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ベルリン発美容スタートアップ3つの鉄則はクリーン、サイエンス、そして連帯

◆ English version: Three pillars of Berlin’s beauty startups: clean beauty, science, and solidarity
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環境問題や企業の倫理観に意識が高く、厳しい目を持つドイツの消費者という社会的背景を受け、クリーンビューティをうたうスタートアップが続々登場しているベルリン。FaB Berlinのオンラインミートアップに登壇したブランドをはじめ、急成長を遂げる注目株をピックアップして、ポストコロナをにらんだその戦略を紹介する。

ファッションとビューティ分野の起業家と投資家が集うコミュニティ、FaB Berlinのオンラインミートアップが、2020年6月4日に開催された。「成功するクリーンビューティブランドの育て方」というテーマのもと、成長著しいブランドの創業者たちが、ブランドをスケールアップするための見識や経験をシェア。新進気鋭ブランドの動向から、パンデミックを経験し、健康やサステナブルな環境を希求する気持ちが一層高まったベルリンのクリーンビューティ&フェムテック業界が志向するものを考察する。

サステナブルかつヘルシー、スケールアップの秘訣

新型コロナウイルスはドイツ経済に大きな打撃を与え、その影響はビューティ業界にも及んでいる。ベルリンでは、外出制限など徐々に規制が緩和され、多くの店舗が再開して活気を取り戻しつつあるが、未だ終息とはいえないパンデミックのなかで、ベルリンのブランドは「今」をどう捉え、どんな方向性に進もうとしているのだろうか。

約30分の今回のミートアップには、「BINU BEAUTY 」の共同創業者であるカタリーナ・ビュルガー(Katharina Bürger)氏と、「NUI COSMETICS 」の創業者スワンジェ・ヴァン・ウーム(Swantje van Uehm)氏がゲストとして招かれ、クリーンビューティブランドが成功するために必要なことについて語った。

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FaB Berlinウェビナー当日の模様

「成長に必要な要素の1つは、数字や利益だけにフォーカスするのではなく、サステナブルかつヘルシーにブランドを育てていく方法を考えていくことだ」

こう述べるのは、100%ナチュラル、ヴィーガン、グルテンフリーの化粧品を展開するNUI COSMETICSのウーム氏だ。トレンドに敏感な現代女性が「自分の肌コンディションはもとより、ライフスタイルそのものを健やかにしてくれる気持ちのよいメイク」を実現する「コンシャスメイクアップ」を提唱するNUI COSMETICS。ナチュラルメイクにおいても、見た目や香り、持続性など、細部に妥協をしないメイクアップ製品をモットーとしている。

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出典:NUI COSMETICS

自身が愛用していた口紅が、実はほぼ有害な成分しか使われていないことに気づき、合成成分を使わずに発色のいい真紅の口紅を作るというアイディアから生まれたブランドだ。経営方針も、ブランドヴィジョンを軸に、何が自分たちにとって良いのかという問いを常に投げかけ、サステナブルな成長のために柔軟なアクションをとるフレキシブルな姿勢を心がけているという。

連帯から生まれるビジネスのかたち

NUI COSMETICSのような持続可能なビジネスモデルを展開するにあたり、業界自体の成長も重要なポイントである。

近年のウェルネスや環境問題、動物愛護などエシカルな意識の高まりもあり、欧米のZ世代やミレニアル世代を中心にクリーンビューティ市場は成長を続けている。米市場調査会社のNPDによると、新型コロナウイルスが米国で感染拡大する前の3月時点では、プレステージスキンケア市場の売上の13%をクリーンビューティが占めていた。

今回のミートアップでもトークの中心は、クリーンビューティマーケットの競合性と、いかにしてブランドをスケールアップするかに関してだった。韓国を拠点に、天然成分100%のナチュラルソープを展開するBINU BEAUTYのビュルガー氏はブランドの連帯が大切だと述べる。

