見出し画像

SDGsへの取組みは企業メリット。ミレニアル世代の本音と政治家の議論から

New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

「SDGsへの取組みは、今の状況から当たり前のことで、企業にとってはメリットである」ミレニアル世代たちはそう考えている。政治家も、党派を超えてダイバーシティのある組織の重要性を議論する。人口減少、格差社会、ジェンダーギャップ…と解決すべき社会課題は山積しており、一人の力では何も動かせない。だからこそ、機動力をもって社会を動かす力のある企業がどれだけSDGsに真摯に取り組んでいるかが問われる。

そもそも、企業にとってのSDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)の本質とは何か。2019年11月7日、8日の2日間にわたって開催された「MASHING UP vol.3」のセッションでのひとコマだ。「MASHING UP」は、女性をはじめとする多様な人々がしなやかに活躍できるような社会を創出する場としてスタートしたイベントとネットワーキングの場である。

第3回となる今回は、「Reshape the Perception – 知らないを知って、視点を変える」と題して、個人と企業、そして社会に、新たな視点をもたらすセッションが多数開催された。その場で語られた示唆に富む発言のいくつかをレポートしつつ、美容企業もその本気度が問われているサステナビリティを語るうえで欠かせない、SDGsと多様性・マイノリティへの視点をテーマに、企業の取組みへのヒントを探り、考察していく。

画像1

うわべだけの取組みは見透かされる

「ニューエコノミー  SDGsはCSRの延長線ではない」という挑発的ともとれるタイトルで警鐘をならすのは、ジェンダー・開発政策の専門家で、We Empowerナショナルコーディネーター、プラン・インターナショナル・ジャパン理事の大崎麻子氏。大崎氏のファシリテーションのもと、社会問題解決のためのイノベーションを実践している2名が登壇した。

画像2

GoodMorning代表取締役社長
酒向萌実氏(左)
株式会社アダストリア
アダストリア イノベーションラボ部長
高橋 朗氏(右)

1人は、2019年4月に株式会社CAMPFIREから分社化し、社会課題の解決や認知拡大に特化したクラウドファンディングプラットフォームを運営するGoodMorning 代表取締役社長 酒向萌実氏。酒向氏は、1994年生まれの、まさにミレニアル世代だ。「経済が上り調子のところで生きたことがない。テレビをつけると人口減少、景気悪化、気温上昇…と暗いニュースばかりが流れていたので、社会問題に自然と目が向くようになった。それらの課題を解決することにおもしろさを見いださないとやっていけなかった」と話す。先日話題になったグレタ・トゥーンベリ氏の国連での怒りのスピーチを聞いたときも、「当たり前のことを、改めて大きな声で言ってくれてありがとう」という感覚だったという。

もう1人のアダストリア イノベーションラボ部長 高橋 朗氏は、「とくにエポックメイキングなものがなかった曖昧な世代」と話す1980年生まれだ。GLOBAL WORKなどを手がけるファッション・アパレル企業のアダストリア内に開設された「アダストリア・イノベーションラボ」で、既存のモデルにとらわれない、持続可能なファッションを実現するための新しいビジネスモデルの構築を担当している。

ファッション業界では、1990年以降、国内市場規模は右肩下がりなのに対して国内供給量は年々増加しており、過剰供給の状態が続いている。日本における衣類のリユース率は低く、衣類廃棄量は年間約100万トンにも上り、廃棄された衣類の半分以上は焼却処分されるといわれている。

図1

出典:繊維産業の課題と
経済産業省の取組(経済産業省)

「作りすぎている状態に、誰もが気づいているのにどうして変われないのか?」との酒向氏の問いに、「大量に作って売ることが当たり前のモノづくりをやめるためには、現在のビジネスモデルを根本的に否定して、すべてをトランスフォームしなければならないのでハードルが高い。しかし、ここ数年で、消費者のサスティナブルへの意識が高まってきており、企業も変化を求められている」と高橋氏。既存の枠組みやビジネスモデル、エネルギー消費の仕方では、これからは立ち行かなくなってしまう。今こそ、企業は根こそぎトランスフォームすることが求められると強調した。

CSR(Corporate Social Responsibility) は、企業の社会的責任を果たすものであり、企業活動で起こるネガティブインパクトをどう減らすかという取組みのことを指す。一方、SDGsは全世界の行政、民間セクター、研究者、NGO、労働組合などが参加して、約3年の月日をかけてまとめられた「次世代にサステナブルな環境、社会、経済を残していくためのロードマップ」だ。この点でCSRとはまったく異なると大崎氏は主張する。「SDGsはビジネスチャンスである」という謳い文句に踊らされて、SDGsに取り組む企業が増えている印象だが、「真の意味をきちんと理解して実際にアクションを起こしている企業は少ないのではないか。うわべだけのアクションは、若い世代には見透かされてしまう」と酒向氏も指摘する。

SDGsに取り組むメリットは「資金調達」と「若手の人材獲得」

民間企業がSDGsに取り組むべき理由について、大崎氏は「資金調達」と「人材獲得」の2つをあげる。「資金調達」については、「投資の意思決定において、従来型の財務情報だけを重視するのではなく、ESG=環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つを考慮するESG投資が世界的に広まってきている。企業の長期成長を考え資金を調達するためには、日本企業もSDGsに取り組まざるを得ない」と大崎氏は語る。

画像4

We Empowerナショナルコーディネーター
プラン・インターナショナル・ジャパン
理事 大崎麻子氏

「人材獲得」については、国内であれ海外であれ、サスティナブル志向が強く、多様性に敏感なミレニアル世代・Z世代の人材を確保するためには、SDGsに沿った価値観をもって事業に取組んでいることが求められる。高橋氏は、「ミレニアルやZ世代の若いスタッフからは、この事業はなんのためにやるのかという“Why”をよく聞かれる。今必要なのは、Whyを語れるリーダーだ」という。

