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エスティ ローダーが導入の「Bambuser」、ライブコマースで従来の500倍の売上効果

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エスティ ローダーが、インスタライブからBambuserというツールによるライブコマースに切り替え、大きな手応えを感じている。わずか2週間での導入ながら成果を出せた背景は、ツールの使い勝手のよさ、そしてパンデミック前から積み重ねてきたBAへのデジタルトレーニングが奏功した。

ライブコマースの知見を蓄積してきたエスティ ローダー

エスティ ローダーのライブコマースが人気を博している。百貨店などの店頭で直に顧客と接しているBA(ビューティアドバイザー)が、おすすめアイテムの使い方を丁寧に紹介する、約30分の動画コンテンツだ。

利用しているのは、エスティ ローダーがグローバルで使用している「Bambuser」という配信ツールだ。米国では大手アパレルなども導入しており、このツールを活用したライブ配信では、商品をカートに入れる確率が平均31%といった実績が評価されている。日本のエスティ ローダーでは2021年のGW前に導入し、その後わずか2週間足らずで第1回目のライブ配信を実施したところ、それまで行っていたInstagram Live(インスタライブ)に比べ、1回当たりの売上が約500倍になったという。

なぜ同社は11万人近くのフォロワーがいるInstagramでのライブ配信をやめて、Bambuserを導入するに至ったのか。また、ライブ配信に出演するBAを、どのように育成しているのか。ELCジャパン株式会社 エスティ ローダー事業部 マーケティング本部 コンシューマー エンゲージメント マネージャー 山田かな氏、同社 営業本部 トレーニング マネージャー 江川みさ氏に話を聞いた。

ロイヤリティ顧客の心を離さず購入までつなげるBambuserのライブ配信

パンデミックにより顧客がリアル店舗に足を運びづらくなったことを受けて、すでに各ブランドはSNSでのライブ配信に力を入れるようになっており、エスティ ローダーでもインスタライブに注力してきたという。

しかしインスタライブでは、配信中にいくら盛り上がっていても、プラットフォームの仕組み上、視聴者がその場で商品を購入できないため「売上に直結しない」という大きな課題を抱えていた。「インスタライブは『つい見てしまう』手軽さが魅力ではあった。とはいえ、コマース機能がついていないことが、本当に大きなネックだった」(江川氏)

山田様

ELCジャパン株式会社
エスティ ローダー事業部
マーケティング本部
コンシューマー エンゲージメント
マネージャー 山田かな氏

Instagramから公式サイトへ移動する間に、ライブで盛り上がったユーザーの熱がどうしても冷めてしまうことが課題だった。ライブ配信の没入感から抜けることなく、シームレスに購入へつなげる手段はないものか——。

そんな折に、ニューヨークにある本社で「Bambuser」というツールを使ってライブコマースを実施している、という情報が入った。Bambuserとは1対1だけでなく1対Nのライブ配信ができるライブコマースプラットフォームだ。Bambuserで発行したコードを埋め込むだけで、公式サイト内でライブ配信を手軽に行えるようになる。商品登録や連携も簡単で、動画内で紹介した商品は、そのまま視聴を続けながら公式サイトから購入してもらうことができる。

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Bambuserを使った
公式サイト内でのライブ配信
出典:エスティ ローダー
公式オンラインショップ

「これならお客様の購入しやすい環境で発信ができる」と感じたことから、山田氏はすぐにBambuserの導入を進め、江川氏はライブ配信で使用する台本の作成やBAの選出に動き出した。

そして2021年5月13日に第1回目のライブ配信を実施。日本でBambuserのアカウントを開設してから2週間足らず、BAのトレーニング期間はわずか3日だった。なぜこれほどスピーディに動けたのかについては後述するが、まずはその成果を紹介したい。

約30分のライブ配信の視聴者数はインスタライブ時と比較すると80倍、同じく売上額は約500倍にのぼり、非常にマーケティング効率の高い結果が得られた。

集客は当日朝のSNS投稿のほか、ライブ配信が始まる5分前に、LINEの公式アカウントからプッシュ通知を送ったのみだったが、多くの顧客にリアルタイムで視聴してもらうことができた。終了後にメルマガやLINEで「見逃し配信、実施中」の案内を送ったところ、さらに多くの視聴につながっている。

このように公式サイトにアーカイブ動画を残し、そこから直接購買につなげられるのもBambuserの利点のひとつだ。「今後はBAによる動画コンテンツの一環として様々な活用方法をテストしてみたい」と山田氏は語る。

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過去に配信したアーカイブ動画も
公開している
出典:エスティ ローダー
公式オンラインショップ

また、実際にライブ配信を行ってみたところ、「プロモーションとお客様のニーズやオケージョンとを掛け合わせることで、高い効果が得られると感じた」と山田氏は振り返る。「ある程度の期間続くプロモーションやキャンペーンの場合、初速はいいが、中だるみの時期がどうしてもあり、インパクトも薄れがちだ。だが、その中だるみのときに、お客様のニーズやオケージョンに応えるテーマのライブ配信で商品を紹介すると、改めて新鮮味を感じてもらうことができ、相乗効果が生まれたように思う」(山田氏)

ちなみにInstagramでは投稿やストーリーズ、IGTVではタグ付けをすることによるコマース誘導機能はあるが、現在のところライブ配信では不可能だ。また、公式オンラインショップで使えるキャンペーンコードを適用することもできない。ライブ配信や動画視聴の特典としてキャンペーンコードが付けられるのは、公式サイトと連携できるBambuserならではの利点といえる。

