見出し画像

完美日記だけじゃない。GirlCultなど勢いのある中国新興8ブランドを紹介

◆ English version: Beyond Perfect Diary: 8 new Chinese beauty brands to watch
New English article
◆ 新着記事をお届けします。以下のリンクからご登録ください。
Facebookページメルマガ(隔週火曜日配信)
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40sqf5598o

アリババグループ傘下のTMALL(天猫)が11月11日に開催するセールイベント、ダブルイレブン(双11)。2019年に中国ブランドとして初の売上ランキング1位となったのが、2016年にローンチされたばかりの新興ブランド「PERFECT DIARY(完美日記)」だ。かつては海外ブランドが上位を占めていたが、人気・実力ともに肩を並べる存在になりつつある。PERFECT DIARY以外にも、数多の新興ブランドが次々と誕生している中国。その活況の背景を探りながら、話題を呼んでいる8ブランドを紹介する。

スクリーンショット 2020-01-07 15.34.47

出典:PERFECT DIARY公式サイトより 

新興ブランドが増えている背景には、まず、国産ブランドを推奨する昨今の風潮がある。特に「95后(1995年以降生まれ)」や「00后(2000年以降生まれ)」といった世代は、国産ブランドへの抵抗がない。また、SNSの発展も要因のひとつで、立ち上げたばかりで資金力も知名度もないブランドが、コストをかけずに手軽にマーケティングでき、95后や00后との親和性も高いからだ。

こうした中国ブランドの拡大を受けて、化粧品製造にまつわる環境も大きく変化した。OEMやODM(企画計画・設計、開発、生産製造受託)、OBM(商品コンセプト・デザイン創出、商標登録、販売受託)企業が増加している。調査会社・前瞻産業研究院のレポートによると、2017年の化粧品OEMの市場規模は前年比で約2割も増え、448億元(約7,000億円)となっている。

好調な市場も後押しする。米中貿易摩擦などの影響で中国の景気は低迷するなか、“世界一の市場”である自動車の販売台数は2018年に28年ぶりの前年割れとなった。ところが化粧品市場はまったくその影響を受けておらず、東方証券が発表したレポートでは、2018年の市場規模は前年比12.3%増の4,105億元(約6兆4,000億円)と非常に高い成長率だった。投資家にとっても魅力的な市場であり、スタートアップが資金調達をしやすい環境にあるといってよい。

かくして乱立する新興ブランドだが、知名度や資金力で劣る新興ブランドが大手に伍していくためには、他にはない特徴を打ち出すことが必要だ。新興ブランドの戦略を大きく3つに分類し、紹介する。

その1:R&D重視

知名度にかける新興ブランドにとって重要なのは、消費者からまずは信頼を得ることだ。R&Dを重視する姿勢は消費者の心を掴みやすい。

■「HomeFacial Pro(HFP)」
広州蛋壳網絡科技が2014年にローンチしたスキンケアブランドで、「成分で皮膚を揺り起こす」をコンセプトに、ヒアルロン酸やニコチンアミドなどの配合成分にこだわっている。2015年に開設されたラボでもある「HFP実験室」は商標登録され、ブランディングにも利用されている。同社のウェブサイトや報道によると、P&Gで10年以上の経験を積んだスタッフも在籍し、日本のラボとも提携しているという。Weibo公式アカウントのフォロワー数は12万超、SNS型ECアプリ「RED(小紅書)」公式アカウントのフォロワー数は11.6万超。主な販売先はTMALLで、ダブルイレブンには4年連続で参加し、2019年はHFP原液シリーズの販売数が169万本を突破。0.05秒に1本売れた計算となり、売上は過去最高の3億元(約46.8億円)を超えた。

画像1

出典:HFPのTMALL上の公式ショップより 

■「WIS」
広州慕可生物科技が2011年にローンチしたスキンケアブランド。スイスの化粧品原料大手・RAHNグループと提携し、中国の人々の肌に合わせた研究開発を行っている。Weiboを積極的に活用し、イメージキャラクターにタレントを起用してきたためか、フォロワー数は300万に届く勢いだ。出店先はTMALL、JD.com(京東商城)、REDで、REDのフォロワー数は14.3万超。現地の報道によれば、2019年のダブルイレブンでは開始から4時間6分で売上が1億元(約15.6億円)に達した。2019年8月からは、中華圏で展開するドラッグストアのワトソンズ全店舗での取り扱いが始まり、オフラインも強化している。

