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ロレアルなど美容企業トップ3の研究開発動向から、来たるべき未来が見えてくる

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化粧品売上上位3社のR&D(研究開発)動向をまとめた。大きな特徴は、製品開発だけでなく、パーソナライズなどのデジタル開発やサプライチェーンマネジメント技術もR&Dで行っていることだ。特にロレアルは、消費者動向の変化を定義した上で、R&Dが果たすべき役割を明記しており、戦略を読み解きやすい。※ランキングは、BeautyPackaging のTOP20 GLOBAL BEAUTY COMPANIES(2017)より

グローバル美容企業の戦略傾向は、成長著しい途上国でのマーケット拡大、成熟した欧米市場での「プレミアム」「シニア」「メンズ」の各セグメントでのシェア拡大、ミレニアル世代に向けては、ナチュラル志向、企業の透明性や環境配慮への対応、そして、デジタル化とパーソナイズでの動きが著しい。この戦略に沿って、各社のR&Dもこれらの領域での活動が行われている。グローバルトップ3社の2018年上半期のR&D動向をみていく。

ロレアル: ユニバーサルを軸に顧客体験すべてのパーソナライゼーションに力を入れる

Image: 360b via Shutterstock.com

ユニバーサル(Universalization)を戦略の軸に据えているロレアルのR&D(ロレアルではResearch and Innovation (R&I) と呼ばれている)は、グローバリゼーションを捉えるだけでなく、人の欲望、ニーズ、伝統の違いを理解し、リスペクトしあうこと、テーラーメードのビューティーを提供し、地球のすべての地域の消費者の望みを満たすことを目的としている。

2018年上半期の売上高は133.9億ユーロ、研究開発費は4.47億ユーロと前年同期から5.7ポイント上昇した。2017年1年間では、売上高の3.4%である8億7700万ユーロを研究開発に投入。世界に20のリサーチセンターを持ち、3885人のエキスパートを抱え、生物学、化学、生物物理学、毛髪生物学、皮膚幹細胞、ヘアスタイリング、ロボット工学、環境科学など30を超える領域を研究している。

世界中で大きく変わる消費者の動向をくまなくリサーチした結果、以下の6つの変化に着目し、R&Dに取り組んでいる

1: 超接続社会で、個人を常にプレゼンテーションし続けなければならず、ビジュアルが求められるため、メイクアップのブームが訪れている

2: インフルエンサーがスターとなるソーシャルビューティー時代で、自己主張を見た目で行えることから、人とは違う製品を探し求めたり自分で演出するDo it Yourself用アイテムが求められている

3: バーチャルになるほど現実とのつながりが求められ、実店舗での経験が消費のカギとなる。製品のパッケージやテクスチャーなどの新しい知覚・感覚が求められる

4: 環境汚染、ストレス、寝不足などから、健康や美容が侵され、健康志向で情報を求める消費者が増加。予防医療をはじめ、ナチュラル・オーガニック製品が拡大している

5: 4の結果、企業への透明性をはじめ、環境配慮製品が求められている

6: すべての領域において、即時性と高い効果が求められている。パーマネントメイクアップやメスを使わない非侵襲性の美容療法(※1)のブームがきている

※1 化粧品としての即効性や、美容機器などのデバイス領域までを指している

この6つの変化から、単なる製品のパーソナライズだけではなく、製造もマーケティングもすべてをパーソナライズする「超パーソナライズ」をロレアルは目指し、2011年にドイツ政府が推進しはじめた製造業のデジタル化を目指すINDUSTRY4.0のコンセプトを採用。

2014年のロンドンでのガートナーサプライチェーンカンファレンスで、5年かけたサプライチェーン改革計画を実施していることも明らかにしており、2017年には20位だったガートナーのサプライチェーンランキングは、2018年に15位にランクアップするなど、着実に実装を進めている。 

ロレアルのR&D関連の主な動き

■ 1月15日 新しい顧客の要望に対応するため、敏捷性とデータを軸にバリューチェーンの再構築を行っているロレアルのINDUSTRY 4.0の取り組みについて情報発信

■ 2月26日 2018年1月にロレアル プロフェッショナルが、新しいバージョンのStyle My Hairアプリをリリース、ModiFaceのARとディープラーニング技術を使いバーチャルにヘアカラーを試せるサービスを開始

■ 3月22日 20年以上続く学生向けイノベーション コンテスト ロレアル ブランドストーム2018を開催、6か月にわたり世界中の学生 3万4700人が、ヘアサロン体験の未来を考え抜く 

■ 3月28日 ロレアル傘下の米No.1 ドクターズコスメブランドのSkinCeuticals(2005年にロレアルが買収)とロレアルのカリフォルニアリサーチセンターが開発したD.O.S.E、消費者の肌をスキャンし、加齢による肌の問題を解決するために必要な成分をテーラーメードで組み合わせるサービスを開始した

■ 5月17日、5月22日 Viva Technology Paris 2018で最新のパーソナライズされたデジタル製品やサービスによる美容体験を発表・展示している
L'Oréal presents the New Beauty Experience at Viva Technology Paris 2018 VIVA TECHNOLOGY 2018: SPOTLIGHT ON CONNECTED BEAUTY

