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パペルックが化粧品D2Cソリューション開始、「最短3カ月」と「売上」にこだわる理由

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美容メディア「FAVOR」を運営するパペルックは2021年5月、化粧品D2Cソリューション事業を立ち上げた。自社の化粧品D2Cブランド「FAVES BEAUTY」事業やマーケティング支援のノウハウを活かし、商品開発~流通までワンストップで支援する。最短3カ月でブランドの立ち上げができるのも特長のひとつだ。その事業戦略から化粧品D2C市場の展望までパペルック 代表取締役CEO 小澤一郎氏に話を聞いた。

大手の新規事業案件から個人インフルエンサーまで支援

ここ2~3年、化粧品業界でも新たなD2Cブランドが続々と登場している。美容メディア「FAVOR」を運営してきたパペルックも、メディア運営で培った知見を活かし2019年から自社ブランドとして化粧品D2C事業に参入し「FAVES BEAUTY」などを手掛けている。また、クライアントワークとしても化粧品やファッション領域でD2Cブランドの立ち上げに携わってきた。たとえば、累計販売個数50万個超を記録した人気インフルエンサーブランドもそのひとつだ。最近は、“モノトーンコーデ”をブランドコンセプトとする人気ユーチューバーのブランド立ち上げを行なった。

こうした自社事業やブランド立ち上げ支援で培ったノウハウを事業化したのが「D2Cステーション」だ。化粧品D2C事業者向けのソリューションとして、商品企画、製造、EC構築、物流、小売・流通までワンストップでサービスを提供する。

事業開始直後から問い合わせも多く、クライアント数はすでに10社を超えているという。このD2Cステーションの特長について、パペルック株式会社 代表取締役CEO 小澤一郎氏は「商品を納品して終わりでなく、どう売上を伸ばすかまで伴走すること」と説明する。

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パペルック株式会社 代表取締役CEO
小澤一郎氏

クライアントは大企業から中堅、スタートアップまで幅広い。大企業を支援する場合は、初年度の売上目標2~3億円規模のプロジェクトを担う。インフルエンサーやタレントを起用したブランドの立ち上げを手掛けることが多く、目標達成に必要な事業計画の立案から実行までをコミットする。

「事業方針を固める前の段階からの相談にも応えており、ビジネスモデルの検討や細かな事業計画の策定にも伴走する。クライアントと弊社双方の強みを活かしブランドを創っていく。一方、比較的小規模の事業者を支援する場合は、商品設計から商流の見直し、EC整備などビジネスの全体設計からコンサルティングを行っている」(小澤氏)

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「D2Cステーション」のサービス概要

クライアント企業の要望やハンズオンでの支援を提供するため、費用は固定せず、臨機応変に対応する。たとえば、企画~製造までを一括して受託し、その後のプロモーション企画や運用は月額で契約、ECサイトの開発をする場合はオプションとして費用を請求するといった形だ。

D2Cブランド成功の鍵を握るのは企画から商品投入までのスピード

「D2Cステーション」のほかにも昨今、各社からさまざまなソリューションが登場している。化粧品を開発したい事業者にとって、こうした外部パートナーの支援を受けるベネフィットは何なのか。「D2Cステーション」の場合には、D2Cブランドの立ち上げにあたって課題となりやすいポイントをあらかじめおさえておき、化粧品開発をスピーディに進められるメリットがある。

たとえば、いいものを作りたいと思うと商品原価が上がる。売上や利益目標との折り合いをどうつけるべきか、複数のステークホルダーが関わるケースなどビジネスの根幹に関わる意思決定のプロセスも整理する。

「そのほかにも店頭やSNSで商品を展開するときのクリエイティブや表現など薬機法がらみで気をつけるべきポイントがいくつかある。商品にこだわってまずはファーストサンプルを作っても、基本的なルールが守れておらず作り直しになるケースも少なくない。こうした手戻りが増えれば増えるほど、時間とコストがかさむ要因になる」(小澤氏)

化粧品づくりのノウハウが少ないクライアントに対し、同社は自社ブランドやクライアントワークで培った商品開発の経験を生かして、効率的な商品企画~製造を支援する。国内だけでなく、韓国や中国のOEM企業とのネットワークを持ち、工場とのやり取りや薬機法関連の手続きも一括で請け負うなど、同社が積み上げてきたノウハウが最短3カ月のブランドローンチを可能にする秘訣でもある。

そして、このスピード感こそがD2C事業の成否を分ける鍵であると小澤氏は強調する。「昨今、韓国や中国のブランドが力を増している。商品の開発スピードも速く、一度にローンチする商品の種類も非常に多い。化粧品D2C事業を展開する場合、国内ブランドはもちろんのこと、韓国や中国の人気ブランドとも戦わなければならない。開発スピードを上げていかないと勝ち目がない」(小澤氏)

また、消費者の情報収集がSNS中心となったことから、人気色や流行メイクのサイクルも早まっている。大量のテレビCMを投下し、ブランド起点で流行を生み出すことができた時代とは異なり、そもそも1年後のヒットを見据えた商品作り自体が困難になっているいま、小澤氏は「今まさに流行っているものを波に遅れず作る、あるいは、2~3カ月先の流行をあてにいく、そのようなモノづくりが求められている」と話す。

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自社運営メディア「FAVOR」では
最新トレンドも発信する

こうしたモノづくりを実現しているのが、自社メディアのFAVORや化粧品クチコミサイトのデータから導き出した売れ筋やトレンドにもとづいた商品開発と、そしてもうひとつ、経験的に近い将来流行るとの予想から導き出した企画だ。クライアントにはそうした判断材料を提示し、それぞれのステップでの意思決定を早くできるよう支援しているという。D2Cブランド立ち上げの「代行」ではなく、D2C事業の当事者としての経験から、ブランドや事業の目標達成に焦点を当てた一気通貫の支援を展開できるのがD2Cステーションの大きな特徴といえる。

