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【VivaTech2024①】ロレアルがリードするビューティテック、デバイスから生成AIラボ、3Dプリント皮膚まで

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2024年5月に開催された欧州最大級のテクノロジーの国際展示会「Viva Technology 2024」を現地取材し、3回に分けてレポートする。第1回は、ロレアルの展示ブースより、消費者向け美容デバイスから、人工皮膚研究、生成AI活用、そして、クリエイターエコノミーの促進まで、全方向でビューティテック追求を加速するロレアルの展示ブースを取り上げる。


顧客体験、R&D、サプライチェーンのあらゆる側面でのテクノロジー活用

第8回となる「Viva Technology(以下、VivaTech)」が2024年5月22~25日、仏パリで開催された。今回は生成AIやサステナブル関連テックがプログラムの中心となり、2,800企業が出展、13,500のスタートアップが参加し、延べ16万5,000人以上が来場。400名以上のスピーカーによるトークセッションが行われた。また、日本が特別招待国(Country of the Year)に選ばれ、オープンイノベーションに積極的な大企業やスタートアップ60社からなるジャパン・パビリオンを出展。オープニングセッションでは、岸田首相のビデオメッセージとともに、岩田経済産業副大臣、宮坂東京都副知事が登壇し、日本のスタートアップ・エコシステムを世界に発信し、海外展開や海外からの投資を促した。

化粧品分野では、ロレアルとLVMHが会場中央にブースを構え、生成AIで創造性やビジネス効率を高める事例、顧客体験を高めるデバイスやサービスなどを発表した。従来のAIが決められた行為の自動化が目的であるのに対し、生成AI(Generative AI:ジェネレーティブAI)は、データのパターンや関係などの学習済みのデータを活用し、新たなデータやコンテンツを生み出すことを目的とするもので、今回のVivaTechでもとくに注目されるトピックとなった。VivaTech 2024をレポートするシリーズの第1回は、ロレアルのブースで公開された生成AIの活用事例や、先端技術を採用した美容デバイス、人工皮膚テクノロジーを紹介する。

展示テーマの3つの柱は「テクノロジー」「サイエンス」「クリエイティビティ」

「美の業界のリーダーであり続けるためには、 ビューティテックのリーダーとなる必要がある」と、ロレアルグループの副CEO兼リサーチ&イノベーション テクノロジー責任者バーバラ・ラヴェルノス(Barbara Lavernos)氏はVivaTechのプレスカンファレンスで述べた。その言葉は、テクノロジーが同社のサイエンスや創造性、顧客体験の向上に必要不可欠で、さらには、持続可能性やインクルージョンの課題解決にも貢献していることに裏付けられている。

‘’よりパーソナライズされ、包括的で、責任あるビューティ’’へのコミットメントを強化するロレアルは、今回のVivaTechで「Beauty for Each, Powered by Beauty Tech. (ビューティテックによる、一人ひとりのためのビューティ)」を実現するイノベーションを、テクノロジー、サイエンス、クリエイティビティの3つの柱で発表した。

プレスカンファレンスの模様
画像提供:Viva Technology 2024

「テクノロジー」:ランコムやキールズ、ロレアルプロフェッショナルの先端デバイス

超精密ナノチップで、化粧品効果を高めるスキンケアデバイス導入のランコム

1つ目の柱は美容デバイスを使用したテクノロジーだ。毎年、VivaTechを画期的な美容機器を発表する場としているランコムは、400以上の超精密ナノチップを先端につけた一般ユーザー向けの電動デバイス「RENERGIE NANO-RESURFACER| 400 BOOSTER (レネルジー ナノ-リサーフェーサー| 400 ブースター)」を公開。特許取得のナノチップ技術搭載で、エイジングケア用セラム「レネルジー HCF トリプルセラム」の角質層への浸透を高めて、製品の効果を増幅させる。使い方はセラムを肌につけ、4分間デバイスを使用、その後に同シリーズのクリーム「レネルジー HPN クリーム」をつけてケアする3ステップだ。セルフケアをより効果的にするとしており、週2〜3回の使用を推奨する。2025年1月に欧米で250〜300ユーロ(約4万2,400〜5万900円)の価格で発売される予定だ。

