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ディオールやランコムのビューティデバイスや、AR/VR顧客体験【VivaTech 2022(3)】
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ディオールやランコムのビューティデバイスや、AR/VR顧客体験【VivaTech 2022(3)】

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欧州最大のテクノロジー展示会、Viva Technology(VivaTech)2022を現地レポートする3回目は、ロレアルやLVMHグループ傘下のブランドが、会場内で展示発表したビューティデバイスやAR/VR体験など、最新のイノベーションや顧客体験について紹介する。

自宅や店頭で体験できる大手ビューティブランドによるデバイスやツール

2022年6月中旬に仏パリで開催されたVivaTechでは、さまざまな産業におけるテクノロジー・イノベーションの最先端や、現在進行中のプロジェクトが展示・発表された。美容関連においては、業界トップのロレアルやラグジュアリーブランドを擁するLVMHが、ビューティデバイスなどのガジェットや、ECとリアル店舗の顧客体験を向上させるツールの提案でも大きな存在感を示していた。また、日本からはジェトロがブースを出展し、化粧品原料の分野で、アップサイクルや廃棄物ゼロを進め持続可能なビジネスモデルの構築を図るファーメンステーションなどが参加した。

LVMHはデータドリブンな製品レコメンド、メタバースがキーワード

世界中でデジタル化が進み、メタバース空間が身近になりつつあるなか、メタバースを含むオンラインもしくはオフラインであっても、消費者に寄り添いながら各自に適した製品を提案し、購入へと導く手法が模索されている。LVMH傘下のディオールは自宅用のビューティデバイスや、香水のミス ディオールの世界観を示すメタバース体験を発表。メイクブランドのメイクアップフォーエバーと、インクルーシブで多様な商品をセレクトするセフォラでは、オンラインとオフラインの双方でデータドリブンな顧客体験を提案している。

ディオール:ホームケアデバイスLED美容マスク

1946年、ファッションブランドとして創業したディオールは、現在、ビューティ部門ではスキンケア、メイクアップ、フレグランス製品に加え、ディオール スパ(Dior Spa)を展開する。ディオールの一部の店舗では、肌測定機器「ディオール スキン スキャナー」を配置、ビューティーコンサルタント(美容部員)が店頭で同機器を使用して、顧客一人ひとりの肌に最適な製品を案内している。

また、パリ市内にあるディオール スパでは、仏企業Lucibelが開発したスタンド型のLED美容デバイス「OVE」を使用したフェイシャルトリートメントを提供しているが、2022年末から、このLEDデバイスをホームケアデバイスとして、ディオールの公式ECサイトからグローバルに向けて販売されることが発表された。

このデバイスは、光療法の一種であるフォトバイオモジュレーション(Photobiomodulation)技術により、目尻のシワのケアや、肌の輝き、はり、皮膚密度を改善するとされる。美容市場に既出の機器と比較して最大といわれる波長635ナノメートルの赤色LED光を放射し、1平方センチメートルあたり15.6ジュールの光を拡散する。皮膚細胞の深くまで作用し、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の生成を促すことで、顔全体に生き生きとした印象をもたらすとする。

VivaTech会場では、来場者が使用感を実体験できるコーナーが設けられた。メイクを落とした状態で目を保護する付属の黒い小型ゴーグルをつけ、顔の高さにあるマスク部分に顔を近づけて12分間LEDライトを照射。その後、化粧水、セラムなどをつける。

有効性を証明する臨床研究によると、1週間に2回、デバイスを使い続けることで、28日目に毛穴の直径が28%減少、皮膚密度が26%増加したという。現在、市場に存在する他のLEDデバイスと比べて20倍強力であるとされ、特許取得済みの熱放散システムによって皮膚が熱くなることはなく、その安全性を保証している。

OVEの試用体験をする来場者

このデバイス本体のデザインは、1990年代、ソーラーパネルを備えたジャケットにGPSや自動的に充電される電話を統合したり、光ファイバーを織り込んだ生地でオートクチュールを発表するなど、ファッションテックの先駆者と呼ばれる仏クリエーター、オリヴィエ・ラピデュス(Olivier Lapidus)氏が手がけている。ディオールはLucibelとラピデュス氏が協働したこのデバイスを採用し、「Dior」のロゴを印字して発売する。

