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ワクワクする店舗と顧客体験、ワールド・モード・ホールディングスとビーツの提携によるOMO施策
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ファッション・ビューティ領域に特化したソリューション企業グループ ワールド・モード・ホールディングスと、複数のグローバルデザインファームとのパートナーシップをもつビーツが提携。両社が目指す、顧客が思わず共有したくなる店舗設計と体験、SNSを通じた相互作用により顧客体験と売上を向上させるOMO施策について両社代表に話を聞いた。
ファッション・ビューティ業界のソリューション企業とリアル店舗空間の顧客体験創造企業の提携
2024年11月、ファッション・ビューティ業界を専門に、総合人材サービス、店舗運営コンサルティング、店舗運営代行、ビジュアルマーチャンダイジング、広告・マーケティングなど多角的な事業を国内外において展開するワールド・モード・ホールディングスと、グローバルデザインファームと連携し顧客体験を一新するリアル店舗空間を創造するビーツは業務提携を発表した。これにより両社は、海外デザイナーを招いたウェビナーの開催や海外の店舗デザインの最新トレンドを紹介するトレンドレポートを共同出版することを手始めに、日本市場において「顧客にもスタッフにもワクワクする体験を届ける実店舗」の展開に拍車をかけたい考えだ。
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出典:ビーツ公式サイト
両社の提携についてワールド・モード・ホールディングス株式会社 代表取締役 加福真介氏は、互いの知見と強みを補完し合うことで、日本ではまだ少ないクリエイティブの力をテコにした集客力や話題性といった付加価値の高い実店舗の実現につながると話す。
「当社はファッション・ビューティ領域に特化したソリューション企業グループとして、人材、マーケティング、テクノロジー、店舗運営コンサルティング、空間デザインなどの領域をカバーする7社のグループ会社で構成されており、国内27拠点、グローバル5拠点で展開している。なかでも、人材派遣やアウトソーシングの受託、店舗運営代行、教育・研修などの事業を担うiDAはグループ総売上の4分の3近くを占める中核企業だ。つまり我々は、業界のニーズに応える専門性の高い人材と店舗関連サービスのエキスパートといえる」と加福氏。ビーツが手掛けるブランドの世界観を体現する店舗のなかで、顧客体験を拡張するサポートができるスタッフや店舗運営を提供可能とする。
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画像提供:ワールド・モード・ホールディングス
ビーツと提携するきっかけは、韓国ブランドからの要請が高まっている日本進出のためのプラットフォーム構築を協業できないかという、ビーツ側からのオファーから始まった。店舗やその仕組みの設計を得意とするビーツだが、販売に関するノウハウはない。そこで、ファッション・ビューティ領域の人材サービスの第一人者であるiDAに協力を呼びかけ、今回のワールド・モード・ホールディングスとの連携につながったという。
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プロフィール/1977年大阪府生まれ。同志社大学卒業後、大手ITソリューション会社で営業担当として従事。2003年に父が創業した株式会社iDAに入社、営業本部長などを経て2008年に代表取締役に就任。当時の人材派遣事業の枠にとどまらないビジネスを築き、2012年にファッション・ビューティ業界に特化したトータルソリューショングループであるワールド・モード・ホールディングス株式会社を設立。現在は国内27拠点、海外5拠点を有し事業を展開
SNS発信拠点としてのOMO型店舗体験をクリエイトするビーツ
一方ビーツは、オンラインショッピングが少しずつ広がってはいるものの、商品に直接触れ、ブランドの世界観を五感で体感できるリアル店舗が顧客との深い信頼関係を築く重要な役割を果たしているとの認識のもと、韓国ファッションECプラットフォーム「nugu」の日本初店舗をはじめ、ポップアップストアなど、感覚に訴える体験を最大化する新しい仕掛けのあるリアル店舗空間を創造してきた。
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IT・デジタル領域で長いキャリアを持ち、EC運営の経験もある株式会社ビーツ 代表取締役社長 柏木又浩氏は、今なぜ実店舗での体験が重要視されるのかについて、コロナを境として、ECと店舗を連動させるオムニチャネルのあり方が変わったことにあるとする。
「店舗はECへの送客ツールというかつての位置づけから、顧客・スタッフのSNS発信の拠点となる“ブランド体験の場”に変わった。つまり、ECと店舗の相互利用による売上アップとロイヤルカスタマー化を狙っていたOMO戦略が、アフターコロナになりEC事業の伸びが鈍化しているのを受け、店舗をリアルなブランド体験ができる場=クリエイティブとすることでSNSの発信を促し、新規・リピーターの獲得につなげる戦略に取って代わったと考えている」(柏木氏)
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その一例として柏木氏は、米化粧品ブランド「Glossier(グロッシアー)」の、ブランドの世界をそのまま具現化したかのような米ニューヨークの店舗を訪れた際の経験を語る。GlossierはD2Cでスタートし、一貫したブランド世界観の確立とファンコミュニティを育てるデジタルマーケティングで、ミレニアル・Z世代から絶大な支持を得て、近年ではリアル店舗やポップアップストアの拡大に努めている。
「Glossierのニューヨーク旗艦店はとにかく楽しくて面白い店舗で、お客様はみんな写真をどんどん撮ってその場でInstagramに上げていた。すると、Glossier側からダイレクトメッセージで“投稿ありがとう”というコメントが即座にくる。リアルな店舗体験からの直接的なコミュニケーションがデジタル上で生まれていた。それがすごいと思った」(柏木氏)
