ナノインフルエンサーが活躍する時代のその先は? エンゲージメントの強さを考える

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インフルエンサーマーケティングが進化するにつれ、フォロワー数が多い=影響力があるという単純な図式では効果が測れなくなってきた。フォロワーは少数だが、その小さなコミュニティ内では強いつながりを持ち、高いエンゲージメント率を誇るナノインフルエンサーが注目を集めている。いくつかの事例をもとに、ナノインフルエンサー起用について考えてみたい。

TwitterやInstagram、YouTubeやブログなど手軽な情報発信手段が広がるにつれ、ソーシャルメディアで多くのフォロワーを抱える個人が「インフルエンサー」として注目されるようになってきた。彼ら・彼女らは自らの体験や実感をネット上で表現することでフォロワーの共感を呼び、ひいてはフォロワーの購買行動にも影響力を及ぼし、従来の広告とは違う形で企業と消費者のコミュニケーションを媒介するようになった。

このような個人を活用したマーケティング活動は「インフルエンサーマーケティング」と呼ばれ、サイバーエージェントの調査によれば、日本でも広告出稿企業の56%が活用したことがあるとされる。

インフルエンサーマーケティングが浸透するにつれ、そのあり方にも変化が表れてきた。かつてインフルエンサーといえば、たとえばキム・カーダシアンやセレーナ・ゴメスのようなリアルの場でのセレブリティ、またはHIKAKINのようなネット発の有名人であっても、フォロワー数百万人を持つというケースが中心だった。だがその後、フォロワー数は数十万人程度でも、ファッションや旅行、コスメなど、テーマを特化した発信者として「マイクロインフルエンサー」と呼ばれる人々が注目されるようになっている。ニューヨーク・タイムズによれば、さらに最近ではフォロワー数が数千人規模の「ナノインフルエンサー」にも活躍の場が与えられつつある

マイクロより小さい、「ナノインフルエンサー」とは?

ナノインフルエンサーの定義は考え方によって多少変動するが、おおむねフォロワー数1,000人〜1万人程度のソーシャルメディアを運営する人物のことを指し、プラットフォームはおもにInstagramに集中している。インフルエンサーを束ねるエージェントによっては、フォロワー300人から登録可能 というケースもあり、その敷居は非常に低くなっている。

Image: Jacob Lund via shutterstock

フォロワー数が少ないとはいえ、その分だけコストも低く抑えられ、費用対効果を重視するマーケターにとっては魅力的だ。たとえばInstagramのフォロワー1億2,000万人以上を抱えるカイリー・ジェンナーの場合、スポンサード投稿1回あたりに支払われる費用は100万ドル(約1億900万円)とされており、マイクロインフルエンサーでも1投稿あたり200〜500ドル(2万2000〜5万5000円)が相場とされる。だが、ナノインフルエンサーの場合、対価はごくわずか、または試供品の提供程度でも引き受けられている。

くわえて、コスト以上の価値となりうるのは、ナノインフルエンサーはフォロワー数が少ない分、投稿に対するリアクションが得られやすいことである。実際にある調査によれば、Instagramのフォロワー数10万人以上でのエンゲージメント率は1.7%であるのに対し、フォロワー数5,000人以下では5.7%と3倍以上の開きがある

ナノインフルエンサーの実態

では、実際にどのようなナノインフルエンサーが存在するのだろうか。

たとえばニューヨーク・タイムズで紹介されたアレクシス・ベーカー(Alexis Baker)氏は、普段は不動産管理会社に勤務する25歳の女性だが、趣味としてInstagramYouTubeチャンネルのアカウントを運営して3,000人程度のフォロワーを集めている。普段、投稿するのは、旅行先やナイトアウトで外出した際のドレス姿などが中心で、そこに化粧品や飲料といった商品の紹介が、#adや#sponsoredのタグ付きでときどき織り交ぜられている。最近の広告例はクリニークのファンデーションや韓国コスメDewy Celのアイクリーム、コーヒー飲料のLOCOなどがある。

こうしたナノインフルエンサーたちが広告を引き受けるきっかけは、企業側から直接DMを受け取る場合もあれば、企業とインフルエンサーをつなぐサービスに登録しているケースなどさまざまで、本人が企業に働きかける場合もある。たとえばケルシー・ローゼンバーグ(Kelsey Rosenberg)氏はフォロワー約2,000人のInstagramアカウントを運営しており、自ら地元のバーやレストランにコンタクトして売り込み、定期的に広告投稿を入れ込んでいるという。

海外だけでなく、日本でもナノインフルエンサーと呼べる人たちが活動している。ヘアサロンモデルとして活躍する@aiiir1203氏は、フォロワー数6,000人弱のInstagramアカウントを持ち、ロレアルのインフルエンサー向けイベントに招待された体験などを投稿している。

@karimero_02氏は2,000弱のフォロワーをもち、プチプラコスメに特化した発信をしている。投稿によっては「いいね!」が500件を超える場合もあるほどだ。CandyDollのアンバサダーキャンペーンに参加し、公式にアンバサダーのひとりとして認定されている。

どこまでできる? ナノインフルエンサーマーケティングの効果

ナノインフルエンサーマーケティングの実例で具体的な効果が明らかになっているケースはまだ多くはないが、ソーシャルメディアの活用に長けたブランドでは、すでにその経験を深めつつある。

たとえばGlossierでは、インフルエンサー選定の指標としてフォロワー数よりもエンゲージメント率を重視しているため、結果的にナノインフルエンサーやマイクロインフルエンサーがパートナーになっているといわれる。抜擢されたインフルエンサーは同社のブログ「Into the Gloss」で紹介されたり、「Glossier reps」と呼ばれるプログラムに参加して自身のページを与えられ、そこを経由した売上に対してコミッションを得ることもできる

