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ミレニアル世代へのグローバルアプローチはナチュラル、プチプラ、SNSが鉄則

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化粧品業界のマーケティング戦略において、ミレニアル世代を避けて通ることはできない。ミレニアル世代は、おおむね1980年代から1990年代に生まれた世代を指し、2019年に20~39歳を迎える。米国では、ミレニアル世代の人口が7,100万人と、ベビーブーマー(52~70歳)の7,200万人に迫っており、2019年にはベビーブーマーを上回ると予想され、一番数が多い世代となる見込みだ。

さらに、各国のミレニアル世代が全人口に占める割合をみると、中国で29%、イギリスで25%、ブラジルで33%と、グローバルでも無視できない存在であるのがわかる

資生堂が2018年8月、全世界的な視野に立ったSHISEIDOブランドのメイクアップ化粧品の販売促進にあたり、ミレニアル世代に焦点をあて、過去最大規模の額を投じることを発表したように、化粧品業界では、ミレニアル世代に向けたマーケティング戦略が、ブランド存続のためには必要不可欠とみなされている。そんななか、欧米の化粧品企業はどんな施策を打っているのだろうか。

ミレニアル世代をひもとく3つのキーワード、「SNS」「ナチュラル志向」そして「プチプラ」という観点から探っていこう。

YouTubeやInstagram、インフルエンサーの活用

ミレニアル世代の第1の特徴は、SNSを日常的に使いこなしていることだ。イタリアのミレニアル世代の60%、ドイツでは50%が「SNSを効果的なコミュニケーション手段」としており、SNSは彼らが日々接触している一大メディアだ。そのため、これまでTVや新聞、雑誌といったマス広告にかけていた広告費を、SNSやインフルエンサーの活用にシフトするケースが増えている。

SNSで拡散するコンテンツとして、特に動画マーケティング強化して成功している例が、セフォラだ。YouTubeにおけるビューティコンテンツの視聴は、2014年から2015年で50%増の伸びを見せ、YouTubeでの「ハウツー」の検索は、毎年70%以上の割合で増え続けている。

こうした状況を踏まえ、セフォラでは、動画を共同編集できるツールWipsterを活用し、2016年には250本だったコスメ関連動画を、2017年には600本以上制作してネット上に投稿。さらに、パートナーシップを結んだトップメイクアップアーティストや、コスメ好きの化粧品クチコミ動画、チュートリアル動画も投入し、若年層のファン拡大に繋げている。セフォラのYouTubeの視聴者数は113万人、視聴回数100万回を超える動画も20本以上有し、絶大な人気を誇る

SNSでの人気爆発により快進撃を続けているコスメブランドとして、2017年にローンチしたFenty Beautyも外すことはできない。歌手リアーナのプロデュースということもあるが、ブランド発表から4日でブランド公式インスタグラムのフォロワーは1,400万人に到達。多くの化粧品ブランドのSNS投稿におけるエンゲージメント率は平均1%程度といわれるなかで、Fenty Beautyでは10.41%もの高エンゲージメント率をキープ。今でもその人気は衰えをみせない。

さらに、看板商品ともいえるファンデーションには40色ものカラーを用意し、あらゆる人種、肌色の人に向けて商品を展開するなど、力強い商品力との相乗効果で、ミレニアル世代からの支持を固めている。

また、SNSを利用して、コスメブランドの認知度拡大に成功した例として有名なのが、2014年にコーセーの傘下となった米国のTarte Cosmeticsのブランド、タルトだ。2017年、インフルエンサー約20人をボラボラ島やカリブ海のタークス・カイコス諸島などに招待。その旅行中に同社のコスメをSNSで#trippinwithtarteのハッシュタグをつけて投稿してもらうキャンペーンを実施。美しいリゾート地を背景に紹介されたコスメの存在感は抜群で、同社SNSのフォロワーはキャンペーン実施前に比べ100万人単位で増加し、#trippinwithtarteは大きな予算を投じる大規模インフルエンサーマーケティングのお手本として話題となった。

セルフィー映えに配慮

ミレニアル世代は、スマホで自撮りをよく行う“セルフィー世代”とも呼ばれる。これを受け、セルフィーでの映りに配慮したメイクアップアイテム開発も行われている。

カバーガールでは2015年に、スマホカメラのレンズを研究し、セルフィーで撮影したときに肌色を美しく見せ、長時間たった後でもテカりにくいファンデーションOutlast Stay Luminous Foundationを発売。エイボンも、従来のリップより50%色素を多く配合し、写真に撮ってもはっきりと色が写るUltracolor Bold lipstickを発表した。

写真加工アプリが次々と開発され、その精度が急速に高まっている現在では、セルフィー向けをうたう化粧品開発の話題を耳にすることはなくなった。だが、逆に、アプリで加工したかのような美しい肌を、リアルに叶えたいという欲求が広まりつつあり、肌トーンをアップさせるファンデーションカラーや、弱点を自然にカバーするコンシーラーに大きな注目が集まってきている。セルフィー好きの消費者意識が一周し、現実でも加工した肌に近づけたいというニーズはますます大きくなっている。