今後の注目領域はセレブブランドとパーソナライゼーション

一方、化粧品D2C市場の概況をみれば、パンデミックでオンラインシフトが進み成長スピードは増している。インフルエンサーやユーチューバーによるブランド展開は成功パターンとして定着したが、今後、注目しておくべきカテゴリーやトピックは何だろうか。

「インフルエンサーではなく、芸能人やセレブのブランドがこれからもっと出てくるだろう。昔から芸能人ブランドはあったが、今後は、たとえば米国のKylie CosmeticsKylie Skin(女優・モデルのカイリー・ジェンナーが設立した化粧品ブランド)のような、より世界観を作り込み、本人がプロモーションにもコミットしたブランドが増えるのではないか。また、サステナブルやSDGsの意識が高まっており、環境に配慮することは今のモノづくりにおいて当たり前の価値観になってきている」(小澤氏)

また、D2Cと親和性があると言われるパーソナライズ領域も注目だという。「日本では薬機法もあり、その場で個人に合わせて調合し店頭で渡すといったことはできないが、肌診断のデータをOEMの工場に送りそこから出荷する、IoTでユーザーの自宅でカートリッジから個人にあった成分を混ぜて抽出するなどの方法でクリアできれば広がる可能性は十分にある」(小澤氏)

また、化粧品D2C市場におけるブランド数や流通額は今後も増えると推測される。中長期的なD2Cの拡大は、先行する有力ブランドのビジネスにどのような影響を及ぼすのか。小澤氏は、生活者の志向の細分化に応じる形で、大手メーカーがP2C(パーソン・トゥ・コンシューマー)のようなブランドのOEMの役割を果たしていく可能性はあるものの、すでにポジションを確立した有力ブランドとD2Cブランドは引き続き共存するという見方を示す。

とくにマス市場を意識した低価格帯ブランドや、高いクリエイティブ力が求められるプレステージブランドは、ある程度の初期投資が必要になり新興ブランドの参入障壁は高い。必然的にD2Cブランドと先行ブランドのすみ分けが図られるのではないかと説明する。

自社ブランド展開とD2Cソリューションを通じて100億円の売上が目標

自社事業とクライアントワークの両面からD2Cに関わる同社は、どのような事業戦略を立てているのだろうか。自社事業では今後、FAVES BEAUTY以外にも複数のブランドを展開予定で、その中から“ヒット”と呼べるブランドを生み出すことが中長期的な展望だという。

「D2Cステーションを通じたクライアント支援においても、年間100億円規模のブランドを世に送り出すのが目標だ。我々のビジネスとしては、自社ブランド事業とD2Cソリューション事業の2つで、化粧品ベンチャー上場の基準となる100億円の売上の達成を目指している」(小澤氏)

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2021年7月発売予定の
FAVES BEAUTYのアイシャドウ

商品開発DXで誰でも化粧品が作れる世界の実現へ

さらに小澤氏が見据えるのが、D2CサプライチェーンのDX化だ。まず1つめが、OEMなど化粧品開発・製造に関わる部分のDXになる。

「もともと弊社ではWebサービス開発に会社のルーツがあり、化粧品開発のDX化に強い関心を持っている。OEM企業は国内だけでも数百社あり、OEMの利用経験がない人にとっては各社の強みや違いがわかりにくい。そこで、たとえば一社一社の情報を集めてプラットフォーム化することで、化粧品作りをしたい人とOEMメーカーのマッチングをリアルタイムで可視化するシステムを作りたい。印刷業界DXを手掛けるラクスルのように、各工場の稼働状況を見極めたうえで適切な工場へ発注する仕組みができれば、コスト低減にもなる。また、DXによって国内OEMの商品開発のスピードを上げることや、小ロットのモノづくりをサポートすることにも貢献できるだろう」(小澤氏)

2つめは、D2Cブランドのバックグラウンド業務に関するDXだ。

「ECサイトの構築や、倉庫との契約、倉庫とカートのシステムの連携といったバックエンドの整備には非常に労力がかかる。弊社は提携倉庫を複数持ち、製造した商品をその倉庫に送ってもらえれば、注文受付から発送対応までを一貫してサポートする体制を整えている。手間のかかるバックグラウンド業務を弊社が担うことで、クライアントは商品開発やブランドの発信にリソースを割けるようになる。こちらの事業に関しては、化粧品だけでなく、領域を問わず幅広いD2C事業者に利用してもらいたいと考えている」(小澤氏)

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パペルックは
アパレルブランドも複数手掛ける

この二つのDX化を進められれば、より小規模な個人単位のモノづくりが活発になるのではと小澤氏は考えている。その思いの背景にあるのが、ECショップを開設した事業者のうちアクティブなのは2割程度、そのなかで月間100万円以上を売上げているのは1割だというデータだ。

「BASEやShopifyの登場で、オンラインショップを持つことは簡単になったが、商品開発~製造の工程やロジスティックス、販売支援に対してはまだまだ十分ではない。個人や小規模ブランドが、せっかく良い商品、ポテンシャルの高い商品をつくっても上手くいかずに撤退する例も多い。センスやアイディアはあるのに適切な工場をみつけられていない、あるいは、商品はあるけれどオペレーションが回っていないなど、サプライチェーンやオペレーションのどこかに課題をもつ事業者に対しても我々のサービス提供をできるようにしていきたい」(小澤氏)

Text: 清水美奈(Mina Shimizu)
Top image: FAVES BEAUTYプレスリリース
画像提供:パペルック株式会社

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