新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

リカフロッシュ20万個超のヒット、D2CからP2Cへ“文脈”理解のマーケティングが鍵

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

人気ファッションモデル・古川優香氏プロデュースによる「RICAFROSH(以下、リカフロッシュ)」の第一弾となるリップティントが累計販売数20万個を突破した。2020年はD2C(Direct to Consumer)から派生したP2C(Person to Consumer)“元年”との声もあるなか、リカフロッシュはその代表格でもある。P2Cはこれまでのマーケティングと何が異なるのか。リカフロッシュの事例から美容業界におけるP2Cの最新潮流を読み解いていく。

リカフロッシュの第一弾商品である「ジューシーリブティント」は、2020年2月25日の発売からこれまでに20万個以上の売り上げを記録している。古川優香氏を起用したブランドの全体構想からローンチまでを手掛けるのは、ベクトルの子会社でD2Cや新規事業開発を展開する株式会社Direct Techだ。商品開発やEC運用は、美容メディアFAVORを運営しつつ自らのD2Cブランド「FAVES BEAUTY」をもつパペルック株式会社との協業体制をとっている。

広告は一切しない。“リアル”な情報発信を追求

リカフロッシュ立ち上げにあたって、Direct Techとパペルックがこだわったのは、古川優香氏のネームバリューに頼ったビジネスをするのではなく、本人自身が心から納得する商品を作り、ファンに届けられるようにすることだ。新規ブランドのエントリー手法としての初回の値下げによる販促やWeb広告は一切せず、リアルな声からブランドの認知をとっていく戦略とした。

初期ターゲットとしたのは、古川優香氏のコアなファン(InstagramTwitterYouTubeといったSNSのフォロワー約310万人 ※2020年2月時点)である。本人の投稿はもちろん、古川氏の知人や友人100名に商品を体験してもらい、その使用感などがSNSを中心に拡がっていくきっかけを作った。ビジネスサイドが商品の特徴を一方的に発信することは控え、ファンと古川氏の交流の延長線上で、ブランドを知ってもらえるようにした。たとえば、古川氏の誕生日にサプライズとして、リカフロッシュのローンチ発表をしたのもそのひとつだ。

初お披露目の投稿は、
4万3,000件の「いいね」がついた

誕生日の投稿に対する反響の大きさや熱量の高さに驚いたと話すのは、パペルック代表取締役CEO小澤一郎氏だ。

「発売初日には、古川氏の直筆サインのオリジナルポストカード200枚を先着200名様に同封する施策もおこなったが、その限定品を目当てに開始の30分前から数千人が押し寄せ、オープン時点で完売した。もちろん、300万フォロワーという数字は理解していたが、想像をはるかに超えるファンの熱狂性を感じた」(小澤氏)

ギフティングから情報拡散

古川優香氏は、いわゆる美容インフルエンサーではない。10~20代のファンにとって、ファッションやライフスタイルの身近なお手本であり、応援したい、そんな存在である。一般の美容系ユーチューバーなら商品のことを語り尽くすタイプの投稿が主ななかで、古川優香氏の場合は日常生活など身の回りの話題が中心で、ファンもそれを楽しみにしている。化粧品D2Cのマーケティングセオリーはいったん脇に置き、彼女とファンとの“日常”を大切にする文脈を活かしたコミュニケーション戦略が奏功し、発売後数日で当初準備していた1万個が売り切れたという。

株式会社Direct Tech ブランドマネージャー 吉田智恵子氏は、「当初、3ヵ月で1万個売れればいいと計画していたので、完売は想定外だった。これまでのインフルエンサーブランドのパフォーマンスをはるかに超える結果だった」と振り返る。

完売のお知らせに
ファンからも「凄い」の声

実店舗の販売も好調の背景に
期待を裏切らない商品力

EC完売を達成し、メルカリでの高額転売など、商品に対する希少性や購買喚起が充分に醸成されたところで、3月14日から全国のロフトで商品の販売を開始した。オフラインへとタッチポイントを広げ、ECで買いそびれた人や、実際に商品を手に取って確認したい人、さらに古川優香氏のファン以外にもアプローチを広げていった。

店舗販売の開始時期は、新型コロナウイルスによる外出自粛とも重なるタイミングだったが、売れゆきが衰えることはなく、小売店側のリカフロッシュに対する評価は高いという。なかでも01番のオランジェットが売れ筋で、ロフトが選ぶ今シーズンの注目化粧品「ネクストコスメ5」の1位にもなった。コロナ対策でマスクの着用が一般的になったなか、「落ちにくい」ティントだったことも味方したという。

古川氏が好んで使うオランジェット

自粛の影響から、全体的にリップ系商品の売上が伸び悩む傾向にあるなかで、ECだけでなく実店舗でもしっかり数字を立てられたのは、古川優香氏プロデュースというだけでなく、商品そのものに価値を感じてもらえているからではないか、と吉田氏を含むプロジェクトメンバーは肌で感じてきた。

