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「培養液」の条件で変化する成分。盛り上がる幹細胞コスメ最新動向

◆ English version: Stem Cell and Anti Aging
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山中伸弥氏らによるiPS細胞開発を皮切りに、国を挙げて再生医療の産業化が進められている。その周辺分野のひとつが、幹細胞研究から派生した「再生美容」である。近年、日本でも関心が高まりつつある「幹細胞コスメ」の現状や今後の可能性について取材した。

再生医療のキーであり美容にも応用される「幹細胞」とは?

幹細胞は、私たちの身体を構成する細胞を生み出すもととなる細胞だ。幹細胞コスメを語る前に、まず、幹細胞とはどんなものかを簡単に説明しよう。

幹細胞には2つの特出した能力があり、一つは、自分と全く同じ細胞を複製する能力(自己複製能)、もう一つが、さまざまな種類の細胞へ分化する能力(多分化能)である。これらを利用して、医療の分野では、臓器や血液、皮膚などの組織そのものを幹細胞で再生して移植する再生療法や、病気やケガでダメージを受けた組織に幹細胞を投与して修復する細胞療法などが行われている。

出典:ステムサイエンス ファクトブック PART2

そして、その幹細胞は大きく3種類に分類される。

再生医療では、上記3つの幹細胞を用いた研究が進められているが、幹細胞そのものを使用せずに、上の表にある安全性の高い脂肪幹細胞が分泌する成分を使ったもうひとつの再生医療として注目されているのが、「幹細胞培養液(または、培養上清ともいわれる)」だ。

幹細胞そのものではなく、培養液が美容で注目される理由

幹細胞培養液には、幹細胞が増殖する際に分泌するさまざまな成長因子が濃縮されている。コラーゲンやヒアルロン酸など組織を構成するタンパク質や、ほかの細胞と情報をやり取りするサイトカインなど多数の成分が含まれており、細胞を活性化させる働きがある。幹細胞自体が入っていないので(※)、遺伝子操作などの問題もなく、美容分野では「最先端の肌若返り成分」として注目されている。つまり、巷で言われる「幹細胞コスメ」とは、正しくは「幹細胞培養液コスメ」のことになる。

※薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、化粧品に幹細胞そのものを使用することは認められていない。

再生医療の厳しいレギュレーションの中で誕生したスキンケア

日本で大手企業としていち早く幹細胞培養液コスメを開発したロート製薬は、2006年に再生美容研究室を新設し、医薬品開発で培った細胞培養技術を用いて幹細胞研究をスタート。脂肪幹細胞のもつコラーゲン産出能力や、傷ついた組織を修復する創傷治癒機能をスキンケアに応用できないか、という視点で研究が進められ、3年の月日を費やして開発されたのが独自の培養上清「ステムCM」だ。

幹細胞は、元となる脂肪幹細胞の品質や培養方法によって、かえって肌に悪い物質を出すこともあるので、培養条件の選定が非常に重要だという。

ロート製薬の研究開発担当者によれば、「質のよい培養上清を開発するために、最適な培養期間から、細胞数、細胞選定、そして抽出方法まで、我々が長年、再生医療研究で培ってきた培養技術を結集させた。さらに、培養上清に含まれるさまざまな因子は、そのままでは分子が大きく肌に浸透しないので、独自の技術を用いて効果が最大化するように低分子化を行っている。低分子化することで、通常の培養上清に比べて浸透力だけでなく、肌のハリ効果を高めることにも成功した。今後、培養条件を変えたり、低分子化の方法を変えたりすることで、違った効果を発揮する培養上清を開発できる可能性は無限にある」。

ステムCMは、加齢で衰えた肌の表皮層、真皮層、皮下組織すべての層に働きかけ、肌機能を根本から再生する。それにより、皮下組織内の脂肪幹細胞が222%増殖、真皮層ではコラーゲン産生量は600%アップ、さらに表皮では、シミのもととなるメラニン色素を作り出すメラノサイトの活性化を抑制するデータが得られた。(出典:ステムサイエンスRX ファクトブック)

ステムCMを配合したエピステームの最高峰ライン『エピステーム ステムサイエンスRXショット』(38,000円・税別)は、発売初月に当初の売上予測の200%以上を達成するほど反響があった。

一歩先を行く韓国発・幹細胞培養液「ADSC-CM」

日本に初めて幹細胞培養液を紹介した原料メーカーのアンチエイジング株式会社は、韓国のバイオベンチャー企業セルインバイオ研究所と提携し、日本市場に向けたアンチエイジング成分の共同開発・販売を行っている。

同社のADSC-CM(脂肪組織由来幹細胞培養液)は、品質の安定化のために、独自の3次元培養技術とオートメーション化を実現するバイオリアクターを開発。GMP(薬機法に基づいて厚生労働大臣が定めた衣料品などの品質管理基準)に準拠した設備や管理体制のもと培養されているのはもちろん、日本よりも厳しいといわれる韓国食品医薬品安全庁(MFDS)が定める安全試験を実施しており、医療品レベルの安全検査にクリアしたものだけが原料として出荷される。ADSC-CMは、幹細胞や線維芽細胞、表皮幹細胞に働きかけ、細胞を活性化して、しわ改善防止、創傷治癒、美白効果、発毛・増毛、抗酸化などに効果があることが臨床試験で実証されている。

ADSC-CMの事業開発リーダー・金清文氏は、「科学技術や皮膚科学の発展に伴い、スキンケアも『油分と水分を補う』機能から、『ECM(コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン)を補う』機能へと進化してきたが、どれも対症療法的な処置でしかなかった。幹細胞培養液をはじめとした細胞に直接働きかけるアクティブ成分の登場により、不活性化している肌細胞そのものにアプローチする根本療法で、組織を活性化・再生することが可能な時代になった。これは、次世代アンチエイジングスキンケアへのパラダイムシフトが起きているといっても過言ではない。

拡大を続ける日本の幹細胞コスメ

最後に、金氏に日本の幹細胞コスメ市場の現状について聞いた。

「米国や韓国では、幹細胞コスメ市場は既に300~500億円規模に成長しているとも言われている。やや遅れをとりつつも、日本の幹細胞コスメ市場も後に続けと着実に成長している。しかし、幹細胞培養液の研究開発は、医薬品GMPに準じるようなコンタミ(汚染)を極力防げる設備や管理体制を持っているか、厳しい安全基準テストにクリアできるか、など困難が多く、市場に出回っているものは玉石混交なのが現状だ」と金氏はいう。

また、今後はさらなる市場拡大が予測されるにあたり金氏は新規参入メーカー側の情報開示も大事だという。「新規参入メーカー側は、使用する原材料の情報開示をきちんと行い、商品の信頼獲得を目指すべきであろう。逆に、詳しい消費者が、どのような品質の幹細胞を使ってどのような環境で培養されているのか、効果などのエビデンスは公開されているかを調査し公表するケースも予想される」

美容医療の分野では、幹細胞培養液を水光注射で肌に直接注入する施術がすでに行われている。今後、さらに研究が進めば、幹細胞そのものを肌へ投与することが可能になるかもしれない。幹細胞を活用したコスメは、現状、さまざまな課題はあるものの、美容医療との重なりによって、新たなアンチエイジング市場開拓につながる可能性を秘めている。

Text: 小野梨奈 (Lina Ono),

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