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minumは令和のプチプラコスメ。躍進のアパレル企業yutoriが仕掛ける、時代を超えて愛されるブランド

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9090」や「genzai」などZ世代に支持されるストリートファッションブランドを展開し、2023年に東証グロース市場に上場を果たした株式会社yutoriが、プチプラ&ミニサイズのコスメブランド「minum(ミニュム)」を2024年3月に発表した。同社が化粧品ブランドを手がけるのは初めてのことだ。同社 代表取締役社長 片石貴展氏とminumブランドを手がける同社 マーケティングプロデューサー 濱田栞氏に化粧品事業参入について話を聞いた。


yutoriが手がける初めてのコスメブランドminum

Z世代の持つ多様な価値観を彼らと同じ目線のクリエイティビティに落とし込み、それぞれのファッションブランドに深いファンをもつ株式会社yutoriは、2023年12月の上場当時、代表取締役社長 片石貴展氏が30歳で、アパレル企業における最年少上場として話題となった。2024年3月には、初めての化粧品ブランドとなる「minum(ミニュム)」をリリースした。

minumのコンセプトは「品質 × かわいい × 価格 すべてよくばりたい」だ。リップ、グリッター、アイシャドウ、アイライナー、ファンデーション、ネイルといったラインナップ9種53SKUの全商品をミニサイズかつワンコインの330〜550円(税抜)で展開する。2024年3月末までに全国のドラッグストアやバラエティストア約500店舗で販売を始めており、同年9月末までに約2,300店舗まで拡大予定とする。またオンラインではAmazon、楽天市場、Qoo10で販売する。

minumのアイテムと棚のイメージ。最近のアパレルのトレンドでもある「バレエコア」を汲んだリボンモチーフのデザインとした

minumの展開は、同社の成長戦略のひとつである「Z世代×アパレル以外の別商材展開」の第一弾であるとして、片石氏はそのめざすところを "令和のプチプラコスメ" と表現する。

「ファッションは、私がこれまで深く関わり個人的にも好きな分野だが、そのトレンドは刹那的な側面が大きい。一方で、カラーメイクのような機能性も期待される商材は、良い機能性とその機能に見合った価格で提供できれば、20年、30年と繰り返し使い続けてもらえるブランドに育てられる。その意味で令和の時代に、ある種普遍的なもの、時代を超えていけるものを作っていきたいと考えた」(片石氏)

株式会社yutori 代表取締役社長
片石貴展(かたいし・たかのり)氏

プロフィール/2018年にインスタメディア「古着女子」を立ち上げ、yutoriを創業。「9090」や「PAMM」など複数のファッションブランドを運営。2020年8月 ZOZOグループへハーフジョイン、2022年4月に「F-LAGSTUF-F」、8月に「Younger Song」などを運営するA.Z.Rを買収。2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場、アパレル企業史上最短・最年少上場(IPO)記録を更新。Forbes 30 UNDER 30 JAPAN 2020受賞

片石氏のいう令和のプチプラコスメ開発の背景には、いまのZ世代の気持ちを解釈して製品に落とし込んだ要素がいくつかある。minumブランドを担当する株式会社yutori マーケティングプロデューサー 濱田栞氏は「リーズナブルな価格がユーザーにとって嬉しい要素であるのは平成から変わらない価値観だが、それだけでは、情報リテラシーが高く、購入で失敗をしたくない慎重なZ世代からは、『レギュラーサイズなのに安いのは何か理由があり、質が伴わないのではないか』という受け止め方をされてしまうのではないかと考えた」と話す。

株式会社yutori マーケティングプロデューサー
濱田 栞(はまだ・しおり)氏

プロフィール/2016年株式会社ミクシィ入社。チケットCtoCサービスの事業でエンタメ系のオウンドメディアの立ち上げ、YouTubeチャンネルの立ち上げなどを行う。2019年1月、株式会社yutoriに社員第1号として入社。新規ブランドの立ち上げ、事業全体のマーケティングプロデューサーや、新規事業部の統括も行っている

