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コーセー、マンダムなど日本でも加速するマイクロプラスチック全廃への動き

◆English version: The end of microplastics in Japan’s cosmetics
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プラスチックによる環境汚染問題が年々深刻化しているなか、美容業界では2016年ごろからマイクロプラスチック廃止への動きが加速している。美容業界以外でも、2018年にはスターバックスコーヒーやマクドナルドがプラスチック製ストローの廃止を決定。世界でプラスチック製品の使用が問題視されてきている現状と、日本の対応について現状の動向をおさえておきたい。

マイクロプラスチックとは、一般的に直径5mm以下の極小サイズのプラスチックのことを指す。美容製品では、洗顔料やボディウォッシュ、歯磨き粉といったスクラブ製品に使用され、「マイクロプラスチックビーズ」、「マイクロビーズ」と呼ばれることもある。またスクラブ製品の他に、ハンドクリーム、ヘアカラー、シャンプー、ファンデーションまで、さまざまなものに使われており、それらの大きさは0.001mm~0.1mmと、目に見えないほど小さい。美容製品以外でも、化学繊維や通常のプラスチックゴミが細分化したものもマイクロプラスチックになる。

目に見えないサイズのマイクロプラスチックが大量に海へ流出

世界の海洋に流出しているプラスチックゴミは年間480~1,270万トンと推測され、日本からは2万~6万トンが排出されている。マイクロプラスチックはあまりにも小さすぎるため、排水処理施設では除去できず、そのまま海に流れ込んでしまう。さらに、マイクロプラスチックは化学汚染物質を吸着する性質があるため、汚染されたマイクロプラスチックを海洋生物が摂食してしまうのだ。

出典:NOAA National Ocean Service インスタグラム

世界各国でマイクロプラスチック規制へ

化粧品に含まれるマイクロプラスチックの使用を規制する動きは、2014年頃から世界各地で始まった。法規制としては、2014年に米イリノイ州で、2015年には米カリフォルニア州で、マイクロプラスチックを含むパーソナルケア製品の製造を禁止する法律が成立。2015年12月には、アメリカ全土で「マイクロビーズ(※)除去海域法」が成立している。欧州では、2016年にイギリスとフランスが、アジアでは台湾が2018年に、マイクロプラスチックの使用規制を行っている。

(※)マイクロビーズは、5mm以下の固形プラスチック粒子で、角質除去または洗浄の目的で使われるものと定義されている。本稿の「マイクロプラスチック」と同義。

出典:Sustainable Japan

日本国内は2018年末までに撤廃が大半か

ここで日本国内の動きも見てみよう。日本にはマイクロプラスチック廃止を定める法案はないものの、2016年3月に日本化粧品工業連合会が会員企業に対し、洗い流しのスクラブ製品におけるマイクロプラスチックの自主規制を促している。さらに、マイクロプラスチックの規制が進む欧米への輸出に対応するため、多くのメーカーが自主規制を行ってきている。また、上述したとおり、アメリカで「マイクロビーズ除去海域法」が2015年に成立した影響はとても大きく、国内主要メーカーは下記の例のように、それぞれ独自にマイクロプラスチックやマイクロビーズを規制している。

マンダム
2017年末までに洗顔料に使用しているマイクロプラスチックを代替する方針を決定。代替品として、土にかえる生分解性の改良スクラブを使用した商品が販売されている。

コーセー
2014年度にマイクロプラスチックの配合を中止。洗顔料やシャンプーには、万が一河川に排出されても、自然界の微生物などによって分解されやすい生分解性原料が使われている。

花王
マイクロプラスチックを使用していた商品を、2016年末までにすべて代替素材へ切り替えている。また、一部の洗顔料や全身洗浄料に使われているスクラブは、セルロース、コーンスターチといった天然由来成分をもとに花王が独自で開発したものだ。

資生堂
2014年4月より開発した新しい洗浄料ではマイクロビーズを配合せず、アメリカでは連邦法に従い、原料を完全に置換。 その他の地域の既発売の洗浄料については、遅くとも2018年末までに切り替えを終了と公表している。


Image: KYTan via Shutterstock

三菱化学テクノリサーチの報告書によると、2016年に洗顔料とボディソープ各75種、合計150種を無作為に調査した結果、マイクロプラスチックビーズの微粒子が検出されたものは、わずか2種にとどまっている。美容製品の大部分にマイクロプラスチックが使用されていたことを考えると、自主規制の動きは有効に機能しているだろう。また、すでにマイクロプラスチックの使用を撤廃しているメーカーも多く、マイクロプラスチックが含まれる製品が、日本の美容市場から姿を消すのも、すでに時間の問題と言えそうだ。

美容業界の動きとは裏腹なのは…各メーカーの姿勢が問われる今

マイクロプラスチックを規制する動きが世界的に進む中、その流れに思わぬ形で水を差すことになったのが、2018年6月に行われたG7シャルルボワ・サミットでのことだ。自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5カ国とEUは署名したが、日本とアメリカは拒否したのだ。

G7は環境問題を論じる場ではなく世界経済や安全保障について議論される首脳会議だが、そこで海洋プラスチック汚染問題が取り上げられたのは、プラスチックによる環境汚染がいかに危機的な状況であるかが共通認識だからだ。世界を牽引する国々がいかに真剣に取り組もうとしているかは明らかである。

日本政府は署名しなかった理由として、プラスチックゴミの削減という趣旨には賛同するものの、「国内法が整備されておらず、社会に影響を与える程度が現段階で不明であったから」と説明した。海に囲まれている日本が、この問題に前向きな姿勢を世界に示さなかったことは、残念というしかない。

出典:REUTERS

しかし、少なくとも美容企業大手は、その政治の思惑とは別に早くから世界的な懸念と同調しており、それはビジネスとしても理にかなっている。国の方針に関わらず、各メーカーの確固たる姿勢が問われてきていることは間違いない。

さて、日本と同様に海洋プラスチック憲章への署名を拒んだアメリカだが、2015年にすでに「マイクロビーズ除去海域法」が成立しているためか、このことに対して美容メーカーなどで大きな動きはなかった。しかし、アメリカに本社を構えるスターバックスコーヒーがプラスチック製ストローの廃止を発表したのは、プラスチック憲章署名拒否のニュースから、わずか1カ月ほどのことだ。

美容製品におけるマイクロプラスチックの使用だけでなく、製品の容器や包装についても、法規制のない日本ではことさらに、各メーカーでの取り組みが消費者からも重要視されることだろう。

Text: 佐藤まきこ(Makiko Sato)
Top image: KYTan via Shutterstock

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