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ドランクエレファントも新製品を投入、2021年は高機能ボディケアがトレンド

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多様性の尊重や自分の体に自信を持つボディポジティブの考え方が広まる欧米では、パンデミックによるステイホームや健康志向の高まりを後押しに、ボディケアへの関心が強まっている。なかでも勢いがあるのが、セラミドやヒアルロン酸など顔のスキンケア並みの有効成分を配合した高機能ボディケア製品だ。Drunk ElephantやGlossierも参入する同市場の現在をひもとくともに、あわせて日本のボディケア市場の状況も解説する。

米メディアも注目するボディケアへの関心の高まり

新型コロナウイルスによる生活スタイルの変化で多くの美容企業が打撃を受けるなか、逆に好調なカテゴリーも出ている。レチノールやヒアルロン酸など、スキンケア商品と同質の高機能成分を配合したボディケアアイテムがその1つだ。ハイエンドなブランドからドラッグストアブランドまで、新製品が相次ぎ投入され、消費者の関心の高まりを示すデータもさまざまな形で表れている。その背景には新型コロナウイルスの影響だけでなく、2019年以前から長期的に続く美容への意識の変化がみてとれる。高機能ボディケア市場の盛り上がりとその具体例、背景で起きている消費者の変化の状況をまとめる。

米オンラインマガジンBeautyMatterGlossyは、スキンケアの「次なるフロンティア」がボディケアであるとして、高機能ボディケア製品群が拡大する状況を伝えている。NPD Groupによれば、2020年1〜3月の米国でのボディセラムの売上は32%、ボディオイルの売上は10%増加した

こうした傾向は、2020年より以前にさかのぼる消費者の関心の高まりにも裏打ちされている。製品レビューサイトのInfluensterでは2019年、ボディケア製品のレビューが40%増加していた。さらに「セルライト」や「タトゥーケア」といったニッチな分野に限れば、それぞれ252%、549%と爆発的な伸びをみせていた。Google Trendでみても、「Body Serum」の検索は2019年から2020年にかけて倍近く伸びており、「Body Wash」も過去5年ほどで倍増している

Glossierなど欧米人気ブランドが相次いでボディケア参入&強化

では実際にどのような商品が市場に投入されているのか、人気のブランドからみていく。

Drunk Elephantは2020年3月、ボディクレンザーとボディローション(各20ドル/約2,100円)、デオドラントクリーム(16ドル/約1,700円)から成るボディケアラインを発表した。既存のスキンケア商品と同様に、刺激が強いとされる成分や香料などは含まず、安全かつ有効とされる植物由来成分やアミノ酸、セラミドなどを配合している。また、Dr. Jart+(ドクタージャルト)は定番のセラミド配合スキンケア商品「Ceramidin」のラインにボディローション(25ドル/約2,600円)を加えた。Glossierも2020年にはボディ用のスクラブ(14ドル/約1,500円)とオイル(28ドル/約2,900円)を投入し、ボディケア分野の売上は対前年比で137%伸びているという

より高価格帯のブランドにもボディケア製品が次々と追加されている。フェイシャルピーリング製品を主力とするDr. Dennis Grossは、ボディ専用ピーリングワイプ(58ドル/約6,000円)を発表した。創業者のデニス・グロス(Dennis Gross)氏が、自身のクリニックでボディの肌質感の改善を求める患者が増えていることに気づき、それに応える形で生みだしたという

2018年に立ち上げられ、205ポンド(約2万9,000円)の「The Cream」がカルト的な人気を博すAugustinus Baderもボディ商品を拡大しており、現在はボディクリーム(130ポンド/約1万9,000円)やボディオイル(75ポンド/約11,000円)などを展開する

Glossyが「スキンケアとしてのボディケア」のパイオニアと評するWebメディア/ショップのGoopでも、RodinやTata Harperなどのハイエンドなボディケア製品をそろえるとともに、自社ブランドのボディケア製品もオイル(60ドル/約6,200円)やクリーム(55ドル/約5,700円)など複数を投入している

ドラッグストアブランドにも高機能化の流れがみられ、通常商品からのアップセルを狙っているようだ。たとえばP&G 傘下のOLAYの通常のボディウォッシュは5.99ドル(約620円、100mlあたり約95円)だが、コラーゲンやビタミン、ヒアルロン酸などを配合して引き締めなどの効果をうたうタイプのものは10.99ドル(約1,100円、100mlあたり約220円)となっており、単位あたりの価格は倍以上になる。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのNeutrogenaも「ボディや手にもフェイス級のスキンケアを」とうたい、ヒアルロン酸配合ボディローションを打ち出した。またドラッグストアブランドのなかでもとくにZ世代から高い支持を受けているのは、セラミド配合のCERAVE(ロレアルが2017年に買収)の製品だ。ニキビ対策としてサリチル酸や乳酸配合のものもあり、成分が充実しているわりに質実なパッケージデザインや低価格であることが若い世代から評価され、TikTokで圧倒的な露出を誇っている

Function of Beautyといったヘアケアブランドなどもボディケアに進出

スキンケア以外のプレイヤーが高機能ボディケア分野に参入する動きもある。

たとえばパーソナライズドシャンプーのD2C、Function of Beautyは、製品展開にボディソープとローション(各19ドル/約2,000円)を追加した。現状でカスタマイズできる項目は皮膚の乾燥度と香り、色のみだが、ヘアケアに関しては求める効果をよりきめ細かく選択できる設計であり、今後ボディケアも精緻化していくと予想される。ヘアケアブランドではOUAIもボディケアに進出し、ソープやクリームだけでなく、頭皮とボディ共通で使えるスクラブや、ヘア/ボディ兼用ミスト、ハンドケアなど12製品を発売した。

さらにアスレジャーブランドのAlo Yogaも2020年12月、スキンケア・ボディケアラインの「Alo Glow System」をローンチした。ヨガブランドにふさわしく、アーユルヴェーダにも使われるというインド原産の果物アムラの成分を製品に配合している。またボディローションには筋肉を鎮静させるアルニカの成分を配合するなど、既存顧客のライフスタイルに沿った製品展開となっている。

ボディポジティブの意識が市場を後押し

Withコロナが長期化する現在、市場の動きがその影響を受けることは間違いない。ただ、ボディケアへの関心がここまで高まってきた背景には、コロナ以前から始まっていた、美容に対する消費者の考え方のシフトがある。

スマートフォンとソーシャルメディアの普及によりさまざまな情報が瞬時に共有される今、無理に作り込んだものよりも、自然でオーセンティック(うわべではなく本質的)な美、エフォートレス(頑張りすぎないこと)が逆に評価される傾向があり、美容に関しても例外ではない。インフルエンサーによるメイクアップチュートリアルが数千万回再生される一方で、消費者が実際にお金をかける対象はスキンケアにシフトしているのだ。2019年のVOGUE Businessでは、エスティ ローダーやロレアルといった最大手におけるメイクアップ部門の失速と、同時にスキンケア部門の堅調ぶりを伝えている

スキンケアへの関心が高まれば、顔から続く首や腕など、体の皮膚全体に意識が向くのは自然な流れであろう。ハイエンドなボディケアが浸透し始めた経緯については、一足早くこの市場を開拓していたボディクリーム「Bum Bum Cream」を展開するSol de Janeiroの共同創業者兼CEO、ヒーラ・ヤン(Heela Yang)氏の発言がヒントになる

手足はもとよりヒップなど全身に使えるBum Bum Creamのローンチは2015年だったが、ヤン氏は、「あなたたちのお尻用クリームやフットクリームをどう扱えばいいのかわからない」と化粧品リテーラーから取り扱いを断られ、ハイエンドボディケア市場が成立するかどうかさえ疑問だったと当時を振り返る。だが「自分の肌や体に自信を持ってハッピーになる」という、ブラジル的カルチャーを広めるブランドの思想がSephoraから評価され、同店舗に並べられることで、現在の成功につながったとしている。

