シャンゼリゼ

美容の激戦区シャンゼリゼ。ゲランなど最新テックとリュクスなパーソナル体験

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前回は、シャンゼリゼ大通りにオープンしたランコムの旗艦店についてレポートした。この大通りには、以前から、セフォラ、ゲラン、M・A・C、イヴ・ロシェなどの本店、または旗艦店が並んでいるが、近年、Chanel Beauté、Dior Parfums を含む新コンセプトのビューティショップが続々とオープンしている。今回はそれぞれのメゾンが創り出す独自の世界観やサービスを紹介する。

観光客の多い立地を生かした品揃えと展開

まずは、南仏生まれの化粧品ブランド「ロクシタン」と、マカロンで有名なパティスリー「ピエール・エルメ」とがコラボレートして2017年12月にオープンした、 86 Champs を紹介する。オープン当時、コスメとスイーツとの異色の組み合わせと話題になったが、ナチュラルな原材料を大切にする2つのメゾンがコラボしたブティックは、今も連日大賑わいだ。

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店内に入ると、正面にピエール・エルメ
のマカロンがずらりと並ぶ
画像提供:86 Champs

パリで最も注目されている建築家そしてインテリアデザイナーのひとり、ローラ・ゴンザレス(Laura Gonzalez)氏がクリエイトした1,000平方メートルのモダンな空間は、化粧品、パティスリー、サロン・ド・テのコーナーに分かれている。化粧品コーナーは手を自由に洗えるシンクも設置され、固形石けんを除く、すべてのロクシタン商品を試すことができる。また、観光客のお土産にぴったりなミニサイズや限定コフレの品揃えも豊富で、なかでもピエール・エルメ氏が考案したマカロンと同じフレーバーのハンドクリームは、ロクシタンの人気アイテムとなっている。

ピエール・エルメ氏とコラボした
ハンドクリームの限定コフレ

また、86 Champs 限定で発売される8種のフレグランスには、その場で名前などをボトルにレーザー刻印してパーソナライズができる。

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限定フレグランスには、パティスリーと
同じ名前のフレーバーも揃えている
画像提供:86 Champs

ロクシタンは、SGDs(持続可能な開発目標)への取り組みから、すでに一部の商品でレフィルを販売しているが、2025年までにすべてのボトルを100%リサイクルプラスチックにすること、またすべての直営店でリサイクルサービスを提供することを目指していると公式サイトで発表している。

最高峰の香りをゆっくり体験する空間

また、2018年11月には、ディオールの最高級フレグランスである「メゾン クリスチャン ディオール (Maison Christian Dior)」に特化したDior Parfums がオープンした。ライフスタイルを香りで包むというコンセプト通り、フレグランスだけでなく、キャンドル、ハンドソープ、石けんまで、日常生活を豊かにする香りのアイテムを幅広く揃える。

一歩店内に足を踏み入れると、まず、壁一面に設置されたデジタルスクリーンに目が止まる。そこには、かつてクリスチャン・ディオール氏が愛したラ・コル・ノワール城(現在はメゾン・ディオール所有)の映像が流れ、「メゾン クリスチャン ディオール」のエレガントな世界観を感じることができる。

白い大理石を基調とした洗練された店内の中央には、このコレクションを手がける調香師フランソワ・ドゥマシー(François Demachy)氏が情熱をかけて創り上げた22種類のフレグランスが横一列に美しく並ぶ。この香水カウンターには椅子が用意されており、ゆっくり座って香りを試すことが可能だ。また、フレグランスボトルに文字を入れるパーソナライズサービスも提供している。

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Dior Parfums 店内の雰囲気(参考)
出典:Dior Magより

老舗デパートによるコンセプトストア

このDior Parfums は、前回紹介したランコムの旗艦店の真横に位置するのだが、その逆隣には、2019年3月にオープンしたフランスの老舗デパート「ギャラリー・ラファイエット」による、モード、美容、ライフスタイルに特化した6,500平方メートルの大型コンセプトストアが並んでいる。有名ブランド、新進デザイナーを含め650ブランドが揃う新ファッションスポットとなっており、地上階を占めるビューティコーナーでは、世界各国ブランドのクリーンビューティ製品、フレグランスを集結させて他店舗と差別化を図っている。

Galeries Lafyette Champs-Elysées外観

ギャラリー・ラファイエットの外観
(著者撮影)

例えば、スウェーデン生まれのオーガニックスキンケアブランド L:A BRUKET、ドイツの Girl Smells、ニュージーランドの Antipodes、カナダのILIA、フランスの Nüssa、K-Beautyの Blossom JejuPetitfee など、約200ブランドを取り扱う。グウィネス・パルトローが手がける goop は、フランス国内ではこの店舗のみで扱っているなど、エクスクルーシブなアイテムが見つかるところも魅力だ。

Galeries Lafyette Champs-Elysées内観

中央のイベントスペースでは、
香水にイニシャルを刻印するなど、
ポップアップ形式のサービスを
提案している。
©Marco Cappelletti

また、この店の最大の特徴は、パーソナルスタイリスト制度を設けている点だろう。欲しい商品を事前にリクエストして取り置きができたり、パーソナルショッピングの予約をすることができる。スキンタイプ、好みの香りなど顧客情報が保存されるので、買い物のたびに説明する必要がない。また、ビューティだけでなく、ファッション、雑貨などカテゴリーを超えてリクエストができ、トータルで買い物を楽しめる。

