スキンケアnumbuzinなどが好評の韓国BENOW、2018年創業で早くもユニコーン候補
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BENOWは、主力スキンケアブランド「numbuzin」をはじめ複数のブランドを手がけ、ここ数年で急成長を遂げているK-Beautyスタートアップだ。設立から6年目となる2024年には、約4,000億ウォン(約440億円)の企業価値と認定され、今後、ユニコーン企業となる可能性が現実味を帯びてきた。同社の成長プロセスと各ブランドの概要、今後の展望について紹介する。
設立から6年で急成長を遂げるBENOW
主力ブランドの「numbuzin」をはじめ、「FLASKIN」「fwee」「RIAH」など4ブランドを運営するBENOWは、今後の成長が期待されるビューティスタートアップだ。2018年に設立された同社は、わずか5~6年で急激な成長を遂げてきた。設立翌年の2019年に7億ウォン(約7,700万円)だった売上高は、2020年66億ウォン(約7億2,600万円)、2021年230億ウォン(約25億円)、2022年590億ウォン(約65億円)、2023年1,145億ウォン(約126億円)と年を追うごとに右肩上がりで拡大。コロナ禍の影響による経営不振や後退もなく、韓国新興ブランドの好調を象徴するような伸びをみせている。
2024年に入りBENOWの勢いはさらに加速している。上半期時点で売上1,000億ウォン(約110億円)の大台を突破しており、昨年の実績を上回ることがほぼ確実となった。同年8月には、シードラウンド投資によって同社の少数株式(3.7%)を取得したプライベートエクイティファンド(PEF)運用会社のV1キャピタルパートナーズによって、約4,000億ウォン(約440億円)の企業価値も認められた。この評価の理由は、日本をはじめ、アジア各国、欧米諸国などグローバル市場に広く製品を輸出していることや、約5年で年間1,000億ウォン(約110億円)以上の売上を達成したことにあるという。
こうしたBENOWの成長は、傘下の各ブランドのコンセプトや製品がそれぞれ特徴的でわかりやすい個性があるのに加え、いずれも高機能をうたい独自の処方や成分を配合し、消費者から高い支持を得ている点にある。同社の4つのブランドをみていこう。
BENOWが運営する4つのブランド
⚫︎ 肌悩み別のソリューションを掲げる「numbuzin(ナンバーズイン)」
BENOWの主力とされているのがスキンケアブランドnumbuzinだ。numbuzinではクリーム、アンプル、トナー、セラム、クレンザー、トナーパッド、マスクパックなど幅広いラインナップの商品を展開している。各商品にはナンバーが振られており、それぞれ異なるタイプの肌悩みを解決するというコンセプトを掲げている。たとえば、「No.1」は皮脂や肌トラブルを解決するビタミンB群に含まれるパントテン酸配合の商品ライン、「No.3」は毛穴を改善する成分を配合した商品ライン、「No.5」は美白に着目した3つのアミノ酸からなるペプチドのグルタチオン配合の商品ラインなど目的別に区分されている。
BENOW法人設立の翌年2019年に公式ローンチされたnumbuzinは、2021年に化粧品小売大手オリーブヤングのオン/オフラインチャネルに入店。2023年にはロッテグループ、現代グループなど、大手百貨店系列の免税店にも売り場をオープンしている。
BENOWはnumbuzinの国内チャネル開拓と並行して、海外進出も意欲的に進めてきた。2024年10月現在、Shopeeを通じてベトナム、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、台湾など、アジア7カ国に商品を展開中で、米国、オーストラリア、英国、インド、ドイツ、フランス、イタリア、スペインなどの地域ではアマゾンを通じて商品を販売している。2024年6月にはTikTok Shopにも入店をはたした。
また、アジアにおいてはECのみならず、実店舗での展開も積極的に進めている。Watsons(マレーシア、シンガポール、フィリピン)、Nykaa(インド)、Beautrium(タイ)、Tmall(中国)など、大手EC、ドラックストア、化粧品専門店の流通チャネルも確保。日本には2020年頃から進出し、2022年にはオフライン流通を開始している。
⚫︎ 植物由来のたんぱく質に着目した「FLASKIN(フラスキン)」
BENOWでは、numbuzinの姉妹ブランドとして、FLASKINというスキンケアブランドも運営している。公式ローンチは2023年11月だ。同ブランドでは、マーケティングに有利なトレンド成分ではなく、医療専門家とともに厳選した成分のみを50%以上含有した商品づくりを行うことや、徹底的な皮膚アレルギーテストの実施、クルエルティフリーなどをブランドポリシーとして掲げている。
