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アマゾンが結局一人勝ち? グローバルな化粧品販売競争、それぞれのブランドの思惑

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2018年第2四半期のアマゾンのビューティ関連品の売上げは9億5,000万ドル(約1,053億円)。化粧品業界大手小売として無視できないアマゾンの成長はさらに続く。

米アマゾンがビューティ関連分野のEコマースで猛烈な攻勢をかけている。

米国の巨大なオンライン化粧品市場におけるアマゾンのシェアは21%にのぼり、2016年にはすでに、オンラインで購入される化粧品の5つに1つはアマゾンのマーケットプレイス経由となっている(CB Insights調べ)。また、アマゾンが、史上最大のショッピングの祭典になったと自ら宣言した2018年のプライムデーでは、1億点を超える商品が購入されたが、そのうちの5%にあたる500万点がビューティ関連の商品だった。

さらに付け加えるなら、2018年第2四半期のアマゾンのビューティ関連品の売上げは9億5,000万ドル(約1,053億円)で、前年比26%増となっている(One Click Retail 調べ)。その存在はすでに強大で、美容業界全体に大きな影を投げかけているといえるだろう。

パートナーシップの長所と短所

大手メーカーにしろ、インディーズやスタートアップにしろ、アマゾンに参加するか否かはブランドにとって悩みどころだ。

一番の利点はなんといっても、アマゾンの圧倒的な集客力に加えて、大規模なロジスティックスと流通ネットワークを利用して、大量かつ幅広い層の消費者にスピーディに商品が届けられるところにある。

しかし一方で、数千ものコスメブランドがマーケットプレイスにはひしめいており、競争は熾烈だ。値下げ合戦になる可能性も高い。あわせて、デジタルストアの棚に横並びしながらブランドポリシーを貫くのは困難で、顧客とダイレクトにつながりパーソナルな関係を築く機会も失われる。

アマゾンのプラットフォームにのるということは、結局、購入履歴や売れ筋情報など貴重な顧客データをアマゾンが独占するのを許すのみならず、アマゾンが独自のPB(プライベート・ブランド)化粧品を企画したり、より良いマーケティングを考えるための教材を与えているに過ぎないのではないかと懸念するブランドも少なくない。

実際2018年1月には、手頃な価格のカジュアルウェアが中心のアマゾンの自社ファッションラインfind.に、新たにメイクアップコスメが加わることが、英アマゾンから発表された。アイシャドウパレット、マスカラ、アイライナー、ハイライター、口紅、ネイルカラーなどを揃え、アイシャドウ3色セットやマスカラ&ライナーなどお得なパック売りで、いずれも20ドル(約2,200円)以下のドラッグストア価格での販売となる。

アマゾンfind.ラインのアイシャドウ
出典:COSMETICS BUSINESS

経営コンサルティング会社A.T. Kearneyの2016年の調査では、オンランで化粧品を購入する人の69%が「最初に商品検索をするサイトはアマゾン」と回答しており、セフォラの41%、Ultaの37%を大きく引き離している。アマゾンは一般消費者の生活に確実に浸透しているのだ。かつて、本の価格破壊と流通システム革命を起こし、零細な独立系書店を駆逐して書籍販売業界の地図を塗り替えたように、アマゾンが化粧品リテーラーに壊滅的な打撃を与えるのではという危惧は、現実味を帯びてきた。

また、アマゾンがハイブランドや高級化粧品の販売に苦戦してきたのは、周知の事実だが、ここにきて状況が変わりはじめている。ビューティ関連製品の拡充を積極的に推進した2017年、ラグジュアリー製品の売上げは前年比47%増、2018年にはさらに伸長して前年比57%増を記録しているのだ(One Click Retail 調べ)。

囲い込みを進めるアマゾンと対抗策

現在、アマゾンのビューティサイトには、3つのカテゴリーのショップフロント(オンライン店舗)が用意されている。デパートの化粧品売り場にあるような高級ブランドを集めたラグジュアリー・ビューティ、サロンやスパで使用される製品が主体のプロフェッショナル・ビューティ、そして、2018年6月に立ち上げられたインディ・ビューティだ。