フランス国内の携帯番号を所有していれば、顧客とスタイリストはSMS(ショートメール)で双方向の連絡がとれる。国外の携帯番号の場合は、WhatsApp、Wechatの利用となるが、その場合は現在のところ、顧客からコンタクトを取ればスタイリストから返信がもらえる仕組みだ。300名のパーソナルスタイリストには、英語はもちろん、スペイン語、中国語、日本語などを話せるスタッフも在籍しており、観光客への対応も万全だ。

シャネルはパーソナルな助言を重視した店づくり

さらに、ギャラリー・ラファイエットの隣には、シャネルが2019年7月に美容に特化したChanel Beauté をオープンした。ウィンドーからは思わず足を止めたくなる可憐なディスプレイと、モードなピンク色の空間が見える。

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ウィンドーから、
100平方メートルの店内が垣間見える
©CHANEL

中に入ると、まずはすべてのメイクアップ製品を試すことができる「シャネル・ビューティスタジオ」になっている。中央には大きなカウンターが置かれ、同ブランドのメイクアップアーティストからパーソナライズした助言をもらえる。ミレニアル世代が好みそうなピンク色の壁面装飾は、よく見るとシャネルの口紅ケースが無数に埋め込まれていて、まるでアートのインスタレーションだ。

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©CHANEL

奥に続くフレグランス、スキンケアコーナーには、「NO.5」を開発した初代シャネル専属調香師エルネスト・ボー氏を含め、1992年〜2016年の間に歴代の調香師が手がけたオードパルファム「レ・ゼクスクルジフ・ドゥ・シャネル」のコレクションがピラミッドのようにディスプレイされている。

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©CHANEL

さらにその奥には、エッフェル塔などパリの街並みがエンボス加工されたハイライトパウダー、フレグランスBOXなど、この店舗でしか購入できない限定商品が販売されている。

最新デバイスで好みの香水を見つけるゲランの試み

シャンゼリゼ大通りには、LVMH傘下のゲランの本店もある。数年前から、ARを用いた口紅のバーチャル体験を提案するなど、テクノロジーを活用しているが、2019年11月から、新たに感情センサーに基づいて好みの香水を見つけるフレグランス ファインダー「マインドセント(Mindscent)」を導入した。

ゲランの新デバイスmindscent

本店2階にある
「マインドセント」コーナー
(著者撮影)

「マインドセント」の使い方は、まず、脳波の動きなどを解析できる特殊なニューロンヘッドセットを頭に装着し、4種類の香りを一つひとつ嗅ぎながら、情緒反応を測る。タブレット上(現地で日本語も選択できる)で集中力やリラックス度の変化をリアルタイムで確認でき、反応結果はグラフとなって現れる。最もポジティブな結果をもたらした香りをパーソナリティにマッチしたものとみなし、最終的に、同ブランドの110種類のフレグランスのなかから2種類の香りが提案される。 希望すれば、美容スタッフにより、それらの香りをトライすることも可能だ 。

ゲランの新デバイスのグラフ

4種の香りの情緒反応の違いの例
(著者撮影)

その時の心の状態によって結果が異なるため、自分がいい香りと感じたものと、デバイスの反応結果にギャップが出る場合もある。既成概念にとらわれずに選ばれた香りを試してみると、心と体がリラックスできる新しい香りに出会える可能性もありそうだ。

老舗ならではのパーソナライズ

1828年創業と長い歴史をもつゲランでは、フレグランスのボトルやリボンの色を選び、イニシャルなど文字を刻印してパーソナライズが可能だ。通常はマシンにより素早く仕上げられるが、月に数回は専門スタッフが来店して、手彫りで文字を刻み、人の手によるパーソナライズ体験を提供する。また、上階にあるゲランのスパ「インスティテュート」では、一人ひとりの肌の状態や希望に合わせる望み通りのマッサージ・ケアを提供しており、世界中のセレブリティを魅了している。

香水ボトルのパーソナライズ

パーソナライズされた
ゲランのフレグランスボトル
(著者撮影)

以上のように、現在、シャンゼリゼ大通りは、セフォラ、ゲランをはじめ、ランコム、Dior Parfums、ギャラリー・ラファイエット、Chanel Beauté が隣り合わせに店を構えるなど、激戦状態となっている。どの店も凝った内装でブランドの世界観を伝え、またデジタルツールや先端テクノロジーを駆使した体験を通して、観光客や若年層を取り込もうとしている。とはいえデジタルツールは、故障や不具合で店頭で使えなくなることがしばしば起こるの現状だ。

昨今は、ウェブ上でいくつかの質問(診断)をして、製品をマッチングしたり、処方のパーソナライズをするD2Cブランドが多数登場している。中間業者、販売スタッフがいない分、素早い対応や自宅への配送、リーズナブルな価格など、消費者にとって魅力的なサービスを実現できる。その一方で、資本のある大手企業はあえて手のかかるリアル店舗で、ハイブランドならではのラグジュアリーな体験を提供する方向へ進んでいるように感じる。

何を提供すると顧客を魅了できるのか。移り変わりの早い消費者のニーズやインサイトを読み取りながら、その先をゆく付加価値の創造を目指し各社が模索しているのが感じられる。

Text & top image : 谷素子(Motoko Tani)

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