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成分分析、クチコミ、肌診断も。新境地で躍進する中国の化粧品アプリ「美麗修行」

◆ English version: Chinese app Beauty Evolution lets users review ingredients and offers skin diagnosis
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中国におけるコスメのマーケティングでは、SNS普及以前はクチコミサイトが商品の認知や拡散に一定の役割を果たしていた。しかし、こうしたサイトも一時期ほどの勢いはなくなっている。そんななか、新たなサービスを売りとしたクチコミ型のアプリが中国で話題になっている。化粧品成分分析アプリ「Beauty Evolution(美麗修行)」である。

Beauty Evolution(美麗修行)」は、2016年にスタートしたばかりのいわば新興のクチコミアプリだ。しかし、その勢いは古くからある中国のクチコミアプリをしのぐ存在感となっている。

中国の化粧品クチコミサイトの最大手は「KIMISS(閨蜜)」といわれる。同サイトはユーザー評価をもとにしたカテゴリーごとのランキングが充実しており、現地の報道によると、2016年時点で16万点以上の商品を4,000万以上のユーザー評価でランキング化していた。

データの活用や見せ方に長けており、商品をクリックするとそれを使用しているユーザーの年齢や肌質などの分布がグラフで表示される。日本の「価格.com」のような機能もあり、商品によってはTmall(天猫)JD.com(京東)Suning.com(蘇寧易購)での販売価格が表示され、それぞれのリンク先から購入することができる。また、アプリ版はSNS色が強く、ユーザーの投稿がタイムラインに表示される。

運営会社は北京時欣信息技術だが、2018年8月に女性靴ブランドの「鞋企星期六」が同社の株式の83%を取得して子会社化している。鞋企星期六によると、北京時欣信息技術の2017年の営業収入は約3,788万元(約5.94億円)で、純利益は約605万元(約9,494万円)だったが、2018年に関しては公表されていない。業績が振るわないため現在は第三者に売却された可能性もあるようだ。

KIMISSのウェブサイト

ほかに大手では、中国の化粧品EC最大手「JUMEI.COM(聚美優品)」が運営する「KOUBEI JUMEI.COM(聚美口碑)」がある。聚美優品は2014年にニューヨーク証券取引所に上場し、現在の時価総額は3.62億ドル(約393億円)に達する。しかし、クチコミサイトに限っていえば、最近の書き込みが少なく、苦戦しているとみられる。

日系企業での勤務経験もある女性が創業

投稿の際はWeiboやWeChatを利用する人が増大している中国では、存在意義が薄れつつあるクチコミサイトだが、成分分析を切り口に急成長しているのが「Beauty Evolution(美麗修行)」だ。

女性創業者の易鴎CEOは、武漢市にある華中科技大学の日本語学科を卒業後、日東電工や独バイヤスドルフの中国法人で高分子材料を扱う業務に従事していた。中国のウェブメディア「創業最前線」(2019年4月1日付)のインタビュー記事によれば、易氏は敏感肌で、化粧品を使用していると肌が過敏に反応するトラブルにしばしば見舞われていたという。長年、化学分野に携わってきたこともあり、化粧品の成分に興味を持ったのは自然な流れだったようだ。

易氏はまず、海外のウェブサイトで化粧品の原料や皮膚への刺激の原因物質について調べることから始めた。ネット掲示板で積極的に自分が発見したことを紹介すると、多くのユーザーから賛同が得られ、こうした活動が同アプリを立ち上げるきっかけとなったのだ。

インタビュー記事のなかで易氏は「ネットの友人たちのコメントを通じて、とても多くの人がスキンケアの本質に対し誤った認識を持っていることがわかった。消費材のなかでも化粧品は、(原材料の開示などに関し)非常に不透明な製品で欠陥がある。消費者が情報の主導権を取るためのシステムをつくろうと思った」と語っている。

Beauty Evolutionの
ホーム画面と月間ランキング

化粧品の不透明な部分をつまびらかにしようという思いが、彼女を創業へと駆り立てたわけだ。2015年に武漢美之修行信息科技を起業すると、翌年にBeauty Evolutionをローンチした。

全成分の安全性を見やすく10段階評価

同アプリは成分分析が売りだが、ベースの設計はクチコミサイト型になっている。ホーム画面を開くと、メニューにランキングのアイコンがあり、タップして進むと、化粧品のジャンルを選べるようになっている。ジャンルを選択すると、その月のユーザー評価をもとにしたランキングが表示。そこから商品をタップし商品紹介のページに移ると、「成分分析」のタブの状態になっていて、積み上げグラフのような棒が中央に表示される。

