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サービス開始2年、クラウドロジが見すえるEコマース物流改革

◆ English version: Start-ups can conquer this hurdle in e-commerce with this solution
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「中小EC企業のCLO(チーフ・ロジスティック・オフィサー)になる」。クラウドロジを提供するスタークスが挑んでいるのは、物流の効率化だけではない。そこに蓄積するデータを使い、通販企業、倉庫会社、配送会社などすべてのステークホルダーに利益をもたらすことである。
1年間に日本で流通する宅配便の取扱個数は、40億1861万個。国土交通省によれば、1992年に約12億個だった取扱個数は、2000年に20億個を突破。2016年の段階で、冒頭の数字まで増加の一途をたどっている。

宅配便の急増の背景にはEコマースの成長がある。とくに化粧品や健康サプリ、美容家電などの美容関連アイテムは、モバイルコマースに限ってみても全体の約68%という。それでも、日本のBtoCサービスのEC化率は5.79%(2017年現在・経済産業省統計より)と、まだまだ成長の伸びしろがある。取扱個数は2020年までに60億個を突破するとの専門家の予想もある。

Image: Michael Nivelet Via Shutterstock

そのEC増加によって、商品を運ぶ配送会社の人材不足がニュースにも登場するようになって久しい。配送会社大手は、労働環境悪化などを理由に昨年から今年にわたり配送料の値上げにも踏み切った。また商品を保管し、梱包する倉庫会社も同じような状況だ。

物流を支える配送会社、そして倉庫会社の人材不足をどうカバーしていくのか。将来的に働き手の増加があまり見込めないのであれば、物流システムの効率化および自動化以外にない。物流とは単に輸送・配送だけではなく、倉庫における商品の保管・管理、荷役、包装・梱包など様々なタスクを含むが、各パートの効率を最大限に高め、互いにうまくリンクさせていく仕組みづくりが求められる。

売るためのノウハウは進化したが売ったあとは?

そんなECの課題の根底にある本質に目を向け、日本の物流現場の効率化にいち早く取り組み始めたスタートアップがある。クラウド型物流プラットフォーム「クラウドロジ」を展開するスタークスだ。同社はサービス開始からわずか2年で、メーカーやEC事業者など550社以上のクライアントを抱え、取引額ベースで約500億円の商品の物流を担うまでに急成長を遂げた。CEOの上ノ山慎哉氏は言う。

スタークス株式会社 上ノ山慎哉CEO

「ここ10数年、ECで商品を売るためのノウハウはテクノロジーによって大きく発展した。一方で、売ったあとの過程はアナログなままそれほど進歩しておらず、課題も多く残っている。アマゾンなど大手は物流の自動化や効率化に大規模投資できるが、中小クラスの企業が自社でそれをやるのは難しい。数万社とも言われる中小企業で物流に詳しい人材はそれほど多くはない。そこで、そういった企業にCLO(チーフ・ロジスティック・オフィサー)のような役割を果たせるシステムを提供できないかと思い、これまで提供していたリピロジという発送代行サービスをクラウドロジに進化させた」。

上ノ山氏が起業する前は、消費財のなかでも健康食品などリピート性の高い商材のマーケティングに携わっていた。そこでたびたび目撃したのが流通現場の非効率さだ。たとえば、メーカーが倉庫側にFAXや手書きのメモで出荷業務に関する指示を送ったり、顧客情報をメールに添付してCSVデータで送ったりしていたのである。結果、現場では伝達・発送ミスが頻発。在庫管理作業に、1日数時間を費やすケースも珍しくなかったという。

クラウドロジは、クライアントの入庫・在庫管理・梱包&出荷・履歴確認といったすべてのEC物流業務を、一括でアウトソーシングできるプラットフォームサービスだ。日本全国にある物流倉庫とEC事業者をクラウド上でつなげることで、トータルコストの削減、拠点分散による地帯別料金への対応などが実現した。加えて、商品のロット管理から、購入回数や顧客の誕生月、居住地に合わせた同梱物など個別の細かいオーダーに対応できる。さらにギフト対応などパーソナライズな対応もシステムによって簡易化し、誤出荷率の低減などのメリットも大きい。