では、ミレニアル世代は、どのような仕事観をもっているのか。酒向氏は、「一つの企業に長くいる前提で仕事を選んでいない。自分のために会社をどう利用できるかという視点で選んでいる。最終のゴールはそれぞれ違うが、思いのベクトルが一致して、一瞬束になって集まっているのが今のチームだと思っている。会社が社員にいかに利用価値を提供できるかが大事で、1on1ミーティングでも随時確認している」と話した。

また酒向氏は、個人のアクションから社会を変えるのには限界があることにも触れた。「たとえば、マイボトルを持とうと呼びかけても、ペットボトルが大量に作られていること、自動販売機がたくさんあること、マイボトルの飲み物がなくなったらどこかでお茶などを入れられるサーバーがないことなど、社会の仕組みや制度そのものが変わらなければ根本的には変えられないことが多い」と指摘。大崎氏は、「今、目の前の利益ではなく、このあとに続く世代に何を残すかを考えながら経済の仕組みをつくりあげていくことこそがニューエコノミーだ。進化するテクノロジーを活用してイノベーションを起こすことで、それが可能になる」とセッションを締めくくった。

国籍、ジェンダー、障がい…マイノリティ人材が組織を強くする

SDGsが人材獲得のために欠かせないとする一方で、その人材にも多様性がなければ組織は強くなれないという指摘も、昨今は多く見られるようになった。その課題を政治の視点で語ったのが、自由民主党 石破茂氏と立憲民主党幹事長 福山哲郎氏だ。「マイノリティが政治を変える」というテーマで日本の現状と、マイノリティとされる層のこれからの活躍への期待について、党派を超えて議論が展開された。

画像5

ファシリテーターの
朝日新聞編集委員 秋山訓子氏(左)
自由民主党 石破茂氏(中央)
立憲民主党幹事長 福山哲郎氏(右)

日本の組織では、とくに管理職などの意思決定層において女性はまだまだマイノリティだ。そのジェンダーギャップは、非常に大きな問題のひとつである。世界経済フォーラム(WEF)が発表した「Global Gender Gap Report 2018」で、日本は149カ国中110位で、下から数えたほうが早く先進国のなかでも最低水準となっている。女性国会議員比率を見ても衆議院で10%、参議院で20%にとどまっている。

こうした現状に対し、石破氏は「日本の人口のうち男性は48%、女性は52%なので、国会議員も同じ割合でいないとおかしい。現在の日本は、GDPの73%を男性が担っている偏った状態にある。一人ひとりが豊かになって個人消費を伸ばしていくためにも、女性の高い能力を目一杯活かす社会にしていかなければならない」と話す。

基本政策のなかでマイノリティフレンドリーを掲げている立憲民主党は、2019年の参議院選挙比例代表において、女性候補者を45%擁立、LGBT当事者の候補者もたてた。福山氏は、「政治はいろいろな課題を持っている人がいることを可視化し、解決するためのものである。当選できなかった候補もいるが、マイノリティと呼ばれる人たちを政治の場に押し上げていくチャレンジは、今後もし続けないといけない」とする。

また先日、若干名の政党職員募集をしたところ、1,500名の応募が殺到したというエピソードも紹介された。中には、LGBT当事者や、LGBTをサポートする仕事ができるのではないかと理由で応募した人も多数あったという。「LGBTがまだまだ社会で活躍しにくいという現状の気づきにもなった」と福山氏は振り返る。

「今は100年に1度の転換期で、価値観がガラッと変わるとき。これからは、多様性がキーワードになる。いろいろな価値観を尊重しなければ、社会がサステナブルにならない」(石破氏)。

マイノリティへの配慮は高齢化社会では必然に

多様な社会においては、アクセシビリティやユニバーサルデザインへの配慮があることも重要になる。「ダイバーシティ時代の都市・サービスを生みだすためのヒント」として、ヤフー株式会社 ノーマライゼーションPJ プロジェクトマネージャー角谷 真一郎氏が、Yahoo!天気のUI改善プロジェクトの事例を紹介した。

角谷氏自身は先天性の視覚障害をもち、社内では当事者として障がい者の職域拡大に従事している。

画像6

Yahoo!天気の改善例
撮影:著者

具体的な改善点として、Yahoo!天気では色の組み合わせを変えて、海と陸、等圧線のコントラストをつけることで、弱視の人にも使いやすい画面に変更された。また、地震速報の画面では、情報に優先順位をつけて、命にかかわる震度5以上の情報が伝わりやすいデザインになった。

角谷氏は、「障がいの有無にかかわらず、高齢化社会が進んでいくと、見えにくさを抱える人は今後増えていくことが予想される。私のような当事者がプロジェクトメンバーに加わることで、まったく違うデザインやサービスに昇華させることができる。企業は、健常者も障がい者もあたりまえのサービスづくりをもっと意識していく必要がある」と語った。

画像7

ヤフー株式会社
ノーマライゼーションPJ
プロジェクトマネージャー角谷 真一郎氏

美容業界でも、国内外でサステナビリティダイバーシティ、ユニバーサルデザインなどの取り組みは始まっている。すべての人に包括性(自分は排除されていないと感じられること)のある視点でビジネスに取り組むことが、幅広く消費者からの支持を得られる時代だ。大崎氏の指摘するとおり、次世代に何を残し、つなげていくかを考慮したビジネスモデルの構築に、覚悟と目標を持って取り組む企業姿勢がよりいっそう求められている。

Text:小野梨奈(Lina Ono)
写真提供:MASHING UP運営事務局

ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
7
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp