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個装やセンサーなど、非接触かつサステナブルな化粧品テスターがこれからの主流

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リアル店舗での化粧品購入体験における重要な柱の1つであるテスターの使用中止が続くなか、センサー付き自動ディスペンサーや、1回分ごとに個装包装されたリップテスターなど、ソーシャルディスタンスや安全性を保ちつつ、商品のお試しができる製品が次々に登場している。CEW Franceのオンラインセッションで紹介された最新の動きをレポートする。

ウィズコロナで、消費者行動はどう変容し、化粧品業界はどのようにこの危機を乗り越えていけるのか。収束が見えない未曾有の状況下で、7月2日に美容業界の管理職のための国際組織、コスメティック・エグゼクティブ・ウーマン「CEW」 のフランス支部が「Go Stronger Together」と題してオンラインセッションを開催。大手企業、スタートアップ、調査会社、PR会社、産業団体などが、それぞれの見地から購買行動を分析し、今後のトレンドやリアル店舗で有効なトライオンツールなどについて語った。

調査会社NPDグループによると、欧州全体における化粧品産業の1月〜5月の売上前年比は、スキンケア30%減、メイクアップ39%減、フレグランス32%減と大きく落ち込んだ。また、プレステージ化粧品における国別の4月前年比は、スペインが34%減、フランス36%減、イタリア40%減となり、3国とも外出禁止令が発令された直後1週間で売上が急降下した。

一方、北米では米国は26%減、カナダは23%減、欧州のなかでもドイツは22%減と、いずれも20%台のマイナスに留まった。この差は自粛生活期間の実店舗の営業状況、制限措置の緩和のタイミングにもよるが、一時的にオンラインが消費者の主な販売チャネルとなったことを踏まえると、EC利用が浸透している国ほど、影響をより小さく抑えられたとも読み取れる。同調査会社は、世界的に美容業界の回復には少し時間がかかるが、EC利用は加速し続けるとみており、早期のデジタル化、オンラインとオフラインを融合するOMO施策、接客の工夫など、購買を再び活性化させる施策が急務となりそうだ。

これまでラグジュアリー化粧品が販売の主戦場としていた実店舗では、コロナ禍以降来店者は自由に商品に触れたり、テスターを使用することができない。また、美容部員が来店者にメイクを施すタッチアップも難しい状況が続いている。美容業界向けメディアPremium Beauty Newsのエヴァ・ラガルド(Eva Lagarde)氏は、ウィズコロナの時代は感染症から身を守る「安全」と「サステナブル」なビューティを求める傾向になると指摘し、実店舗でも有効な非接触のトライオンやサンプリングのソリューションを紹介した。スキンケア、メイクアップ、フレグランスの例を挙げる。

リアル店舗で利用できる電池式の非接触テスター

スキンケアでは、Meiyumeが手をかざすと適量の美容液が出るモーションセンサーによるディスペンサーをいち早く開発した。ディスペンサーのデザインはブランドイメージに合わせてカスタマイズ可能で、ケア製品のほかフレグランスにも使用できる。電池式のためさまざまな場所に設置可能で、顧客が自らセンサーに近づいて試すため、美容部員との適度な距離も保てる。

Meiyumeのskincare_dispenser

Meiyumeの非接触テスターのプロトタイプ
出典:Premium Beauty News

モーションセンサーによる非接触のディスペンサーは、2019年からランコムのシャンゼリゼ大通り店で、ジェニフィック アドバンスト(Advanced Génifique) のテスターとして採用されており、コロナ禍を機に、需要がさらに高まると予想される。

リサイクル可能な1回分のリップテスター

メイクアップでは、1988年創業の化粧品サンプル製造企業Livcerが、1回使用分の木製のリップテスター「Livstick」を発表し、注目を集めている。

棒先にリップが付けられた、まるでマッチ棒のようなヴィジュアルのテスターは、唇を傷つけないよう配慮した仕様になっており、実際に口紅を塗るように手を動かしてつけて色味を確認することができる。テスターは6つ綴りになっており、店頭で切り離して使用する。Livcer幹部のオード・ドゥ・リヴォニエール(Aude de Livonnière)氏は「Livstickは使い方が簡単なうえ、色味が一目でわかり、売り場で場所を取らず、低コストで、できる限り環境に優しい設計にしている」と同メディアのインタビューに答えている。