クラウドロジの仕組み動画

ECに関わるすべてのプレイヤーが嬉しい仕組み

スタークスが重視しているのは、ECおよび通販企業がクラウドロジというプラットフォームを利用した際に蓄積されるデータだ。

「販売から配送まですべての流れをプラットフォーム上で管理できるようになれば、そこから多くのデータを収集することができ、さまざまなインサイトを発見できるようになる。たとえば、化粧品や健康食品など定期的なサイクルで消費される商品は、誰が、いつ、どの程度購入するか分かるようになる。つまり、需要の予測ができるようになるということだ」。

具体的な需要発生エリアを予測できれば物流サイドでは適切な倉庫への入庫や、在庫のリスクヘッジ、配送の効率化を実現できる。また需要量が分かれば、メーカー側は資材や原料を調整して製造コストを下げることもできる。最終的に、物流の各機能を束ねてデータを集め、ECに関わるすべてのプレイヤーが潤う仕組みをつくるのがクラウドロジの目標だと上ノ山氏はいう。

「物流業界は、過去にはメーカーの立場が強かったり、現在では逆に配送業者の立場が強くなったりと、誰かが泣く構造が常に存在していた。しかしテクノロジーの力を使って効率化を実現していけば、ECに関わる売り手、買い手、運び手とすべての関わる企業と人が利を享受できる状況を生み出せるのではないかと考えている。その市場の再構築をマーケット・イノベーションと呼び、自社のミッションとしている」。

物流危機を乗り越えるヒントは日常のささいな発見からも

効率化という点では、世界各国のECや配送大手各社も、物流の効率化・自動化に注力している。配送用ドローンや、倉庫作業を代替するロボットの登場はその象徴だ。

アマゾンのドローンや倉庫ロボットの例はすでに有名だが、中国のアリババの物流子会社「菜鳥網絡」が建設した深セン近郊の自動物流倉庫では、200台の倉庫用ロボットが24時間稼働。ロボット群が一日に処理できる注文量はおよそ100万件で、人間の手の3倍も効率がよいとの触れ込みだ。

出典:alizila.com(アリババグループ・ニュースルーム)

日本の配送業者も自動化に注力している。ヤマト運輸は、自動運転技術を使った省人配送サービス「ロボネコヤマト」の実証実験を今年6月15日に終了。実用化に向けて知見を活かしていくとしている。加えて、トヨタが開発中の自動走行車「e-Palette Concept」を使ったプロジェクトにも合流し、新サービス開発にともに乗り出すと明らかにしている。

Photo by Roboneko-Yamato.Com

そのように、人間が担ってきた作業をロボットや自動走行車で代替しようという発想は、非常にアグレッシブかつ社会の関心を惹きつける。ただ、倉庫用ロボットにしろ、宅配ロボットにしろ、物流現場に普及するまでは長い時間がかかるということも忘れてはならない。

実際、数年前から話題となったドローン配送に関しては、日本ではあまり続報を聞かなくなった。技術的問題もさることながら、国土面積の広さの問題や、航空法や電波法など既存の法律との兼ね合い、そして何より落下のリスクを避けたい世論との調整をつけられず実用化が難航しているのだ。

どこかSF的な物流インフラの実現が期待される陰で、物流危機は刻一刻と深刻化していく。そのなかで、ECに携わる企業やビジネスパーソンは、物流の効率化というテーマをそれぞれ突き詰めていく必要に迫られている。

「日本には良質なコスメや美容関連商品をつくる中小メーカーがたくさんある。しかし物流の問題を解決できなければ、それら企業の経営は難しくなっていくしかない。我々としては、物流の効率化でそこをサポートしていきたい。日本の美容や飲食産業は、他国と比べて文化レベルでアドバンテージがある。業界全体の競争力を健全に発展させるためにも、物流の効率化という問題は避けて通れない」。

既存のEC企業はもちろんのこと、美容に限らず未来の製造やECスタートアップの起業のハードルを大きく下げ、かつ経営をデータで支えることになるだろう。クラウドロジはいまここにある危機だけでなく、未来の起業家たちをも支える存在として伸びていくと確信する。

Text: 河 鐘基(Jonggi HA)
TOP image: dreamnikon via Shutterstock


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