ユニリーバ: 透明性・環境配慮に力を入れる

Image: JPstock via Shutterstock.com

2018年1月の記事「先進国も途上国も。全方位で顧客へアプローチするユニリーバの成長戦略」で、歴史的にみて、リサーチを活かした新規事業創出ができたり、あるいはテクノロジー企業の買収をしたりしても、その後の育成が苦手であることを自社でもよく理解した上で戦略を組み立てていることを詳しく解説した。2018年上半期のR&Dの動きをみても、その路線は変わらない。ゆえに、派手にR&Dのニュースリリースを自らはしない傾向がある。「ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2018年上半期デジタル施策総まとめ」にも書いたが、自身が得意としている顧客目線でのメッセージを主体とした環境配慮や透明性などの動きを、R&Dでも着実に積み重ねている。

また、世界的に物流コストや人件費高騰の中、ロボットによる業務自動化(ロボティクスプロセスオートメーション、RPA)などへの投資をはかりデジタル化を推し進めているが、それを支えているのがユニリーバのR&D部門で、ガートナーのサプライチェーンランキングでは3年連続1位の実績を出している。

2016年から行われている組織の簡素化の一環で、2018年3月にロッテルダムからロンドンへビューティー&パーソナルケアの拠点が移転。それに伴い、R&D機能の一部もロンドンに拠点を構えた。食品やホームケアプロダクツも含む研究開発の投資額は年間10億ユーロ(1100億円)を超え、6000人以上が研究開発・イノベーション関連のプロフェッショナルとして働いている。

ユニリーバのR&D関連の主な動き

■ 2月15日 SmartLabelを使い、香料成分を法令以上に開示すると発表

■ 3月2日 英国リヴァプール郊外ポート・サンライトに、ホーム・パーソナルケア製品開発をサポートするノース・ウェスト・イノベーション・センターをオープン

■ 3月15日 永続的な成長のために実施している“Connected 4 Growth”プログラムで、組織を3事業に編成し、ビューティー&パーソナルケア部門・ホームケア部門の本部をロッテルダムからロンドンへうつすことを発表。これに伴い、ビューティー&パーソナルケアのR&Dの一部もロンドンへ移動する

■ 4月4日 PET廃棄物を透明なバージングレードの材料に変換する革新的な食品包装技術確立のため、世界最大のPET生産者インドラマ・ベンチャーズと、オランダのアイントホーフェン工科大学からスピンオフしたクリーンテック企業Ioniqaと提携

■ 4月13日 フード・アグリ(農業関連)スタートアップを支援するSmartLifeと提携

エスティ ローダー: マーケティングにも活用できる科学を研究

Image: Sorbis via Shutterstock.com

2017年のR&D投資は1億7900万ドル(約200億円)で、売上の約2%を投入している。プレステージラインに特化して、毎年全商品の20%が新商品としてリリースされており、500以上の特許を出願している。エスティ ローダーにとってのイノベーションとは、自社ブランド製品やパッケージ、販売方法までテクノロジーを用いて革新を続けることであり、それを自社のウェブサイトにも明記している点が特徴である。

したがって、発表される内容は、基礎科学だけではなく、マーケティングとして利用するための研究内容も含まれている。たとえば、2017年にシステムバイオロジーに着想を得て、肌のリフトアップに効果があるスキンケアアプローチを発表したり、生体力学を基にまばたきが肌に与える影響を解明し、目もとのスキンケア製品の開発に活かすなどしている

エスティ ローダーが定義するイノベーションは幅広いが、R&D部門は、スキンケアに効果のある原料を開発し、製品を作るところに特化している。エスティ ローダーのR&Dは他社と同様に、皮膚科学や生物物理学などの基礎的な研究をはじめ、分析科学やイメージングなどの領域の研究を行っている。韓国とカリフォルニアにトレンドラボを持っており、サイエンスだけでなく、各地域の文化的な要素も研究している

エスティ ローダーのR&D関連の主な動き

■ 2月21日 アメリカ皮膚科学会で、皮膚の老化と有効成分について発表

■ 5月28日 「皮膚細胞は光を“みて”いる」 夜間のブルーライトが皮膚細胞本来のサーカディアン リズムに与える影響を解明

まとめ:
研究開発には、既存ブランドの発展、新規事業の育成、将来的なイノベーションの創造と大きく3つの役割があるが、競争力を維持し、成長を継続させるために、各社力を入れている領域は異なる。ビューティーグローバルTOP3社の動きを比較すると、ユニバーサルを実現するために製品を作り配送し販売するところまで、一連の顧客体験すべてのパーソナライゼーションに力を入れるロレアル、透明性・環境配慮に力を入れるユニリーバ、顧客を軸にマーケティングまで考えて研究開発をするエスティ ローダーと各社の動きに違いがあることがみえてくる。

7月31日に公開したBeautyTechの記事「ロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー。2018年上半期デジタル施策総まとめ」で、各社の戦略的な動きをまとめたが、それを科学的に支えるパーツの1つがR&Dで、全体戦略とのブレが少ないのも特徴だ。何をやり、何をやらないのか。目先のことにとらわれず、大きな流れの中で、自社の経営戦略を各部門で忠実に追求することが、顧客にとっての価値を生み出し、売上・利益につながることが見て取れる。

Text: 秋山ゆかり(Yukari Akiyama)
Research: 清水美奈(Mina Shimizu)
Top image: Becris via Shutterstock.com

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