RENERGIE NANO-RESURFACER| 400 BOOSTER

ロレアル プロフェッショナルはサロン用ヘアカラーアナライザーを発表

ロレアル プロフェッショナルからは、美容室で使用する超精密光学を採用したヘアカラーアナライザー「My Hair [iD] Hair Reader(マイ ヘア [iD] ヘア リーダー)」が登場した。美容師が顧客の髪の根元、中間、毛先の3カ所をスキャンすると、髪の長さごとの色、白髪の割合、毛髪繊維の直径や密度を測定するハンディタイプのデバイスで、AR搭載のカウンセリングアプリケーションと組み合わせて、顧客が望むヘアカラー選びをサポートする。顧客の髪質データやヘアカラー履歴をアプリに保存できるため、次の来店時のカウンセリングの正確性が増し時間の短縮にもなる。

My Hair [iD] Hair Reader

そのほか、米国で行われたCES2024でロレアルが発表した生成AI搭載のパーソナル美容アシスタント「L'Oréal Paris Beauty Genius」や、赤外線と高速風を組み合わせたドライヤー「AirLight Pro」は、会場で実際に試用できる体験コーナーが設けられ、スタッフが丁寧に使い方を説明した。ロレアルにとって、来場者一人ひとりが明日の顧客になりうる消費者であり、来場者のリアクションやコメントをマーケティングに活かしていくと考えられる。

L'Oréal Paris Beauty Genius

「サイエンス」:美容産業のためのバイオ・プリントの人工皮膚研究を公開

2つ目の柱であるサイエンスでは、スキンサイエンステクノロジーにフォーカスがあてられた。ロレアルは1979年以来、生物学的および皮膚科学的研究のために、動物実験の代替として、ヒトの皮膚を再構築した人工皮膚(エピスキン)を開発して安全性試験を行っている。湿疹やニキビ、日焼けやケガの治癒能力など人間の皮膚の多様性をより忠実に再現しており、世界各地のスタートアップや著名な研究機関などと協力し、実際に刺激を感じることができる皮膚の開発にも取り組んでいる。

会場では凹凸のある肌にフィットできる、最新の3Dバイオプリントによる人工皮膚の研究を初めて一般公開し、同社の最先端サイエンス技術を印象づけた。この研究にあたり、ロレアルは米オレゴン大学とパートナーシップを結んでおり、化粧品やスキンケア製品のより正確な試験方法に取り組むとともに、医療への応用の可能性を探っており、引き続きスキンサイエンステクノロジーの研究に投資し、ヘルスケア業界、スタートアップ、研究機関とのコラボレーションを進めていく予定だ。

3Dバイオプリントによる人工皮膚の展示

「クリエイティビティ」:生成AIコンテンツラボ「CREAITECH」の開設

さらに、3つ目の柱のクリエイティビティでは、ロレアル社内に生成AIのコンテンツラボ「CREAITECH GenAI Beauty Content Lab」を開設し、コンテンツの制作プロセスでの生成AIの活用方法を研究していることを発表した。これにより、37の美容ブランドで、グローバルのブランディングに依拠しつつ国ごとのニーズに合わせたコンテンツ制作を拡大、またマーケターに最新のクリエイティブテクノロジーを習得させるとする。

これは、昨今のSNSやEコマースのビジネススピードに対応し、CVRを高めるビジュアル制作の必要性が高まっていることが背景にある。ロレアルグループのチーフデジタル&マーケティングオフィサー アスミタ・デュバイ(Asmita Dubey)氏は、「CREAITECH GenAI Beauty Content Labは、人間の創造性と生成AIツールを組み合わせて何ができるかを証明するものだ。ブランド独自のビジュアルコード(ブランドのルールを示す符号)を認識するよう生成AIにラーニングさせた私たちの新しいブランドカスタムモデルによって、(各ブランドに準拠した)革新的なビューティキャンペーンをより早く立ち上げることができる。重要なことは、責任あるAIの原則を損なわずに行うことで、外部コミュニケーションにおいて、製品の利点を裏付けたり、強調したりするために、顔、体、髪、肌の画像においては、人工的に生成された画像を使用しないことが含まれる」と述べた

同社はすでに過去8カ月にわたって、WPP NVidiaエンジンをはじめ、複数の大規模言語モデル、拡散モデルなどを使用しており、生成AIの実験のために確保された(画像の漏洩や流出がない)安全なスペースで、1,000以上のビューティイメージを作成するために、20以上の生成 AI Techをテストし、傘下のブランドとともに数十回のワークショップを実施している。また、すでにラ ロッシュ ポゼとケラスターゼは、コンテンツ制作プロセスで生成AIを活用しているという。