「私たちクリーンビューティブランドは競合ではなく、オールフレンズだ。クリーンビューティ自体が近年広まりつつある新しい概念で、発展途上の段階であり、どのブランドも同じような課題に直面することもしばしばなのだから、お互いの経験をシェアし、ともに成長していくことが業界そのものの発展にも繋がる」(ビュルガー氏)

実際、今回のコロナ渦においても、ドイツのクリーンビューティ業界の連帯のかたちをみることができる。

NUI COSMETICSのウーム氏は、コロナ危機をうけ、小規模ブランドを支援し、持続可能な経済システムを作るために「#strongertogether  プロジェクト」を立ち上げた。同プロジェクトには、BINU BEAUTYをはじめ、ドイツを拠点にサステナブルな事業を展開するクリーンビューティ、エシカルファッション、フェムテックなどのインディーブランドが続々と参画している。

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出典:#strongertogether

このプロジェクトを通して商品を購入すると、割引や特典を受けられるのに加え、売上の一部を社会の課題解決を目指す活動に寄付するといったアクションに協力することが可能となる。NUI COSMETICSも、割引のほかに、オンラインでメイクアップアーティストによるパーソナルなコンサルテーションが受けられる特典をつけている。

ベルリン発、新進気鋭のブランドにみる4つの特徴

NUI COSMETICSやBINU BEAUTYをはじめ、ここ数年、ベルリンにおけるクリーンビューティ&フェムテック業界では、次々と新たなブランドが誕生している。こうした新進気鋭の注目ブランドの動向をみていると、以下にあげる4つのドイツらしいカラーが表れてきている。

(1)地球環境に配慮したサステナブルなブランドを育てる
(2)ビジョンや成分、製法プロセスといったブランドにまつわる情報の透明性
(3)自然由来の成分を用い、有効性や安全性を科学的に検証した製法
(4)コミュニティベースで成長するブランド

環境問題に関心が高いドイツのZ世代やミレニアル世代を中心に、こうした価値観が共感を呼んでいる。パンデミックの影響で、健康への配慮を人々が強く意識している状況で、クリーンビューティやフェムテックへの注目はますます高まりそうだ。具体的にはどんなブランドが何を提案しているのか、エッジのきいた期待の新興ブランドを紹介する。

ネイル界の新星 gitti

世界各地の文化からインスパイアされた独特のトーンを持つネイルカラーで人気のネイルポリッシュブランド「gitti」。100%天然由来で、そのうち55%が水というクリーンな成分に加え、美しい発色と繊細な色あいも好評で、インターナショナルにファンを広げている。創業者のジェニファー・バウム−ミンクス(Jennifer Baum-Minkus)氏は「ネイル業界に革新を起こしたい」と意気込む。

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出典:gitti

環境と健康に配慮するとうたうgittiのマニキュアは、前述したように半分以上が水からできており、揮発性有機化合物の量を大幅に削減した。無臭で、色素などはヴィーガンの成分を使い、動物実験は行わない。また、製品を購入するとその一部が発展途上国の人々に安全な飲料水を供給する活動に寄付されるシステムを設けている。

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出典:the good good

gittiでは、創業当時からInstagramをはじめとするソーシャルメディアを活用したD2Cの形で、積極的に消費者とコミュニケーションを図ってきた。ネイルだけにとどまらず、サステナブルなライフスタイル、ウェルビーイングをテーマにした自社メディア「the good good」を立ち上げ、地球にも自分にもハッピーな生き方を発信している。

原液コスメ MERME

日頃の暮らしのなかで、サステナブルでエコフレンドリーなやり方を実践するのがベルリンだ。当地発の化粧品スタートアップも、地球環境に配慮したサステナビリティな取組み、製法を積極的に取り入れている。

クレア・ラルストン(Claire Ralston)氏が手掛けるスキンケアブランド「MERME」は、人工的な成分や香料などを一切使わず、100%ヴィーガンコラーゲンのセラムなどのように、1種類の原料だけを用いた製品に特化している。これはラルストン氏が目指す究極のシンプルケアを体現するものだ。

