見出し画像

変わっていく視点、変えていく視点 第3回<foufou> 健康的な消費とは、を考え続ける マール コウサカ氏【川島蓉子連載・NNを考える会】

◆ New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

川島蓉子さんによる、イノベーティブな仕事をされている各界の方々にお話をうかがい、これからのビジネスに必要とされる「視点」を探る連載の3回目は、ファッションD2Cのfoufou代表のマール コウサカさんにお話をうかがいました。

画像1

ifs未来研究所 所長
川島蓉子氏

foufou」の服は、豊かに広がるフレアスカートや、プリーツがエレガントなシャツドレスなど、上質な布をたっぷり使ったデザインが魅力的です。SNSで新作を公開してオンラインストアで販売する――全国にわたるファンがついているブランドです。

画像4

代官山のマンションの一画にあるオフィスを訪ねたのですが、「foufou」をゼロから生み出し、ここまでの道を拓いてきたマール コウサカさんの話には、”実=リアリティ”があって引き込まれます。服に限らずあらゆるブランドは、作り手の熱量が映し出されるものと改めて感じました。

コウサカさんは、文化服装学院在学中の2016年、SNSを活用したファッションブランドがまだほとんどないなかで「インターネットでファッションブランドをやれそう」というところから、一人でビジネスを立ち上げました。「学校にいると、ファッションは高尚なものという考えに染まりがちで、『おしゃれする』楽しさを忘れていた。それがInstagramを使うようになって、純粋にファッションを楽しんでいたことを思い出したのです」。最初はハンドメイドで服を作り、自分のInstagramアカウントのみで告知するところから始めたのです。

画像4

foufou代表 マール コウサカ氏

コロナ禍のなか、ファッション業界が抱えている課題については、いま多くのメディアが取り上げています。半年ワンサイクルで業界の仕組みが回っていること、売り切るためにセールを行って最終的には廃棄処分をしていること、途上国の安価な労働力に頼ったモノ作りをしていること、アウトレット専用の商品を作って売っていること、売れ筋の追究に走った大量生産から同質化に陥っていることなど――。一部では「だからダメになった」という極端な物言いがあって気になっていました。

当初からコウサカさんは、こういう業界の構造に疑問を抱き、それを少しでも解決できないかと考えていたそうです。だからブランドを立ち上げるにあたって、「健康的な消費」を目ざしたのです。

「ユーザーに向け、ヘルシーに作られたすこやかな服を届けたい。それを続けられる仕組みを作ろうと思っています」(コウサカさん)。

半年ごとのサイクルにしばられず、発表→生産→販売を行う。定価で売り切れる量だけ生産してセールを行わない。工場とも顧客ともフラットなかかわりを持つ。適正なコストをかけて適正な価格を付す。いずれも、商いとして“健やか”であり、服を作る人、売る人、買って着る人と、かかわる人たちが幸福になる循環を作る――「foufou」がやっていることは、サーキュラーエコノミーを体現しているとも思いました。

最初はコウサカさん自ら服作りをしていたのですが、予想以上の反響があったことから、縫ってもらう工場を探し、出会ったのが「nutte」というプラットフォームでした。縫ってほしい人と、縫ってくれる人をインターネットでつなぐマッチングサービスで、コウサカさんはここに依頼し、30着程度から量産を始めたのです。丁寧な職人との出会いがあり、思ったようなモノ作りができたといいます。

スクリーンショット 2021-03-10 23.39.30(2)

デザインを興すコウサカさんと「nutte」の良好な関係がうかがえます。この「nutte」を運営しているステイト・オブ・マインドとは現在、協業というかたちで事業を運営するようになり、1型で多いものは数年かけて2,000着を作って販売するようになっています。

また、当初から卸売はせず、D2Cとしてユーザーの方々に直接販売というかたちをとります。もともとD2Cを目指していたわけではなく、選択肢がそれしかなかったからとコウサカさんはいいますが、結果的に原価が50%を占める、質の良い素材をふんだんに使った良いモノづくりができているわけです。「foufou」の服が、あの価格で成立しているのはそういうことだったのかと納得です。

ファッション業界では、原価率を2~3割に抑えているブランドが少なくはありません。しかし、市場には、質の良いものを適正価格で手に入れたい、半年限りで着倒すのではなく長きにわたって愛用したいという意識を持つ人が増えています。作り手であるアパレル企業との間にズレが生じているのです。以前から兆しはあったものの、抜本的な対応をしきれていなかったことが、業界が苦しい状況に陥った一因とも思います。「foufou」にファンが付いているのは、顧客の視点に立って要望に向き合い、課題を解決するために、最善のやり方を切り拓いているからに他なりません。

コウサカさんは「売れる理由がわからなくなるのが最も怖い」と何度も口にしました。たとえば、普段は買わない服を思い切って手に入れたという人と、普段からファンで新しいデザインを気に入って買ったという人が、「買ってくれた人」と一括りにされる。なぜ買ったのかという想いを掘り下げていくことで、より満足してもらえるのではというのがコウサカさんの考えです。買ってくれた人は濃いファンになる可能性が高い人でもあります。売れなかった理由を分析することも大事ですが、売れた理由を掘り下げていくのはより重要。コウサカさんは、ブレずにこれを続けてきたから今があると思いました。

また、「消費は悪かというと、そうではないと思います。健康的な暮らしでいるためには、健康的な消費は欠かせません。良い意味での消費が社会の循環を担っているのではないでしょうか」(コウサカさん)。社会とどうかかわるかというところまで含め、指針が定まっているから「foufou」には求心力がある――誰もが納得する答えを出そうとして、当初の尖ったコンセプトが丸くなってしまうケースは少なくありません。「foufou」はその轍を踏まずに進んできたことで、顧客の心にまっすぐ伝わり、心を動かし、ファンになっていくのだと納得しました。

画像5

マール コウサカさんの著書
『すこやかな服』(晶文社)
foufou誕生の背景から
コウサカさんの考える
「健康的な消費」のカタチを紹介

「foufou」は、コロナ禍以前の2018年にライブ配信をスタートしました。他に先駆けて試みたことで、foufouの服を着たモデルが動いている映像を見ながら、コウサカさんが聴衆とやりとりします。デザイナーが、作った服の意図するところや、込めた思い、具体的なデザインのディテールについて語ってくれるのは価値あること――これはデザイナーの思いを起点に、顧客とやりとりするオートクチュールの稀少性に近く、作り手と使い手の濃いつながりが、ブランドの魅力につながっていくのではないでしょうか。

最後に「人は、合理的だからといって満足するわけでなく、思いもかけない出会いを求めているのでは」とコウサカさんは指摘しました。「便利さを越えたところにある『着たい!』という衝動をつかんでいくイメージで服を作っています」と話すのを聞いて、これはファッションに限らず、さまざまな領域に共通すると思いました。

「着たい!」という衝動は、思いがけないものに出会い、それによって自分がどんな経験をできるのかを知りたいということを意味してもいます。

こうやって、さまざまな試みに挑戦してきたのが「foufou」の歩みであり、「ある程度の影響力を持つためには、それなりの規模が必要であり、そのために成長を続けたいと思います」という潔い言葉に“キボウ”を感じたのです。

もともとファッションは、時代の先端的な動きを最も早い段階で現象化させるもの。その意味で、新しいことに果敢に挑戦するエネルギーは欠かせない才能です。そう思いながら、業界全体の空気として、若い芽や兆しに光をあてたり応援したりという空気が、もっと濃くなっていったらいいと考えています。

Text: 川島蓉子(Yoko Kawashima)
Top image & 画像提供: foufou

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
17
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp