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新生WWDジャパンはデジタルと紙、ファッションと美容を融合。その深慮遠謀

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中核とする紙メディアと、ウェブやソーシャルなどのオンラインを融合する「ONE WWD JAPAN」構想を宣言したINFASパブリケーションズ。「WWD JAPAN.com」編集部のもとに、紙媒体を「WWDビューティ」編集部と統合する。メディアのOMOとも呼べるこの構想について、ファッションとビューティ、2つの業界に知見を持つWWD JAPAN.com編集長 村上要氏に詳しく聞いた。

「デジタル化が急速に進むビューティ業界は、OMO化で先んじている。当然、ビューティを扱うメディアについても(OMOを)やらなければならないとずっと考えていた」。なぜ、「ONE WWD JAPAN」を推進するのかという問いに対する、村上氏の答えである。

2020年7月6日、ビューティの週刊誌「WWDビューティ」を発行するINFASパブリケーションズは、“9月から「WWDビューティ」が変わる”と銘打ち、同編集部を「WWD JAPAN.com」編集部に統合し、美容コンテンツのデジタル化をさらに加速させることを発表した。

それに伴い、現在週刊紙の「WWDビューティ」は、サイズを変更しビューティとヘアのW表紙となり、マーケットの定点観測などのデータや業界への提言を盛り込んだ月刊誌として生まれ変わる。そして、毎月第4月曜日に発行する「WWDジャパン」に同封されることが明らかになった。

さらには「WWDジャパン」本紙にも美容コンテンツを大幅に増やし、ファッション×ビューティ連動特集を掲載するなど、大きなリニューアルを行い、パワーアップを図る。

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「WWD JAPAN.com」編集部のもとに一本化されることで、ウェブサイトはこれまで以上に美容コンテンツが拡充される見込みで、時事性の高いニュースはSNSを絡めるなど、よりタイムリーな発信ができるとしている。

オーガニック&ナチュラル、ベストコスメ特集といった「WWDビューティ」の人気企画はオンラインでも取り上げられる予定で、情報がオンラインとオフラインをまたいで行き来し、読者はどちらでも好きなタッチポイントから読みたい記事にアクセスができる、いわばメディアのOMO(Online Merges Offline)化を目指す。これこそが、デジタルとプリント、ファッションとビューティの融合をうたう「ONE WWD JAPAN」構想の肝にあたるものだ。

オンとオフの垣根を超えて
美容コンテンツを3倍に拡充

編集者がウェブと週刊紙と月刊誌、3つの媒体を行き来するのは、それぞれが自分の紐づく媒体の仕事を優先し、読者やクライアントのニーズとかい離する恐れを排除する目的もあった。つまり、スタッフや記者の意識にも、ウェブや紙媒体といったジャンルの垣根を取り払うOMOの発想を持ち込んで、変革をうながそうというわけだ。「WWD JAPAN.comのもとに集約したのは、みんなに“ドットコム”という大きな輪のなかで活動しているという大前提を理解してもらいたかったからだ」と村上氏は話す。

そしてこれはまだ紙が強い、日本のメディア状況に即した独自の施策である。「US版の『WWD』はアプリとオンラインに注力しており、中国版の『WWD』はもはやSNSアカウントだけだ」と村上氏は明かす。

「そもそも、一般の人はもう当たり前のように、オンラインとオフラインを行き来している」と、村上氏は化粧品ブランドSHIROの対面販売なしのデジタル店舗「SHIRO SELF」を例にあげる。

同店を訪れたユーザーはスマートフォンをかざしQRコードを読みとることで、気になる製品情報や使い方を音声や画像で知る。対面接客のないショッピング体験を提供する新業態だ。こうしたサービスを使いこなす消費者が現れている今、メディアがOMO化することはむしろ自然な流れといえる。

「ユーザーへのビューティ・コンテンツのアウトプットは5つある。ソーシャル、ウェブ、ファッション&ビューティの週刊紙、ビューティに特化した月刊誌、そしてイベントやセミナーだ。これらをコンテンツの性質にあわせて連動させつつ、カスタマイズすることで、クライアントに対して販促や業界の内外へ認知拡大のソリューションが提案できると考えている」として、村上氏は、商品ページへのQRコードを掲載するカバー・オン・カバーや、TikTokとのオンラインセミナー、ライブ動画の配信など、すでに始めているアウトプットを横断した施策例を挙げる。

