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ヴィーガンコラーゲンや廃棄物活用などサステナブル化粧品原料の開発ラッシュ

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地球環境保全に向けた世界的な消費者意識の高まりは、クリーンビューティ製品の需要をますます押しあげている。これを受けて、より“クリーン”な化粧品原料の開発が急速に進み、ヴィーガン認証コラーゲンや、第2のレチノールと称されるバクチオールなど、市場へのインパクトも大きなナチュラル原料が次々と登場している。国内外の話題の成分を中心に一部を紹介する。

米国の調査では、Z世代の86%とミレニアル世代の84%が、「サステナブルな商品かどうかは購入決定に影響を与える」と答えている。このトレンドは世界各地に広がっており、こうした消費者意識に対応するため、サステナブルな化粧品原料の開発が原料メーカー、化粧品会社で活発になってきている。テクノロジーを駆使して開発された環境ダメージの少ない新原料や、廃棄物の再利用など、クリーンビューティを支える化粧品原料について紹介する。

ヴィーガンや生分解性など最新技術で生まれた原料

化粧品原料開発の現場では最新技術を活用してクリーンな製品開発を前進させ、これまで存在し得なかった新しい原料が生み出されている。

♦︎ヴィーガンコラーゲン

JLand Biotechは2020年9月、ヴィーガンクオリティのコラーゲン「ビオラーゲン(Biollagem)」を発表した。コラーゲンは従来、動物や魚を由来に精製されるものだが、ビオラーゲンは完全に非動物性で、Vegan Societyの認証も取得している。

JLand Biotechでは、特許を取得した独自の発酵技術を利用し、菌類のピキアパストリス(Pichia pastoris)酵母からコラーゲンを製造することに成功した。このヴィーガンコラーゲンは、拒絶反応のリスクが低い非アレルギー性で、動物性コラーゲンの200倍のパフォーマンスを発揮することが確認されている。

皮膚真皮の繊維成分の90%を占めるコラーゲンは、細胞と細胞をつなぎ合わせる役割を持ち、肌の弾力を保つ働きをするため、保湿やエイジングケアに効果的な成分であり、多くの化粧品で使用されている。ビオラーゲンは、フェイシャルマスクやクリーム、ローションなど、さまざまな製品に配合することができ、動物性成分を避けるベジタリアンやヴィーガンの消費者が増えている化粧品市場に大きなインパクトを与えると考えられる。

♦︎サトウキビ由来の生分解性香料

香水や食品などに使用する香料のリーディングカンパニーであるスイスのジボダンも、サステナブルな原料の開発に力を注いでいる。同社では1950年代に「アンブロフィックス(Ambrofix)」と呼ばれる生分解性香料を発表し、以来アンブロフィックスは洗濯洗剤やシャンプー、高級フレグランスに至るまで幅広く採用されている。そして2019年、サトウキビを発酵させて、100%天然由来かつ100%再生可能な炭素を維持する新しいアンブロフィックスのバイオ技術製造法を発表した。これにより、1kgのアンブロフィックスを製造するために必要な土地を百分の一に減らせるとしている。従来と同一の香料としてのクオリティと特性を保ちつつ、地球環境の保護につながる革新的な製法といえる。

♦︎100%天然由来のサリチル酸

さらにジボダンは2020年9月、紅心大根から抽出した赤い色素「Red1805」と、100%天然由来のサリチル酸「Neosalyl(ネオサリル)」を発表。Red1805は、100%天然由来でヴィーガンかつクルエルティフリーな原料で、合成着色料の代替えになりうる。

一方、ネオサリルは中国雲南省で栽培されたチェッカーベリーの葉が原料だ。葉から抽出したエッセンシャルオイル冬緑油にはサリチル酸メチルが豊富に含まれており、これをフランスの工場でサリチル酸に変換する。サリチル酸は角質除去や抗菌作用などの働きがあり、ジボダンでは化粧品業界向けの原料としてネオサリルを配合したパウダー「S3D® Powderful」を提供している。数滴の水に溶かして乳化したものを肌に優しくマッサージするようにして塗り洗い流すと、肌表面の老廃物が取り払われ、よりクリアな肌が現れるとしている。