スクリーンショット 2019-12-30 21.32.07

出典:WIS公式サイトより

その2:コンセプト重視

無数にあるブランドのなかで埋もれないためには、斬新さが必要だ。そこをアピールすべく、趣向を凝らしたコンセプトを掲げるブランドも少なくない。

「Girlcult」
上海諧点電子商務が2018年にローンチしたメイクアップブランドで、印象的でミステリアスな雰囲気のパッケージ、独特の光沢やカラーで日本でもじわじわ人気が出てきている。現地の報道によると、若者の消費行動を「大衆に屈せず、価格のセグメントも気にしない」と定義したうえでの戦略であり、90后と95后のユーザーが64%を占める。TMALL、RED、JD.comに出店しているほか、自社サイトでも販売しているが、TMALLでの売上げが90%以上という。REDのフォロワー数は2.8万超で、Weiboは1.5万超。2018年にエンジェルラウンドで資金調達し、最近シリーズAラウンドで数千万元を調達した。

画像3

出典:Girlcult公式サイトより

「HEDONE」
上海赫奈実業が2014年から試作を開始し、2018年にローンチしたメイクアップブランド。創業者のRachel(曲心哲)CEOはロンドンに留学後、ロレアルの現地法人に勤務していた経験を持つ。「1986西遊記アイシャドーパレット」「七宗罪(7つの大罪)」など独創的な商品を展開。現地の報道では、王岳鵬氏や穆雅斕氏など影響力の大きいインフルエンサーと提携しており、SNSを積極的に活用。Weibo公式アカウントのフォロワー数は3.5万ほどだが、REDでは11万を超える。ほかにTMALL、JD.comにも出店している。2018年にシリーズBラウンドで資金調達した。

スクリーンショット 2019-12-30 21.44.28

出典:HEDONEのTMALL上の公式ショップより

■「FARBERLY(法伯麗)」
王秀美CEOが2017年ローンチしたスキンケアを主体としたブランドで、2018年設立の広州法伯麗生物科技が運営している。一般的に、中国ブランドは海外ブランドよりも価格帯が低い傾向だが、同ブランドは価格競争に巻き込まれないよう、「プチリッチ」をコンセプトに、あえて価格帯を高めに設定。原材料は英Croda傘下の仏Sedermaから調達し、一部の商品は海外で生産を委託しているという。創業1年目にして売上げは1億元(約15.6億円)を突破。TMALL、JD.com、REDだけでなく、ショッピングモールなどのチャネルでも展開。代理店を通じ、中国全土で販売されている。Weiboのフォロワー数は8.5万超。

画像5

出典:FARBERLY公式サイトより

その3:インフルエンサーによる立ち上げ

SNSの発展は数々のインフルエンサーを生み、インフルエンサー自らがブランドを立ち上げるケースも増えてきている。

「JUNPING」
杭州耕香跨境電子商務が2013年にローンチした、天然素材にこだわったスキンケアブランド。方俊平CEOは「俊平大魔王」の名前で活動している男性インフルエンサーで、Weiboのフォロワー数は880万超。短編動画アプリ「秒拍」のフォロワー数は770万超で、REDは268万を超える。現地の報道によると、同社は日本の日光化学研究所やドイツ企業などと技術提携しているそうだ。2017年にはプレシリーズAで2,000万元(約3.1億円)を調達した。TMALLやJD.comに出店しており、2019年のダブルイレブンではフェイスマスクが20万個以上、クレンジングが12万個以上売れ、売上げは前年比50%増だった。また、当日のリピーター率は約60%に達したという。セール前日にスキンケア講座を開くなど、オフラインのイベントも重視している。

画像6

出典:JUNPING公式サイトより


「CROXX」
千戸長生」のアカウント名でbilibiliでメイク動画を配信する男性ライバーのBenny董子初が2017年にローンチしたメイクアップブランド。運営会社は天津十重無間文化で、パートナーの威示尔初氏が法定代表人を務める。Benny氏のbilibiliのフォロワー数は155万弱で、Weiboのフォロワー数は437万を超える。出店先はTMALLだけだが、2018年の売上高は1億元(約15.6億円)に達したとの現地報道がある。威示尔初氏は現地メディアの取材に対し、今後、実店舗も含めチャネルを開拓し、売上高を3~4億元規模にしたいと答えている。