「天然オイルなど自然の力をもちいて、自分で体調管理をしていた祖母からインスパイアされた」とラルストン氏。オーストラリアの大自然のなかで育った彼女は、牧場経営をしていた祖母の生き方に強く影響を受けており、MERMEという名称も祖母の名前に由来する。

ヴィーガン、動物愛護、非GMO(遺伝子組換え作物)を基本にしつつ、天然原料とバイオテクノロジーを掛け合わせ、持続可能で、かつ高機能な成分の開発を続けている。その精神は、包装および配送方法にも適用され、地球環境に配慮したブランドであることを意識している。

こうした自分の心と体にも、地球にも優しい生き方を、Instagramなどを通じてファンコミュニティに積極的に伝えており、ブランドの精神や取り組みが環境問題に敏感な世代の共感を呼び、ビジネスの成長と顧客からの信頼につながっている。

Radical Self-Knowledgeが切り開く女性の未来 inne

昨年、シリーズAで800万ユーロ(約10億円)の資金調達を発表し、フェムテック界で注目を集める「inne」は、ホルモン計測キットを開発・提供する。

生理や妊娠、出産、更年期など、女性の人生はホルモンに振り回されているといっても過言ではない。女性のムードスイングはホルモンのせいだと揶揄されるほか、避妊や妊活など自身のライフステージの設計にもホルモンの状態が大きく影響してくる。しかし、残念ながら女性の多くは、自分の身体においてホルモンがどう働き、どう作用しているかを把握できていないのが現状だ。

inne創業者のエイリニ・ラプティ(Eirini Rapti)氏は、IUD(子宮内避妊器具)などを用いた自分自身の避妊の経験から、ホルモン剤などを使わない自然避妊の可能性を研究してきた。そして、体に負荷をかける避妊メソッドから女性を守り、各自のライフスタイルにフィットするサービスをモットーに、ホルモンレベルを測定する唾液を使ったテストと診断デバイスの開発に至った。

自宅で行う使い捨てチップを用いたテストでデータを抽出し、専用アプリに送信。自身の黄体ホルモンデータをもとに、月経周期のなかでホルモンがいかに変動するかをアプリの画面でチェックでき、避妊したい人、妊娠を望む人の双方が使える設計となっている。生科学を軸にサイエンティスト、技術者、デザイナーと協業し、科学的な有効性を有しつつ、見た目のスマートさと使いやすさを突き詰めたデザインも特徴だ。

「このプロダクトはトラッカー(生理周期表示)ではない」とラプティ氏は言いきり、ホルモンを追跡し、女性の体のなかで起こっている基本的な変化を視覚的に確認できるように設計していると話す。なぜなら、まさに自分の体内で起きているこうした動きを、意識的に感じとれることが重要だからだ。その意味で「inneは、Radical Self-Knowledge(革新的な自己認識)のツールなのだ」とラプティ氏は宣言する。

2020年、inneは最初の製品を英国とスウェーデンで展開し、現在ではドイツでも出荷されている。

出典:inne 

先にも述べたように、女性はホルモンに影響を受けながらも、実際に自身がどんな状態にあるのかを知ることができていない。こうした状況を解決すべく、inneはソーシャルメディアやブログなどをとおして、ホルモンをはじめとした女性の心身にまつわる知識や未来のライフスタイルのありかたを、科学的、医学的、心理的なアプローチから提唱し、世界中の女性の生き方をアップデートするための活動を行なっている。

科学的な根拠にもとづいて、地球にも自分にもダメージを与えない方法を追求するベルリンのクリーンビューティ業界。彼らのブランド哲学を反映した商品を使うことで、顧客のマインドやライフスタイルにポジティブな変化が現れるという好循環が生まれている。

Text: 日比野紗希(Saki Hibino)
Top image: Johnny McClung via Unsplash

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