見出し画像

中国発「XREAL」最新ARグラスは、美容業界も注目すべき"サングラス型”と"空間コンピューティング機能"

◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

アップルからスマートグラス「Vision Pro」がリリースされて話題のAR/MR領域における空間コンピューティング。日本をはじめ、韓国や欧米などでも販売が好調なARグラスブランド「XREAL」の新機種「XREAL Air 2 Ultra」は、Vision Pro並みの空間コンピューティング体験が可能とされる。サングラスをかけるような気軽さで、将来的に美容業界での活用も視野に入ってきそうだ。


ヘアスタイルやメイクを崩さない軽量サングラス型であることの重要性

米調査会社IDCによると、2023年の拡張現実(AR)/仮想現実(VR)ヘッドセットの世界出荷台数は前年比8.3%減の810万台だった。低調だったAR/VR市場だが、2023年夏、アップルがWWDC2023で発表した「Vision Pro」の登場で、AR/MR(ミックスド・リアリティ、複合現実)領域の空間コンピューティング技術が世界中で注目を集めている。これまでのVRのように完全に視界を遮っての没入体験ではなく、現実世界のなかで仮想世界を映し出すことができることに大きな特徴をもつ。

2024年2月にはVision Proが3,499ドル(約52万円)で発売されたが、CES2024では中国発のXREALが発表した新型ARグラス「XREAL Air 2 Ultra」が話題をさらった。顔を覆ってしまうゴーグル型ではなく、わずか80グラムほどのチタンフレームのサングラス型で、Vision Proと比較して約5分の1の700ドル(日本では9万9,800円で販売)のリーズナブル価格も注目を集めた。実際、CES2024のXREALのブースには「XREAL Air」の上位モデルであり、空間コンピューティング機能を備えたXREAL Air 2 Ultraを体験しようと長い列ができていた。

XREALの最新モデル「XREAL Air 2 Ultra」
出典:XREAL 公式オンラインショップ

Vision ProもXREALも、どちらも今後のさらなる改良や対応アプリケーションの開発が待たれるが、これらをつけることで実現されようとしている世界は、室内や屋外など、普段生活している空間に仮想モニターが映し出され、PCやスマホ、物理的なディスプレイなしで、仕事をしたり、映画やゲーム、ショッピングを楽しめる環境だ。仮想モニターは視線やハンドジェスチャー、音声などで操作し、人との対話も、すぐそこにいるかのような体験が可能となる。PCやスマホが必要なくなるかもしれないといわれているゆえんだ。

そして、XREALが今回の新機種でみせたサングラス型は、美容業界でも活用の可能性が広がりそうだ。Vision ProはこれまでのVRゴーグルよりも軽くなったとはいえ、スキーゴーグルのように顔を覆ってしまう感は否めない。かつケーブルもある。それに対してXREALはケーブルなしのサングラス型だ。ヘアスタイルやメイクの崩れがほぼ気にならないという点で、美容を気にするユーザーにとってのハードルは低くなったといえる。

たとえば化粧品ブランドとしては、バーチャル店舗や3Dでの商品の確認・購入ができるショッピング体験、美容部員によるアドバイスや、ブランドアンバサダーのセレブレティと間近で対面しているかのようなイベントなども考えられそうだ。ARグラスがあれば、どこにいてもお気に入りのバーチャルショップを訪れ、接客やイベントを楽しみ、購入までできるという体験を組み立てることも可能だろう。

開発元は2017年に北京で設立の太若科技、日本ではKDDIと協業

2023年上半期の中国の消費者向けARグラス市場においてXREALのシェアは、中国の調査会社iResearch(艾瑞諮詢)によれば22.9%で2位だった。1位はTCL電子傘下で「RayNeo」ブランドを展開するThunderbird Innovation(雷鳥創新)で32.9%だった。

中国でも一定のシェアを確保しているXREALだが、強いのは実は海外市場だ。IDCによると、世界の消費者向けAR市場の2023年第3四半期のシェアは、XREALが51%で1位を記録。成功の要因は、創業当初から海外展開を意識してきた戦略にある。

日本市場でも存在感を放つXREAL
出典:XREAL 公式オンラインショップ

XREALを開発するのは、2017年6月設立の太若科技(北京)だ。創業者でCEOの徐馳氏はAIコンピューティング企業米NVIDIAやAR/VRを手がけるMagic Leapに在籍していた経歴をもつ。太若科技(北京)は、設立から3カ月後の9月に早くもエンジェルラウンドで300万ドル(約4億4,700万円)を調達している。

2019年に米ラスベガスで開催されたCES ではARグラス「Nreal Light(現XREAL Light)」を発表し、注目されるようになった。コンパクトな本体には、デュアルスピーカーとマイクに加え、カメラを3基搭載。ゴーグル型デバイスとしては広い52度の視野角を実現している。スマートフォンなどのデバイスとの接続が可能だ。