画像7

出典:CROXXのTMALL上の公式ショップより

Benny董子初としてCROXXを紹介
出典:bilibiliの公式アカウント

「BIG EVE」
Weiboのフォロワー数が1,167万を超える人気ネットインフルエンサー・張大奕氏が2018年にローンチしたブランド。張氏はTMALLにアパレルショップ「ifashion(吾歓喜的衣橱)」を出店していたが、大人気店だったことから、インフルエンサーマネージメント大手のruhnn(如涵)の目に止まり、提携するようになる。両者は2016年に合弁で杭州大奕電子商務を設立。同店から派生する形でBIG EVEが誕生した。2019年3月に張氏は所有していた杭州大奕電子商務の株式49%をruhnnに譲渡し、替わりにruhnnの株式を15%取得。ruhnnは同年4月にナスダックに上場しているが、張氏はその後も13.2%を保有する大株主だ。アリババグループが2016年、ruhnnに3億元(約46.8億円)を出資しているためか、同ブランドはTMALLにしか出店していない。現地の報道によると、店舗立ち上げ初日のわずか40秒で売上げが100万元(約1,560万円)を超えたという。

画像8

出典:BIG EVEのTMALL上の公式ショップより

淘汰の兆候もある新興ブランド

中国におけるマーケティングは、自動車を例に取ればわかるように、英語名のブランドでも中国語名を併記しないと売れないといわれてきた。だが、化粧品の新興ブランドをみていると、英語名だけのブランドも少なくない。それだけ95后や00后の消費者の感覚が変わってきている。

冒頭で紹介したPERFECT DIARYの成功の理由は、SNS時代に即した巧みなマーケティング戦略にある。当初はSNS型ECアプリ「RED(小紅書)」で人気インフルエンサーを起用したマーケティングで人気に火をつけたが、それを一過性のブームで終わらせないよう、周到にユーザーとのコミュニケーションを図っているのだ。

そのツールとして活用されているのがWeChatで、16もの公式アカウントを運営している。学生向け、スキンケア情報専門などターゲットを分けるためだ。しかもそれだけではない。「小完子の〇〇」(〇〇は個人名が入る)という、ブランド公認のカスタマーサポート兼コミュニティリーダーとしての個人アカウントを運用している。個人アカウントはフォロワー数に5,000という上限が設けられているため、小完子がつくアカウントは少なくとも100は存在するといわれている。つまり合計で50万ものフォロワーがいる計算だ。

加えて、小完子がユーザーを招待する「完美研究所」などの関連コミュニティが数千ほど存在する。個人アカウントやコミュニティは公式アカウントよりもユーザーとの距離がより近いのが特徴で、新商品やキャンペーン情報の発信はもちろん、ミニプログラムに誘導して購買まで完結させることを同ブランドは目指している。

変化の著しい95后や00后の消費者の心を掴むことは容易ではないが、参入障壁の低さから、今後も新興ブランドは増えていくと思われる。とはいうものの、PERFECT DIARYの手法を真似るのは簡単ではなく、実際、早くもSNSの更新すら滞っているブランドも少なくない。

規模を拡大させて成功するブランドはひと握りで、そのほかは入れ替わりも激しくなるのではないだろうか。ただ、中国国内だけでも膨大な市場があることを考えると、多数のブランドが当面は生き延び、試行錯誤を続けながら韓国、日本に続くC-Beautyの時代をつくっていく可能性はありそうだ。

Text: チーム・ロボティア(Team Roboteer)
Top image: Rido via shutterstock


ありがとうございます!LINE@で更新情報配信中です。ぜひご登録を!
23
美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。詳しくは → https://goo.gl/7cDpmf  BeautyTech.jp(English)move to https://medium.com/beautytech-jp

こちらでもピックアップされています

BeautyTech.jp記事
BeautyTech.jp記事
  • 550本

BeautyTech.jpのすべての日本語コンテンツはこちらからご覧いただけます