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韓国tamburins、化粧品を知らないチームの「価心比」戦略が生み出す世界観

◆ English version: South Korea’s tamburins: Couture-inspired cosmetics made by artists
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個性的な空間アートやファッション要素を掛け合わせた独自のマーケティング、また差別化されたアイテムの魅力で、アジアの消費者を中心に支持を集める韓国の新興化粧品ブランドtamburins(タンバリンズ)。tamburinsが持つブランド構築の哲学、また市場を見渡す視点とはどのようなものなのか。ブランドを運営するIICOMBINED2のマーケティング責任者にその戦略を聞いた。

「お洒落すぎるコスメブランド」「アンティークバッグを思わせるハンドクリーム」など、日本でも韓国コスメ好きの間で評判が高いtamburinsのローンチは2017年だ。エッジーなアイウェアブランドとして世界的にも名高いGENTLE MONSTER を運営するIICOMBINED のグループ会社IICOMBINED2が手掛ける化粧品ブランドである。

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個性的な製品そのものの魅力に加え、ファッション要素や空間アートを前面に出す独自の店舗スタイル、マーケティング手法で韓国はもとより、海外にも熱烈なファン層を持つ。チェーンのついたチューブに代表されるハンドクリームや練り香水など、ジェンダーレスな雰囲気を漂わせ、洗練されたアクセサリーのような製品デザインも特長だ。2019年10月末には、セフォラの韓国進出に伴い国内独占販売契約(免税店を除く)を結んだことも話題となった。

価性比ではなく価心比を追求するブランド

「タンバリンズには化粧品事業に従事した経験のあるスタッフがひとりもいない」と、コミュニケーション&マーケティングチーム長を務めるシン・ナジョン(Shin Najung)氏は、ブランドの“強み”のひとつをそう説明する。業界経験者がひとりもいない、すなわち「既成概念にとらわれない」優位性があるというのだ。

タンバリンズのスタッフはおよそ20名。そのうち、店舗などの空間アートとビジュアルを担当するスタッフが14名にのぼる。R&Dを行う研究所、アイテムを特徴づける香りを受け持つ調香師チームは外部に別途あるものの、その全貌は化粧品という作品を総合的にクリエイトするアート集団と表現した方が正鵠を射る。したがって、その製品開発フローもまた非常にユニークだ。

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フラグシップストアの内観
アートギャラリーを思わせる店舗

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フラグシップストアの外観

シン氏は「我々はスタッフ自身が満足し、自分たちが買いたいと思える商品しかリリースしない。社内で一定数の同意を得られないと商品化できないルールだ。最終段階まで考え抜いて、納得できないとしてボツになった製品がいくつもある。韓国の他ブランドが2週間でつくるとしたら、我々は3ヵ月くらいはかけている」と話す。

これは韓国の化粧品スタートアップ界隈の常識からすると非効率かもしれない。だが、tamburinsでは自分たちの心に聞いた時に本当に欲しいかどうかを重要視しているのだ。さらに、リリースする商品については、香りであれ、効能であれ、デザインであれ、その商品が世界に送り出されたときに、「(商品が)存在する理由が自然と伝わるべき」との哲学があるとシン氏は付け加える。そして「ユーザーの心に刺さるためにはどこか尖った要素が必要で、それを社内スタッフが反芻して追求する」のだと説明する。

こうした開発過程を経るため、ブランド発足当時は新商品をリリースするスピードが決して速くはなかった。ブランドローンチの際、フラグシップストアに置かれた商品はハンドクリームのみ。翌年2018年3月の段階でも、合計3つしかアイテムがなかった。ただ一方で、ブランド哲学を徹底して貫く商品開発や、スローペースの新アイテム展開には戦略上の理由もあった。それはレッドオーシャン化した韓国市場において、他ブランドとの明確な差別化を図るという目的だ。

「韓国には化粧品ブランドや製造業者が非常に多い。ただし、よく観察してみると、海外の歴史が長いブランドのように確たる哲学を持っているとか、方向性をしっかり見出しているプレイヤーはほとんどいない」として、製品の効能や、韓国語でいうところの「価性比(価格に対する性能比)」の良さばかりを声高にうたうブランドが大部分であるとシン氏は指摘する。

