エトヴォス

独立系ブランド「エトヴォス」「shiro」の躍進は、取捨選択から始まった

◆ English version: How homegrown D2C brands are shaking up the Japanese market
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通販コスメとして誕生した「エトヴォス(ETVOS)」と、北海道の地域ブランドが原点の「shiro(シロ)」。ともにきらりと光る独立系ブランドとしてユーザーからの評価が年々高まりつつある理由を探る。それぞれのデジタルやリアルな販促へのアプローチは独特かつ、興味深い。

通販コスメとして、化粧品としての質のよさだけでなく、ブランドイメージなどに対しての満足度が高まるいっぽうのエトヴォス。北海道発ブランドのローレルからリブランディングし、グローバル展開を仕掛けるshiro。大手ブランドのようにリソースを割きにくい独立系化粧品ブランドをどのように成長させるのか。まずは2007年に誕生し、昨年10周年を迎えたエトヴォス。この10年間、売上は前年比130%増を更新し続けている。その秘密は何だろうか。

化粧品業界経験ゼロで手探りのスタート

エトヴォスの生みの親は、大人になってもニキビに悩んでいた社長の尾川ひふみ氏だ。

「きれいな肌を取り戻すには、土台を整える高機能スキンケアと肌に負担をかけないクレンジング不要のメイクアイテムが必要と思ったが、どちらも満足できるものがなく、それなら自分で作ってみようということでスタートした。化粧品業界の経験がなかったので、試行錯誤の繰り返しだったが、とにかくいいものを作りたいという一心でブランドを立ち上げた」

スタート当初のスキンケアライン

そのこだわりはいまもまったく変わらないという。だから、いまエトヴォスがここまで注目されているのも、成分へのこだわりやモノづくりの姿勢が評価されているのだろう、と尾川社長は語る。

「もちろん、化粧品選びの基準は人それぞれで、最先端テクノロジーで機能性重視がいい人もいれば、オーガニックコスメがいいという人もいる。しかもいまはいいところ取りができる時代でもある。時代のニーズと我々の目指すコスメが合致するポイントはかならずあると思って立ち上げた」

エトヴォスの転機を後押しした「河北コラボ」

河北コラボのミネラルハイライトクリーム

エトヴォスのひとつの転機が、ヘアメイクアップアーティストの河北裕介氏とタッグを組んだコラボ企画といっても過言ではないだろう。2015年9月に発売した第1弾「ミネラルハイライトクリーム」は、発売直後から雑誌やSNS等のクチコミが広がり、人気を得た。その反面、販売チャネルを限定する戦略を打ち出したことも奏功した。

「ナチュラルコスメに興味関心が高い層を新たにブランドのファンにしていくことを視野に入れ、コスメキッチン(約55店舗)とバラエティストア(100店)という限定店舗から販売をスタートした」と尾川社長。販売店舗を限定ことにより、購買意欲を高める読みは的中し、予定よりも早く目標を達成することができたという。

成功の要因はもうひとつ。“誰と組むか”だ。

「エトヴォスらしく、これからブレイクするような人に依頼したかったこともあり、あの頃はどんなヘアメイクアップアーティストの方々が活躍されているのか、よくチェックをしていた」と言い、数ある候補の中から、“ダメもとで” 河北氏に白羽の矢を立てたという。エトヴォスが大切にする「誰でも・簡単・きれい」「肌にやさしい」アイテムをつくりたい、という思いは河北氏の思いと通じるものがあり、その後はトントン拍子に事が進んでいった。

ミネラルハイライトクリームの発売と同時期に河北氏の著書『河北メイク論』(ワニブックス)が発売されるというタイミングにも恵まれた。「河北さんの人気がどんどん高まっていく中で、コラボが実現できたのはラッキーだった」と語る。

IT出身だからこその地道なデジタルマーケティング

プログラミングやWebデザインの知識がある尾川社長は、当時サイトの立ち上げからデジタルマーケティングまでをほぼひとりで行ったという。

「ITのバックグラウンドがあり、数字分析は好きだったので、PCの前で数字とにらめっこ(笑)する毎日。そこから何ができるか、いつも考えていた。メイクアイテムはどうしてもLTV(ライフタイムバリュー)が低いから、早い段階でスキンケアへスイッチさせることなど、予算がないからこそ、やるべきことのステップを決め、できることを考えひとつひとつ実践していた」と尾川社長は話す。

参考にしたのは、通販のコスメブランドのWeb戦略だ。SEO対策も早くから着手し、主要なキーワードで上位表示させるように対策をうち、ADの運用からリスティング、SNS運用まで、いまでこそ当たり前のデジタルマーケティング施策を10年前からコツコツと行っていたのだ。

SNS戦略は使い分けが肝心

「デジタルは半年単位、いや、今はもっと短いスパンで切り替わっていく。この流れに乗り遅れないように、自分の経験だけでなくさまざまな情報をアップデートしながら、エトヴォスに合う戦略を立てていた」という尾川社長だが、SNSについては慎重だったという。

「今や情報はテレビ、雑誌などのメディア発信だけでなく、“個人”も発信する時代ではあるが、SNSこそ情報の発信に気を配っている。Twitter、Facebook、Instagramのそれぞれの特徴を理解したうえでの戦略が必要だ 」と話す尾川社長だが、インフルエンサーに依頼して投稿をしてもらうということは一切やっていないという。あえて距離をとることも必要だと感じているからだ。

デジタル以外のリアルな施策にも注力

尾川社長がもうひとつ大事にしているのは、商品やブランドの価値を見える化する施策だ。たとえば、昨年は女性誌のJJ(光文社)やMAQUIA(集英社)に付録をつけて、ブランド認知の強化をおこなった。付録をつけた号は完売となり、読者からの評判も上々だったという。

さらにはエトヴォスのユーザーによるエトヴォスの“ベストコスメ”企画も実施。「ユーザーの皆さんがそれぞれに愛用している商品が異なり、企画側の私たちにも気づきがあった。中には、有名なインフルエンサーやブロガーさんなども自発的に参加してくださっていた」と尾川社長はいう。

直営店を含むリアル店舗の拡大にも注力

「来店した方々に、商品に直に触れていただく“タッチアップ”の場を設けたことは、大きかった。商品の良さをその場で感じてもらえて、ブランド認知にも貢献している」。2016年4月松坂屋名古屋店 、2017年3月大丸京都店に直営店をオープンし、今後も増やしていく予定だ。エトヴォスはまだまだ成長期だと思っている。すべての施策に予算を潤沢につぎ込めるわけではないからこそ、いまの私たちの成長に合わせてやるべきこと、やらなくてもよいことの取捨選択がカギになる」

デジタル施策にしても、リアル施策にしても、すべてを同時進行にやるのではなく、効果を見極めながらむしろ、「やらないことを決める」。リソースが潤沢にないから、ということが逆に戦略を明確にしている。

次回は、OEMメーカーから独自ブランドを立ち上げ、グローバルブランドへと成長中のshiroの戦略をとりあげていきたい。

Text: 編集部  Top Image: Alysa Bajenaru via Unsplash

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