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前編では2023年10月に株価が急落したLVMHの事例をもとに、今後のラグジュアリー市場が抱える課題についてひもといた。後編ではLVMHが一貫して進めているイノベーションへの投資を紹介するとともに、ラグジュアリービジネスにおいてキーとなる今後の方向性について考察する。

LVMHが行う社内外でイノベーション創出のための投資と仕組みづくり

LVMHは、「創造と革新」「卓越性を追求する」「起業家精神」の3つがグループの成長を支えるとして、製品やサービス、テクノロジー関連でイノベーションへの投資を活発に行ってきており、その手綱は現在も緩んでいない。

カバーする領域は、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、バイオファブリケーション（人工的に生成されたiPS細胞から3Dプリンティングの技術を用いて生体システムや治療製品を作製すること）、デジタルテクノロジーなど幅広く、CVC（コーポレートベンチャーキャピタル)であるLVMH Luxury Venturesはもとより、イノベーションアワードや、オープンイノベーションを促進させるスタートアップキャンパスの開設、グローバル・アントレプレナーシップ研修など、全方位的にイノベーションを促進する活動を行っている。

CVCや研修、アクセラレータープログラムを活用しイノベーション創出

■ LVMHのCVC：LVMH Luxury Ventures
強い成長が見込まれる新興のB2Cラグジュアリー・ブランドや、消費財業界の変革を支援するB2B企業へマイノリティ出資をしている。現在の投資先は、LUSIX、HEAT、Replika Software、HODINKEE、VERSED、Madhappy, GABRIELA HEARSTなど。

■ グローバル・アントレプレナーシップ研修：DARE
「破壊 (Disrupt)、行動 (Act)、冒険 (Risk) して起業家 (Entrepreneur) になる」をテーマに、オープンイノベーションとして2017年から展開するLVMHのグローバル研修プログラムで、すでに社内で52を超える革新的なプロジェクトの立ち上げと加速を支援している。

■ アクセラレータープログラム：STATION FでのLa Maison des Startups
フランス通信大手のIliadの創業者であるグザビエ・ニール氏が、2017年に仏・パリ13区にオープンした世界最大のスタートアップキャンパスSTATION Fで、LVMHは、La Maison des Startupsというアクセラレータープログラムをホスティングしている。毎年50以上のスタートアップを招待し、さまざまな支援プログラムだけでなく、LVMHの傘下メゾンの担当者に対しての定期的なプレゼンテーション機会を設けている。VivaTechのLVMHイノベーションアワードへの参加も奨励しており、アクセラレータープログラムに参加した企業の半数以上が同アワードのファイナリストとなっている。