2010年代にはフェミニズムの高まりとともに、「すべての体は良い体」として、女性が自分の体に価値を感じ愛することを重視するボディポジティビティの波が起こっていたが、そのムーブメントが高機能ボディケア市場の形成に寄与したようにみえる。

そしてこの市場の成立を決定的なものにしたのは、やはり新型コロナウイルスとそれによる在宅生活であろう。なるべく自宅にこもり、外出するとしてもマスクが必須の生活では、メイクアップの必要性は薄れる。一方で健康への関心、運動不足に対する懸念は今までにないほど高まっており、多くの人が自身の体のコンディションに意識を強く向けている。その結果、たとえば自宅でのエクササイズを生活習慣に取り入れる人が急増しており、約20万円のルームバイクPelotonの売上が232%増加するなど、セルフケアのためにお金や時間を割く姿勢が顕在化している。高機能ボディケア市場も、そんな変化の恩恵を受けているといえるだろう。

このように現在、高機能ボディケア製品が歓迎される環境は整っているが、もちろんどんなものでも受け入れられるわけではない。前述したように、ボディケアにお金をかけるという考え方の背景には、より自然で本質的な美を求めるミレニアル的な価値観がある。そのため、今後も次々と発表されるであろう高機能ボディケア製品のなかから選ばれていくためには、なぜそのブランドであり、その製品なのかといった、作り手の考え方や哲学をきちんと表現し伝達する必要がある。また環境重視、自然由来、オーガニック、特定成分フリーなど、ターゲット層が重視するポイントにきちんと配慮することも重要だ。

日本での高機能ボディケアの波はこれから

ここまで海外の状況をまとめてきたが、では日本での動きはどうだろう。日本では美容市場におけるインバウンドの存在が大きく、新型コロナウイルスによる影響が甚大である。そのためボディケア市場も、美容市場全体とともに当面縮小するという予測も出ている。インバウンドがすぐに回復することは考えにくい状況で、日本の美容企業にとっては国内の「おうち美容」需要をいかに取り込むかがカギになってくるだろう。

@cosmeの2020年12月時点でのボディケア関連のクチコミランキングTOP5で特徴的だったのは「香りによる癒し」だという。日本ではバスタイムがボディケアの大きな要素でもあり、25年ぶりにリニューアルをおこなったアユーラや、新興ブランドのBARTHの入浴剤がランクインしている。

株式会社アイスタイル @cosmeリサーチプランナーの西原羽衣子氏、原田彩子氏によれば、ステイホームのストレス解消に、香りが良いもの、気持ちが良くなるものを求める心理がはたらいているという。

「クチコミを分析しても、花王キュレル、ハウスオブローゼ、ニベアといった、長年親しまれ安定感のあるブランドも支持されており、パンデミック下での不安な心理に安心感をもたらしていると考えられる。@cosmeユーザーにとってボディケアを意識することは、そういったストレス解消や癒し、あるいは、スキンケアの延長としてもう少しボディにもこだわりたいという気持ちの表れと分析しており、欧米とはスタート地点が異なるようにも思う」(西原氏)

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出典:WWDJAPAN.com

「一方で、植物療法をベースにした『Waphyto』をはじめとするデリケートゾーンケアや、高機能ハンドケアなどが注目を集めるなど、パーツからではあるがボディケア全体への関心度は上がってきており、少しでもよい製品を探したいというニーズは高まるだろう」(原田氏)。

「Hands A P.P.」のように付加価値のあるハンドクリームが支持されたり、顔用のスキンケア製品をボディにも使用するというクチコミや、サロンに行きにくい状況で家庭用美容脱毛機器の利用が目立つなどの、具体的な動きも出始めているという。

いずれにせよ、ボディケアへの関心は、新型コロナ以前からのスキンケアやセルフケア、ボディポジティブといった流れを汲んでいる。それを考えると、これから徐々に元の生活に戻っていくとしても、高機能ボディケアの拡大と多様化は後戻りすることはなく、長期的に続いていくだろう。

Text: 福田ミホ(Miho Fukuda)
Top image: Boszyy Artist via Shutterstock

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