当時はXREALではなく、Nrealというブランド名だったが、XREALに変更したのは2023年5月だ。テンセント・ホールディングス(騰訊控股)が筆頭株主であるEpic Gamesから、同社が開発するゲームエンジン「Unreal」の商標に似すぎているとの申し立てがあったからだ。そのときのことを徐氏は、現地メディアにこう語っている。

「争うことも可能だったが、多大な費用と労力がかかる。メリットとデメリットを比較検討した結果、我々のブランドを改称することにした。これを機にブランドをバージョンアップしたいという思いから、ブランドの核となる『real』を残し、無限を表す『X』を加え、『XREAL』が誕生した」(徐氏)

商標権を完全に侵害していたわけではないのに、このような申し立てがあったということは、それだけ同社への注目度が高いことの表れだとの見方が当時から一般的だった。

設立当初から海外志向が強かった同社は、海外企業との提携も積極的に進めてきた。2019年5月にはKDDIと戦略的パートナーシップを締結している。中国メディアはXREALを「生まれながらのグローバル企業」と称する。2020年には、韓国で一般ユーザー向けの販売を開始。日本でも同年、KDDIとの共同開発を経て販売が開始された

KDDIと共同開発した「Nreal Light(現XREAL Light)」グラス内から見たメニュー
出典:KDDI 公式サイト

2022年2月には、第二世代となる「Nreal Air(現XREAL Air)」を世界に先駆け、日本で販売を開始。価格は4万5,980円だ。従来モデルよりも約2割軽量化することに成功し、実際のメガネやサングラスのような、より自然な装着感を実現。目の前に広がる仮想モニターのサイズがさらに大きくなり、そのサイズ感は3メートル手前から見る130インチに相当するという。

第一世代を購入したのはガジェットマニアが中心で、第二世代はこうしたアーリーアダプターの声を取り入れて開発を進めた。表示機能と装着体験を強化し、さまざまなデバイスと連携できるようにして利用シーンを広げた。第一世代の販売台数は2万台だったが、第二世代は20万台を突破。2022年は海外の売上が全体の7割を占めた。なかでも米国と日本での売上が大きかったという。2023年10月には欧州に進出している。

自動車メーカーと協業、アリババがXREALに投資

徐氏は前述のインタビューで「ARグラスは未来のスマートフォンである」とし、AIとARの融合は必然であり、より立体的でパーソナライズ化された体験を提供するようになると話している。

一方で、課題は製品づくりのためのサプライチェーンの未成熟とエコシステムの未発達にあるという。部品調達に苦労したXREALは、2020年に中国東部の無錫市に製造拠点を開設し、光学モジュールを自社で生産している。サプライチェーンの課題については、アップルがサプライチェーンの最適化に5年かかったという逸話を引き合いに出し、当時と比較してサプライチェーン最適化期間が短縮されつつあることも示唆している。

エコシステムについても同じだ。徐氏によれば、AR/MR業界の状況は2005年から2006年頃のスマートフォン市場に似ており、これからコンテンツやソフトウェアが発展していく段階という。実際、XREALはすでに異業種との協業を進めている。

2022年に中国の電気自動車(EV)メーカーNIO(蔚来汽車)とEV向けの車載ARグラス「NIO Air AR Glasses」を共同で開発。ブレ補正機能を搭載し、4メートル先に130インチの画面を投影し、運転中に同乗者に没入体験を提供するという。初回は800個限定、2,299元(約4万8,000円)で販売された。

中国EV大手NIOと共同開発した車載ARグラス
出典:NIO 公式サイト

また、ECプラットフォーマーとの連携も期待される。XREALは2022年3月にシリーズC+で6,000万ドル(約89億4,000万円)を調達したが、それを主導したのは、Tmall(天猫)などを運営するアリババグループ(阿里巴巴集団)だ。アリババも自社ECプラットフォームとARグラスの接続が可能になれば、より豊かなショッピング体験を提供できると考えていると思われる。

これまで、没入体験は完全に視界を遮るVRガジェットが先行していたが、こうしたAR/MRでの現実世界と仮想世界のシームレスな体験が可能になったことを受け、Metaの「Quest 3」なども空間コンピューティング的な体験の実現化に着手している。ただ、前述したように大きなゴーグル型ガジェットは、美容ユーザーが期待するメリットがよほど大きくなければ定着は難しいだろう。その意味でARグラスの進化は美容業界にとっても今後注目しておくべきテクノロジーのひとつとなろう。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)、BeautyTech.jp編集部
Top image: BeautyTech.jp編集部

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!