その商品力の高さは、古川氏の求めるものをいかに叶えるか、ということに尽きるという。その要望に応えるため、もともと2019年12月に商品を発売する予定を彼女の希望で白紙に戻して、商品を最初から作り直したりもした。白紙になっても頓挫せずDirect Tech側はビジネスサイドの調整に奔走し、パペルックは完成度の高い商品を作り上げるために古川氏に伴走し続けた。

商品開発においては、パペルックが運営するビューティ関連メディア「FAVOR(フェイバー)」編集部のスタッフのコメントや最新トレンドなど、リアルな情報を古川優香氏と共有し、テクスチャーや色味、発色などディスカッションを重ねた。製造は韓国OEM/ODM大手のCOSMAXに委託。韓国ではティントに香りが付くのが一般的だが、日本では好みが分かれることから無香料にした。また、10~20代が使いやすいように強すぎないティント感に調整したという。1,680円という価格でありながら、古川優香氏自身も、サポートしたメンバーも自信を持って世に送り出せる製品になった。この確かな商品力があったからこそ、手に取って確かめたいという層に認められ、売上を伸ばすことができたのだ。

コアなファンの心を着実に掴み、そして、一定の商品評価を得たリカフロッシュが次に目指しているのは“化粧品ブランド”としてのポジションだ。今夏以降、商品ラインナップを増やしていくという。

「NMB48の吉田朱里氏がプロデュースするB IDOL(ビーアイドル)も最初はファンが買っていたが、ベストコスメ大賞に選ばれ、実店舗に置かれるようになって、“良い商品”として認知されていった。リカフロッシュもB IDOLのような、キャズム超えを果たしたい。そのためにもブランドのプロダクトラインナップを増やすこと、そして、化粧品ブランドとしての認知をとることに注力したい」(小澤氏)

最近では、商品のギフティングだけでなく、美容感度の高い層にリカフロッシュを知ってもらうためのプロモーション施策を始めた。

美容感度の高い層に向けて情報を発信

「#ササメイク」で知られる、
ヘアメイクアーティスト佐々木一憲氏
インスタに登場

大手が続々参入で裾野拡大、
インフルエンサーコミュニティを活かすP2C

ソーシャルメディアが生活者コミュニケーションの中心となるなかで、D2Cマーケットはいま、美容業界においても大きな脚光を浴びている。2月には丸井グループが新会社「D2C&Cо.(ディーツーシーアンドカンパニー)」を設立、さらに、ZOZOや、博報堂といった大手企業が、次々とD2Cブランドビジネスの支援に乗り出している。

活況を呈すD2Cマーケットのなかでも、今、注目が集まっているのが、リカフロッシュのように、インフルエンサーのソーシャルメディアの生態系を活かし、オリジナルブランドを立ち上げ、商品を宣伝・販売するP2C(Person to Consumer)である。4月初頭には、ユーチューバーのヒカルがロコンドとコラボしたスニーカーが大ヒットしたことは記憶に新しい。

Direct Techでは今後、インフルエンサーとの“タイアップ”による瞬間風速型のブランドではなく、売れ筋商品の売上よりも、それ以外の商品の売上総額が上回るロングテールなP2Cジャンルを日本で広げていく方針だ。

中国では網紅(ワンホン)と呼ばれる、動画をメインに情報発信をするインフルエンサーがECで商品を売るビジネスが定着しつつある。ワンホンコマースは、広告を多用する通販モデルとは異なり、またインフルエンサータイアップとも違う。それは、影響力を持つ人がコミュニティを活用し、商品の企画・開発をして販売する、まったく新しいジャンルともいえるのではないか。そうDirect Techチームでは分析している。

このP2Cジャンルを成功させるためには、インフルエンサー・マーケティングや商品開発といったD2C/P2Cに必要なアセットやノウハウをいかに得られるかがポイントになる。そこで、Direct Techではパペルック、ツインプラネット、アソビシステムなどと連携し、D2C事業に必要な機能・サービスをワンストップで提供できるようスキームを整備。第一弾のリカフロッシュに続き、SNSクリエイターしぴたん氏を起用したシューズブランドの展開へと歩みを進めている。

P2Cではフォロワーの課題解決を考える

P2Cという新たなジャンルが台頭する状況で成功するためには、時期の見極めと商品力が欠かせない要素であると小澤氏は語る。

「ただフォロワー数が多いというだけで事業は成立しない。次々とインフルエンサーブランドが登場するなかで、どんな商品をいつ出すかは重要だ。そのインフルエンサーの特徴をつかんだブランドだったり、フォロワーの課題を解決できる商品でなければ、どこにでもあるありふれた商品でしかなく、続かない。古川氏の場合は“彼女のもつファッション観に合うメイク”がフックになった」(小澤氏)

人と人のつながりを活かしたP2Cブランドは、そのブランドがスタート地点から消費者と同じ目線であるという意味でも、ビジネスマネジメントする側が、いかにその熱をサポートしながら大きくできるかという点でも、美容業界にとって大きな示唆に富んでいる。

Text: 清水美奈(Mina Shimizu)
Top image: RICAFROSH

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
115
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

こちらでもピックアップされています

BeautyTech.jp記事
BeautyTech.jp記事
  • 521本

BeautyTech.jpのすべての日本語コンテンツはこちらからご覧いただけます