各成分が、安全は緑色、普通は黄色、リスクは赤色で表示され、リスクとなる成分が含まれている割合がひと目でわかるようになっているのだ。さらに「成分を見る」をタップすると、その商品に使用されている全成分が「安全リスク」「有効成分」「ニキビのリスクの有無」「使用目的」の項目とともにリスト表示される。「安全リスク」は10段階評価だ。

商品ごとにグラフが表示される

また、「安全について」のタブを選ぶと安全指数に加え、「香料」「防腐剤」「リスク成分」「妊婦の使用注意」の4項目に該当する成分が、何種類含まれているかが表示される。同様に「効能について」のタブでは、「クレンジング成分」や「アミノ酸活性成分」などの数を表示。たとえば、メイク落としのジャンルをタップしてみると、2019年7月1日時点のランキングでは、ファンケルのマイルドクレンジングオイルが1位だった。原料として使用されているのは12成分で、リストを表示させると、すべての成分が最も安全性の高い「1」だった。「安全について」をタップすると、安全指数は最高の「5」で、香料や防腐剤などの4項目に該当する成分の使用はゼロだった。

ファンケルの
マイルドクレンジングオイルの
安全指数と成分


調べたい商品があれば、化粧品名や成分名から検索することもできるが、手元に現物がある場合は、スマートフォンで製品バーコードをスキャンすることでも調べられる。成分分析の結果は、既存データの分析にもとづいているが、疑わしいものについては、スイスに本拠がある世界最大級の検査・認証機関であるSGSグループに検査を委託している。すでに、Beauty Evolutionが所有する成分分析データは、200万商品に達するという。

Beauty Evolutionはさらに肌診断機能も備えている。選択式の質問に答えていくと各自の肌の状態が診断されるもので、商品ページでは、診断結果にもとづき、対象商品がどの程度肌に合っているかをパーセントで表示する。また、商品ページではTmallの公式アカウントでの販売価格がみられるので、そのまま購入に進むこともできる。

加えて、商品ページの下方には、ユーザーによる評価とコメントが時系列で表示される。同アプリはSNSの要素も取り入れており、ユーザーをフォローすることも可能なほか、消費者やコスメの専門家がスキンケアに関するコメントを自由に投稿している。

目的は不信感の払拭と国産ブランドの発展

Beauty Evolutionアプリのユーザー数は、リリースからわずか3年で1,000万を突破した。WeChatのフォロワー数は100万を超える。ここまで急成長したのは、消費者がいかに安全性に不安を持っているかの裏返しでもある。

中国紙「南方都市報」傘下の南都大数据(ビッグデータ)研究院が発表したデータによると、中国当局の検査により、2018年には全国で1,600ロットの化粧品が不合格となったという。2019年第1四半期も285ロットが不合格で、うち16ロット(15商品)には、ホルモン剤など使用を禁止されている成分が含まれていた。膨大な数の化粧品を全て検査するわけにはいかないので、これらは氷山の一角にすぎないだろう。

中国ウェブメディアの報道では、中国の女性消費者の80%が不適当なスキンケア用品を購入した経験があり、40%が商品に不安を抱いているという統計もある。同アプリは、こうした層のニーズを的確に捉えたといえる。

日本にも成分分析アプリが存在する。ソフトベンチャー(大分県別府市)が2018年11月にリリースした「COSMEペディア」だ。スマートフォンのカメラで製品バーコードを撮影すると分析結果が表示されるのは、Beauty Evolutionと同じだが、投稿や評価をする機能はない。読み込みのスピードはBeauty Evolutionより遅く感じるが、これからの改良に期待したいところだ。

Beauty Evolutionを運営する武漢美之修行信息科技は6月、シリーズAラウンドで青松基金から約1,000万元(約1.6億円)の資金調達に成功した。易氏はさらなる資金調達に意欲をみせている。ユーザーをさらに増やしてデータを拡充させるとともに、2019年は中国の国産ブランドを発展させていくために発信力を強化したいとする。現状では、フェイスマスク以外のカテゴリーのランキング上位は外国ブランドがほぼ独占しており一朝一夕にはいかないかもしれないが、易氏の頭の中にはそのシナリオがすでにできあがっているのかもしれない。

同社は、大手化粧品ブランドや原料メーカーとの提携を積極的に進めている。それは広告収入だけに頼らず、原料分析データをもとに新たな収益源としたいと考えてのことのようだ。本当に目指しているのは、データを活用することで商品開発を支援するコンサルティング事業ではないかとも考えられる。データに裏付けられたアドバイスで、幅広い消費者に受け入れられる安全かつ有効な製品の中国ブランドを育成する――同社の躍進ぶりをみるにつけ、易氏が描く未来図の実現はそう遠くないとも感じる。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)


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