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S3D® Powderful
出典: Givaudan公式サイト 

食品廃棄物などをサステナブルな化粧品原料へ

環境保護に配慮して、廃棄物を活用する動きもある。これらの試みは、環境問題にコミットするブランドの姿勢を消費者に示しながら、環境負荷の軽減や社会貢献となるメリットがある。

♦オーガニック プレミアムエタノール

日本国内で、休耕田を利用したプレミアムエタノールの製造を推進しているのが、ファーメンステーションだ。岩手県奥州市胆沢の田んぼで、有機JASオーガニック米を栽培するところからスタート。収穫した米を丁寧に砕き、そこに麹と酵母を加え、もろみを発酵させてじっくりとエタノールを抽出する。石油由来のエタノールに比べて、刺激を感じにくく臭いも抑えられており、付加価値の付くオーガニック天然原料として評価が高い。

ファーメンステーションでは、エタノール抽出後に残った発酵粕も化粧品の原材料に使用するほか、鶏や牛の飼育農場で餌にするなど、ゴミを出さない循環型のビジネスモデルを実践しており、未利用資源を活用したソリューションの提供やサステナブルツアー開催なども行なっている。

♦︎植物ヒト型セラミド

サティス製薬も廃棄されてきた農産物に目を向けている。同社は2020年7月、和栗の皮からヒト型セラミドの抽出・精製に成功した。国産植物からの化粧品原料開発を進めるなかで、和栗の皮にヒト型セラミドが豊富に含まれていることを発見。これは、むき栗の生産で生じる副産物であり、これまでは廃棄されてきたものだ。サティス製薬は、この栗皮からセラミドを抽出、精製して「植物ヒト型セラミド」と名付けて特許を取得した。

この植物ヒト型セラミドは、肌にあるセラミドに近い超長鎖構造を持っており、高いバリア機能が期待できるという。今後は植物ヒト型セラミドを化粧品に配合し、同社のOEMでも活用していくとする。

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出典: サティス製薬公式サイト


♦︎コーヒー滓由来の高機能オイル

前出のジボダンも、廃棄物を原料に転換する開発に取り組んでいる。デンマークのバイオテック関連スタートアップ、Kaffe Buenoと共同で2020年6月、使用済みのコーヒー滓から新しいオイル「Koffee’Up」の製造に成功した。このオイルは、肌の保湿や保護、アンチエイジングなどに効果があり、「新しいアルガンオイル」とも称されている。ジボダンでは自社ブランドのGivaudan Active Beauty からKoffee’Upを配合した目元用ジェル「Eye Shot Express」を発売している。

ジボダンは、サイエンスやテックから食品まで幅広い分野のヨーロッパのスタートアップを支援するアクセラレータープログラム「MassChallenge Switzerland」にパートナー企業として参加しており、今回の開発は、このプログラムを通じスタートアップと初めてコラボレーションして生まれたものだ。

植物など天然由来の新化粧品原料

最後は、クリーンビューティの根幹を支える、植物などの天然素材から新しい原料を開発した事例について紹介する。

♦バクチオール

天然由来の化粧品原料のなかでも、近年、大きな注目を集めているのが、第2のレチノールと呼ばれる「バクチオール」だ。レチノールは、ビタミンAの一種で、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の生成を促すため、毛穴を引き締め、小じわを減らしたり、細胞のターンオーバーを加速させる効果があるとされ、ここ数年でレチノールを配合したエイジングケア化粧品が一気に増えた。しかし、レチノールは紫外線によって壊れやすく不安定で、さらに皮膚表面の角質を徐々にはがしていく過程で、ピリピリした刺激や、赤みやかゆみを感じたり、乾燥したりする副作用がおきやすく、肌が弱いと使いにくいという特徴がある。

