美容業界のソーシャルグッドなマーケティング、欧米の"ウォーク批判"や矛盾の構造を理解しつつ積極展開すべき理由
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企業における経営方針やマーケティングで、多様性や包括性の推進を肯定するメッセージや社会課題に取り組む企業姿勢を明らかにするなど、“ソーシャルグッド”であることを積極的に示す事例が増えている。欧米ではそうした動きを「ウォーク(Woke、社会課題への意識が高い人々や活動)」と呼ぶ一方で、それが偽善だとする非難も起きており、ソーシャルグッドが分断を深化させる状況も生まれている。美容を含めた国内外の事例をみつつ、日本でも取り組みが始まっているソーシャルグッドをどう考えていくべきか、広告クリエイティブの動向に詳しい株式会社電通 クリエーティブ・ディレクター/コピーライターの橋口幸生氏に話を聞いた。
社会をより良くする行動としてのソーシャルグッド
ソーシャルグッドとは、一言でいうなら、社会に対してプラスの影響を与える活動や製品、サービスのことを指す。企業にとっては、利益を確保しつつも、環境および従業員や消費者、投資家などのすべてのステークホルダーに配慮した適切な意思決定を行う責任が企業にはあるとするCSR(企業の社会的責任)とも重なる部分がある。
欧米では「MeToo」や「BLM(ブラック・ライブズ・マター)」など、人権や性別・人種の不平等に関わる社会現象的ムーブメントが起きたこともあり、多様性やインクルーシブなど社会課題に対して、企業・ブランドがどのような対応をしているかを一般消費者が注視し、それをもとに支持や購入あるいは不買などを決める消費者行動が増加した。これに伴い、企業側も、自分たちのESG(環境・社会・ガバナンス)経営のあり方や具体的な施策を発信する企業広告のほか、ソーシャルグッドを推進する団体を支援するキャンペーンを打つケースが多くなったとされる。そこには、ロレアルやユニリーバ、P&Gなどグローバルビューティ大手も含まれている。
こうしたここ数年の広告トレンドについて、株式会社 電通 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 橋口幸生氏は、世の中を良くしようとの思いが込められた社会性のある経営方針や、その方針にもとづくマーケティングが人々の心に響く広告となりうるとする一方で、同時にそれが「ふり」と見抜かれたり、ソーシャルグッドであることと経営陣の判断がアンバランスであることが、昨今では問題視されてきていると指摘する。
「ソーシャルグッドな行動が、(世界3大広告賞のひとつで世界最大級の広告賞)カンヌライオンズなどの受賞を狙うような広告制作だけではなく、普段の企業活動においてもそのような意識や視点を持つ企業が多いかというと、必ずしもそうではない」(橋口氏)
つまり、プロモーションとしてはソーシャルグッドであっても、その企業の経営層からスタッフまで、あるべき姿勢がしっかり理解され実行されている状況とはいいにくいということだ。
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