な証拠や論拠を提示することをブランドに求めはじめている。スキンケアやヘアケアなど美容領域に関するAI アドバイザーの開発という観点からいえば、フィンランド発スタートアップRevieveなどもあるが、ブランドが導き出したいレコメンドだけではなく、データにもとづく正確性と徹底した透明性を掲げるアプローチが、今後の消費者意識の変化に対応するうえで、ますます重要になるだろう。

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image & photo: Skin Match Technology公式サイト

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