出典:米アマゾンのIndie Beautyページ

なかでも注目のインディ・ビューティは、天然成分オンリーやヴィーガンなど独自のコンセプトにこだわった中小の独立系ブランドのみをラインナップ。セフォラやUltaなどの大手コスメショップと真っ向から競合する品揃えだ。インディ・ビューティで販売できるブランドは、オーナーが50%以上の株式を有し、Ulta、Target、ウォルマートなどでは販売してない商品であることが条件となる。セフォラやUltaは、特定のブランドと提携し、同社のサイトのみで購入可能な限定商品や共同開発したスペシャルバージョンのラインを持っているが、アマゾンは同じことをしようとしている。

そこにあるのは、幾万もの商品が溢れるなかで、どこにでもあるわけではない、ユニークな化粧品ブランドを見つけたいという現代の消費者心理に対応した、これまでのアマゾンの「棚」とは違うつくりで、売上げを伸ばそうという意志だ。

アマゾンのビジネスモデルは基本的に、商品を他よりも安く早く消費者のもとに届けることにある。これは、定番の日用品や消耗品の購入にはぴったりで、アマゾンがここまで成長した要因の1つだ。だが、化粧品を検索し購入するカスタマーは、違うショッピングスタイルに慣れている。彼らが求めるのは、例えば単に肌を潤す化粧水ではなく、色々な化粧水を見比べて、機能や成分、コンセプト、ボトルデザインから、もちろん価格、そして、作り手であるメーカーの哲学まで、様々な角度から吟味する“体験”なのだ。

さらにできることなら、実際に肌にのせたときのテクスチャーや使い心地、香り、発色などを購入前に試したいと考える顧客が少なくない。化粧品のショッピングは、特売にあわせて、どこのブランドでも大差がないトイレットペッパーをまとめ買いするのとは全く異なる。

こうしたことから、アマゾンはビューティ&ウェルネス分野では、これまでのような圧倒的な業界ディスラプターにはなれないだろうとする観測もある。「アマゾンがビューティ製品を買う顧客一人ひとりにカスタマイズした、レベルの高いパーソナライズドサービスを構築できるのか、注意深く見守っていくべきだ」とある業界ウォッチャーは語り、「インディコスメはただ並べれば売れるわけではない。Ultaやセフォラのようなリテールは、ブランドを発掘し、時間をかけて育てることをしてきた」と分析する。

2018年、UltaはFortune 500にリストされ、目覚ましい急成長を遂げた企業の1つに称された。アマゾン同様、ハイエンドブランドからプチプラまで幅広い商品レンジを誇る同社は、新店舗を続々オープンさせる方針はこれまでどおり続けるとしており、ロイヤリティ・プログラムの拡充や、スマートミラーやAI解析などビューティテックへの投資も積極的である。また、LVMHグループのセフォラは売上高を公表していないが、9%程度の堅調な伸びを維持しているとされる。

Ulta Beauty ラスベガス店
出典:shutterstock

化粧品専門のリアル店舗、これは今のところアマゾンが持たないものだ。もちろん、アマゾンも、デジタル・ポップアップショップを開設したり、学生のためのアマゾン・キャンパス・プログラムなどでプレミア会員の特典を強化するなど、策は打っている。加えて、アマゾンは、2022年までに自社のプライベート・ブランドの売上げを2,500万ドル(約27億円)に拡大すると算出している。そこには、何らかの勝算に基づいた仕掛けが隠されているはずだ。

ブランドがアマゾンに与する理由

では、ますます巨大化するアマゾンに出店するメリットとデメリットを、企業側はどうみているのか。ニューヨークがベースのファッション関連オンラインメディアGLOSSYによる2018年12月に公表された調査で、興味深い結果が出ている。

サーベイに回答したのはGLOSSY+ Research Panelのメンバーである149のファッション&ビューティブランドのエグゼクティブで、内訳は59%がビューティまたはウェルネス、41%がファッションとなっている。

このうち、今現在アマゾンに出店しているブランドは46%、していないブランドは54%とほぼまっぷたつに分かれた。それぞれに2019年の計画を尋ねると、非アマゾン派は91%が2019年も出店の予定はないと回答。9%が出店を考えているとした。これに対し、出店組の96%が2019年もアマゾンでの販売を継続するとし、取りやめるのは4%にとどまったのだ。

つまり、マーケティングの要となるカスタマー・データが得られないとか、顧客の囲い込みができない、価格破壊やブランドイメージの低下の心配など、アマゾンのマイナス面が色々指摘されているにも関わらず、アマゾンを実際に利用したブランドのほとんどは、今後もパートナーであり続けることを選んでいるわけだ。

