「美容業界におけるChatGPT」「マイクロプラスチック汚染防止」がキーワード【海外トレンド 2023年4月- 5月】
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毎月1回、ビューティ業界にインパクトを与える海外ニュースを俯瞰し、注目すべきポイントと報道の裏側にある背景を解説。グローバルな視点からビジネスの潮流を紐解く。今回は、仕事の現場のみならず、普段の暮らしをも大きく変えるとして社会に衝撃を与えている対話型AI ChatGPTが、美容業界でどう使われはじめているかをレポート。あわせて、環境問題解決に積極的な姿勢をみせる欧州で採択されたマイクロプラスチック抑制法案について紹介する。
セフォラやロレアルも活用を開始、ChatGPTで顧客体験向上やマーケティング業務の効率化
★注目ポイント
対話型AIあるいは生成AIと呼ばれる「ChatGPT」は、2022年11月のサービス開始以来、記録的な勢いで伸長し、最初の2カ月で1億人以上のユーザーを獲得している。ChatGPTは人々の働き方や生活に革命を起こす可能性を秘めており、AIが人間に取って代わるのではないかとの懸念もあるものの、一部のビューティブランドはすでにChatGPTに大きな可能性を見出し、パーソナライズした顧客体験の向上や生産性のアップ、さらには、マーケティングキャンペーンの新しいアイディアを生み出すアシスタントとして活用を始めている。
OpenAIが開発したChatGPTをはじめとする対話型AIの登場は、ビジネスのあり方を大きく変える存在として各界を揺るがしている。ビューティ業界も例外ではない。使用に賛否両論が噴出し、政府による規制の動きも取り沙汰される一方で、いち早く活用を始めたビューティブランドも現れている。
ChatGPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、最先端の言語モデルとされる。機械学習の手法によりAIが自然言語(日本語や英語など、人間が日常的な意思の疎通や情報の伝達、記録、思考に用いる、「読み・書き・話す・聞く」に使われる言葉)のテキストを分析・理解し、自然言語処理、言語翻訳、テキスト生成など、幅広い用途で利用することができる。
ビューティ業界での活用法としてすでに行われているのは、ECサイトやアプリで顧客の質問に答え、アドバイスするなどしてショッピングをサポートするチャットボットにChatGPTを採用する事例だ。ChatGPTが顧客とのやり取り(対話)を通して、顧客の特定のニーズや好みを理解し、個々の要望に合わせた製品を提案することで、より高度にパーソナライズされた商品レコメンデーションの提供が可能になるという。
このように、ユーザーが実店舗での接客に近い感覚が得られる、自然な会話で役にたつショッピング体験を提供することで、顧客エンゲージメントと満足度の向上も期待できる。同時に企業側にとっては、顧客のニーズや嗜好に関するインサイトの蓄積ができ、製品の改善や開発につなげられる利点もある。
たとえばセフォラは、ChatGPTを搭載したチャットボットを開発し、顧客が製品に関する質問をしたり、パーソナライズされたレコメンドを受け取ったりできるようにしている。このチャットボットは、同社のモバイルアプリとWebサイトに統合されており、いわばビューティアドバイザーとして、各自に合った口紅の色合いや最適なスキンケアのルーチンを見つけることを助けるものだ。ロレアルも同様に、ChatGPTを使用したバーチャルアシスタントを、同社のWebサイトやECプラットフォームに実装し、オンラインカスタマーサービス体験を強化している。
また、米国のスキンケア&メイクアップブランド「Glossier(グロッシアー)」は、パーソナライズした商品レコメンドシステムの構築にChatGPTを使用している。あわせて、既存の商品情報を読み取り、その特徴や利点を理解するとともに、顧客との対話から顧客の実際の使用体験を学び言語化するChatGPTの能力を活用して、商品レビューと説明文の生成もしているという。
一方、インディーズビューティコンセプトのブランド「Ciaté London」「Lottie London」「I Am Proud」を擁する英Brand Agency Londonのグローバルマーケティングディレクターであるノーラ・ズッカスケイト(Nora Zukauskaite)氏は、BeautyMatterのインタビューのなかで、同社がいかにChatGPTを活かして、ワークフローを効率化しているかを明かした。「マーケティングチームは、Lottie Londonの Consent to Kissキャンペーンのアイディア出しに、PRチームは、Body Proud Smooth Talk Exfoliating Body Serumのプレスリリース作成に、ソーシャル(メディア)チームは、新ブランド発表のコンテンツカレンダーのアイディア出しとキャプション作成のブレインストーミングにChatGPTを活用した」(ズッカスケイト氏)
同氏は、ChatGPTの回答をそのまま利用するのは難しいが、チームが必要に応じて内容や表現を微調整し「人間味」を出すための最初のたたき台として役立っているとし、その結果、マーケティング部門の時間を節約し、創造性とコラボレーションを促進できるとする。
ChatGPTは、ほとんど無限のトピックに関してテキストを生成することができるが、求める回答レベルによっては、非常に具体的な質問を投げかける必要がある。ズッカスケイト氏もインタビューのなかで、ChatGPTに説明する際には、非常に明確かつ簡潔で、可能な限り詳細な情報を盛り込まなければ、最良の結果が得られないと認めつつも、「クリエイティブなアイディア出しを(ChatGPTに)完全に置き換えることはできない。だが、(人間が)自らのアイディアを出すための足がかりになる。また、さまざまなオンラインソースから多くの情報を引き出すことができるので、リサーチの時間を短縮できる」と評価する。
また、ブランドやクリエイターとそのファンやフォロワーを、アルゴリズム主導のコンテンツではなく、人とのつながりやコミュニティに焦点を当てた、よりポジティブな環境でつなぐことを目的に、2023年5月にリリースされたばかりの新しいソーシャルネットワーキングアプリ「RTRO」には、ChatGPTが統合されている。
同アプリは、ユーザーがグループを作成し、テキスト、リンク、画像、ビデオを共有することができるプライベートなグループチャットセクションと、ブランドやインフルエンサーがフォロワーにメッセージを送るためのパブリックなチャネルセクションの2つを併用でき、ChatGPTを使って「Ask AI」アカウントとDM形式でチャットできる機能も持つ。
RTROのアカウントを公開しているビューティブランドには、シートマスクが主力の「Loops」や、K-beautyの「Joah」、中国発のカラーコスメ「Kiss Beauty」があるほか、アンチエイジング・スキンケア「ALASTIN Skincare」は、アプリのプライベートチャット機能を使って、スキンケアのプロフェッショナルとつながるグループをエステティシャンサミットイベントで立ち上げた。「Myavana Haircare」と、元アルマーニビューティのセレブリティメイクアップアーティストのティム・クィン(Tim Quinn)氏が設立したブランド「Halo 42」もこのアプリに参加する予定という。
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