また、通常のコスメサイズの不便さとして、スマホと最小限のものだけを持ち歩くスタイルが定着しバッグが小ぶりになったこと、なかなか使い切れないフラストレーションなどを考慮し、「ミニサイズでワンコイン」とプチプラの理由を明確にした。そのうえで、同社のZOZOTOWN限定のレディースアパレルブランド「nemne」のクリエイティブディレクターとともに、最近のアパレルのトレンドでもある「バレエコア(バレエを踊るときに身につけるようなアイテムを取り入れるコーデ)」を汲んだ、リボンモチーフのデザインやブランドカラーやロゴを作っていったという。

同時進行で進めたのがイメージモデルのアサインだ。「小さくてパワフルでチャーミング」というminumのコンセプトとイメージが重なる、Z世代を中心に支持を集める俳優の齊藤なぎさ氏を起用。また以前から齊藤氏のヘアメイクを手掛け、片石氏とも親交のある人気ヘアメイクアーティストの夢月氏を同時に起用したことを片石氏は「(ピースが)カチッとはまった」と表現する。これらの明確なコンセプトとクリエイティブのもと、これまでのyutoriのアパレルブランドにはなかった新しいユーザー層をminumで開拓していく方針だ。

minumの製品開発は、ドラッグストア・バラエティショップなどの販売チャネルを持ち、「エトワルローズ」や「ぽかぽかカイロソックス」など数々のヒット商品を生み出したノウハウも併せ持つ、株式会社i.Dと協業し、ブランドコンセプトやデザインから、現代の消費者ニーズに合わせた高品質の製品を生み出す方針まで、わずか2カ月という驚異なスピードで決まったという。営業と生産をi.D社およびOEMの株式会社アクシスワン、コンセプトを含むクリエイティブとプロモーションをyutoriで手がける。

本格的なプロモーション着手前にSNSで話題に。今後はUGCが生まれる仕掛けを強化へ

TikTok、Instagram、XといったSNSでのマーケティングに強みを持つyutoriは、今後minumに関しても小売店での商品配荷の状況を考慮しつつ、2024年5月ごろからインフルエンサーによるSNSでのプロモーションを本格化させる予定だ。同3月末時点では、まだ本格的な施策は行っていないものの自然発生的にバイラルしている状況だという。

Xの公式アカウントでは齊藤なぎさ氏に夢月氏がminumを使ったイエベ、ブルベそれぞれのおすすめメイクを紹介する投稿にそれぞれ3,000超のいいねがついている。また一般ユーザーからも、minumを売っている小売店をまだ見つけられていない人に向け「minumここにあるよ」と知らせる投稿が作成されユーザー間で交流が生まれている。

「展開する店舗数がまだ少ないこと自体がUGC(ユーザー生成コンテンツ)につながっている状況。今後プロモーション施策も行っていくが、ファッションよりもコスメを買うときの方が、SNSのリアルなレビューを参考にすると思うので、ユーザーがSNSに投稿したくなるような仕掛けを商品に作っていくことが必要だと思っている」(濱田氏)

齊藤なぎさ氏×夢月氏のイエベ、ブルベ別おすすめメイク

マネジメントではなく、社員の才能やひらめきに果実があると考えるyutoriの「プロデュース経営」

2018年に創業し、2020年にZOZOの子会社となりその後3年で上場を果たしたyutoriの最大の強みは、傘下にもつZ世代に向けたニッチな29ブランド(2024年3月時点)の自立分散型マネジメントにある。しかし、片石氏は「マネジメント」という言葉を社内では禁止しているという。

「マネジメントという言葉には、行動管理という意味合いがどうしても含まれてしまう。たとえば営業会社で、少しでも多く架電や訪問などの数をこなした方が成果につながるのであればマネージャーによる行動管理にも意味があるかもしれない。しかし、我々はクリエイティブ企業だ。社員の ”再現性をもったひらめき“ によって、イノベーティブなアイディアや商品が生まれている。我々がすべきことは、そういった才能を管理することではまったくなく、『プロデュース』をすることだ」(片石氏)