出典:shutterstock

これは、アマゾンに出店しているブランドが、大きく分けて2つのタイプであることにも由来するかもしれない。

1つは、すでにブランドとしての評価を固めており、アマゾンがなくてもやっていけるだけの実績がある大企業。アマゾン側にしてみれば、マーケットプレイスの看板として参加してもらいたいブランドでもあり、彼らはその影響力を背景に個別に有利な条件の契約が結べる。マス向け、高級路線など、製品アイテムに幅があるので、限定した商品だけを戦略的にアマゾンで販売することもできる。

もう1つは、リスクと引き換えに、アマゾンという大きなプラットフォームを舞台にブランド認知を向上させ、業績を飛躍的に伸ばすことを狙う中小企業やスタートアップだ。

そして、現実にアマゾンでの販売は利益をもたらすようだ。

前述のサーベイでも、アマゾンに出店しているブランドに、2019年のアマゾン経由で得られる収益見込みについて質問したところ、売上高が「大きく上昇する」が26%、「少し上昇する」が53%で、「変わらない」の14%を入れれば、93%が肯定的な見方を示した。「大きく減少する」と予測したのは2%にすぎなかった。

ブランドの選択肢は?

好むと好まざるに関わらず、アマゾンが有力な小売りの場になった今、化粧品ブランドは、自社はどうするべきか早晩決断を迫られる。

合成着色料や化学香料は一切使わない、肌と環境に優しいナチュラルコスメをうたうEtta + Billieは、インディ・ビューティの立ち上げの際に、アマゾンから参加を勧誘されたが断った。2018年当時、Glossyのインタビューに応えて、創業者はその理由を次のように語っている。

「(インディ・ビューティ上の)自社ページの内容はこちらでコントロールできるが、どの商品や画像が上がるかはアマゾンが管理する。広告も、幾ら払っているかに応じた彼らのサーチアルゴリズムに基づいて動く」。しかも、そのアルゴリズムはアマゾン側の理由で予告なく変更されるのだ。同社は商品を発送する際、1つひとつに手書きのカードを添えて送り出すが、アマゾン・フルフィルメント・センターはそんなことはしてくれない。商品が客の手元に到着するスピードは確かに早いかもしれないが、「顧客とダイレクトにつながる機会を手放すことはしない」とEtta + Billieは断言している。

一方、創業者を含め社員6名のスタートアップMeow Meow Tweet は、2018年8月から天然素材使用のデオドラントとソープをアマゾンに出品している。月間売上げの15%がアマゾンからで、25%が自社EC、残りがセレクトショップなど約250の取引先小売店だという。前年比12〜15%で成長している同社は、2017年の収益は100万ドル(約1億1,000万円)を超えた。

米アマゾンに掲載された
Meow Meow Tweet製品

似たようなコンセプトの商品が集まるインディ・ビューティのなかで埋もれないため、自社ページを持とうと計画している同社だが、アマゾンはブランドに対し、在庫管理とカスタマーサービスはアマゾンのポータルを使用することを求める。それはつまり、既存の自社ECのシステムは使えず、顧客と直接コンタクトすることもできないうえに、アマゾン担当のスタッフを用意する必要もある。

だが、Meow Meow Tweetは、フェイシャルケア製品を新たに投入する予定で、人的資金的な投資に見合う売上げの伸長がアマゾンには見込めると自信をみせる。

資金力のある大手ブランドのなかには、自社サイトをデジタル化して、そこですべてが完結する顧客体験を生むことで、アマゾンに対抗しようという動きもある。

ロクシタンはライブチャットやレビュー機能を持つ自社オンラインショップで、ヨーロッパ市場での成長を図っているが、2019年2月ロンドン市内を対象に当日デリバリーサービスを開始すると発表した。ECサイトまたは店舗のタブレットから決済すれば、購入した品がロンドン市内のショップから即日配達される仕組みで、今後早い時期に、英国全土にある86の店舗でも利用できるようにすることをもくろんでいる。

前述した英アマゾンの新コスメラインの具体的なローンチ時期が明らかにされないのがいい例だが、アマゾンは拡大戦略の要となりうる一手を、大々的なアナウンスをすることなく黙々淡々と進める、いわゆる“ステルス”な企業として知られている。そして、気付いた時には市場のシェアを制圧し、いつの間にか人々は当たり前のようにアマゾンを利用しているという構図を作ってきた。今、化粧品業界においてもアマゾンは深いところで静かに動き始めている。

Text:そごうあやこ(Ayako Sogo)

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