これらの欠点をカバーするのが、レチノールと化学構造が近いバクチオールだ。バクチオールは、アーユルヴェーダや漢方治療にも使われてきた素材の、マメ科の植物オランダビユから採取する植物性である。皮膚への働き方がレチノールに似ており、抗炎症、抗酸化、抗菌作用がある。コラーゲンの生成を促すほか、紫外線による変化がほとんどなく日中でも使用が可能だ。

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Bakuchiol Booster
出典: BYBI Skincare 公式サイト

米国セフォラやクリーンビューティ専門ECのCredo Beautyでは、10ドル以下から100ドル超まで、幅広い価格のバクチオール配合美容液やクリームが販売されている。日本においては、ドクターズコスメmidorinomoriがナノバクチオール入り「Bセラム」を2020年8月に発売。また、バクチスコーポレーションからは「バクチススキンセラム」が2020年9月に発売された。

できるだけ自然に近い成分と製法にこだわったクリーンビューティが、一般消費者にも広く浸透しはじめた欧米では、年齢に抗わず、シワやたるみを自然の摂理として受け止め、レチノールやレーザーなど肌に強い刺激を与える強力なエイジングケアよりも、そもそもの肌を健康的に強化する“ウエルネスアプローチ”にシフトしている。それが植物性で副作用が少ないバクチオールの人気につながっているとの見方も出ている

♦︎ニュージーランド原産カヌカハニー

さらに、ニュージーランド原産のハーブ、カヌカツリーの花から採れたカヌカハニーも化粧品への配合成分として近年話題になっている。抗菌作用が高い蜂蜜として知られるマヌカハニーと同様に、マオリ族が皮膚の病気や痛みの緩和に用いてきたカヌカハニーは、マヌカハニーとは異なり天然殺菌成分メチルグリオキサールは含まないが、最近の研究から保湿成分や抗炎症成分が多く含まれていることがわかってきた。

このカヌカハニーを活用しているのが、P&G傘下のニュージーランドのスキンケアブランドSNOWBERRYだ。同国にある22ヘクタールの森をそのまま自社農園としており、原料となる植物を手作業で採取するのに加え、自然に近い状態の養蜂場を持ちカヌカハニーを必要な量だけ生産して、クリームやフォームクレンザーなどの製品に配合している。この農園では、二酸化炭素排出を補うために植樹を行うなどして、7年間でカーボンフットプリントを80%削減。全製品において二酸化炭素排出が実質ゼロである「ゼロカーボン」認証を取得している。

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Nourishing Lite Cream
出典: SNOWBERRY公式サイト

♦︎カメリア種子抽出液

資生堂が現在取り組んでいる研究開発の1つに、カメリア種子抽出液がある。同社は東京医科歯科大学との共同研究で、生体に備わる細胞の特別な応答機構のオルタナティブオートファジーを世界で初めて化粧品分野に応用し、皮膚の細胞を内側から整えて良好な細胞活動をサポートするアプローチを見出した

オートファジーは、細胞がミトコンドリアなどの細胞内小器官を自食する機構のことで、新陳代謝やストレス対応に重要な役割を果たしている。一方、オルタナティブオートファジーは、紫外線ダメージでDNAが損傷するなどの、通常のダメージやストレスを超えたトラブルに対応して、細胞内組織の再構築を促す応答機構だ。

そして、このオルタナティブオートファジーの発動を、カメリア種子抽出液が促進する作用があることを、資生堂はあわせて発見した。カメリア種子抽出液により皮膚の細胞が内側から健やかになる可能性が示されたとしている。今後は、この研究成果を活かしたスキンケアの開発を進める予定だ。

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出典: 資生堂公式サイト

地球環境の保全に向けた取り組みは、大手化粧品メーカーや小売り企業にとって最優先事項となってきている。ロレアルが「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」という2030年に向けた新たなサステナビリティ・プログラムをローンチしたり、米アマゾンが、環境への負荷が少ない商品を消費者が一目でわかるように、独自のマークを付与する新プログラムを導入するなど、具体的な施策が次々と発表されるなか、クリーンビューティを支えるサステナブルな原料開発がますます重要性を増していきそうだ。

Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)、編集部
Top image: ARTFULLY PHOTOGRAPHER via Shutterstock

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