「たとえば、アボガド成分が流行するとみんな一斉にアボガド系商品を出したり、緑茶が良いとなると市場は緑茶一辺倒になるという具合で、韓国のブランドは、どこか “ファストフード” みたいだという表現もある。そうなると、製品が長く生き残るのは難しく、ブランド自体の寿命も短いと感じている」と話す。

そこでtamburinsが考えたのは、価性比ではなく「価心比」、すなわち価格に見合う以上の好きという気持ちがわく製品で勝負しようということだ。成分などの効能だけでなく、ユーザーの心の満足度を満たし、「tamburinsとはこういうブランドだ」とすぐに頭の中でイメージしてもらえるよう世界観をつくりこむことを決意した。同時に、シン氏は「韓国ブランドでありながらグローバルに展開でき、長く生き続けるブランドをつくろうと思った。それが、現在でも商品開発やマーケティングにおいて一貫した戦略の柱となっている」と明かす。

BeautyTech.jpで幾度となく報じているように、K-beautyブームの裏側で韓国にはコスメブランドが乱立。その数は約3万ともいわれ、大手、ベンチャーが入り乱れた熾烈な競争が繰り広げられている。tamburinsはその競争の本質を見てとり、独自のブランド構築・商品開発の手法を確立すべく舵を切ったということになる。

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実際に韓国では最近、hinceのように独特のムードがある、ブランドそのものに魅力がある商品が人気を集めている。商品が市場に溢れている昨今、「消費者も必要だから商品を買うというレベルを超えて、消費によって自分の感性・嗜好を表現する方向に変化している」とシン氏はみている。

そして「もちろん価性比を問う市場は存在し続けると思うが、価心比を問う潮流は今後広がるのではないか。価心比が求められてきた背景にはSNSなどの発展も大きく作用している。韓国では、最初はNaver BlogやTwitter、Facebookなどで情報が共有されてきたが、写真1枚で世界観を伝えるInstagramがメインチャンネルになりだした2017年以降、価心比を求めるユーザーが一気に顕著になってきた感がある」と分析する。

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セフォラとの独占契約。今後は国内中心にブランディング強化

前述したように2019年10月末に韓国セフォラでの独占販売がスタートしたtamburinsだが、シン氏はその背景について次のように話す。

「セフォラとの契約の前から、国内有名流通チャネルからの提案はきていた。しかし、H&Bストアなどにはすでに多くのブランドが入店している状況。そこに、one of them(大勢のなかの1つ)として加わるのは違うと思っていた。我々のフラグシップストアのように、香りや絵画、空間、音楽などと融合してこそ、商品のブランドイメージが伝わるからだ。セフォラの場合、韓国の第1号店ということで、ともに成長していこうという空気があり、調整が可能だった。セフォラではブランド別にセッションをつくるので、我々の空間アートを持ち込むこともできる。そこで手を組むことになった」(シン氏)。

現在も新たな流通チャネルの開拓を検討中ではあるが、当面はフラグシップストアを中心にブランディングを強化していく計画だとシン氏。一方で、ソウル・漢南洞にあるD MUSEUM などアートミュージアムやホテルなどと、空間アートや商品を通じた協業を意識的に拡大していくとする。

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フラッグシップストアの商品展示スペース

海外での知名度も高まってはいるものの、いまは韓国国内でポジションを確保することを優先しており、現在はまだグローバル進出については準備がないとする。韓国に来てこそ、そのアートミュージアム的な雰囲気に触れられるという希少性を守る意図もあるのかもしれない。

とはいえ日本の百貨店やセレクトショップから多数提案があるとして、「日本には有名ブランドも多く、ユーザーは目が肥えていると考えている。あまり流行に左右されず、ディテールにも全体的な部分にも納得がいかなければ、満足も消費もしない」とシン氏は日本市場を分析。「日本のファンの方々が実際に我々の店舗を訪れ、空間や商品についてInstagramなどで発信してくれるのをみるととても嬉しく思う。いつか、東京など大きな都市で展開できる日を楽しみにしている」と日本進出には含みを持たせている。

Text:河 鐘基(Jonggi HA)
画像提供:tamburins

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