ロレアル傘下のプロフェッショナル・ヘアケアブランドMATRIXは、スタイリング製品のBiolage R.A.W.の認知拡大のためにPeerswayのプラットフォームを利用している。カナダのインフルエンサー150人にBiolage R.A.W.の製品を使ったスタイリングの写真を投稿してもらうなどした結果、295回のポストがあり、リーチは91万件以上に達したという。またBiolageそのもののInstagramフォロワー数もこのキャンペーンによって10%増加し、継続的なリーチを広げることに成功した。

パーソナルケアTom's of Maineは、同ブランドのソーシャルメディアでのエンゲージメントを高めるべく、あえて500〜5,000人規模のインフルエンサーに対象を絞ったキャンペーンを展開した。インフルエンサーマーケティングプラットフォームを運営するMavrckの協力により、各ソーシャルメディアにTom's of Maineのブランデッドコミュニティを立ち上げてインフルエンサーを集め、さらに各インフルエンサーのオーディエンスを、性別、年代やライフイベントなどのセグメントに分類した。そしてそのセグメントに合わせ、コンテンツの投稿や製品へのフィードバックなど12種類の活動を促した。その緻密さが功を奏してか、インフルエンサー1,000人につき「いいね!」などのインタラクションが6,500件近くにのぼったという。

個人を扱うことの難しさ

このようにナノインフルエンサー活躍の場は広がりつつあるが、それと同時に課題も浮かび上がっている。前出のサイバーエージェントによる広告主向け調査では、まず「どんな人物をどんな手法で選べばよいのか」が一番の課題とされ、次に「効果がわかりづらい」「効果測定ができない」「KPIが曖昧」といった効果関連が続く。この調査はインフルエンサー全般に関するものだったが、フォロワーの規模が小さくなるほどこれらの課題は顕著になるはずだ。

もうひとつ、ナノインフルエンサーの場合に特に難しいと思われるのが、コンテンツのクオリティの担保やインフルエンサーのモチベーション維持である。平たくいえば、「企業側が望む内容を、望むタイミングで投稿してくれるかどうか」ということだ。

2018年、ソーシャルメディアのSnapがウェアラブルデバイス「Snap Spectacles」のプロモーションのために、インフルエンサーのルカ・サバト(Luka Sabbat)氏に投稿を依頼したが、契約通りの投稿が行われず、訴訟にまで発展する事態となった。それほど極端な例でなくとも、スポンサード投稿であるにもかかわらずそれを示すようなタグや文言を入れていないなど、問題のあるケースは少なくない。

とはいえ、広告主側が文言などあまりに細かく口を出し強要してしまうと、インフルエンサー側のやる気がそがれ、投稿内容も広告臭が強くなって、読み手からの共感も得られにくくなる。コンテンツに関してはインフルエンサーへの信頼と管理の微妙なバランス感覚が必要になるだろう。

急増するインフルエンサーマーケティング支援サービス

こうした課題をまとめて解決すべく、前出のPeerswayやMavrckも含め、さまざまな形のインフルエンサーマーケティング代理店やプラットフォームが立ち上がっている。米国を中心とした、あるインフルエンサーマーケティング企業リストには60社以上が掲載されており、インフルエンサー選定から、キャンペーンの効果測定といった技術、インフルエンサーとの関係作りやコンテンツ管理、イベント実施や商品発送代行といったサービスを提供していることが示されている。

日本でもより小規模なインフルエンサーを対象としたサービスが立ち上がりつつある。たとえばHIKAKIN氏やはじめしゃちょー氏など多くのYouTuberインフルエンサーを抱えるUUUMは、Instagramでのマーケティングプラットフォームとして「LMND(レモネード)」を立ち上げた。

同様に、2014年からインフルエンサープラットフォームを運営してきたBitStarも、フォロワー数300人以上をナノインフルエンサーと定義し、マッチングサービスを行っている。最近ではYouTubeでも登録者数が数百のインフルエンサーが選ばれることもあるという。

同社の広告ユニット兼プロダクションユニット責任者の矢澤孝明氏は「ユーザーとの距離感が強いだけにエンゲージメント率は高くなる。同じ予算でも、商材の特性にあわせて、1人のメガインフルエンサーに依頼するのか、マイクロインフルエンサーを何十人も集めるのかというような使い分けが進んでいる」と話す。Instagramでは新商品発売にあわせてナノインフルエンサーを多数起用することで、商品名をInstagram内で検索されやすくするといった施策も増えてきている。

ほかにもAIを使ったインフルエンサーのデータ分析とそれにもとづくキャスティングを行うクロスリング、「国内最安値級のキャスティング」をうたうInfluencer Cloud、登録インフルエンサー1,000人以上を抱えるFind Model、美容に特化したキャスティングを手がけるPure Blueといった企業・サービスがしのぎを削る。

ナノインフルエンサーのその先は「一般人」かもしれない。よく知っている人が、本当に自分がいいと思ったものを投稿していたら、そこに#adや#prなどのハッシュタグがついていたとしても、あまり気に留められなくなるのではないか。人となりをよく知っている人が宣伝しているなら見るに値するという気持ちは強く働くはずだ。

「一般人に我々のプラットフォームに登録してもらうということも将来的に考えられる」と矢澤氏は話す。「学校のクラスで目立つ人や声の大きい人の言うことには説得力があった。そういった感覚になっていくのかもしれない」。

Text: 福田ミホ(Miho Fukuda)


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