ミス ディオール:メタバースでアバター体験

あわせてディオールは、AR/VRなど4つの体験を展示した。フレグランスのミス ディオールでは、セルフィー画像から自動的に作られたアバターや、あらかじめ用意されたパターンをユーザーの好みでパーソナライズしたアバターで、メタバース空間(仮想世界)に入り、創業者クリスチャン・ディオール氏が愛した南仏の別荘「シャトー・ドゥ・ラ・コール・ノワール」の内部や、南仏グラースのバラ畑を訪れながら、同ブランドの歴史や世界観を発見する体験「Immersive Journey」を提供した。

同アバターは、Ready player meの技術により、顔の輪郭、髪型、眉、唇、鼻の形のほか、髪、肌、目の色などの調整ができ、自分のアバターの記念写真を撮ってソーシャルメディアでシェアしたり、メタバース内での製品購入も可能としている。

Immersive Journey体験で作成したアバター

また、Google Lensと協働して、ミス ディオールのビジュアルに使用される花々が次々に現れるARバーチャル体験や、VRヘッドセットを装着して、2022年に改装オープンしたパリ本店「30 モンテーニュ」を3Dアバターに導かれて訪れる体験も提供された。

バーチャルでディオールの本店を訪問

加えて、会場では、パリ本店のバックヤードに導入された、店員が顧客と密な関係を築くための最先端テクノロジーの展示発表も行われた。そのなかには、顧客が求める基準を満たす製品を見つけるための3D パーソナライゼーションツールや、簡略化された注文の準備と受け取りのプロセス、デジタル決済や免税手続きのためのモバイルソリューションなどが含まれる。

本店を模した展示エリアのビデオスクリーンには、こうした技術が実際に店舗で活用されている様子が投影された。これにより、顧客は製品購入時の待ち時間が減るとともに、ディオール本店での特別体験が楽しめるとする。

メイクアップフォーエバー:顔の形態AI分析の新アプリケーション

メイクアップフォーエバーは、すでにAR技術によるバーチャルトライオンを提供しているが、Perfect Corp.と協働して、世界初の顔の形態構造(morphology)をAIが分析する「Morpho Beauty」を開発したことを発表。このツールは、メイクアップアーティストがメイクを施す際に行う「顔の輪郭や凹凸など形状の考慮」をAIが代行するもので、消費者の自宅でのバーチャルメイクの精度と最適性を高めるだけではなく、店舗でタッチアップする時の助けにもなるとする。

同アプリ上でいくつかの質問事項に答えたあとセルフィーを撮ると、顔の輪郭や肌色が数秒で分析され、各自に合ったメイクアップ製品がレコメンドされる。製品は、ファンデーション、コンシーラー、ハイライトなど、メイクのステップごとに紹介され、各製品を使用すべき場所や正しい手の動き(つける方法)が、点線や矢印などでわかりやすく表示される。アイメイクと口紅は、ARバーチャルトライオンで色を試しながら選べる。適したメイクアップ製品のレコメンドだけでなく、効果的な使い方を学ぶことができるこの新機能アプリは、2022年末〜2023年上旬に、まず韓国で導入される予定だ。

セフォラ:エンターテイメント性重視の店舗ツールとメタバース

また、美容部員による専門的なアドバイスを強みとするセフォラでも、店頭カウンセリング用のデバイスを積極的に導入しており、会場ブースでは来場者に体験を促した。たとえば、1万種類以上の肌トーン(色合い)データをもとに各ユーザーに適したファンデーションの色味を見つけるデバイス「MCiQ」は、米国のセフォラですでに使用されており、まもなく欧州にも導入予定だ。また、スタートアップFitSkinのレンズ(スマートフォンのカメラに外付けするレンズ)を使用した、皮膚科医レベルをうたう肌分析ツール「Skincredible」も、オーストラリアなどのほか、欧州の一部の国のセフォラで使用されている。

Skincredibleの使用例
出典:豪セフォラ公式サイト

「Skincredible」はアプリ上で、年齢、睡眠時間、紫外線の露出度などのライフスタイル要素や、現在の美容ルーティーン、肌の悩み、ブランドの好みなどを入力し、専用レンズで、額、頬、目のまわりの3カ所をスキャンすると、毛穴、シワ、水分、皮脂の4要素から導かれるパーソナルスキンスコアが表示される。その分析をもとに、メイク落とし、洗顔、化粧水、セラム、モイスチャライザー(クリーム)、アイケア、UVケア、マスクの8つの商品が提案される仕組みだ。