役職も、社長の片石氏から、取締役、執行役員、プロデューサー、リーダー、メンバーという構成で、マネージャーという呼称はない。部下の才能を、狭い見方で定義してしまったり、引き出し切れていないプロデューサーには強く諭すこともあるという。

「若者のファッションは若者が主役であり、その当事者であるスタッフのインスピレーションにこそ、果実、つまり利益の源泉がある」と片石氏は指摘する。それは、片石氏自身が、高校生の頃からストリートシーンを一消費者として十数年見続け、そのカルチャーを当事者として感じ取れるからだ。

「初めて古着を買ったのは高校生のころで、今でこそストリートファッションはかなりヒップホップ的な文脈によってきているが、当時は雑誌でいうと『FRUiTS』や『TUNE』といったサブカルチャー的なストリートファッションだった。こういったトレンドの方向性を消費者として深く見ながら、24歳のときに起業してビジネスとしても見てきた。ポップカルチャー、サブカルチャーに対しての解像度は、他の人よりも絶対的に高いという自信がある」(片石氏)

そして、片石氏が起業した年と同じ年齢の若い世代が社内で活躍している。しかし、自分のアイディアや創造性の伝え方などにおいて彼ら若い世代はまだ不慣れでもあり、そんな彼らをフォローするのが大人の役目だという。しかし同社では、大人といっても片石氏を筆頭にいずれも30代前半だ。

「才能をもつ若手と、当事者感をしっかりもっている大人の組み合わせで再現性を持たせ、ひらめきをお金に変えていく。それこそがyutoriにとって一番大事なものだと考えている。また、我々のアパレルブランドはひとつひとつをニッチと表現してはいるが、それぞれ5〜10億円程度の売上がある。ストリートファッション自体が、ファッション全体のなかでメジャートレンドで、我々はそのなかでどうやったら勝てるかを逆算し、ニッチなトレンド群を作っている」(片石氏)

片石氏のアパレルブランド運営における基本方針は「ブランドのターゲットは、作り手と同じ年齢か下である」ことだ。その理由は、ファッションにはユーザーの文化教育という側面が強いからだという。片石氏の起業は2018年、当時24歳で、20代前半をターゲットにアパレルブランドを展開してきている。2024年時点で30歳である片石氏が25〜30歳向けのブランド(ホームウェアブランドの「PAMM」など)を展開するのはその意味で自然な流れだ。

同社では、自社ブランドや企業カルチャーが若い世代に浸透したこともあり、採用には数千人単位での応募があるという。同社で最大限に才能を花開かせ、それがまた若い才能を呼ぶ新しい経営スタイルは、いまのところ正のスパイラルのまっただ中だ。片石氏が今回、コスメ事業を手がけて得たことは、ブランドを形作るユーザー目線のマーケティングと、自社のこだわりの比率の逆転だという。それは前述したように、化粧品には求められる機能性があるからだ。

「今回minumはひたすらSNSをリサーチしてトレンド分析し、そこから何が求められているのかをロジカルに積み上げていくマーケットインの手法をとった。ファッションは大きなトレンドや世相があり、そこにどう自分たちの感度を出して、その光のなかにユーザーを集めるか、というプロダクトアウト的な自社のこだわりで8、9割ができあがっている状態だ」(片石氏)

こうした考えから、同社のアパレル事業のようにニッチなコスメブランドをたくさん立ち上げるのではなく、まずはminumを既存のアパレルブランドをまとめた規模にまでじっくり育てていく意向だ。そのコンセプトから、小中学生のメイクのエントリーのポジションも取りたいという。

「アパレルと化粧品ではアプローチは異なるが、歳を重ねるごとにその年代向けのブランドを作り、ブランドを増やしていけたらいいと考えている。自分たちが理解できるところだけで戦っていても、アパレルも化粧品も市場自体が相当大きいので十分成長できると考えている。我々は、ストレスなく楽しく、しかし急速に成長したい。勝つための戦略は考え抜いている」(片石氏)

Text: 矢野貴久子(Kikuko Yano)、BeautyTech.jp編集部
画像提供:株式会社yutori

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