ロレアルブースで行われた「CREAITECH GenAI Beauty Content Lab」のセッションの様子

ブース内で開催されたトークセッションでは、生成AIの導入はビジュアルイメージの創造性を高め、制作コストと時間を削減するとし、同社がどのように生成AIを使用しているかがステップを追って説明された。創りたいビジュアルイメージのキーワードとなる言葉(プロンプト)を入力すると、生成AIでイメージが生成される。それを担当者がブランドのDNA(哲学)に合っているか検討し、AIにラーニングさせるのだという。さらに、会場では、来場者が生成AIを使ったビジュアル作成を理解しやすいように、デジタルサイネージで製品の要素や背景を選べる模擬体験を創出した。

模擬体験用デジタルサイネージ

メタとの協働で「クリエイターエコノミー」をさらに促進

さらに、ロレアルグループとメタ(Meta)は、3D、AR、AIの次世代クリエイターをエンパワメントし、美容の新たな創造的フロンティアを探求するため、新しい美の規範を創るクリエータープログラムを発表した。ロレアルはSNSで6万人以上のインフルエンサーと協働してコンテンツを発信しているが、ロレアル パリ、ランコム、ラ ロッシュ ポゼの3ブランドでは、最先端の技術をもつ30人のクリエイター集団とも協働体制を築き、新しいクリエイティブ領域を開拓するとしている。

VivaTech会場では、ラ ロッシュ ポゼの日焼け止め製品のキャンペーンでSNSに投稿した動画に連動した体験を創出。カメラ付きのデジタルサイネージでロレアルブース内に太陽光が降り注いだ空間を創り出し、来場者が手で光をさえぎるポーズを取ると、同ブランドの日焼け止め製品が画面に現れ、来場者の頭上で止まり太陽光から守るストーリーだ。SNSコンテンツの世界に没入する体験とともに、日常的なUVケアの重要性を伝える目的があるという。

ラ ロッシュ ポゼのデジタルサイネージ

デジタル活動・広告におけるサステナビリティにおいても業界をリード

また、広告業界において世界第4位の広告主であるロレアルは、デジタル活動から生ずるCO2排出量を測定し、環境インパクトを削減する手段の特定に努める「360°のデジタル・サステナビリティ」を掲げており、会場では、提携する3社、デジタルメディアのカーボンフットプリントを測定するIMPACT+、コンテンツ制作におけるカーボンフットプリントの基準値を測定するAdGreen、Webサイトのカーボンフットプリントを測定するFruggrの各社との試みを紹介し、来場者がその取り組みの内容と現状を確認できるミニゲームを用意して、同社の活動の認知を広めた。

デジタル環境での疲れを香りで癒すリアルな体験を提供したイソップ

さらに、2023年4月に同グループ傘下となったオーストラリア発イソップは、会場の一角にブランド哲学が感じられる実店舗を模した空間をつくり、来場者が好みのイソップ製品を手や顔につけて香りを吸い込み、デジタルデトックス(ここではスマホなどデジタルデバイスと距離を置き、現実世界や自然との触れ合いにフォーカスする試み)を実際に体験できる場を設けた。同ブランドはその誕生から合理的で持続可能なコンセプトを追求しており、今回の展示で使用した家具などは実店舗やオフィスで再利用するという。

イソップの店舗を模したコーナー

今回のロレアルブースは、美容領域のさまざまなテクノロジーに触れる体験にフォーカスしており、一つひとつの展示を通じて、その中身をわかりやすく来場者に伝えていこうとする姿勢がこれまで以上に強く、ビューティ業界においてテクノロジーがいかに有効であるかを示す意思が感じられた。1909年に化学者によって創業されたロレアルは、以来115年にわたって髪と肌の研究に注力してきた。今後も、時代を先取りながら、一人ひとりの美に寄り添うイノベーションを加速させていこうとしている。

次回は、VivaTechの共同創設者であり、ラグジュアリー業界トップのLVMHグループのブースについてレポートする。

<そのほかのVivaTech 2024レポートはこちら>
(2)LVMH が志向する人間×デジタルによる顧客体験のグレードアップ

Text & photo: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: 著者撮影

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