LVMHのセフォラCDO 欧州・中東担当のスミア・アジャリ(Soumia Hadjali)氏は「Skincredibleと他のデジタルカウンセリングツールとの違いは、ゲーミングの要素が含まれることだ。導き出されたスキンスコアと戦うために、適した製品が提案される」と発言し、セフォラは購入体験にエンターテイメント性を交えた「リテイルテイメント」に重きをおいていることを強調した。

出典:豪セフォラ公式サイト

同ブランドが力を入れる「リテイルテイメント」は、2021年に米国ロックダウン時にメタバース空間で開催されたイベント「SEPHORiA」にも表れている。通常はリアル世界で行うイベントだが、2021年はパンデミックの影響で、オンライン上にマイクロバース(既存のコミュニティ向けの小規模な仮想世界)を制作し、3Dゲームのような環境でインタラクティブな美容体験を提供した。

メタバース上のSEPHORiAには5つのバーチャルルームがあり、ユーザーはこれらの部屋を自由に訪れ、複数ブランドの限定品やチュートリアルをチェックしたり、ゲームをしたり、セルフィー写真、製品購入などができる。また、ライブでトークができる部屋もあり、セフォラのアクセラレーションプログラムに参加した美容スタートアップの創業者と直接話すことを可能にした。

SEPHORiA 2021
出典:Event Marketer

セフォラは環境や原材料に配慮した商品を集めた「Good for」カテゴリーレーベルを開発しており、美容コミュニティに寄り添うことを理念としてLVMHグループでは初めてECプラットフォームを開設(2000年米国)したデジタル先進ブランドでもある。アジャリ氏は、「メタバースとは、リアル店舗での体験を補完する位置づけではなく、それを越えた存在で、自由な自己表現を促進し、コミュニティ同士をつなげることができる場所だ。(ソーシャル・ファーストでインタラクティブな)メタバースへの積極的なアプローチは、セフォラのブランドDNAに一致する」と語る。

ロレアルが注力する顧客体験をパワーアップする店頭デバイス

一方、ビューティテックNo.1企業を目標に、早い時期からさまざまな美容デバイスを店頭で活用しているロレアルは、今回のVivaTechでも、スキンケア、メイク、フレグランスの分野でそれぞれ最先端デバイスを発表した。同時に、会場には遠隔コンサルティングルームを設置し、予約制で実際のカウンセリングが体験できる機会も提供した。

YSL:最適なフレグランスを提案するインストア体験

イヴ・サンローラン・ボーテ(YSL)は、感情的な反応を脳波の計測で明らかにすることで、YSLの製品群のなかから、各自にぴったりのフレグランスを見つけるデバイス「Scent-Sation(セン・セーション)」の導入に着手した。ニューロテクノロジーのリーディングカンパニーであるEMOTIVと共同で開発され、実店舗で顧客の製品選びを助けるサポートツールと位置づける。

専用ヘッドセットで脳波を測定し感情に沿った香りを見つけ出す25分間のScent-Sation体験

自身のパーソナリティについてのいくつかの質問に答えたのち、マルチセンサーとEEGベースのヘッドセットを装着し、6種類の香りを試香紙に塗布して嗅く。その際の反応を脳波で測定して、AI分析によりYSLのフレグランスから3種類を提案。さらに、これら3つの香りを目隠しで試し、選ばれた1点がその人にぴったりのフレグランスとなる。Scent-Sationは、2021年12月からドバイのポップアップ店舗でテスト使用が始まっており、2022年末には欧州でもサービス提供がスタートする。

YSL:自宅で口紅カラーをカスタマイズ

また、YSLは自宅で好みの口紅を作れるデバイス「ルージュ シュール ムジュール」を展示した。

2021年のCESで発表されたPersoテクノロジーを搭載したAIデバイスで、専用アプリから肌の色や服装に合わせた色を指定すると、4,000色のバリエーションから、数秒でテイラーメイドの色合いを作り出す。赤、オレンジ、ヌード、ローズの4系統を揃えており、それぞれ3本のカートリッジが装着される。

デバイスの先端部分は取り外し可能で、口紅のコンパクトケースとして持ち運びができる。メイクを含むトータルコーディネートの提案は、ファッションブランドYSLならではの試みといえる。

ランコム:LED光療法で肌をケアする「アプソリュ・クリオ・スカルプター」

ランコムでは、店頭のカウンセリングツールとして、さまざまなデジタルデバイスをすでに導入している。ファンデーションの色合いのマッチングを行う「シェードファインダー」や、3種類のライトと高精細カメラを使い、独自のAIアルゴリズムによりフルフェイスで肌分析する「スキンスクリーン」など、会場では既存ツールが展示された。