ナチュラル志向から、クリーンビューティへの流れ

ミレニアル世代の第2の特徴としては、オーガニックや環境に配慮した製品を支持する姿勢があげられる。

2016年のOrganic Trade Associationの調査 によると、米国ではオーガニック製品の購入者のうち52%が子供のいるミレニアル世代で、家庭の消費材としてオーガニック製品を積極的に購入していることが浮かび上がった。彼らがオーガニックを選ぶのは、家族の健康や安全性への配慮に加え、子供世代にできるかぎり汚染の少ないサステイナブルな環境を残したいという意識もあるからだ。さらには、ミレニアル世代の12%がヴィーガン(完全菜食主義)と回答しており、これは全世代に占める割合の2倍にあたる

化粧品についても、ミレニアル世代がオーガニックや天然由来成分を使ったクリーンビューティを志向するのは、当然の流れといえる。

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このようなミレニアル世代の消費者像にあわせて、ユニリーバでは2017年、“ナチュラル”をコンセプトにしたシャンプーとソープのブランドLove Beauty and Planetをローンチ。エシカルな環境で採取されたオイルをベースに、ラベンダーやブルガリアンローズから抽出した天然エキスを配合し、パラベンは不使用。ボトルには100%再生利用可能な素材を採用している。

資生堂からも、素材の良さを引き出すという和食のコンセプトからアイディアを得たスキンケアのグローバルブランドWASO が2017年に誕生。これは、「画一的で完璧な美しさではなく、自分らしいナチュラルな美しさを選ぶ」ミレニアル世代の価値観に呼応するもので、にんじん、びわの葉、豆腐など和食で使われてきた自然素材を活用しており、現在、88の国や地域で展開されている。

一方、オーストラリア発のCrop Natural は、原料素材はもとより、製造過程においても厳しい基準をクリアすることが求められるオーガニック認定のCOSMOS認証を取得していると同時に、ラメの入った鮮やかな発色のメタルアイシャドウなどのカラーコスメをラインナップすることで、一般的な自然派化粧品のイメージをくつがえす。Instagramで目立ちたいミレニアル女性のクールな側面に訴求して、米国マーケットで業績を伸ばしている。

ミレニアル世代が求めるクリーンビューティは、ただ単に天然成分を使用した製品にとどまらない。その概念には動物実験に反対するクルエルティーフリーのほか、男女間や人種、LGBTへの差別撤廃、プラスチック汚染といった環境対策など多次元のキーワードが含まれている。今は、大企業からインディーズブランドまで、どこに焦点を絞ったアプローチをするか模索している段階ともいえるだろう。

安価で手頃な商品の提案

Eコマースの活況などにより、数多くのD2Cブランドがコスメ市場に参入し、膨大な数の商品にアクセスできるミレニアル世代は、品質の高さのわりに手頃な価格の、いわゆる“バリューフォーマネー”の商品を好む。ソーシャルメディアで価格比較が簡単にできるのも、その傾向を後押ししているのだろう。また、加速度的に進むR&Dの進歩も、ハイパフォーマンスと低価格の両立を可能にした。

米小売大手のTargetでは、プレステージ商品の売上高はほとんど変化してないが、2017年マス向けスキンケア製品の売上げは2年前より4%上がっている

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同店はインパクトのある商品企画で、かつプチプラな韓国コスメの拡大を早くから図っており、2014年にはすでに、アモーレパシフィック傘下のラネージュを取り扱っている。また、お得感を打ち出すことに長けたTargetは、2018年末のホリデーシーズンには、トラベルサイズのミニコスメなどの商品を組み合わせた、月替わりのオリジナルセレクションのビューティボックスを7ドルで発売。サブスクリプション・サービスになじんでいるミレニアル世代を狙っている。

また、プレステージブランドが品質を保持しながら、ドラッグストアやオンラインを舞台にマスマーケットに販路を拡げる例もある。ドラゴンズブラッドと呼ばれる樹液など、稀少な天然原料が配合されたスキンケアラインで名高いロディアルの創業者が設立したNip+Fab は、通常200ドル以上するロディアルのミツバチ毒配合Bセラムを、似たような代替原料を使用することで、Bee Sting Fix Repairing Shotと名付けた約25ドルの美容液に作り変えて提案している

またシートタイプのフェイスマスクのように、単品販売が可能で消費者が気軽に試すことができる商品が好まれる傾向にあり、「ドラッグストアのベストセラー商品」には必ずといっていいほど、フェイスマスクがランクインしている。この流れを汲んで、Simple Skincare は安価な1枚入りの製品を2017年に発表。さらにポンズや、ユニリーバ傘下のSt.Ives からも同様のフェイスマスク商品が出ており、いずれも数ドル程度で購入できる。

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市場を牽引する力を持っているミレニアル世代への戦略は、間違いなく、企業の勝敗を分ける鍵になるだろう。現在のところ、リテールは、対費用効果をわかりやすく示したり、チュートリアル動画やメンバーへの特典で購入後も顧客とのつながりをキープする方向をとっている。これに対し、溢れる製品のなかで際立つために、他社にはないユニークなアイディアで立ち位置を定めようとするメーカーという構図ができているようだ。いずれにせよ、ミレニアル世代が目を向けているのは、商品だけではなく、その背後にある企業ポリシーも含んでいることは頭に入れておくべきだ。

また、2020年までにはミレニアル世代と同程度の人口になるZ世代についても、また別のアプローチが必要になる。またの機会にまとめてみたい。

Text:佐藤まきこ(Makiko Sato)

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