加えて、Bambuserはインスタライブと同等の手軽さでありながらトラッキングがしやすいのも特徴だ。「リアルタイムで見ている人の数」「いいねの数」などがわかるのはもちろんのこと、「配信中に何人が商品を買い物カゴに入れているか」「配信時間内に、いつどのくらい視聴者が入れ替わっているか」「どこでいいねやコメントが増えるのか」といったユーザーの動向が確認できる。これらの機能は見逃し配信でも同様だ。これだけ精緻なトラッキングができれば、ブランド側がライブ配信をするうえでのPDCAが回しやすくなるだろう。

目指すのは「エンターテイメント」と「エデュケーショナル」が融合したコンテンツ

わずか3日のトレーニングでBAによるライブ配信がスムーズに始められたのは、同社が、そもそもBAに対してSNS対応をはじめとしたデジタルトレーニングをパンデミック前から取り組んできたことが大きいと江川氏はいう。

それに加え、2021年4月から「オムニビューティアドバイザー(以下オムニBA)」という職種を新設していた。オムニBAとは、SNSでもBA活動を行う訓練を受けた特別な立場のBAである。

最初に日本のオムニBAとして選ばれたのは数十名。個人アカウントでSNSでの活動が盛んなBAや、過去のトレーニングでSNSに向いていると判断したBAのなかから、江川氏が選出した。パンデミックでますます重要となった今後のSNS活用を見据え、Bambuserの導入以前から、ワークショップ形式でオムニBAのトレーニングを始めていたのだ。

江川様

ELCジャパン株式会社 営業本部
トレーニング マネージャー 江川みさ氏

「BAが行うライブ配信には大きく2つのタイプがある。『お得感を売りにするタイプ』と、『説得力で売るタイプ』だ。とはいえ、どちらかのみに偏ると結果として面白くなくなってしまうのも感じてきた。ちょうどその中間で、“学びもあって、つい買いたくなる楽しさもある”コンテンツづくりを目指している」(江川氏)

その「中間の面白さ」の加減をどう実現しているかは、実際に動画を見てみるとよくわかる。その時々で異なるコンセプトを設定し、衣装や小物にもこだわっている。たとえばマスク生活のベースメークを紹介する回では、夏の朝をイメージしたさわやかな青空を背景に、ヘアバンドをつけて白いTシャツを着たBAが登場。テーブルには紹介する商品とともに、午前7時にセットされた時計が置かれている。こうした衣装や小物をしっかり揃えることで、視聴者からのツッコミが入りやすく、インタラクションが生まれるきっかけになるのだという。

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2021年5月「マスク生活のベースメーク」を
テーマにした際のオフショット

エスティ ローダーのエレガントなブランドイメージを保ちながらも、ユーザーとの間に親近感が生まれることで、視聴者から「このBAのいる店舗に行きたい」という声も多数あがっている。そこで今後は公式サイト内にBAの予約システムをつけて、ライブコマースから店舗への誘導も計画している。

「ある意味、BAは日頃の接客のなかでも『演じている』ことから、カメラにさえ慣れてしまえば、ライブコマースの演者になるハードルはそう高くはない。特に若いBAには演者としてのセンスを感じることが多い」(江川氏)

ライブコマースをきっかけにOMOとしてあらゆる境界を溶かしていく

美容業界の課題として、BAのITリテラシーを高める必要性があるというのは、よくいわれることである。だが、エスティ ローダーでは、これまでにも現場にいろいろなテクノロジーを取り入れてきた。そのなかで江川氏が心をくだいてきたのは「テクノロジーを使うのは何も怖いことではなくて、『楽しい&かわいい』ことなのだ」という見せ方をしながら、テクノロジーを使う文化を定着させることだった。

「SNSはBAにとっても、お客様にとっても生活の一部になっている。BAからインフルエンサーの情報を教えてもらうこともある。もはや『商品を売るのは営業の仕事』『BAは対面のお客様にだけ接していればいい』という時代でもない。営業とマーケティング、オンラインとオフラインなど、あらゆる境界線が溶けているのを感じる」と山田氏は述べる。

オムニチャネル化に向けて、今後はさらにSNSでの活動にも力を入れていく。TikTokに美容企業として初めて公式アカウントを持ったほか、Instagramではリールを活用して新規顧客との出会いの場にしたいと考えている。すでに顧客からは「エスティ ローダーのリールが上品なエレガントさが身近に感じられて、すごく好き」というツイートもあり、評判は上々だ。

とはいえ、プラットフォームの特性に応じて多数の動画をつくり分けるのは大変ではないのか。それでも自社で動画コンテンツをつくり続ける狙いについて、山田氏は次のように語った。

「伝えたいメッセージをそのまま届けられるのは、インハウスのクリエイティブならではだ。我々の熱量がダイレクトにお客様に伝わっていると感じる」

Bambuserには簡単な動画の編集機能もついているため、ライブ配信後の動画を切り出して活用することも可能だ。「Bambuserでライブコマースをやってみて、多くの収穫が得られた。インスタライブでは、何かお得なプロモーションや新商品の発売情報などがなければ、ユーザーの目を引くのが難しく発信しにくかったが、Bambuserでは工夫次第で既存品の紹介もコンテンツとして活用できる」と語る。

7月から次年度に入るエスティ ローダー。「Bambuserでできることは、まだまだあると感じている。今後、改めて企画していきたい」(山田氏)

Text: 野本纏花(Madoka Nomoto)
Top image & photo: ELCジャパン株式会社

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