すぐに誰がこの店舗のデザインを担当したのかを調査したという柏木氏は、米ニューヨークを拠点に世界中で活動するマデリン・リンゴ(Madelynn Ringo)氏のデザインスタジオ Ringo Studioであることを知り、直接交渉の末に同社とのパートナーシップを締結した。ビーツではこのほか、世界的なブランドとの共同制作やサステナブルなコンセプトで知られ、アイコニックなシューボックスをディスプレイとしたジミー チュウの東京銀座店などを手がけた CROSBY STUDIOS をはじめ、国際的に評価が高い米BOND、韓国ARKITAGといったグローバルデザインファームとのネットワークの拡大を図っている。
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出典:ワールド・モード・ホールディングス プレスリリース
「我々がワールド・モード・ホールディングスとともに推進しようとしているのは、グローバルデザイナーによる、足を運んだ顧客が自ら積極的に店舗から発信したくなるような、いわば“映える”店舗の価値を、日本のブランドに理解し採用してもらうことだ」と柏木氏は話す。そして、現在CROSBY STUDIOSがデザインを手掛けるサステナビリティをテーマにした「サステナブルPOPUP」プロジェクトを企画して日本の商業施設と内容を詰めている段階だと明かし、まずは成功事例をつくりたいとする。
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プロフィール/2012年アパレル企業TSIホールディングスに参画。デジタル担当執行役員とEC子会社社長を兼任。2020年ITアウトソーシング企業トランスコスモスの常務執行役員に就任。国内外のEC事業とリテール企業のDX戦略の総括責任者を担当。2023年6月より株式会社ビーツ代表取締役社長に就任
ビーツとの連携を機に、韓国に自ら視察に行き、SNSでの盛り上がりが話題となっている店舗の数々を実際に見学したという加福氏も「海外で自分自身が感じたワクワク感のある体験を日本でももっと増やしていきたい」と話す。
「店舗はお客様がブランドを感じる場所であるのはもちろんだが、働くスタッフにとっても大切な場所。ブランドの価値が伝わる新たな店舗体験をつくるためには、そこで働く人たちの行動や意識を変えていく必要がある。店舗の造形はもちろん、スタッフとの会話などの接客も含めてのブランド体験だと考えている。販売員の知識とかマインドセットというところからきちんとトレーニングを行い、オムニチャネル化に対応する従業員のDXも進め、ソフトの面からもハードの面からも店舗そのものの体験を進化させていくことが重要だと思う」(加福氏)
UGCデジタルサイネージや3Dボディスキャナー、クリエイティブ×データ店舗体験
ビーツが提供するOMOソリューションには、リテールテック視点もいきとどいている。ビーツは自社を「売れる店舗デザインとデジタルソリューションのオーガナイザー」と位置づけ、得意とするブランド価値観の高い再現性とクリエイティビティにデータやテクノロジーを組み合わせることで、店舗という最強の顧客接点で体感できるブランド体験をさらに進化させるパートナーとなるのを目指しているとする。
ビーツでは、導入企業が手元のパソコンから全国の店舗や商業施設にあるモニターを自由自在に管理できる配信システム「OMOクラモニ」を提供しており、全国の店舗や施設にて約8,500スクリーンが稼働している(2025年2月時点)。
柏木氏はさらに、2025年夏頃をめどに、デジタルサイネージにUGC(ユーザー生成コンツンツ)を映像イメージとしてアウトプットするサービス「UGCクラモニ」をリリースする予定だと話す。その背景には、EC、実店舗を問わずショッピングにおいては、消費者が商品を見つけたり購入を決めるきっかけとして、他のユーザーのレビューが店舗側からの発信よりも重きを置かれている現状があるからだ。
「今のお客様は、その商品を実際に使用した人の声に一番の信頼を置いている。だが、今のところSNSでのクチコミなどを起点としたオンライン上での成果を、店舗にきちんと連携できているかというとそうではない」(柏木氏)として、来店客が興味を持ちそうなUGCを店舗サイネージで表示することで、コンバージョン率の向上が期待できるとする。
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また、ビーツは2023年10月に3Dボディスキャナーを開発するiBODY JAPANと業務提携し、ボディスキャナーを活用した新たな顧客体験の創造もすすめている。2025年1月に米ニューヨークで開催された世界最大級の小売業界展示会「NRF2025 Innovators Showcase」にも出展し、3Dボディスキャナー「iBODY X」と「iBODY 2」の体験型展示を行った。
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iBODY Xは96台のカメラで自然で自由な動作・表情を実現する高精細アバターを瞬時に生成するものだ。一方、iBODY 2は12台の赤外線カメラが150万点の点群データを取得し、0.5秒で高精度にボディサイズを計測する。また、ボディサイズだけではなく、脂肪、筋肉、骨格の状態や、体型変化をトラッキングするモニタリング、理想体型との差の見える化、体の歪みの可視化や歪み診断といったさまざまなデータが確認可能で、取得した歪みデータをもとにした体型改善アドバイスもできる。
「iBODY 2は、測定したボディデータをもとに適した健康器具やエクササイズの提案など、おもにウエルネス関連業界の店舗での活用を想定している」とする柏木氏だが、出展ブースを訪れたブラジルの美容医療企業から、痩身や脂肪除去などの施術の際のビフォーアフターを患者に提示するのにぴったりと高い興味と関心を示されたといい、新たな可能性にも目を向けるきっかけとなった。
店舗での体験という実用的でかつエンタメ要素のあるアクションを組み込んだリアルなカスタマージャーニーの構築が、小売りの現場を変えていく未来を示している。
Text: そごうあやこ (Ayako Sogo)
Top image and photo: 株式会社ビーツ