通常、サンプルの容器は複数の素材を組み合わせて作ることが多く、容易にリサイクルができない。だが、このテスターはポリエチレンのみで作られたパッケージに入っており、使用後は「木」と「パッケージ」に分けてそれぞれリサイクル可能な仕様にしている。

Livcer のlivstick

6つ綴りのテスターは、
一つずつ切り離して使用する。
出典:Premium Beauty News

Livstickは今年のメイクアップ関連製品の国際展示会MakeUp in Parisで、IT プロダクト部門のアワードを受賞しており、9月から市場に導入予定だ。また、同社が2016年に開発したマスカラの1回分のサンプルも、実店舗でのトライアルに活用できるだろう。

ゲランで採用された
マスカラの1回分のサンプル

次世代のエコ・フレンドリーな試供品

フレグランスでは、iD Scentから、香りが長続きする特殊な紙に香水を染み込ませたテスター「SCENTOUCH」が登場している。香水ボトルをイメージしたデザインの紙製のテスターで、キャップの部分を上に引っ張ると、香りが染み込んだ細長い棒状の紙が現れ、そのまま鼻に近づけて香りを確認したり、手首などに擦り付けて試せる仕組みだ。デザインは商品パッケージにあわせてカスタマイズできるため、消費者はブランドの世界観を掴みやすく、実際にフレグランスのボトルを開けるような疑似体験をしながら香りを体感することができる。

フレグランスの試供品といえば、アルミパウチ、プラスチックまたはガラス製のアトマイザー、ミニチュアサイズがこれまで定番だったが、SCENTOUCHは環境を配慮し、リサイクル可能な紙100%で作られている。液体状ではないため扱いやすく、店頭サンプリングのほか、Eサンプリング、雑誌の差し込み広告にも有効だ。

このエコ・フレンドリーなテスターは2019年9月に国際パッケージ展示会LUXE PACK Monacoで発表され、11月から市場に導入された。すでに資生堂グループが2020年1月〜12月の独占使用権を得ており、新フレグランス「Narciso ambrée」のサンプリングキャンペーンでは600万枚が配布されるという。

2020年5月に行われた資生堂グループの
フレグランス「Narciso ambrée」の
雑誌サンプリング

このように、フランスでは非接触で、地球環境を配慮したトライオン、サンプリングツールが複数発表されている。パンデミックをきっかけに、消費者の健康やサステナブルへの意識がさらに高まっており、プロダクトでもローカルで生産された原料を使用して移動に伴うCO2排出量を削減したり、使用済みのコーヒー豆などの食品廃棄物をアップサイクルしたり、さまざまな開発が進んでいる。

また、EC利用率の上昇にともない、商品配送時のプラスチック使用量の増加が懸念されており、持続可能な包装材のソリューションが求められるなど、あらゆるタッチポイントで透明性と環境保護の取り組みを徹底した企業に共感が集まりそうだ。

今後、美容業界はどのようにしてパンデミックがもたらした危機を乗り越えるのか。化粧品企業連盟FEBEA代表パトリック・オクイン(Patrick O’Quin)氏は 、ポストコロナで美容業界が抱える問題に対しては、「各企業、団体が個別に動くのではなく、企業の障壁を取り除き、原料会社、梱包会社からディストリビューションまで、化粧品関連産業が一丸となって取り組むことが肝要だ」と語る。

あわせて、化粧品産業クラスターであるコスメティックバレーの事務局長クリストフ・マッソン(Christophe Masson)氏は、10月にオンライン開催する国際化粧品見本市Cosmetic 360の際に、フランス化粧品産業、政府機関、研究機関などを集結し、新しい消費者行動や今後の課題について話し合うという具体的なアクションを示した。

「Go Stronger Together」をテーマに掲げて開催されたCEW Franceのオンラインセッションでは、さまざまな視点から示唆に富んだ意見、ソリューションがシェアされたが、一貫していたのは、業界全体で連携・連帯することで困難な状況を克服しようという力強いメッセージの発信だった。

Text : 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: George Rudy via Shutterstock

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