スキンスクリーン

さらに、新しい店頭ツールとしてLED光療法で肌をケアする「アプソリュ・クリオ・スカルプター(Absolue Cryo Sculptor)」が発表された。

同製品は特許取得のLED技術を用いたロールオンタイプのデバイスで、先端部分のガラス玉を肌上で転がすと、専用のセラムが吐出され、LEDを照射しながら肌をトリートメントする仕組みだ。目に見えるLEDと目に見えないLEDの2種類の光が照射され、頬、額など1カ所につき30秒ずつ、合計2分間照射することで、肌を整え、小じわを目立たなくする効果をうたう。店頭用デバイスとして導入されるが、会場の担当者によると、2023年3月には中国でホームデバイスとして発売する予定もあるという。

スキンシューティカルズ:バーチャルコンサルティングSkinCeuticals Pro 1:1

1997年、皮膚科医により開発されたスキンケアブランド、スキンシューティカルズ(SkinCeuticals)は、ビデオカウンセリング用ブースを設置し、20分間の無料遠隔カウンセリング体験を実施した。プロのメディカルエステティシャンとの1対1のカウンセリングで、皮膚科学にもとづいたスキンケアやおすすめの美容ルーティーンなどがアドバイスされる。専用アプリで予約、カウンセリング、製品購入まで完結する。

進展著しいサステナブルな原料や製品開発の試み

環境インパクトを最小限に抑える持続可能な製品開発も各ブランドで進展している。ロレアルでは、理美容業界向けに開発された水の消費量を61%削減しながら、効率的な洗髪体験を実現するシャワーヘッド「ウォーター セーバー」を展示。年間数十億リットルの水の節約に貢献する可能性を秘めたイノベーションを印象づけた。

LVMHからは、包装パッケージの軽量化により、輸送で発生するカーボンフットプリントを削減する2つのイノベーションが紹介された。ロゼワインのブランド シャトー・ガルぺが「ガルペ・ノマド 2021 ロゼ」に、海に流入する前に回収されたプラスチック廃棄物を再利用したフラットボトルを採用し、伝統的に使用されるガラス製ボトルの10分の1の重さを実現。また、シャンパーニュメゾンのルイナールは「Dom Ruinart 2010」で従来のボックス包装よりも11倍軽く、62%カーボンフットプリントを低減した、芸術性の高いエコデザインのパッケージを展示した。

廃棄プラスチックを再利用したボトルの「ガルベ・ノマド 2021 ロゼ」

VivaTech 2022に出展した日本のジェトロブースでは、ファーメンステーションが、休耕田を活用して育てたオーガニック玄米やりんごの搾りかすなどの、未利用資源を発酵・蒸留して製造したエタノールや発酵エキスなどのアップサイクル原料を展示し、ごみを出さないサステナブルな循環型ビジネスモデルを披露した。

VivaTech会場内で開催された日仏スタートアップによるピッチコンテストで、ファーメンステーションはアワードを受賞し注目を集めた。同社は2022年3月に、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる国際認証B Corpを取得しており、海外展開に意欲をみせる。

ファーメンステーションのブースで展示物を確認する来場者
画像提供:ファーメンステーション

VivaTech 2022におけるロレアルとLVMHのブースでは、いずれもメタバース、NFTプロジェクトが注目を集めたが、その一方で、実店舗での顧客体験の強化や、消費者のセルフケア意識の高まりを受けて、ラグジュアリー美容ブランドがホームケア用の美容デバイスを販売するなど、リアルな顧客体験という点にも力をいれていることが顕著だった。

今回のVivaTechでは、科学、データ、テクノロジーを活用した製品・デバイス開発、あるいは“特別な体験”という新しい価値の創造が着々と進んでおり、Web3時代のユーザーコミュニティとの関係性を念頭におきつつ、ブランドの存在感を増していくための試みが数多く始まっていることを印象づけた。

<そのほかのVivaTech 2022レポートはこちら>
(1)ロレアルは「オンチェーンビューティ」体験へ。各ブランドのDAOやNFTプロジェクトを発表
(2)LVMH、各ブランドにおける顧客ロイヤルティ醸成にNFTプロジェクトを活用

Text & photo: 谷 素子(Motoko Tani)
Top image: 著者撮影

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