現在、FLASKINが展開しているのは、「白米一番搾りタンパク質トナー」「粘る発酵豆タンパク質美容液」「純白豆乳タンパク質乳液」「オーツ麦タンパク質クリーム」など、植物由来のタンパク質に特化した商品だ。
ブランド側は公式サイトで「角質/赤み/敏感肌/弾力/くすみなど、大部分の肌の悩みは、皮膚内のタンパク質不足から始まる」とタンパク質に着目した理由について説明している。同時にFLASKINは、タンパク質関連の商品については「プロジェクト第一弾」としており、今後はほかの成分にフォーカスした商品開発が続くものと予想される。
⚫︎ユニークな旗艦店で知られるメイクブランド「 fwee(フィー)」
2021年5月にローンチされたメイクアップブランドfweeは、翌2022年にオリーブヤングに入店。クッションファンデ関連商品が人気を得て、入店3カ月後には同部門での販売個数1位を記録した。
その後2024年1月には、それまでの主力商品だったクッションファンデではなく、リップやチーク製品を前面に押し出すリブランディングを実施したfweeは、直近数カ月で国内外に旗艦店を相次いでオープンしている。青い洞窟をイメージしたデザインの「AGIT(アジト)」と呼ばれる旗艦店は、韓国国内ではブランドの存在感を際立たせるユニークなランドマークとして注目を集めている。
2024年9月、fweeは東京・新大久保にもAGITをオープンした。実際に店舗を訪れると、平日にも関わらず10~20代の顧客が多数いて賑わいをみせていた。
直近9~10月のfweeの動きとしては、マレーシアのSephora、タイのBeautriumへの入店および商品販売を開始しており、グローバルアンバサダーとしてタイの人気女優のティティヤー・ジラポーンシン(Thitiya Jirapornsilp)氏と契約したと報じられている。こうしたリブランディング後の一連の施策を見る限り、今後は東南アジアや日本市場にフォーカスして進出に拍車をかけるものと推察される。
⚫︎ たんぱく質ヘアトリートメントで知られる「RIAH(ライア)」
一方RIAHは、numbuzinで蓄積したスキンケアに関するノウハウを応用してつくられたヘアケア専門ブランドだ。公式ローンチは2022年5月で、「タンパク質ヘアトリートメント」などが主力商品となっている。RIAHはオリーブヤングや日本のQoo10での取扱いはあるものの、ほかの国内外流通チャネルに関しては、まだほとんど開拓されておらず、次の動きが注目される。
このように、4ブランドの全体的な商品ラインナップの数やチャネル開拓状況を踏まえると、BENOW は主力ブランドであるnumbuzinに加え、次の柱としてfweeに注力する方向性のようだ。fweeは話題性や各国消費者の認知度において大きな伸びしろがあり、今後の成長が期待できる。
ユニコーン候補として上場準備が報じられる
BENOWの販売手法として顕著なのは、韓国国内では各ブランドローンチ後にオリーブヤングと公式サイトで国内の売上基盤を確保しつつ、早い段階から欧米や東南アジアに商品を展開するというものだ。とくに東南アジアにおいては、各国の有力な小売事業者と地道なコンタクトを続けることで市場を開拓してきたとみられる。
BENOWはまた、働きやすい職場環境の構築や福利厚生に力を入れる企業としても注目されている。たとえば、2024年に一般職として入社した社員の年俸は5,000万ウォン(約550万円)+約400~600%の成果給(ボーナス)と、業界内でも高い水準に設定されている。また、韓国で不動産の高騰が続くなか、住宅用資金を最大1億ウォン(約1,100万円)まで無利子で支援する制度や、各種慶弔費、通信費支援、自社製品購買特典、勤続賞、誕生日半休、休養施設の提供など手厚い福利厚生を用意している。
BENOWは、設立から5年で社員が120名規模に増えたことや、社員に対する手厚い福利厚生が評価され、信用保証機構(日本では政策金融公庫に近い組織)という準政府機関が選出するアワード「良い職場企業」「最高の職場企業」などを受賞している。企業が急成長するなか、従業員の幸福度を置き去りにしない姿勢に対し、「人材を惹きつける職場環境が急成長の原動力になっている」と分析する韓国メディアもいる。
そしてBENOWを取り巻く最大の関心事はIPOだ。2024年7月初旬には、主幹事証券会社の選定のために、各証券会社に提案要請書を配布。続く9月には、サムスン証券を単独主幹事証券会社に選定したと報道された。BENOW関係者からは、IPOの目標時期を2026年上半期に設定しているというコメントも出ている。
上場初日に約2,700億円の時価総額を記録したAPRの事例など、昨今の韓国美容業界では大型IPOが続いている。
すでに上場している業界内の有力企業と比較しても、BENOWは上場時に1,000億円程度の企業価値が認められる可能性が充分にあるとされている。美容業界やスタートアップ業界を牽引するユニコーン候補として、BENOWへの関心や期待は日を追うごとに高まっている。
Text: 河鐘基(Jonggi HA)
Top image: BENOW公式サイト