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あわせて村上氏は「2018年には全体の9%だったビューティ・コンテンツを早い段階で30%まで引き上げることを目指す。いずれはファッションと1対1の50%まで引き上げたいくらいだ」とする。

その背景には「ファッション=ビューティ」との思いがある。両者は別々のカテゴリーとして峻別されているわけではない。自己表現として服をまとうときに、メイクやヘアスタイルは、自身が“美しい”と思うもの、すなわち世界観を表出するために欠かせない要素であり、ファッションと美容は分かち難く影響し合っているからだ。その意味で「ファッション業界の人にもビューティトレンドの最新を知ってもらう」ことは極めて重要だと村上氏は考えている。

TET指標にもとづく記事でPVもアップ

並行してWWD JAPAN.comでは、記事コンテンツの質の向上にも務めている。昨年、事実関係を並べたニュース速報よりも、コンテクストを踏まえて深掘りした記事に傾倒する方向へとシフトし、評価はPV(ページビュー)ではなく、TET(Total Engagement Time / 全ユーザーの総滞在時間)を一番の指標におくことにした

これは「プロシューマー(プロ×コンシューマー)」と名付けた、業界への興味・関心も、感度も高い人々に、ある程度読者ターゲットを絞ったことも背景にある。彼らが興味を持つ情報を投げかけることで、コアユーザーとの結びつきの強化を図るもので、結果としてPVの向上にもつながった。

TET指標を採用しコンテンツの方向性を固めた2019年夏の3ヶ月間で、WWD JAPAN.comの月間PVは600万増となり、現在の月間PVは2,500万を超えている。また、現在の読者ボリュームはプロシューマーを含むエンドユーザーが6割で業界関係者が4割、UU(ユニークユーザー)は約440万となっている。

ファッションとビューティの
融合が生む最強のブランド

ファッションとビューティの融合を牽引する村上氏は、美容業界が今後どのように変化していくと考えているのだろうか。

図1

WWD JAPAN.com編集長 村上要氏

「美容業界の卓越している点は、R&Dに莫大な投資をし、かつ売るために、並々ならぬ気合を入れて緻密な戦略を立てているところだ。何年も研究を重ねて開発した新製品が“当たらなかった”では済まされない。それを避けるためにデータ収集やマーケティングに力を入れ、テクノロジーを活用している」(村上氏)

これに対し、ファッション業界は半年のシーズンごとに仕切り直しができるような空気があり、極端なことをいえば「今回は今ひとつだったが、次はまた新たに挑戦すればいい」というリセットが容易で、ビジネスとして「ファッション業界には甘えがある」と村上氏は感じている。

一方で、視点が1つの製品などミクロに向かいがちな美容に対して、ファッションには「この服に袖を通したら人生が変わるかもしれないと思わせるような、エモーションにダイレクトに訴える力、ヒトを変える力、ダイナミズムがある」のが一番の強みだとする。

それが「ファッションと美容がお互いの良いところと悪いところを学び、アップデートしていけたら最強じゃないか」と村上氏が語るゆえんである。また、AIドリブンなツールやサービスが製造、流通、販売のさまざまなレベルで発展し、技術的な面からいえば「誰でもブランドを創始できる時代だ」とも指摘する。

村上氏は、ファッションが持つ大きな世界観にたった高揚感のあるブランディング力と、ビューティの緻密なプランニング力、双方の利点を兼ね備えたブランドが登場することを期待しているのだ。そのうえで「誰もが簡単に何かを始められるからこそ、世の中を“こうしたい”という明確な思いを持つ人が、これからは強いのではないか」とし、デジタルトランスフォーメーションの時代、むしろ新しいものを生み出す原動力は「ヒトの気持ちに回帰すると思う」と語る。

「最近の(とくにラグジュアリーな)ファッション業界はお洒落じゃないと参入できないような、ある種の排他性を感じさせる。また、ビューティを格下にみているのではないかと思うときもある」と村上氏は率直に語る。

「ファッションとビューティ、2つのテーマを掲げた新生『WWDジャパン』だからこそ、そのどちらも巻き込んだ大きな潮流が生み出せる。それが僕たちにできることだ」

Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image: Karina Tess via Unsplash

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